帳票のペーパーレス化の進め方ガイド|電子帳簿保存法への対応と導入メリットを解説
帳票のペーパーレス化は、単なるコスト削減策にとどまらず、企業の競争力を高めるための重要な取り組みです。電子帳簿保存法の改正により電子取引データの保存が義務化され、今や全ての事業者がデジタル対応を迫られる時代になりました。
紙の帳票管理には、印刷・郵送コスト、保管スペースの確保、検索の手間など、業務上の負担となる課題が多く存在します。これらの課題を解決し、バックオフィス業務のDXを推進するためには、計画的なペーパーレス化を進めることが大切です。
本記事では、帳票のペーパーレス化が求められる背景から、具体的な進め方、システム選定のポイント、さらには業界別の成功事例まで、網羅的に解説します。法改正に伴い業務効率化を図りたい経理担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
帳票のペーパーレス化とは?
帳票のペーパーレス化とは、見積書や請求書などの各種書類を電子データとして作成・保存・管理することです。対象となる書類は幅広く、仕訳帳や総勘定元帳といった会計帳簿から、作業報告書、日報、伝票まで含まれます。
また、取引先から受け取る領収書や契約書などのビジネス文書もペーパーレス化の範囲に含まれます。一方で、免許証や許可証といった重要書類は、ほかの法律によって原本の携帯や保管が義務付けられている場合があり、帳票と同様のプロセスで破棄できないケースがある点に注意が必要です。
ペーパーレス化した書類は、PCやスマートフォンから場所を選ばずに内容の入力・申請が行えるようになります。そのため、紙媒体の管理と比較して社内の情報共有が円滑になり、バックオフィス業務のDXを推進する基盤作りにつながります。
帳票のペーパーレス化の対象となる書類は、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 請求書
- 見積書
- 納品書
- 発注書
- 領収書
- 入金・出金伝票
- 会計帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)
- 決算書類(貸借対照表・損益計算書など)
帳票のペーパーレス化が進められている理由
帳票のペーパーレス化は、法改正に伴う義務的な側面と、業務効率化という戦略的な側面の両方から推進されています。特に電子帳簿保存法の改正をきっかけに、多くの企業がデジタル化へと舵を切り始めました。
ここでは、企業がペーパーレス化に取り組む9つの主要な理由について詳しく解説します。自社の課題と照らし合わせながら、導入の必要性を検討する際の参考にしてください。
(1)電子帳簿保存法に対応するため
電子帳簿保存法の改正によって、電子取引データの書面での出力・保存が原則として禁止されたため、企業規模を問わず、全ての事業者でペーパーレス化が求められるようになりました。2024年1月以降、電子メール等で受領した請求書は、電子データのまま保存しなければなりません。
電子帳簿保存法で定められた要件を満たすシステムを導入すれば、税務調査での書類不備の指摘や重加算税の発生、青色申告の承認取り消しといった経営上の重大なリスクを回避できます。こうしたコンプライアンス違反は企業の社会的信用を大きく損なうことに直結するため、適切な対策が必要です。
また、タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の管理といった保存要件を満たすシステムの機能は、社内の不正防止や内部統制の強化にも役立ちます。さらに適格請求書(インボイス)も電子帳簿保存法の対象となるため、インボイス制度にも対応しやすくなるメリットがあります。
(2)環境への負荷を減らすため
ペーパーレス化による紙資源の節約は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成や環境負荷の低減に大きく貢献します。企業の社会的責任への関心が高まるなか、環境に配慮した事業運営は避けて通れないテーマと言えるでしょう。
帳票発行で消費される大量のコピー用紙やトナーを削減することは、森林資源の保護に加え、製造・配送プロセスで発生するCO2排出量の削減にも影響します。こうした取り組みは、サプライチェーン全体での環境負荷低減という観点でも意義があります。
また、環境保護に真摯に取り組む姿勢を社内外へ明示することは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、投資家や顧客からの評価・信頼性を高め、中長期的なブランド価値の向上にもつながります。
(3)印刷費用や郵送代を削減して、コストダウンを図るため
帳票を電子化することで、紙媒体で発生していた紙代やインク代、封筒代といった消耗品のコストを大幅に削減することが可能になります。一つひとつは小さなコストでも、年間で積み上げると相当な金額になるケースは珍しくありません。
請求書の郵送にかかる切手代や宅配便の運賃も不要となるため、郵送する件数が多い企業では、年間で数万円~数十万円単位のコストカットも可能です。取引先が多い卸売業や製造業では、特に大きな削減効果が期待できるでしょう。
印刷や封入、投函といった手作業の工数も削減できるため、経理部門の負担を軽減し、より付加価値の高い業務にリソースを割けるようになります。
(4)物理的な保管スペースを減らして、オフィスを有効活用するため
帳票をデータ化してサーバーやクラウドに保存すれば、社内の数年~数十年分の膨大な書類を保管する書庫が不要になります。書類の保管スペースを削減し、オフィス環境を整えることは、従業員の働きやすさ向上にもつながります。
都心部などの賃料が高いオフィスであれば、書類保管で使用していたスペースをデスクや会議室として活用できるようになるため、オフィス環境も大幅に改善できます。1坪あたりの賃料が高いエリアだからこそ、スペース削減の経済的効果は大きいと言えます。
過去の書類を外部の倉庫へ預けている場合、預け入れ費用や取り寄せにかかる手数料、管理工数をゼロにできるメリットも非常に大きいです。また、火災や水害などの災害発生時に、書類が消失するリスクを減らすことにもつながります。
(5)セキュリティ強化のため
ペーパーレス化は、セキュリティ強化においても重要な役割を果たします。紙の帳票を管理する場合、保管庫に鍵をかけたり、持ち出し時のルールを設定していても、人の手による運用である以上、情報の持ち出しといったリスクを抑え続けるのは容易ではありません。
一方で、電子化された帳票はアクセス権限や閲覧権限を設定することで、不正な持ち出しやデータの改ざん、紛失等を手軽に防ぐことが可能です。「誰がいつアクセスしたか」という履歴も残るため、内部統制の観点からも有効といえます。
万が一データが消えてしまった場合でも、バックアップを取っておけば復元できるのも大きなポイントです。
(6)書類の検索性を向上させて、業務効率を高めるため
ペーパーレス化された帳票は、日付や取引先名などのキーワードで検索できるため、過去の取引内容を確認する時間を大幅に短縮できます。
紙の帳票では数十分かかっていた古い領収書や契約書の探索が、デジタル化によって数秒で完了し、問い合わせ対応のスピードが大幅に向上します。これは顧客満足度の向上にもつながる、大きなメリットです。
また、検索時間の短縮は税務調査時の対応や、社内の監査、決算業務などの効率化にもつながります。
(7)書類上のミスを減らすため
紙媒体で帳票を作成する場合、記入漏れや誤字などに気付きにくく、ミスを見つけても修正がしにくいという欠点があります。修正液や訂正印を使った対応は、見た目としても美しくありません。
ペーパーレス化された帳票なら、システムに基づいた正確な入力ができ、ミスがあった際もすぐに修正することが可能です。入力時にエラーチェックが働くシステムであれば、ミスの発生そのものも抑制できるでしょう。
また、宛名など繰り返し使用する項目は、過去のデータからそのまま転記ができるため、誤入力を未然に防ぐことができます。
(8)承認フローを電子化して、決裁までの時間を短縮するため
ワークフローシステムと連携して帳票を電子化すれば、紙を回覧する物理的な手間がなくなり、承認者が外出先からでも決裁を行えるようになります。これにより、「承認待ち」で業務が滞るような事態を大幅に減らせるでしょう。
承認が止まっている箇所をシステム上で把握できるため、さまざまな関係者へ確認依頼する手間が省け、決裁完了までのスピードを大幅に短縮できます。
また、電子印鑑や電子署名を活用することで、押印のためだけに出社する無駄も廃止でき、より柔軟な働き方が実現します。
(9)テレワーク環境を整備して、柔軟な働き方を実現するため
帳票がクラウド上で管理されていれば、経理担当者は場所を問わず業務を行えるため、在宅でのテレワークも可能になります。働き方改革を推進するうえで、ペーパーレス化は欠かせない基盤と言えるでしょう。
これにより、育児や介護といった事情を持つ従業員でも、自宅から帳票発行や入金確認の業務を行えるようになるため、優秀な人材の離職防止や採用力の強化につながります。多様な働き方を認める企業は、求職者からの評価も高まる傾向にあります。
帳票のペーパーレス化を実現する流れ
帳票のペーパーレス化は、帳票作成ツールやOCRが実装されているシステムなどを導入することで実現できます。しかし、単にシステムを入れるだけでは、ペーパーレス化の十分な効果は得られません。
ここでは、帳票をペーパーレス化するまでの具体的な流れを5つのステップで解説します。順を追って着実に進められれば、スムーズな移行を実現できるでしょう。
(1)現状の帳票発行・受領フローを可視化して課題を抽出する
まずは、現在社内でどの部署がどのような帳票を何枚発行し、どのような経路で受領しているか、フロー図に落とし込みましょう。全体像を把握しないまま電子化を進めると、後になって想定外の課題が出てくる恐れがあります。
これまで紙で発行していた理由や、押印までの流れ、物理的な保管のルールなど、電子化を阻害している要因があれば具体的に特定することも重要です。「なんとなく紙で続けている」という慣習は、見直しのチャンスです。
フローを可視化できれば、重複している承認ステップや無駄な転記作業を発見でき、ペーパーレス化と同時に業務プロセスの効率化も図れます。
(2)タイムスタンプの付与または訂正削除履歴が残る仕組みを構築する
帳票の受け取りや作成の際に、その時点での存在を証明するタイムスタンプを付与することで、真実性の確保を客観的に証明できます。これは電子帳簿保存法で定められた重要な要件の1つです。
タイムスタンプ付与の代わりに、一度保存したデータの訂正や削除を行うと、その全履歴がログとして残るシステムの導入も有効でしょう。どちらの方法を採用するかは、自社の運用体制に合わせて検討してください。
これらの技術的な仕組みを導入することで、手作業による管理コストを削減しつつ、人的ミスによる法令違反のリスクを大幅に低減できます。
(3)電子帳簿保存法に対応した事務処理規程を作成する
タイムスタンプを使わない場合、正当な理由のない訂正・削除を禁止する事務処理規程を作成し、その運用を徹底しなければなりません。規程がないまま運用を続けると、税務調査時に大きな問題となる可能性があります。
規程にはデータの管理責任者や訂正時の承認フロー、保存期間などの詳細を明記し、社内の誰もが参照できる状態にしておく必要があります。たとえ形式だけ整えても、実効性がなければ規程の意味がありません。
国税庁が公開している規程の雛形を参考に、自社の組織体制を反映すれば、実効性のある規程として機能させることができるでしょう。
(4)スキャナ保存の要件を満たす解像度や階調を設定する
紙で受け取った領収書などをスキャンして保存する場合、200dpi以上の解像度やRGB256階調以上のフルカラーを維持する設定が必要です。これらの要件を満たさないスキャンデータは、法的な証拠能力を有しない可能性があります。
スマートフォンで撮影して保存する際は、書類の文字が明瞭に読み取れることや、解像度が要件を満たしているかを事前にテストしておいたほうがいいでしょう。後になってから困らないように、本番運用前の検証は欠かせません。
スキャナの設定を固定し、担当者によるバラつきも防ぐようにしましょう。
(5)取引先とデータ送受信の方法を協議し、合意を得る
ペーパーレス化を進める際は、取引先に対しても請求書の電子送付への切り替えをお願いし、合意を得るための事前案内が必要になります。合意を得ない一方的な変更通知は、取引関係に悪影響を及ぼしかねません。
電子インボイスやクラウド上のマイページからのダウンロード形式など、相手企業のIT環境に配慮した柔軟な受取方法を提示することが、円滑な移行につながるでしょう。選択肢を複数用意しておくと、相手企業からの合意を得やすくなります。
ペーパーレス化による双方のメリットを説明し、協力体制を築くことが、ペーパーレス化成功の鍵となります。
帳票のペーパーレス化に伴うデメリット
ペーパーレス化には多くのメリットがある一方で、導入時に考慮すべきデメリットも存在します。事前にデメリットを把握し、適切な対策を講じることが成功への近道となるでしょう。
ここでは、ペーパーレス化を進める際に直面しやすい3つの課題について解説します。メリットとデメリットの双方を理解し、計画的に導入を進めましょう。
システムの導入費用や月々の運用コストが発生する
ペーパーレス化を実現するためには、クラウドサービスやオンプレミス型システムのライセンス費用、初期構築費用などの月々の運用コストが必要です。無料で使えるツールもありますが、法的要件を満たすには有料のシステムが必要なケースが多いでしょう。
そのため、紙のコスト削減分とシステムの月額費用を比較し、中長期的な費用対効果を十分にシミュレーションしてから導入を判断しましょう。目先の効果ではなく、3年から5年のスパンで費用対効果を試算することをおすすめします。
特に小規模な事業者にとっては、システム導入時の費用負担が短期的な利益を圧迫する可能性があります。補助金や助成金の活用も視野に入れて、検討しましょう。
従来の紙ベースの業務フローを変更する手間がかかる
長年慣れ親しまれた紙ベースの運用を変更する際、社内からの反発や現場の混乱が生じ、一時的に業務効率が低下するリスクがあります。「紙のほうが楽だ」という現場の声は、運用変更時に直面する課題です。
そのため、電子化に伴う新しい操作手順やルールのマニュアル化をはじめ、社内の全部署に対して説明会を行うなど現場に寄り添った調整が必要になるでしょう。丁寧な説明と継続的なサポートが、現場の理解を得るために大切です。
移行期間中は紙と電子の運用が混在しやすく、二重管理によるミスを防ぐための厳格なスケジュール管理とサポート体制が求められます。
システム障害やデータ消失のリスクに備える必要がある
サーバーの故障や通信障害が発生した場合、電子データにアクセスできなくなり、請求業務や決裁業務が完全にストップする可能性があります。
物理的に存在する「紙」とは異なり、電子化の運用はシステムへの依存度が非常に高いです。万が一のサイバー攻撃やヒューマンエラーによるデータ消失を防ぐため、定期的なバックアップと高度なセキュリティ対策を講じる必要があるでしょう。
また、「適切な管理体制」を構築し、情報の紛失リスクを最小限に抑えることも大切です。
帳票のペーパーレス化の成功事例
帳票のペーパーレス化は、業界を問わず多くの企業で成功事例が生まれています。他社の取り組みを知ることで、自社への導入イメージを具体化できるでしょう。
ここでは、ゼネコン、ホテルチェーン、ガス会社、受託研究会社という4つの業界における成功事例を紹介します。それぞれの課題と解決策から、自社への導入のヒントを見つけてください。
ゼネコン会社における事例
あるゼネコン会社では、建設現場で発生する膨大な施工写真や検査記録をタブレット端末で直接入力する体制を構築しました。これにより、事務所に戻ってからの転記作業がなくなり、現場監督の工数大幅削減に成功しています。
電子化されたデータはクラウド上でリアルタイムに共有されるため、発注者や協力会社との情報連携もスムーズになり、意思決定の迅速化と工事品質の向上を両立させました。同時に、コミュニケーションエラーも大幅に抑えられています。
また、書類の持ち運びが不要になったことで、紛失や破損といったセキュリティリスクが解消され、過去の施工記録を工事完了後も容易に検索・参照できる環境も実現しています。
ホテルチェーンにおける事例
あるホテルチェーンでは、紙の帳票がグループ全体の生産性低下の要因となっていることを踏まえ、帳票のペーパーレス化を進めました。複数拠点での書類のやり取りに多くの時間と労力を費やしていたことが、導入の決め手でした。
実際に、帳票を電子化するシステムを導入したことで、年末調整の書類作成などが不要になり、従業員もシステムの利便性を実感しているそうです。これにより、経理部門だけでなく、現場スタッフの負担軽減にもつながりました。
同社は今後、システムの適用範囲をさらに拡大し、非効率な業務の可視化を進める方針です。さらなる業務改善と組織全体の最適化が期待されています。
ガス会社における事例
あるガス会社では、ガス充填ラインの点検に使う帳票をペーパーレス化する取り組みを行いました。取り組みの背景には、現場での記録作業と事務所でのデータ入力という二重作業が、長年の課題となっていたことがあります。
この取り組みにより、1日あたり、検査表に使っていた紙60枚と30分の作業時間削減に成功しています。年間に換算すると、相当なリソースの節約を実現したことが分かるでしょう。
さらに、点検記録をサーバー上で一元管理することで情報の検索性が向上しました。過去のデータ参照も容易となり、現場全体の業務効率化を着実に進められています。
受託研究会社における事例
ある受託研究会社では、バックオフィス業務の効率化による「研究開発へのリソース集中」を目的として、業務効率化のために、決裁業務における帳票の電子化を推進しました。
帳票のペーパーレス化により、従来は平均4営業日を要していた見積書決裁や受注決裁が、2営業日程度で完了するようになりました。決裁スピードの向上は、ビジネス機会の損失防止にも寄与しています。
また、後にその他の文書や資料もペーパーレス化することで、年間5,000枚近くの紙書類の削減に成功しており、継続的な業務改善が実現しています。
帳票のペーパーレス化に関する法律
帳票のペーパーレス化を進める上で、関連する法律の理解は欠かせません。法的要件を満たさない電子保存は、税務調査時に重大な問題を引き起こす可能性があります。
ここでは、電子帳簿保存法とe-文書法という2つの主要な法律について解説します。それぞれの特徴と違いを理解し、適切な対応を行いましょう。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類のデータ保存を認める法律であり、「真実性の確保」と「可視性の確保」という二大要件をシステム上で満たすことが運用の大前提です。本法への対応は、現在すべての事業者にとって法的義務となっています。
2024年1月以降、電子取引データの書面保存が廃止されました。これにより、電子メールなどで受領した請求書などのデータは、紙に印刷して保存することは認められず、法要件に基づいた適切なデータ形式での保存が義務付けられています。
また、検索機能の整備については、取引年月日、金額、取引先の3項目による検索を可能にし、税務当局からのダウンロード要請に、即座に応じられる体制を構築しなければなりません。
e-文書法
e-文書法は、法定保存が義務付けられた文書の電子化を容認する「通則法」です。各省庁が所管する法律によって保存が義務付けられた書類を、デジタルデータとして保存することを可能にしています。税務関係に特化した電子帳簿保存法に対し、より幅広い書類を対象としている点が特徴です。
保存にあたっては「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」の4つの基本要件を満たす必要があり、なかでも内容を明瞭に確認できる「見読性」の確保は最優先事項とされています。これらの要件を満たさない保存は、法的に有効と認められないため、注意が必要です。
本法は、医療分野の診療録(カルテ)から商法の計算書類に至るまで、多岐にわたる文書を対象としており、あらゆるビジネス領域におけるデジタル化推進の法的根拠となっています。
電子帳簿保存法とe-文書法の違い
「電子帳簿保存法」と「e-文書法」は、管轄する省庁や対象となる書類、要件などが異なります。両者の違いを正確に理解しておくことが、適切な対応の第一歩となるでしょう。
電子帳簿保存法は、税法上の保存義務がある書類を電子化するためのルールを定めた法律であり、国税庁・財務省の管轄のもとで運用されています。対象となる文書は、領収書・請求書・契約書などの国税関係書類に限定されます。
e-文書法は、商法や証券取引法など各法律で保存が義務付けられた書類全般を電子データで保存することを容認する包括的な法律であり、複数の省庁が管理しています。
| 法律名 | 内容 | 対象書類 | 管轄となる省庁 | 要件 |
| 電子帳簿保存法 | 国税関係帳簿書類の保存方法等を制定する法律 | 領収書、請求書、契約書などの国税関係書類 | 国税庁、財務省 | 可視性、真実性 |
| e-文書法 | 企業等における特定の文書・書類の電子的な保存を許可する法律 | 電子化が可能な文書・書類全般 | 厚生労働省、経済産業省、内閣府、法務省、警察庁、国税庁、財務省など | 見読性、完全性、機密性、検索性 |
帳票をペーパーレス化するシステムの選び方
帳票のペーパーレス化を成功させるためには、自社に適したシステムの選定が不可欠です。市場には多くの製品が存在するため、選定基準を明確にしておく必要があるでしょう。
ここでは、システム選定時に確認すべき5つの重要なポイントを解説します。長期的な視点で後悔のない選択をするための指針として、ぜひ参考にしてください。
(1)既存の会計ソフトや基幹システムとの連携性を確認する
既存で使用している会計ソフトや基幹システムがある場合は、事前に連携可否を確認しましょう。ペーパーレス化のために導入するシステムが、現在利用している会計ソフトや基幹システムへスムーズに連携できれば、手入力の工数を大幅に削減することが可能です。
システム選定においては、API連携の可否やCSV出力の柔軟性を確認し、マスタデータへの同期や仕訳データの自動生成が可能かどうかを検証することが重要です。導入後のミスマッチを防ぐためにも、実際のデータを使ったテストを行うことをおすすめします。
連携が不十分なシステムを選んでしまうと、二重入力の手間が発生し、ペーパーレス化による効率化のメリットが半減するリスクがあるため、注意しましょう。
(2)システムの認識機能を検証する
帳票をペーパーレス化する際に必要な「OCR(光学文字認識)」の精度を確認しましょう。具体的には、手書き文字や複雑なレイアウトの帳票でも高い精度で読み取れるかどうか、自社の実在する書類を使って事前に検証しておくことをおすすめします。
帳票のペーパーレス化には、「OCR」と呼ばれる文字認識技術を用いて画像データを文字コードに変換する必要があるため、この認識精度が、業務効率に直結する重要な要素となります。
特に日付や金額、取引先名の自動抽出精度は必ず確認しましょう。 最終的には、読み取りミスを修正する工数を考慮しても、手入力より効率的であるかを判断し、業務時間削減に直結する性能を持つシステムを選定すべきでしょう。
(3)JIIMA認証を取得している、信頼性の高いシステムを優先する
JIIMA認証とは、日本文書情報マネジメント協会が電子帳簿保存法の要件を満たしていると認定したソフトウェアに付与されるものです。第三者機関による客観的な評価として、システム選定における非常に重要な信頼指標となります。
この認証を受けたシステムを採用することで、自社で法的要件を一つずつ精査する手間を省くことができます。担当者の負担軽減という観点でも、メリットは大きいと言えるでしょう。
また、国税庁のウェブサイトでも認証製品の一覧が公表されています。システム選定の初期段階で候補製品がリストに含まれているかを確認しておきましょう。
(4)経理担当者だけでなく、現場の従業員も直感的に使えるUIを選ぶ
ITリテラシーに関わらず、全従業員が迷わずに直感的に操作できるシステムを選びましょう。経費精算や見積依頼など、システムは全社員が利用します。使い勝手が悪いと、結局紙のほうが楽だという不満が生じるなど、操作性の良し悪しはそのまま現場への定着率を左右するでしょう。
具体的には、スマートフォン対応の有無や分かりやすいアイコン配置、クリック数を最小限に抑えた操作性など、ユーザー視点での使いやすさを確認します。実際に触ってみないと分からない部分も多いため、社内の数名にテスト利用を依頼するのがおすすめです。
(5)将来の法改正に自動アップデートで対応できるものを選ぶ
電子帳簿保存法やインボイス制度などの法令は、頻繁に改正されます。そのため、改正内容に応じて、自動アップデートされるシステムがおすすめです。法改正の都度、自社でシステム改修を行うことは、長期的なコストの面で大きな負担となります。
常に最新の法的要件を維持するには、ベンダーが法改正に合わせて自動でアップデートを行う「クラウド型システム」の導入が最適です。
また、サーバーの維持管理やセキュリティ対策もベンダーに一任できるため、ITリソースが限られた企業であっても、安心して長期間運用できるメリットがあります。
帳票のペーパーレス化を進める際の注意点
ペーパーレス化を進めるためには、システムの導入だけでなく、運用面での注意点も押さえることが必要です。法的要件を満たしつつ、安全で効率的な運用を実現しましょう。
ここでは、ペーパーレス化を進める際に特に注意すべき7つのポイントを解説します。これらを事前に把握しておくことで、導入後のトラブルを未然に防げるでしょう。
(1)真実性の確保を重視する
「真実性の確保」とは、電子帳簿保存法において、保存されたデータが後から不正に改ざんされていないことを証明するための要件のことです。この要件を満たさないと、法的に有効な保存とは認められないため、注意しましょう。
「真実性の確保」のためには、タイムスタンプの付与などが有効な手段となります。
タイムスタンプを使用しない場合は、データの訂正や削除履歴が残るシステムの利用、または不正なデータ改ざんを防止するための事務処理規程の備え付けが必要となるでしょう。
国税庁の指針に基づき、自社のシステムが訂正削除のログを確実に記録できる仕様になっているか、導入前にスペックを精査するようにしましょう。
(2)可視性の確保を重視する
「可視性の確保」とは、電子帳簿保存法において、保存された電子データを速やかに検索でき、誰でも明確に確認できる状態にしておくことを指します。データがあっても、すぐに見られなければ意味がありません。
具体的な要件として、取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できる機能を備えておかなければいけません。加えて、パソコンやモニターなどの操作説明書もすぐに確認できるように備えておく必要があります。税務調査時に、すぐにデータを表示できる環境を整えておくことが重要です。
(3)運用ルールを徹底する
システムを導入するだけでなく、日々のデータ保存において検索項目が正しく入力されているかなど、運用ルールの遵守状況を定期的にチェックしましょう。
法的要件が守られていない保存データが1つでも存在してしまうと、税務調査時に青色申告の承認取消しといった重いペナルティを受けるリスクが生じます。
運用担当者が変わっても同じ品質で電子保存が継続できるよう、具体的なチェックリストや標準作業手順書を整備して周知しつつ、社内の運用状況も確認しましょう。
(4)電子保存が認められない例外的な書類を把握する
法律によっては、不動産売買契約の一部など、現時点でも書面での作成や交付が義務付けられている特殊な書類が存在します。全ての書類を電子化できるわけではないことを認識しておきましょう。
そのため、弁護士などの専門家に相談しながら電子化が可能な書類を正確に把握することが、法的トラブルを防ぐために大切です。
最新の法改正情報を定期的に確認し、電子保存の対象範囲が拡大された場合には、適宜社内ルールをアップデートしていくようにしましょう。
(5)二重入力や保存漏れを防ぐチェック体制を社内に構築する
電子メールで届いたデータは、システムへの保存忘れや誤った削除を防ぐため、受信から保存までの運用フローやチェック体制を整備しておきましょう。
日常業務のなかで、同じ請求書がメールと郵送の両方で届くケースもあるでしょう。重複した支払い処理やデータ保存を防ぐため、確認プロセスを検討しておくことが大切です。特に、移行期間中は注意しましょう。
月次の締め処理時に、発生した取引と保存されたデータの件数が一致しているかを確認する、照合ステップを組み込むなどの対策が有効です。
(6)定期的なバックアップを行い、データの長期保存を保証する
電子帳簿保存法では、原則として7年以上のデータ保存が定められています。保存期間中、データの破損やクラウドサービスの停止によって書類が閲覧できなくなる事態は、いかなる理由でも避ける必要があるでしょう。
そのため、クラウド型であっても、重要なデータは定期的にローカルや別のクラウドへバックアップを取るなど、二重・三重の保全策を講じることがおすすめです。
加えて、保存形式が将来の閲覧ソフトで開けなくなるリスクも考慮し、汎用性の高いファイル形式での保存と定期的な可読性チェックを行いましょう。
(7)情報セキュリティ対策を行う
システムへの不正アクセスによる情報漏洩を未然に防ぐため、情報セキュリティ対策は厳密に行いましょう。具体的には、二要素認証の導入やID管理の厳格化、重要な会計データへアクセスできる職員を最小限に絞り込む権限設定などの対策があります。
通信経路の暗号化や高度なセキュリティソフトによる監視を常時行い、サイバー攻撃やランサムウェアから大切な帳票データを守るための強固なセキュリティ対策を、システム全体に組み込むことが望ましいといえます。
内部不正を抑止し透明性を確保するため、データの閲覧や編集に関する全操作ログを記録し、万が一のインシデント発生時に「いつ誰が何をしたか」を迅速に追跡できる体制を確立しておくことが大切です。
帳票をペーパーレス化して、経理DXを実現しよう!
帳票のペーパーレス化は、電子帳簿保存法への対応という法的義務を果たしながら、コスト削減や業務効率化、テレワーク環境の整備など、多くのメリットをもたらす取り組みです。紙の帳票管理に潜む非効率を解消し、経理部門のDXを推進する基盤として、その重要性はますます高まっています。
導入にあたっては、現状の業務フローを可視化して課題を抽出し、法的要件を満たすシステムや事務処理規程を整備することが不可欠です。また、取引先との合意形成や社内教育にも十分な時間をかけ、段階的に移行を進めることが成功への近道です。
システム選定においては、既存システムとの連携性、OCRの認識精度、JIIMA認証の有無、操作性、法改正への対応力という5つの観点を確認しましょう。
真実性と可視性の確保、運用ルールの徹底、セキュリティ対策など、導入後の注意点も押さえたうえで、計画的にペーパーレス化を推進し、経理DXの実現を目指しましょう。