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帳票とは? 帳簿・伝票・証憑の種類から保存期間、電子化の進め方まで解説

企業活動において欠かせない「帳票」ですが、その正確な意味や適切な管理方法を理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。帳票は単なる書類の集まりではなく、法律で保存が義務付けられた重要な記録であり、税務調査や経営判断の基盤となる存在です。

近年では電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入により、帳票管理のデジタル化が急速に進んでいます。本記事では、帳票の基本的な定義から種類、保存期間、そして電子化の進め方まで、詳しく解説します。帳票の運用を見直し、業務の効率化を目指している企業の方は、ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
  公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー 

帳票とは何か

帳票とは、企業の経済活動を記録するための重要な書類群のことです。適切な管理が法律で義務付けられています。しかし「帳票」という言葉が具体的に何を指すのか、関連する用語との違いは何かを正確に理解している方は多くありません。

ここでは、帳票の基本的な定義と関連用語について詳しく解説していきます。

帳票は「帳簿」と「伝票」の総称

帳票とは、企業が日々行う経済活動の内容を記録した書類である「帳簿」と「伝票」を1つにまとめた呼び方です。実務上の位置付けは、以下のように分かれています。

  • 伝票:個別の取引が発生するたびに作成するもの
  • 帳簿:伝票を一定のルールで集計して記録したもの

現代のビジネスシーンでは、紙の書類だけでなく、電子データとして保存されるものもすべて帳票類に含まれます。帳簿と伝票はそれぞれ異なる役割を持っており、両者を適切に作成・管理することが、企業の財務状況を正確に把握するうえで欠かせません。

詳しい書類名については後述しますが、まずは帳票が「帳簿+伝票」の総称であることを押さえておきましょう。

帳票と証憑(しょうひょう)の違い

帳票が自社で作成する記録であるのに対し、証憑は取引の事実を外部に対して客観的に証明する証拠書類としての性質を持ちます。

証憑には取引先から受け取る領収書や契約書が含まれ、帳票よりも広い範囲の「取引の証拠」を指す言葉として使われるのが一般的です。帳票類は日々の記録のために作成されますが、証憑はトラブル発生時や税務調査時の法的な裏付けとして重要な役割を担っています。

両者は密接に関連しながらも、その目的と性質は異なることを理解しておきましょう。具体的な書類名については、後ほど詳しく解説します。

帳票類の法的な位置付け

企業は会社法や法人税法によって、帳票の作成と保管が義務付けられています。これらの義務を怠った場合、罰則の対象となる可能性があるため注意が必要です。帳票は公正な会計慣行に従って作成することが求められ、正確な記帳は企業が社会的責任を果たすための基盤と言えるでしょう。

税務当局の調査が入った際には、帳票が申告内容の正当性を証明する重要な証拠となるため、法に則った厳格な管理が不可欠です。帳票は単なる社内資料ではなく、法的な保護と義務を伴う公的な書類であることを認識しておきましょう。


帳票作成を行う目的

帳票作成は単なる事務作業ではなく、企業経営において多様な役割を果たす重要な業務です。帳票作成の目的として、主に以下の7つが挙げられます。

  • 取引内容を正確に可視化し、証跡を残す
  • 社内外での円滑な情報伝達を実現する
  • 内部統制(コンプライアンス)を強化する
  • 税務調査への法的対応を果たす
  • 資金繰り(キャッシュフロー)を正確に管理する
  • 経営判断の精度を高めるデータソースとして活用する
  • 現場の業務改善のヒントを得る

ここでは、上記の目的について見ていきましょう。

取引内容を正確に可視化し、証跡を残す

「いつ・誰が・何を・いくらで」取引したのかという客観的な事実を記録に残すことで、口約束による言った言わないのトラブルを未然に防げます。全ての取引に番号や日付が振られた帳票が存在すれば、後から特定の事象を遡って調査できるので、取引の透明性が担保されるでしょう。

適切な証跡管理は、自社の取引が本当に正しいものであるか疑われた際に、正当性を証明する客観的な証拠となります。万が一の裁判や紛争時においても、帳票が取引の事実関係を明確にし、不当な請求や責任追及を退けるための根拠となるのです。

取引先との認識の相違が生じた場合でも、帳票があれば事実に基づいた解決が可能になります。

社内外での円滑な情報伝達を実現する

帳票は、営業から経理へ、現場から経営層へ、そして自社から取引先へと、ビジネスに必要な情報を正確に引き継ぐための情報共有の基盤となります。定型化されたフォーマット(帳票)を用いることで、担当者の説明能力に依存せず、必要な情報を過不足なくスピーディーに共有できるでしょう。

特に、取引先と納品書や請求書を共有することは、お互いの認識にズレがないかを確認するプロセスそのものです。帳票という共通のフォーマットがあることで、部署間や企業間のコミュニケーションが円滑になり、ビジネスの信頼関係を強化できます。

属人的な報告に頼らない情報伝達の仕組みは、組織全体の生産性を高める重要な要素と言えるでしょう。

内部統制(コンプライアンス)を強化する

帳票の作成と承認のフローを明確にすることで、担当者による勝手な発注や架空請求、会社資金(または社費)の私的流用といった不正行為を組織的に抑止できます。

全ての支出に帳票という「根拠」を求める文化が定着すれば、社員一人ひとりの規範意識が高まり、健全な組織風土の醸成へとつながるでしょう。また、監査法人の監査や内部監査において、ルールどおりに業務が行われているかを証明する証拠として、帳票の存在は不可欠です。

上場企業はもちろん、中小企業においても内部統制の強化は経営の安定に直結します。帳票による記録と承認の仕組みは、組織のガバナンスを支える基盤となるのです。

税務調査への法的対応を果たす

確定申告や決算で算出される数字は、すべて日々の細かな帳票の積み重ねによって成り立っています。帳票に基づかない数字は、公的に認められません。

税務署による調査が入った際、帳票の提示は法的な義務です。これが不十分だと、青色申告の取り消しや追徴課税といった甚大なリスクを負うことになります。法に則った厳格な帳票作成を継続することは、適切な納税を行っている善良な企業であることを示す根拠になるのです。

税務調査は突然行われることもあるため、日頃から帳票を整理し、すぐに提出できる状態を保つことが大切です。社会的信用を維持するためにも、帳票管理は経営上の優先事項として位置付けるべきでしょう。

資金繰り(キャッシュフロー)を正確に管理する

入金伝票や出金伝票、資金繰り表を緻密に作成・管理することで、黒字倒産などの最悪のシナリオを回避するための資金予測が行えます。

売掛金の回収状況を帳票で厳密に追跡すれば、支払遅延の早期発見と督促が可能になり、手元資金の流動性を高められるでしょう。正確な資金繰り管理は、金融機関からの評価を大きく左右します。

必要なときにスムーズな融資を受けるための必須条件として、帳票による資金状況の可視化は欠かせません。特に成長期の企業においては、売上増加に伴う運転資金の増大を見越した、計画的な資金管理が求められます。

経営判断の精度を高めるデータソースとして活用する

帳票に蓄積された数字を集計・分析することで、売上の推移やコストの変動をリアルタイムで把握し、次の経営戦略を立てるための指標となります。

「どの商品が売れているか」「どの部署でコストが肥大化しているか」といった現場の真実を浮き彫りにし、データに基づいた迅速な意思決定を後押しするでしょう。さらに、過去の帳票データを時系列で比較すれば、季節変動や市場のトレンドを読み解くことが可能です。

その結果、将来予測や予算策定の精度が高まり、競合他社に先んじた戦略的な経営判断が実現します。帳票は過去の記録であると同時に、未来を見通すための貴重なデータソースでもあるのです。

現場の業務改善のヒントを得る

作業日報や工程管理表などの現場系帳票を分析することで、作業のムダやボトルネックを特定し、業務プロセスの最適化(BPR)へとつなげられます。トラブル発生時の報告書を蓄積して共有すれば、同じ失敗の再発を防止するナレッジベースとなり、組織全体のスキルアップに大きく貢献します。

また、帳票作成を通じて「自分の仕事の成果」を数値化・言語化する習慣が身に付けば、社員一人ひとりが自ら課題に気付き、改善に取り組む意識も高まるでしょう。現場の課題を可視化し、継続的な改善活動を推進するためのツールとして、帳票は非常に有効です。


帳票の種類とそれぞれの役割

帳票には以下のような種類があり、それぞれが異なる役割を担っています。

  • 帳簿(主要簿・補助簿)
  • 伝票(入出金・振替・売上仕入)
  • 証憑(しょうひょう)

ここでは、各書類の種類と、種類ごとの具体的な役割について見ていきましょう。

帳簿(主要簿・補助簿)

帳簿は取引を勘定科目ごとに整理・集計した書類であり、主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)と補助簿(現金出納帳など)に大別されます。

主要簿は、企業の全取引を記録する基本帳簿であり、仕訳帳には取引の発生順に、総勘定元帳には勘定科目別に記録していくのが特徴です。一方で、補助簿は、主要簿を補完する役割を持ち、現金出納帳、預金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳などが該当します。

日々の取引を正確に帳簿へ記録することで、試算表や決算書を正しく作成し、企業の財政状態を明確にする役割を果たすでしょう。帳簿は企業会計の根幹をなす書類であり、その正確性が決算の信頼性を左右する重要な存在です。

伝票(入出金・振替・売上仕入)

伝票は取引が発生したその場で事実を記録するための証憑であり、入金や出金、振替、売上、仕入などの種類が存在します。伝票の種類により、以下の内容を記録します。

  • 入金伝票:現金の受け取り
  • 出金伝票:現金の支払い
  • 振替伝票:現金の動きを伴わない取引

取引の内容を1枚の紙に凝縮して記録することで、責任の所在を明確にし、後の記帳作業も効率化されるでしょう。伝票は帳簿への記帳の基礎となる書類であり、伝票作成が正確であるほど、帳簿の信頼性も高まります。

各伝票の書き方や運用ルールの詳細、適切な使い分けについては、以下の記事を参考にしてください。

証憑(しょうひょう)

証憑には、自社作成の帳票だけでなく、外部から受け取る領収書や契約書も含まれます。以下のように、取引の工程ごとに異なる役割を持つ書類が発生するのが特徴です。

  • 取引開始前の「見積書」
  • 合意を示す「契約書」
  • 実施を証明する「納品書」
  • 請求を伝える「請求書」

これらの書類は、取引の各段階を証明する法的な証拠として機能します。税務調査や訴訟において、自社の正当性を証明する重要な書類なので、種類ごとに整理して厳重に保管しておきましょう。


帳票の保存期間は何年?

帳票の保存期間は法律で厳格に定められており、これを守らないと深刻なペナルティを受ける可能性があります。保存期間は適用される法律によって異なり、法人税法では7年、会社法では10年と規定されています。また、起算日の考え方や個人事業主の場合の取り扱いにも注意しなければなりません。

ここでは、帳票の保存期間に関するルールを詳しく解説します。

法人税法により、原則「7年間」の保存が義務付けられている

法人が作成または受領した帳票類は、法人税法によって原則として7年間の保存が義務付けられており、これが実務上の基本となります。対象となるのは仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿に加え、領収書、請求書、契約書、棚卸表といった取引を証明する全ての書類です。

この期間内に帳票を破棄してしまうと、税務調査において経費の計上が認められず、多額の追徴課税を受けるリスクが生じます。7年という期間は非常に長いため、場当たり的な対応ではなく、計画的な保管体制の構築が不可欠です。

帳票は年度ごとに整理し、必要になったらいつでも取り出せる状態で管理しましょう。

会社法では「10年間」の保存が必要

法人税法とは別に、会社法第432条では会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を10年間保存しなければならないと定めています。税法上の保存期間である7年を過ぎても会社法上の義務は残るため、実務においてはより長い「10年間」を基準として管理ルールを策定すべきでしょう。

株主や債権者から閲覧請求を受ける可能性も考慮し、10年分を確実に遡って提示できる整理体制を維持することが、企業の信頼につながります。

また、青色申告を行っている法人が税務上の欠損金(赤字)を翌年以降に繰り越す場合、その年度の帳票は例外的に10年間の保存が必要となるため、注意してください。欠損金の繰越控除を受けるには、その損失が発生した原因を証明する帳票が不可欠であり、保存を怠ると控除が否認される恐れがあります。

年度ごとに黒字か赤字かを判断して破棄時期を変える運用は、管理ミスを招きがちです。全年度を一律で10年保存とする方針が、最も安全で実務負担の少ない運用でしょう。

保存期間の「起算日」とは

帳票の保存期間は書類の作成日から数えるのではなく、法人税の確定申告期限の翌日から起算するという独特のルールがあります。

例えば、3月決算の会社であれば、原則として5月末が申告期限となり、その翌日から7年または10年をカウントします。そのため、書類作成日から起算日まででも、1年以上の開きが出るケースも珍しくありません。

起算日の勘違いは法定期間に満たない段階での誤廃棄に直結するため、廃棄予定日を記載した管理ラベルを貼付するといった対策が有効です。書類の整理を行う際は、この起算日のルールを念頭に置き、余裕を持った保管期間を設定することをおすすめします。

個人事業主の場合は、所得の種類により保存期間が異なる

個人事業主の場合、青色申告者は帳簿や決算書類を7年、領収書等は原則7年(※前々年所得が300万以下なら5年)の保存が求められます。

一方、白色申告者の場合は、収入金額や必要経費を記載した帳簿は7年、それ以外の任意で作成した帳簿や書類は5年の保存期間となっているのが特徴です。法改正による要件変更も多いため、個人事業主であっても基本的には全ての帳票を7年間は保管しておくのが、最もミスがなく安全でしょう。

以下の表で、白色申告と青色申告それぞれの保存期間を確認してください。

保管期間 白色申告 青色申告
7年保管
  • 法定帳簿(収入・経費に関する帳簿)
  • 帳簿(全般)
  • 決算関係書類
  • 領収書や請求書など
5年保管
  • 任意で作成した帳簿
  • 書類(全般)
  • 見積書や注文書など

帳票を適切に管理・保存するメリット

帳票を適切に管理・保存することで、企業は多くのメリットを享受できます。得られるメリットは、主に以下のとおりです。

  • 税務調査の際に、速やかかつ正確に対応できる
  • 経営状況をリアルタイムに把握して、意思決定を早める
  • 社外からの信頼性を高める
  • キャッシュフローの推移を予測し、資金繰りを安定させる
  • 監査やM&Aにおけるデューデリジェンスを円滑に進める

ここでは、実際に企業にどのような恩恵がもたらされるのかを具体的に解説していきます。

税務調査の際に、速やかかつ正確に対応できる

帳票が整理されていれば、税務署からの質問に対して即座に根拠書類を提示できるため、調査時間を短縮し余計な疑念を払拭できます。過去の取引データが体系的に保管されていることは、企業のコンプライアンス意識の高さをアピールする有力な根拠になるでしょう。

適正な帳票保存は青色申告の承認維持に直結し、将来にわたって税制上の優遇措置を受け続けるための守りの要となります。税務調査官に「この会社はしっかり管理している」という印象を与えることで、調査自体もスムーズに進む傾向があります。

日頃からの入念な準備こそが、万が一の税務調査における大きな安心につながるのです。

経営状況をリアルタイムに把握して、意思決定を早める

帳票管理をシステム化してデータを集約すれば、月次決算を待たずに現在の利益やキャッシュフローを速やかに可視化できます。

部門別やプロジェクト別の採算性を帳票から迅速に分析することで、不採算部門の改善や注力分野へのリソース配分を早期に判断できるでしょう。正確な数値に基づいた経営判断は、勘や経験に頼るよりも成功確率が高く、競合他社に先んじた戦略的な動きを可能にします。

経営のスピードが問われる現代において、リアルタイムな情報把握は企業の競争力を支える重要な要素です。

社外からの信頼性を高める

帳票管理が徹底されている企業は、金融機関からの評価が高まりやすく、低金利での融資や資金調達において有利に働きます。大手企業との新規取引や監査を受ける際にも、帳票の整備状況は企業の組織的な成熟度を測る重要な指標として扱われるでしょう。

取引先に対して支払い遅延のない正確な事務処理を継続することは、長期的なビジネスパートナーとしての信頼関係を築く土台となります。社外からの信頼は一朝一夕で得られるものではなく、日々の地道な帳票管理の積み重ねが、確かな評価につながるのです。

キャッシュフローの推移を予測し、資金繰りを安定させる

過去の帳票から入出金のパターンを把握することで、将来の資金不足のリスクを事前に察知し、早めの対策を講じることが可能になります。

売掛金の回収状況を帳票で厳密に管理すれば、未回収によるキャッシュフローの悪化を防ぎ、健全な経営サイクルを維持しやすくなるでしょう。さらに、支払伝票の管理を徹底することで、無駄な支出を削減し、自己資金の範囲内で効率的な投資を行うための判断材料が得られます。

黒字倒産という最悪の事態を回避するためにも、帳票を活用した資金繰り管理は、経営者にとって最も重要な課題の1つです。

監査やM&Aにおけるデューデリジェンスを円滑に進める

外部監査を受ける際、帳票が法的な要件を満たして整理されていれば、監査プロセスの遅延を防ぎ、監査費用の増大を抑えられます。また、将来的なM&Aや事業承継を検討する場合、正確に管理された帳票類は、企業価値を正しく評価してもらうための極めて重要な証拠となるでしょう。

取引の透明性が担保された帳票群は、投資家やステークホルダーに対して企業の健全性を証明する強力な裏付けとなります。企業の出口戦略を考えるうえでも、帳票管理の重要性は見過ごせません。


帳票管理を行う際の注意点とリスク

帳票管理には多くのメリットがある一方で、適切に行わないと深刻なリスクを招く可能性があります。特に意識するべき注意点とリスクは、以下の4つです。

  • 法律で定められた保存期間を厳守する
  • 紛失・盗難による情報漏えい対策を徹底する
  • 改ざん防止のために、作成フローをマニュアル化する
  • 経年劣化による文字の不鮮明化や破損に注意する

ここでは、上記のポイントを解説します。

法律で定められた保存期間を厳守する

法人税法では帳票の保存期間を原則7年、会社法では10年と定めており、最も長い期間に合わせて保管するのが安全です。保存期間の起算日は「申告期限の翌日」からカウントするため、単純に作成日から計算するわけではない点に注意しましょう。

例えば、3月決算の企業が2024年4月に発行した請求書の場合、申告期限が2025年5月31日であれば、保存期間の起算日は2025年6月1日となります。期間満了前に誤って廃棄してしまうと、追徴課税を受けたり青色申告が取り消されたりする甚大なリスクを負いかねません。

廃棄予定日を明確に管理し、処分の直前には必ず複数人でチェックする体制を構築しておくと安心です。

紛失・盗難による情報漏えい対策を徹底する

帳票には取引先の名称や口座情報など、機密性の高い個人情報が含まれているため、施錠管理やアクセス権限の設定が不可欠です。紙の帳票を無造作にデスクに放置したり、社外へ持ち出したりする行為は情報漏えい事故に直結するため、厳格なルール作りが求められます。

万が一の紛失に備えて、重要な書類は電子バックアップを取得しておくなど、二重のセキュリティ対策を講じるのが望ましいです。情報漏えいは企業の信用を大きく損なうため、日常的な予防策の徹底が何より重要となります。

改ざん防止のため、作成フローをマニュアル化する

帳票の作成、承認、保管の担当者を分ける「職務分掌」を徹底することで、1人による数値の改ざんや不正操作を構造的に防げます。手書き伝票の修正は二重線と訂正印で行うなど、訂正の履歴が明確に残るような処理ルールをマニュアルで統一するのが基本です。

電子データの場合は、編集履歴が自動で残るシステムを利用し、いつ誰がどの値を変更したかを追跡できる状態にしておきましょう。改ざん防止の仕組みは、不正の抑止だけでなく、従業員を疑いから守る役割も果たします。

経年劣化による文字の不鮮明化や破損に注意する

紙の帳票は、時間の経過とともに劣化が進んでいきます。そのため、保存環境には細心の注意を払わなければなりません。特に、以下の点に留意して管理しましょう。

  • 感熱紙の領収書や伝票は時間が経つと文字が薄くなる
    →長期保存が必要なものはコピーを取るかデータ化して保存
  • 湿気や直射日光の当たる場所での保管は紙の劣化を早める

  →適切な温度・湿度が保たれた倉庫やキャビネットで管理

  • 災害による焼失や水害のリスク
    →重要度の高い帳票は物理的に離れた複数の拠点で分散保管

紙の帳票は、時間とともに証拠としての能力が失われていくため、情報の鮮明さを保つ観点からも早めのデータ化をおすすめします。


帳票を管理する手段とそれぞれの特徴

帳票を管理する方法は多岐にわたり、主な手段として以下の5つが挙げられます。

  • 紙媒体によるアナログ管理
  • 自社サーバー(オンプレミス)によるデータ管理
  • クラウドストレージによる共有管理
  • 電子帳票システム(専用ツール)による自動管理
  • 外部の文書保管サービス(倉庫)への委託管理

それぞれの手段にはメリットとデメリットがあるため、自社の規模や業務内容、セキュリティ要件に応じて最適な方法を選択することが重要です。ここでは、上記の管理手段とその特徴を解説します。

紙媒体によるアナログ管理

紙媒体での管理は、特別な機器を介さずに誰でも即座に内容を確認でき、手書きの署名や印影による「証拠能力」を直感的に担保できます。電力が失われた環境やシステム障害時でも閲覧が可能であり、BCP(事業継続計画)の一環として物理的な出力を好む企業も少なくありません。

一方で、物理的な保管スペースの確保や、特定の書類を探し出すための検索コストが膨大になるという運用上の大きな課題を抱えています。紙による管理は一見シンプルですが、規模が大きくなるほど効率性に限界が見えてくる手段と言えるでしょう。

自社サーバー(オンプレミス)によるデータ管理

自社のネットワーク内に専用サーバーを構築して帳票データを保管する手法は、社外への情報流出リスクを最小限に抑えられます。自社の業務フローに合わせてシステムを柔軟にカスタマイズでき、既存の基幹システムとの高度な連携も実現しやすいのが魅力です。

ただし、サーバー本体のメンテナンス費用や、ハードウェアの老朽化に伴う更新コストが発生するため、相応のIT投資予算と専門知識が必要となります。セキュリティを最優先する企業には適した選択肢ですが、運用負荷の高さについては事前によく考慮しておくべきです。

クラウドストレージによる共有管理

クラウドストレージによる共有管理は、インターネット上の外部サーバーに帳票を保存する手段です。テレワーク環境下でも、マルチデバイスから安全にアクセスできる利便性を持ちます。

自社でサーバーを保有する必要がないため初期費用を抑えられ、ストレージ容量の増設も容易なことから、スタートアップから大企業まで幅広く普及している管理方法です。

その反面、通信環境に依存する側面があるため、オフライン時の対応策や、サービス提供元のセキュリティレベルの厳格な評価が不可欠です。

導入のハードルは低いものの、将来的なデータ量の増加や運用ルールなどを見据えたうえで、慎重にベンダー選定を行いましょう。

電子帳票システム(専用ツール)による自動管理

電子帳票システムは、電子帳簿保存法の要件を満たすことに特化した専用ツールであり、タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴の自動保存機能を備えています。

AI-OCR(AI搭載型光学文字認識)を活用して請求書の内容を自動で読み取り、データ化から保管までを一貫して自動化できるため、経理部門の入力工数を大幅に削減できるでしょう。

また、法改正のたびにベンダーがシステムをアップデートしてくれるので、自社で複雑な法解釈を行う手間を省き、コンプライアンスを維持できます。本格的な電子化を目指し、業務の質を底上げしたい企業には、最もおすすめの方法です。

外部の文書保管サービス(倉庫)への委託管理

外部の文書保管サービスを利用した管理方法では、法定保存期間が長く、かつ日常的には参照しない古い紙の帳票類を、セキュリティの強固な外部の専門倉庫に委託して保管します。

都心部の高額なオフィススペースを書類保管のために割く必要がなくなり、空いたスペースを本来の業務に有効活用できる点が大きなメリットです。

一方、書類が必要になった際は取り寄せに数日かかるケースも少なくありません。そのため、管理目録をデジタル化し、どの箱に何が入っているかをすぐに特定できる体制を整えておきましょう。紙管理と電子管理を併用する過渡期の企業にとって、こうした外部サービスの利用は有効な手段です。


帳票管理の電子化が急速に進んでいる社会的背景

近年、帳票管理の電子化は急速に進んでおり、その背景には以下のような社会的要因があります。

  • 電子帳簿保存法の改正による規制緩和と義務化
  • インボイス制度の開始に伴う事務負担の増大
  • 働き方改革の推進とテレワークへの対応

ここでは、電子化が加速しているこれらの背景について解説します。

電子帳簿保存法の改正による規制緩和と義務化

電子帳簿保存法の改正により、紙での保存負担を減らすための要件が緩和される一方で、電子取引データの書面保存が原則禁止されました。

この改正により、法的な強制力が強まったことで、これまでは紙管理を続けていた企業もデジタル化を避けて通れない状況へと変化しています。法改正の目的は企業の経理業務のデジタル化を推進することにあり、これに対応することは法遵守だけでなく生産性向上にもつながるでしょう。

もはや、帳票管理の電子化は「できればやった方がよい」から「やらなければならない」へと変わりつつあります。

インボイス制度の開始に伴う事務負担の増大

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、請求書の形式確認や仕入税額控除の計算が従来よりも複雑になりました。膨大な数の請求書が登録番号を備えているかを手作業で確認するのは困難であり、自動判別が可能な電子システムの需要が急増しています。

電子データでのやり取りを前提とした業務フローをあらかじめ構築しておけば、インボイス対応に伴う経理部門のパンクを防げるでしょう。こうしたインボイス制度への対応は、社内の電子化を推進する絶好の機会とも捉えられます。

働き方改革の推進とテレワークへの対応

従来の紙ベースの帳票管理では、ハンコによる承認や書類の確認のために出社が必要となり、柔軟な働き方の妨げになっていました。帳票を電子化してクラウド上で管理すれば、自宅や外出先からでも承認や閲覧が可能になり、場所を選ばない働き方が実現します。

ペーパーレス化は単なるコスト削減にとどまらず、優秀な人材を確保するための先進的な職場環境づくりという側面も持っています。働き方改革を推進するうえで、帳票の電子化は避けて通れない課題と言えるでしょう。


帳票管理の効率化に繋がる電子化(ペーパーレス化)の方法

帳票の電子化を進めるにあたり、管理の効率につなげるアプローチが欠かせません。場当たり的なデジタル化ではなく、以下の方法をとることが電子化成功の鍵です。

  • 電子帳簿保存法の要件を確認して、社内規定を整備する
  • 既存の紙書類をスキャンして、データ化する運用を検討する
  • インボイス制度に対応したワークフローを構築する

ここでは、上記の具体的な方法を解説します。

電子帳簿保存法の要件を確認して、社内規定を整備する

電子化を始める際は、まずは真実性や可視性の確保など、法律が求める保存要件を自社の運用が満たしているかを確認しなければなりません。どの書類を・いつから・どのシステムを用いて電子保存するかを明確にし、「事務処理規程」として定めたうえで、全社に周知することが重要です。

近年の法改正により、要件の緩和が進んでいるため、常に最新の情報を把握して、無理のない範囲から電子化をスタートさせましょう。社内規定の整備は、適法なペーパーレス化をスムーズに進める土台となる重要なステップです。

既存の紙書類をスキャンして、データ化する運用を検討する

過去に蓄積された膨大な紙の帳票をスキャナ保存することで、保管スペースのコスト削減と検索性の向上を同時に実現できます。スキャナ機材やソフトを導入する際は、解像度やカラー設定、タイムスタンプの付与など、スキャナ保存制度特有の要件をクリアしているかを確認したうえで選定しましょう。

あわせて、原本を廃棄するタイミングについても社内でルール化し、データ移行後のチェック体制を整えることも肝心です。こうした取り組みにより、二重管理の手間を最小限に抑えられます。既存書類のデータ化は、電子化への移行において避けて通れない工程と言えるでしょう。

インボイス制度に対応したワークフローを構築する

適格請求書の保存が義務付けられるインボイス制度下では、受け取った請求書が登録番号付きの正当なものかを自動判別する仕組み作りが有効です。電子取引で受け取った帳票は紙に出力して保存することが原則禁止されているため、最初からデジタルで完結するフローを構築してください。

仕入税額控除を受けるための要件をワークフローに組み込めば、経理担当者の目視によるチェック負担を大幅に削減できるでしょう。インボイス対応を機に、業務フロー全体の見直しを行うのも効果的なアプローチです。


自社に最適な電子帳票システムを選ぶポイント

電子帳票システムは多数のベンダーから提供されており、機能や価格帯、サポート体制はそれぞれ異なります。自社に最適なシステムを選定するためには、主に以下の9つのポイントに着目しましょう。

  • 自社に合った提供形態(クラウド型orオンプレミス型)
  • 既存の会計ソフトや販売管理システムとの連携
  • 中長期的なコストパフォーマンス
  • 電子化したい帳票の種類が網羅されているか
  • 現場の担当者が迷わず入力できる操作性
  • 導入初期〜中長期的なサポート体制
  • 多要素認証やアクセス制限などのセキュリティ強度
  • 将来の法改正にも自動アップデートで対応できるか
  • JIIMA認証済みのサービスか

ここでは、上記のポイントをそれぞれ解説していきます。

自社に合った提供形態(クラウド型orオンプレミス型)

電子帳票システムには、主にクラウド型(SaaS)とオンプレミス型の2つの提供形態があります。それぞれに適した利用シーンは以下のとおりです。

クラウド型(SaaS)
  • 初期費用を抑えて迅速に導入したい場合
  • 常に最新の法改正に対応したバージョンを使いたい場合
オンプレミス型
  • 極めて高いセキュリティ要件が求められる場合
  • 自社の独自業務に合わせた大幅なカスタマイズが必要な場合

導入時の費用だけでなく、将来的なメンテナンスコストや、サーバーの運用管理を自社で行うかベンダーに任せるかという「運用負荷」の視点から、総合的に判断してください。

既存の会計ソフトや販売管理システムとの連携

電子帳票システムを選定する際は、システム単体の機能だけでなく、現在使用している基幹システムとシームレスにデータ連携できるかどうかが、業務効率化の鍵を握ります。

CSV連携だけでなく、API連携(※)が可能なシステムを選べば、入力作業の自動化が進み、転記ミスによるリスクを大きく抑えられるでしょう。全社的なデータ連携が実現することで、営業現場での発注から経理での支払いまでを一気通貫で管理可能で、組織全体の業務スピード向上が期待できます。

※異なるソフトウェアやWebサービス同士を、API(Application Programming Interface)を通じて連携させ、機能やデータを自動的に共有・連動させる仕組み

中長期的なコストパフォーマンス

初期費用や月額料金だけでなく、それによって削減される以下のコストを数値化して、比較しましょう。

  • 郵送代
  • 印紙代
  • 紙代
  • 倉庫保管代

さらに、手入力や検索にかかっていた「人件費(工数)」の削減効果も考慮に入れ、何年で投資回収ができるかをシミュレーションしてください。利用人数や保存する書類枚数に応じて料金が変動する従量課金制の場合は、将来の事業拡大を見越した際の最大コストも見積もっておくと安心です。

電子化したい帳票の種類が網羅されているか

電子帳票システムは、「請求書の受領に特化」「納品書の発行に特化」など、製品ごとに得意分野が異なります。そのため、自社が電子化したい書類すべてに対応しているか、慎重に見極めなければなりません。

将来的に領収書や契約書、見積書などへと電子化の範囲を広げる可能性があるなら、マルチデバイスや多様なフォーマットに対応した拡張性の高い製品が望ましいです。また、現場で使われている特殊なレイアウトの伝票を、そのままの形式で取り込み・出力できるかという「再現性」も重要な選定基準となります。

現場の担当者が迷わず入力できる操作性

どれほど多機能なシステムであっても、操作が複雑すぎると現場に定着しないため、直感的なUIやスマホ対応など、現場での使いやすさを最優先に考えるべきです。

特に、OCR(光学文字認識)機能の精度が高いシステムを選べば、領収書を写真に撮るだけで内容が自動入力され、社員の事務負担を大幅に減らせるでしょう。

無料トライアル期間を活用して、実際の業務フローでテスト運用を行い、現場からのフィードバックを得たうえで正式導入を決断するのが賢明です。

導入初期〜中長期的なサポート体制

単にシステムを導入するだけでなく、電子帳簿保存法に対応するための事務処理規程の作成支援や、業務フローの再構築までをサポートしてくれるかどうかが、重要なポイントとなります。

導入初期のトラブル時に電話やチャットですぐに相談できる体制があるか、FAQやトレーニング動画などのセルフヘルプ環境が充実しているかを事前に確認しましょう。運用開始後の混乱を抑え、システムをスムーズに社内へ定着させるには、こうしたサポートの厚みが欠かせません。

また、将来的に法改正が行われた際に、単なる機能追加だけでなく「実務上どう対応すべきか」のアドバイスを提供してくれるベンダーは、長期的な良きパートナーとなります。

多要素認証やアクセス制限などのセキュリティ強度

帳票には取引先の機密情報が含まれるため、不正ログインを防ぐ多要素認証(MFA)や、IPアドレス制限などの高度なセキュリティ機能が必須です。なかでも「誰が・いつ・どの書類を閲覧・編集したか」を記録する操作ログ保存機能は、内部不正の抑止力となり、ガバナンス強化に直結します。

あわせて、データのバックアップ体制や、万が一のシステム障害時の復旧計画(SLA)が明確に定義されているかも確認しておきましょう。ビジネスの中断リスクを最小化し、常に安定してサービスを利用できるシステムを選定することが大切です。

将来の法改正にも自動アップデートで対応できるか

電子帳簿保存法や消費税法は、今後も改正される可能性がないとは言い切れません。そのため、法改正に合わせて自動的にアップデートされるクラウド型システムは、有力な選択肢の1つと言えるでしょう。

自社開発やオンプレミス型は、法改正のたびに改修費用が発生し、結果としてコストがかさんでしまいます。対して、クラウド型なら保守費用内で常に最新状態を維持できるので、追加費用がかからないのが大きなメリットです。

加えて、ベンダーのサポート体制や、過去の法改正に対する対応スピードの実績を確認することで、長期的に安心して使い続けられるかを見極められます。

JIIMA認証済みのサービスか

JIIMA認証とは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が「電子帳簿保存法の要件を満たしている」と認めたシステムに与えられる認証です。この認証ロゴがあるシステムを選べば、自社で複雑な法的要件を1つずつ精査する手間が省け、法令遵守のリスクを大幅に低減できるでしょう。

税務調査の際にも、JIIMA認証済みのシステムを利用していることは、適正な管理が行われている証左として強い信頼材料になります。


帳票の意味と種類を正しく理解して、適切な管理を徹底しよう!

帳票は企業活動の記録を担う重要な書類であり、「帳簿」と「伝票」の総称として法律で保存が義務付けられています。適切な帳票管理は、税務調査への対応、経営判断の迅速化、社外からの信頼性向上、資金繰りの安定など、企業経営にさまざまなメリットをもたらすでしょう。

保存期間は法人税法で7年、会社法で10年と定められており、起算日のルールにも注意が必要です。近年では電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入により、帳票の電子化が急速に進んでいます。

本記事で解説した内容を参考に、自社に最適な管理方法やシステムを選定し、法令を遵守しながら業務効率化を実現してください。帳票管理の適正化は、企業の持続的な成長を支える重要な基盤となります。


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監修者プロフィール

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内山 智絵

公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー

大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事した後、出産・育児をきっかけに退職。

2021年春に個人で会計事務所を開業し、中小監査法人での監査業務を継続しつつ、起業女性の会計・税務サポートなどを中心に行っている。

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