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OCR帳票とは? 経理業務を効率化する仕組みから活用メリットまで徹底解説

OCR帳票とは? 経理業務を効率化する仕組みから活用メリットまで徹底解説

経理業務において、紙の帳票からデータを入力する作業は多くの時間と労力を要します。こうした課題を解決する技術として注目されているのが「帳票OCR」です。請求書や領収書などの書類を自動でデジタルデータに変換することで、業務効率化とヒューマンエラーの削減を同時に実現できます。

本記事では、「OCR帳票」と「帳票OCR」の違いから、最新のAI-OCRの仕組み、導入メリット、失敗しない選び方について詳しく解説します。


OCR帳票とは?

「OCR帳票」と「帳票OCR」は似た言葉ですが、実は指し示す対象が異なります。

OCR帳票はOCR(光学的文字認識)によって読み取られる請求書や領収書などの「帳票そのもの」を指す一方、帳票OCRとは帳票を読み取るソフトウェアや認識技術のことです。この違いを理解することで、対象となる帳票と必要な機能を整理しやすくなり、自社に適したツールを選定しやすくなります。

ここでは、それぞれの定義とOCRの基本的な仕組み、従来の手入力業務との違いについて詳しく解説します。

OCR帳票:読み取られる側の「紙(物理的なモノ)」

「OCR帳票」とは、OCR装置が文字を正確に読み取れるように設計された、OCR入力専用の定型帳票を指します。ドロップアウトカラーの枠線やタイミングマークなどをあらかじめ配置することで、読み取り位置や文字の認識精度を安定させている点が特徴です。

また、記入枠のサイズや配置、用紙の種類などについても設計ルールが定められており、帳票ごとのばらつきを抑えられます。こうした専用設計により、比較的シンプルなハードウェア構成でも高い認識精度を確保しやすく、大量の定型帳票を扱う現場で長年活用されてきました。

帳票OCR:読み取る側の「ソフトウェア・技術」

「帳票OCR」とは、請求書や納品書などの帳票に記載された情報を読み取り、デジタルデータへ変換するソフトウェアや技術の総称です。特定の専用紙に限定されず、取引先から受け取る一般的な紙書類やPDFファイルからも必要な文字情報を抽出できます。

近年の帳票OCRシステムは、従来の固定レイアウト型にとどまらず、AIを活用して多様な帳票形式に柔軟に対応できる「AI-OCR」へと進化しました。これにより、帳票レイアウトの変更や取引先ごとの差異にも対応しやすくなり、経理業務の効率化をさらに加速させています。

OCRの仕組み

OCRの仕組みは、視覚情報を解析して文字コードへ変換する「多段階のデータ処理」によって構成されています。最初に行うのが、画像を白と黒の2色に分ける「二値化」です。ノイズを除去し、文字の輪郭を明確にすることで、後続の認識処理が安定します。

次に、文章のまとまりや行を特定し、1文字ずつに切り出していく工程へ進みます。切り出した文字は、既存のフォントパターンとの照合や、線の方向・交差点といった「特徴抽出」によって、どの文字かの特定が可能です。

最新のAI-OCRでは、ニューラルネットワーク(CNN)を用い、前後の文脈から似た形の文字を正しく判別することで、高い認識精度を実現しています。

従来の手入力業務とOCR活用の違い

従来の手入力業務とOCR活用の違いは、「人の注意力」に依存するか「システムの自動化」に任せるかという点です。手入力では、紙の帳票を目視で確認しながら入力するため、処理枚数が増えるほど作業時間も膨らみます。

また、疲れによる打ち間違いや桁ズレなどのミスが避けられず、確認作業のために二重・三重のチェックが必要になるケースも少なくありません。

一方、OCRを活用すれば、帳票をスキャンするだけでデータ化が可能です。AI-OCRなら非定型帳票にも対応できるため、入力作業の短縮とミス削減を同時に実現できます。


従来のOCRと最新「AI-OCR」の違いと、それぞれの特徴

OCR技術は、従来のルールベース型から、AIを活用した高精度な「AI-OCR」へと進化してきました。

ここでは、従来型OCRとAI-OCRの違いを解説し、導入時の検討ポイントをお伝えしていきます。 それぞれの特徴を理解することで、自社の業務内容や帳票の種類に適したシステムを選定しやすくなるでしょう。

従来のOCRの特徴:ルールベースの「従来型OCR」

「従来型OCR」は、あらかじめ設定したルールやテンプレートに従って処理を行うシステムです。帳票の「どの位置(座標)」に「何が」書かれているかを事前に定義する必要があり、例えば「左上から〇cm、横に△cmの範囲を『日付』として読み取る」という固定のテンプレートを作成します。

この仕組みは、レイアウトが常に同じ定型帳票では安定した処理が可能です。一方で、レイアウトがわずかにずれただけでも正しくデータを抽出できなくなる場合があり、柔軟性に欠ける点がデメリットとされてきました。

また、あらかじめ登録されたフォントパターンと照合して文字を識別するため、決まったフォントの活字や数字のみの伝票などで高い処理スピードを発揮します。反面、「手書き文字」や、背景に模様がある複雑なデザインの帳票、特殊なフォントの読み取りは苦手としていました。 さらに、文字を形(パターン)として捉えるため、前後の文脈から誤字を推測することはできません。例えば「1(イチ)」と「l(エル)」など、形が似ている文字の判別ミスが起きやすく、あくまで「登録されたルール通り」にしか動けないため、イレギュラーな帳票には人間による細かな設定変更が必要になります。

専用のスキャナ装置も必要なため、導入費やメンテナンスコストもかかり、フォーマットが変わるたびに設定をやり直す必要がありました。そのため、多種多様な取引先から届く帳票の処理には膨大な工数がかかるという課題も抱えていたのです。

AI-OCRの特徴:深層学習で識字率が飛躍した「AI-OCR」の革新性を理解する

AI-OCRは、深層学習(ディープラーニング)を用いることで、従来の「ルールに従うだけの機械」から「自ら文脈を理解し学習するシステム」へと進化した技術です。

1文字ずつの形だけで判断するのではなく、前後の単語や文章の流れ(文脈)まで考慮して文字を推測するため、従来は認識が難しかった手書き文字やくせ字、印字が不鮮明な帳票でも高精度に読み取れます。その結果、目視による確認や手入力に頼る作業を削減可能で、入力ミスの防止や処理スピードの向上が期待できます。

また、AI-OCRはレイアウトフリー(非定型帳票)に対応している点も強みです。従来型OCRでは、読み取り位置を事前にテンプレートとして設定する必要があり、帳票の種類が増えるたびに設定作業の手間が発生していました。

AI-OCRでは、AIが帳票内の「日付」や「金額」といった項目を自動で探し出し、意味を理解して抽出することで、取引先ごとにフォーマットが異なる請求書などの処理がスムーズになります。

さらに、AI-OCRは継続的な学習能力を持っており、読み取りミスを人間が修正すると、その結果をAIが学習して次回の精度に反映させます。使えば使うほど自社特有の帳票に最適化され、賢くなっていくのがAI-OCRの特徴です。


経理DXにおいて、帳票OCRの導入が急がれる背景

経理DX(デジタルトランスフォーメーション)が求められる現在、帳票OCRの導入は多くの企業にとって避けて通れない課題となっています。

ここでは、帳票OCRの導入が急がれる要因である「法改正への対応」「深刻な労働力不足」について解説します。

導入の背景を整理しておくことで、ツール選定のミスマッチを防ぎ、スムーズな業務改革につなげることが可能です。

電子帳簿保存法の改正とインボイス制度の開始

電子帳簿保存法の改正とインボイス制度の開始は、経理DXを加速させる大きな要因の1つです。特に電子帳簿保存法では、電子取引データを紙で保存することが原則として認められなくなり、検索要件を満たした形でのデータ保存が義務化されました。

また、インボイス制度では適格請求書発行事業者の登録番号確認という膨大な照合業務が発生しています。こうした煩雑な法対応を、限られた人員で正確かつ効率的に処理するには、OCRを活用した「帳票の読み取り・データ化の自動化」が欠かせない仕組みとなります。

「2025年の崖」に象徴される生産性向上の必要性

少子高齢化で経理人材の確保が困難になるなか、アナログな手入力業務を続けていては、企業全体のDXが停滞してしまいます。

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」では、レガシーシステムの刷新が進まない場合、年間最大12兆円規模の経済損失が生じると指摘されており、業務効率化は避けて通れない課題です。

OCRを活用して単純作業をデジタル化する取り組みは、経理業務の省力化だけでなく、テレワークの推進や意思決定スピードの向上にも寄与します。結果として、組織全体の競争力を高める第一歩になるでしょう。


帳票OCRの主な機能

帳票OCRツールには、単なる文字認識にとどまらない、さまざまな機能が搭載されています。

ここでは、帳票OCRの主要な機能について詳しく解説します。

  • 特定項目の指定による読み取り
  • AIによる自動補正・自動判別
  • 読み取ったデータのマスタデータとの照合
  • 誤認識の自動修正・学習
  • 用途に合わせた適切なデータ形式での出力
  • RPA・APIによるデータ連携

特定項目の指定による読み取り

読取範囲設定機能は、帳票内の特定エリアをあらかじめ指定し、必要なデータのみを正確に抽出できるOCRの機能です。決まった形式の請求書や伝票において、日付や金額、取引先名などの重要な項目をピンポイントで読み取ることができます。

さらに、読み取り対象を必要な範囲に限定することで、OCR処理のスピードが向上し、大量の帳票を短時間で処理できる点も大きなメリットです。帳票全体を読み取る場合と比べて、不要な文字列を誤って認識するリスクが抑えられ、データ修正や再チェックにかかる工数も削減できます。

AIによる自動補正・自動判別

自動セグメンテーション機能とは、AIが帳票のレイアウトを解析し、どこに何が書かれているかを自動で判別する機能です。請求書や納品書など、取引先ごとにフォーマットが異なる帳票であっても、人手による事前設定を行わずに項目を認識できるため、運用負荷の軽減につながります。

この機能を活用することで、非定型帳票が大量に届く経理現場においても、テンプレート作成やレイアウト調整の負担を抑えつつ、効率的なデータ化を実現できます。

読み取ったデータのマスタデータとの照合

OCRで読み取ったデータを基幹システムのマスタデータと照合することで、帳票処理の精度を向上させることが可能です。文字のかすれや読み取り誤差が発生した場合でも、マスタ情報と照らし合わせることで、正しいコードや正式名称へ自動補正し、データの正規化を実現できます。

さらに、照合結果が一致しないケースのみをエラーとして通知する仕組みのため、すべてのデータを人手で確認する必要はありません。確認作業を最小限に抑えながらデータ登録ができます。

誤認識の自動修正・学習

OCRでの読み取り結果に誤りがあった場合、担当者が修正した内容を「正解データ」として蓄積し、AIが学習していく機能があります。修正履歴をもとに、次回以降は同じ帳票レイアウトや同種の帳票でも、同様の誤認識が起こりにくくなるよう、判定ロジックが改善される仕組みです。

こうした自動学習の仕組みにより、すべてのデータを人手で確認する必要がなくなり、修正が必要な箇所だけをチェックする「例外処理中心」の運用へ移行しやすくなります。

用途に合わせた適切なデータ形式での出力

紙やPDFの帳票から読み取った文字情報を、そのままのテキストではなく、業務システムで扱いやすいデータ形式に整えて出力する機能があります。例えば、請求書番号・取引先名・日付・金額といった項目ごとにデータを整理し、CSVやTXTなどのファイル形式で出力可能です。

こうしたデータ形式の整備により、会計ソフトや販売管理システムへの取り込みがスムーズになり、後工程の作業負荷を軽減できます。

RPA・APIによるデータ連携

帳票OCRで読み取ったデータは、RPAやAPIを使って会計ソフトや業務システムへ自動連携することが可能です。これにより、データの転記や登録作業を人手で行う必要が減り、経理業務の効率化を進められます。

RPA連携は、従来人が画面上で行っていた操作をそのまま自動化する仕組みで、既存システムを変更せずに導入しやすい点が特徴です。一方、API連携はシステム同士が直接データを受け渡す仕組みで、大量の帳票を安定して処理したい場合や処理の即時性を重視する場合に向いています。


OCRでデータ化できる主な帳票の種類と活用シーン

帳票OCRは、経理業務で扱うさまざまな種類の書類に対応しています。

ここでは、OCRでデータ化できる主な帳票の種類と具体的な活用シーンについて解説します。

  • 請求書:データ化して、支払管理と仕訳入力を自動化する
  • 領収書:レシートを読み取って、経費精算の申請漏れを防止する
  • 納品書:納品書をスキャンして、突合作業をスピードアップさせる
  • 注文書:振込伝票など、取引先ごとに異なる形式の帳票に対応する
  • 手書きの支払伝票やアンケート:AI-OCRで高精度にテキスト化する

請求書:データ化して、支払管理と仕訳入力を自動化する

請求書に記載された発行日、支払期限、合計金額などの情報を自動抽出し、支払管理表や仕訳データを生成できる機能があります。取引先ごとにフォーマットが異なる請求書であっても、AI-OCRが各項目を正確に特定するため、入力ミスを抑えたまま支払承認フローに回すことが可能です。

この仕組みを活用することで、大量の請求書処理に追われる月末の業務ピークを緩和し、経理担当者の残業削減と心理的負担の軽減が期待できます。

領収書:レシートを読み取って、経費精算の申請漏れを防止する

スマートフォンで撮影した領収書やレシートから、日付、店名、金額を瞬時に読み取り、経費精算システムへ連携できます。従業員が手作業で行っていた経費入力の負担を減らすことで、申請スピードが向上し、月締めの遅延も防ぎやすくなります。

さらに、二重申請のチェックや登録済みデータの自動照合もでき、経理側の負担を軽減することが可能です。結果として、経費精算業務全体の効率化と精度向上につながります。

納品書:納品書をスキャンして、突合作業をスピードアップさせる

納品書に記載された品目や数量をスキャンし、発注データや検収データと自動で突き合わせることで、企業の在庫管理の精度を高められます。行数が多い明細データも一括で取り込めるため、目視で一行ずつ照合する作業から解放され、検収業務を効率化できます。

さらに、入荷現場でスキャンして即座にデータ化することで、経理部門への書類到着を待たずに原価の把握が可能です。これにより、経理担当者の確認作業が軽減されるだけでなく、企業全体の在庫管理やコスト管理の精度向上にも寄与します。

注文書:振込伝票など、取引先ごとに異なる形式の帳票に対応する

多種多様なフォーマットで届く注文書をOCRでデータ化することで、従来は担当者が手作業で行っていた受注システムへの登録作業を自動化できます。振込伝票などの銀行書類も同様にデータ化すれば、入金確認や消込業務の自動化を促進し、企業の債権管理の精度を高められます。

さらに、FAXや郵送で届く紙の注文情報も即座にデジタル化できるため、経理部門だけでなく営業部門や物流部門を含めた全社的な情報共有が可能です。

手書きの支払伝票やアンケート:AI-OCRで高精度にテキスト化する

AI-OCRを導入すれば、従来は読み取りが難しかった癖のある手書き文字も、高精度でテキストデータに変換でき、社内システムや分析にそのまま活用できます。例えば、紙で保管されていた古い手書き伝票や顧客からのアンケート結果をデジタル化することで、従来は埋もれていた情報も分析可能です。

さらに、手書き情報の入力代行を外部に委託していた場合でも、そのコストを削減でき、社内で迅速かつ安全にデータ処理を行う体制を整えられます。


経理部門が帳票OCRを導入することで得られるメリット

帳票OCRの導入により、経理部門はさまざまなメリットを享受できます。

ここでは、経理部門が帳票OCRを導入することで得られるメリットを詳しく解説します。

  • 膨大なデータ入力作業を削減し、高付加価値な業務の時間を創出する
  • 転記ミスやタイポなどのヒューマンエラーを物理的に排除する
  • 法令対応の自動化:電帳法・インボイス制度への対応
  • 情報資産の活用:全文検索による情報アクセスの高速化
  • 働き方の変革:保管コスト削減とテレワークの実現

膨大なデータ入力作業を削減し、高付加価値な業務の時間を創出する

OCRの最大のメリットは、単純なデータ入力に費やされていた時間を大幅に削減し、経理担当者が本来注力すべき「高付加価値業務」へリソースをシフトできる点です。

入力作業が自動化されることで、財務分析やキャッシュフローの管理、経営への戦略的アドバイスといった専門性の高い業務に集中できます。

さらに、単純作業の繰り返しによる疲弊を防ぎ、キャリア形成に役立つスキルの習得を支援することで、従業員のモチベーション維持にも貢献します。

転記ミスやタイポなどのヒューマンエラーを物理的に排除する

人の手による入力作業では、どうしても打ち間違いや見落としが発生してしまいます。しかし、OCRを活用すれば、システムが正確にデータを読み取り、数字の桁違いやタイポを物理的に排除できます。

その結果、データの信頼性が飛躍的に向上し、誤送金や決算ミスといった致命的なリスクを事前に防ぐことが可能です。

読み取りデータに不整合がある場合はシステムが即座に警告を発するため、二重・三重の目視チェックが不要になり、検収作業全体の工数が削減されます。

法令対応の自動化:電帳法・インボイス制度への対応

最新のOCRシステムは、複雑化する法的要件を効率的にクリアするための機能を備えており、コンプライアンス対応を大幅に簡略化します。読み取った「日付・金額・取引先」がそのまま電子帳簿保存法の検索項目として紐付けられるため、法令遵守の手間がかかりません。

インボイス制度における登録番号の照合を自動で行う製品もあり、手動での確認作業を最小限に抑えられます。さらに、必要な書類を即座に出力・提示できるため、税務調査対応にかかる工数や心理的負担を軽減することも可能です。

情報資産の活用:全文検索による情報アクセスの高速化

帳票をデジタルデータとして管理することで、経理部門に蓄積された「情報の検索性」が劇的に向上し、必要な情報へ瞬時にアクセスできます。過去の取引履歴を確認する際も、倉庫やキャビネットから紙を探す手間を省き、デスク上で数秒以内に目的の帳票を見つけ出せるでしょう。

取引先名だけでなく、備考欄の内容まで検索対象にできるため、特定のプロジェクトに関連する支出なども容易に追跡が可能です。経営陣からの急な問い合わせに対しても、客観的データを即座に提示できるため、社内での信頼向上にもつながります。

働き方の変革:保管コスト削減とテレワークの実現

「紙」という物理的な制約をなくすことで、コスト削減のみならず、場所にとらわれない柔軟な働き方を実現する基盤が整います。オフィス内のスペース確保や外部倉庫への保管料といった固定費を抑えられるため、企業全体のコスト削減にも有効です。

書類がクラウド上で管理されていれば、自宅からでも承認や処理が可能になり、経理部門の働き方改革を強力に後押しします。災害などでオフィスが被害を受けても、データが安全なサーバー上に保護されているため、迅速に業務を再開できる点もポイントです。


自社に最適な帳票OCRシステムを選ぶための比較ポイント

帳票OCRシステムは製品ごとに特徴が異なるため、自社の業務要件に合ったツールを選定することが導入成功の鍵となります。

ここでは、自社に最適な帳票OCRシステムを選ぶための比較ポイントについて詳しく解説します。

  • 自社が扱う帳票のレイアウトへの対応を検証する
  • 現場の担当者がマニュアルなしで直感的に操作できる画面かを検証する
  • 読み取りエラーの修正画面の使いやすさをチェックする
  • 投資対効果(ROI)を算出し、削減できる人件費と比較して判断する
  • クラウド型とオンプレミス型の違いをセキュリティとコスト面で選定する
  • 既存の会計ソフトやERPとCSV・APIでスムーズに連携できるかを調べる

自社が扱う帳票のレイアウトへの対応を検証する

第一に、自社の取引先が特定の数社でフォーマットが固定されているのか、あるいは多種多様な形式が届くのかをまず分析しましょう。この情報を基に、特定のフォーマットに強い「OCR」と、レイアウトを問わない「AI-OCR」のどちらが自社にとって費用対効果の高い選択肢となるかを判断できます。

導入を検討しているOCRツールが、自社で使用している複雑な帳票をどの程度正確に読み取れるか、デモや試用を通じて必ず検証するようにしてください。

現場の担当者がマニュアルなしで直感的に操作できる画面かを検証する

画面が見やすく、直感的に操作できるUIであるかどうかは、現場での業務効率やツールの定着度に大きく影響する要素です。いくら多機能でも、操作が複雑すぎる場合は、現場への定着が進まず、最終的に従来の手作業に戻ってしまう可能性があります。

特に、エラー箇所の修正作業がマウス操作だけで完結できるなど、現場担当者がストレスなく作業できる操作性が備わっているかを確認しましょう。直感的な操作性は、教育コストの削減やトレーニング時間の短縮にもつながります。

読み取りエラーの修正画面の使いやすさをチェックする

OCRを効果的に活用するためのポイントは、読み取りエラーの修正を迅速かつ簡単に行えるかどうかです。そのため、修正画面のレイアウトや検索のしやすさは、導入前に比較しておく必要があります。

画像と読み取り結果が上下左右に並んで表示され、視線の移動を最小限に抑えながら確認できる設計であるかを確認しましょう。

さらに、キーボードショートカットの充実や一括修正機能など、大量のデータを効率よくさばくための工夫があるかをチェックすることが大切です。

投資対効果(ROI)を算出し、削減できる人件費と比較して判断する

OCRシステムを導入する際は、月額利用料と削減できる作業時間を人件費換算で比較し、どのタイミングで投資を回収できるかを試算しましょう。入力工数だけでなく、チェック時間の短縮やミスによる損失回避、保管コストの削減など、付随するプラス効果も加味して判断してください。

まずは一部の業務でスモールスタートとして導入し、実際に得られた効果を検証してから、全社展開の予算を決定する手法も有効です。こうすることで、過剰投資を避けつつ、ROIの見える化を図れます。

クラウド型とオンプレミス型の違いをセキュリティとコスト面で選定する

OCRシステムの導入にあたって、クラウド型とオンプレミス型のどちらが自社に適しているかを比較しましょう。初期費用を抑えて手軽に運用を開始したい場合はクラウド型が適しており、自社独自のセキュリティ要件が厳しい場合はオンプレミス型が有力な選択肢になります。

クラウド型は法改正に伴うシステムアップデートが自動で行われるため、最新の税制対応を維持しやすい点がメリットです。一方、オンプレミス型は自社でサーバーを保守する必要があるため、運用リソースや管理体制の確保が前提となります。

既存の会計ソフトやERPとCSV・APIでスムーズに連携できるかを調べる

導入前に、OCRでデータ化した情報を、普段使っている会計ソフトや基幹システムに手作業なしで取り込めるかを確認しましょう。連携用のデータフォーマットを自由に変更できるか、あるいはAPIを使った自動連携に対応しているかも技術的に評価してください。

システム連携の相性が悪い場合、手作業でファイルを修正する必要が生じ、OCR導入による効率化効果が大幅に減少してしまいます。そのため、導入前にテスト環境で実際に連携動作を検証することを推奨します。


帳票OCRツールの導入事例

帳票OCRツールは、様々な企業で導入され、大きな成果を上げています。

ここでは、帳票OCRツールを導入して業務効率化に成功した事例をご紹介します。

  • 請求処理業務を500時間削減
  • 「約40名→約5名」へ入力作業を省人化
  • 約10拠点で「合計約5,000時間/年」の入力時間を削減

請求処理業務を500時間削減

A社では、毎月発生する膨大な請求書の処理にAI-OCRを導入しました。

導入前は、取引先ごとに異なるフォーマットの請求書を、担当者が目視で確認しながら手入力しており、入力ミスや原本管理の工数が課題となっていたのです。導入後は、AI-OCRが請求書の項目(日付、金額、取引先など)を自動抽出し、会計システムと連動するようになりました。

これにより、月あたり約500時間もの業務時間を削減することに成功しました。さらに、原本保管の手間やスペースも不要となり、ペーパーレス化も実現しています。

「約40名→約5名」へ入力作業を省人化

B社では、購買品の申込書などの手書き帳票をAI-OCRでデータ化する取り組みにより、業務効率を改善しています。

導入前は、手書きの申込書が大量に発生し、それをデータ化するために30名以上の人員を投入して手入力を行っていました。導入後は、高精度なAI-OCRにより手書き文字の認識率が向上したことで、入力作業の省人化が加速しています。

約40名がかりで対応していた業務が約5人で完結でき、人件費の削減と業務集約を実現しました。

約10拠点で「合計約5,000時間/年」の入力時間を削減

C社では、全国約10拠点にAI-OCRを導入し、手入力によるFAX注文書のデータ化業務を自動化しました。

導入前は、拠点ごとに届くFAX注文書を手入力しており、職員の大きな負担となっていました。AI-OCRを導入したことで、フォーマットが異なる注文書も高精度に自動認識され、年間約5,000時間の入力時間削減に成功しています。

単純作業から解放されたことで、従業員は顧客対応や提案営業など「人にしかできない業務」に時間を振り向けられ、業務の付加価値向上に注力できています。


帳票OCRを導入・運用する際の注意点とデメリット

帳票OCRは多くのメリットをもたらしますが、導入・運用においては注意すべき点もあります。

ここでは、帳票OCRを導入・運用する際の注意点について解説します。

  • 認識精度100%は不可能だと認識し、「目視確認」をフローに組み込む
  • システムの操作習得にかかる学習コストを計算しておく
  • データ化を前提とした新しい業務フローへの刷新を検討する

認識精度100%は不可能だと認識し、「目視確認」をフローに組み込む

最新のAI-OCRであっても識字率が100%に達することはないため、最終的なデータの正確性は人間が保証する必要があります。「OCRが間違える」ことを前提に、読み取り結果を修正・確認する工程を必ず業務フローに組み込んでおくことが重要です。

特に重要な数値や項目は、複数人によるダブルチェックなどルール化することで、事故や誤処理のリスクを大幅に抑えられます。印字が薄い、背景に網掛けがある、文字が重なっている場合では、読み取り精度が低下する可能性があることも理解しましょう。

さらに、取引先に鮮明な印字の書類を依頼したり、スキャン解像度を上げるなどの運用上の工夫で精度の低下を補えます。どうしても読み取れない帳票については、潔く手入力に切り替える例外処理ルールを事前に決めておくことも、安定した運用のために欠かせません。

システムの操作習得にかかる学習コストを計算しておく

システムを使い始める際は、帳票フォーマットの設定やマスタ連携の構築など、一定のセットアップ時間と労力がかかります。現場の担当者が新しいツールの操作に慣れるまでの期間は、一時的に業務効率が下がる可能性があることも考慮して計画を立てましょう。

円滑な立ち上げを実現するには、マニュアルの整備や社内研修の実施も欠かせません。これらの教育コストを予算に組み込み、スケジュールに反映させておくことが成功のポイントです。

データ化を前提とした新しい業務フローへの刷新を検討する

単に現在の作業をOCRに置き換えるだけでなく、スキャンタイミングや承認ルート自体の見直しを行うことが、効果を最大化するポイントです。

例えば、紙の回覧やハンコ文化など従来の慣習が残っていると、せっかくのデジタル化のメリットが十分に活かされない場合もあります。

「紙をなくす」という明確な目標を掲げ、全社的にデジタルワークフローへ移行するための強力なリーダーシップが必要です。加えて、操作マニュアルや研修、運用ルールの整備を同時に進めることで、現場への浸透がスムーズになります。


帳票OCRの導入を成功させるための具体的なステップ

帳票OCRの導入を成功させるためには、計画的なステップを踏むことが重要です。

ここでは、帳票OCRの導入を成功に導く具体的なステップを詳しく解説します。

  • 特定の部門や特定の帳票に絞って、スモールスタートで導入する
  • スキャンから承認、保管までの運用ガイドラインを明確に定める
  • 現場のリーダーからメリットを伝え、社内の抵抗感を払拭する
  • 定期的に識字率と削減時間を測定して、システム設定を微調整する

特定の部門や特定の帳票に絞って、スモールスタートで導入する

いきなり全社の全帳票を対象にせず、まずは処理件数が多く効果を実感しやすい「請求書」や「領収書」といった特定の帳票から限定的に導入を開始しましょう。一部の部署で成功事例(クイックウィン)を作ることで、他部署への展開時に協力を得やすくなり、プロジェクト全体の失敗を防げます。

また、小規模で運用する過程で自社固有の課題や注意点を明確にし、本格展開前にルールやフローを微調整しておくことで、スムーズな全社導入が可能です。

スキャンから承認、保管までの運用ガイドラインを明確に定める

OCR導入後の運用を円滑に進めるには、「誰がいつスキャンし、誰がデータを修正し、どこで原本を保管するのか」といった一連の作業フローを明文化し、社内で共有することが欠かせません。

特に電子帳簿保存法に対応した運用を行うために、タイムスタンプの付与タイミングや訂正削除の履歴管理などのルールを徹底しましょう。

さらに、想定外のトラブルやイレギュラー対応のための問い合わせ先、システム障害時の代替フローもあらかじめ設定しておくと、現場の混乱や業務停滞を未然に防げます。

現場のリーダーからメリットを伝え、社内の抵抗感を払拭する

「仕事が奪われるのではないか」という不安や、「新しい操作は面倒」という抵抗感は、OCR導入の現場でよく見られる課題です。こうした懸念に対しては、現場の負担が具体的にどのように軽減されるのかを具体的に説明しましょう。

特に現場のキーマンをプロジェクトに巻き込み、実際にツールを操作してもらうことで、操作性や使いやすさに関する意見を吸い上げ、改善に反映させられます。

デジタル化によって削減された時間をどのように有効活用するかというポジティブなビジョンを、部全体で共有することが重要です。

定期的に識字率と削減時間を測定して、システム設定を微調整する

OCR導入は一度設定して終わりではなく、継続的な運用が重要です。毎月どの程度の読み取り精度が出ているか、またどれだけ作業時間が削減できているかを数値で把握し、効果をモニタリングしましょう。

誤認識が多い特定の帳票については、読取設定を微調整したり、AIの学習を促したりすることで継続的に精度を高めていきます。

現場からの改善要望を収集し、システムベンダーと連携して機能を最適化していくことが、長期間活用し続けるためのポイントです。


帳票OCRの活用で、経理部門の生産性を最大化しよう

帳票OCRの導入は、単なる入力の自動化にとどまらず、経理部門全体の働き方を根本から変えるDXの第一歩となります。正確なデータを即座に利用できるようになるため、経営判断を支える戦略的な組織へと進化するための強力なツールとして活用可能です。

また、法規制対応や働き方改革を好機と捉え、OCRを賢く活用すれば、ヒューマンエラーの削減と高付加価値業務への注力が両立できます。

本記事で解説した選び方のポイントや導入ステップを参考に、自社に最適な帳票OCRシステムを導入し、経理部門の生産性を最大化していきましょう。


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