外国人労働者の受け入れによるメリット・デメリットは? 受け入れ時のポイントも解説
外国人労働者の受け入れについて、企業にとってメリットがあるのか、簡単に実践できるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
外国人労働者を採用するためには、在留資格の確認や就労ビザの申請など、企業側が行うべきポイントが多いです。
とはいえ、人手不足の解消や多言語対応が可能になるなどのメリットがあるため、多くの企業が積極的に採用を進めています。
この記事では、外国人労働者の定義から受け入れるメリット・デメリット、受け入れ方法まで解説します。ぜひ参考にしてください。
外国人労働者とは?
外国人労働者は、さまざまな在留資格を持っていてそれぞれに条件が異なります。ここでは、5つの分類について解説します。
身分に基づき在留する者
永住者や定住者、日本人の配偶者、日系人などが該当します。在留中の活動に制限がないため、さまざまな分野で報酬を受け取れるのが特徴です。
専門的・技術的分野で在留資格を持つ者
医師や教員、経営者など高度な技術や専門性を持つ人が該当します。専門的業務のみを行える在留資格なので、その他の労働は行えません。
技能実習
技能実習生は、発展途上国から日本に技術を学びに来る人です。技能実習制度は、国際協力を目的に制定されています。
特定活動で在留している者
特定活動とは、外国人看護師や介護福祉士候補者、ワーキングホリデー利用者などが該当します。
法務大臣が個々の外国人について、活動の指定をする在留資格です。
資格外活動
外国人留学生のアルバイトなどが該当します。本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内であれば、労働が可能です。
外国人労働者の受け入れ状況
画像出典:【PDF】厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年 10 月末現在)
外国人労働者は年々増えています。平成19年に届出が義務化されて以降、外国人を雇用する事業所及び外国人労働者数が最高の数値を更新している状況です。
対前年増加率は、事業所数で6.7%と前年10.2%から3.5ポイントの減少、労働者数で0.2%と前年4.0%から3.8ポイントの減少と、いずれも減少傾向にあります。
国籍別の比率
引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和4年 10 月末現在)
国籍別に属性をみると、ベトナムが最も多く462,348人と外国人労働者数全体の25.4%を占めています。
次いで中国が385,848人と全体の21.2%、フィリピンが206,050人と全体の11.3%を占めている状況です。
対前年増加率が高い上位3か国をみると、インドネシア(47.5%増)、ミャンマー(37.7%増)、ネパール(20.3%増)の順になっています。
産業別の比率
産業別の比率をみていくと、外国人労働者数が最も多いのが「製造業」で、485,128人と全体の26.6%です。
次いで、「サービス業(他に分類されないもの)」が295,700人で全体の16.2%、「卸売業、小売業」が237,928人で全体の13.1%となっています。
外国人雇用事業所の割合をみると、最も多いのが「卸売業、小売業」で、55,712か所と全体の18.6%です。
次いで、「製造業」が53,026か所と全体の17.7%、「宿泊業、飲食サービス業」が42,896か所と全体の14.4%を占めています。
外国人労働者の受け入れによるメリット
外国人労働者の受け入れには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
人手不足の解消
外国人労働者を受け入れる大きなメリットは、人手不足の解消です。
少子高齢化により若年労働者が減少していることから、人手不足に悩む企業もあるでしょう。
外国人労働者を受け入れることで人手不足を解消しながら、成長意欲の高い外国人を雇用すると企業の成績アップにも繋がります。
また、若くて優秀な人材を国内外問わず採用できるのも、メリットといえます。
多言語対応が可能になる
外国人労働者を雇用すると多言語対応が可能になります。扱える言語が増えるので、外国人の取引先とのコミュニケーションを円滑に進められるのがメリットです。
また、海外の会社とも取引しやすくなるので、海外進出の足がかりができ、販路の拡大が期待できます。
助成金の利用による採用コストの削減
外国人労働者を雇用すると各自治体や国から助成金を受け取れます。受け取った助成金を活用することで、採用コストを削減できるのもメリットの1つです。
また、人材が不足しがちな職種では求人に人が集まらず、採用期間が長引くことで費用が膨らむケースがあります。
そこで日本人だけでなく、外国人を対象に入れると求職者が増えるため採用コストが抑えられる可能性があるでしょう。
外国人労働者の受け入れによるデメリット
外国人労働者を受け入れるメリットは大きいですが、あらかじめ知っておきたいデメリットも存在します。ここでは、主な2つのデメリットについて解説します。
文化の違いやコミュニケーション不足によるトラブルが発生しやすい
外国人労働者の雇用では、文化の違いやコミュニケーション不足によるトラブルが発生しやすいというデメリットがあります。
善悪や価値観の違いにより、思わぬトラブルが発生したり、悪気なく相手を不愉快にさせたりするケースがあるので注意が必要です。
また、従業員の語学レベルによってはコミュニケーションが不足して、勤務や職務に支障が出る恐れがあります。
あらかじめ現場や関わる従業員に周知し、日本語やルールを丁寧に伝えていく意識が重要です。
外国人労働者に関する手続きやルールを覚える必要がある
外国人労働者を雇用するには、手続きやルールを覚える必要があります。
外国人労働者には、雇用に関する手続きや就労のルール、支援などが存在します。在留資格によって就ける職種が変わるため、あらかじめ確認しておきましょう。
初めて外国人労働者を雇用する場合には、外国人の雇用に詳しい行政書士などに相談すると安心です。
外国人労働者の受け入れ制度「特定技能」とは?
外国人労働者の受け入れ制度に、特技技能があります。ここでは、特技技能の詳細や技能実習との違いについて解説します。
「特定技能1号」と「特定技能2号」の違い
2019年4月1日から、外国人労働者の新たな受け入れ制度として特定技能が始まりました。
中小、小規模事業者をはじめとする人手不足の対策として、専門性・技能を持つ即戦力になれる外国人を受け入れるために制定された制度です。
特定技能には1号と2号があり、どちらかを在留資格を持っていれば日本で働けます。
特定技能1号と特定技能2号の違いについては、次の通りです。
特定技能 |
1号 |
2号 |
---|---|---|
在留期間 |
1年で更新すれば通算5年 |
3年で更新すれば上限なし |
日本語レベル |
日常会話 |
なし |
従事する職種における技能レベル |
ある程度 |
熟練されたレベル |
取得可能職種 |
介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、航空業、宿泊業など(全14業種) |
建設業、造船舶用工業 |
家族の帯同 |
不可 |
条件を満たせば可 |
特定技能1号、特定技能2号はいずれも各特定産業分野の試験に合格する必要があります。
「特定技能」と「技能実習」の違い
日本の在留資格には技能実習というものが存在します。特定技能と技能実習の大きな違いは目的です。
技能実習は、外国人労働者が日本で学んだ技術や知識を、自国へ持ち帰り広めてもらうもので、国際貢献を目的としています。
特定機能は、日本国内の企業が抱える人手不足を解消するために作られた制度です。
企業において即戦力になれる外国人を受け入れたい場合は、特定技能が適しています。
外国人労働者の受け入れ手順
外国人労働者を受け入れるまでのステップは、次の通りです。
- 外国人労働者を募集
- 就労ビザ取得の見込み調査
- 内定
- 雇用契約書の作成
- 就労ビザの申請
- 就労ビザの審査
- 雇用開始
まずは外国人労働者の募集をします。公的機関や人材派遣会社を利用したり、大学や語学学校の紹介やSNSを利用したりする募集方法が一般的です。
次に採用を検討している外国人が就労ビザを取得できるのか、取得の見込みを調査します。在留期限が切れた外国人を採用すると、企業が罰せられるケースもあるので注意が必要です。
面接を行い内定者が出たら、雇用契約書を作成しましょう。就労ビザの申請を行い、審査で問題がなければ雇用開始です。
外国人労働者の受け入れ時に気をつけておきたいポイント
外国人労働者の受け入れ時に気をつけたいポイントは、次の4つです。
- 必ず就労資格の有無を確認する
- 外国人労働者を10人以上雇用する場合は「外国人労働者雇用管理責任者」を専任する
- ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出する
- 文化の違いや日本語スキルの確認をする
外国人労働者を受け入れるときは、必ず就労資格の有無を確認しましょう。就労資格がない外国人を採用すると、企業が罰せられる可能性があります。
外国人労働者を10人以上雇用する場合は、企業内の人事・労務課長の中から「外国人労働者雇用管理責任者」を選任しなければいけません。
10人以上採用する予定がある企業は、あらかじめ検討する必要があります。
また「外国人雇用状況届出書」の提出も忘れずに行いましょう。企業は外国人の雇用状況をハローワークに提出する義務があります。
外国人労働者についてのまとめ
近年、日本では外国人労働者を受け入れる動きが活発化しています。
外国人労働者を受け入れることで、人手不足の解消や多言語対応が可能になる、採用コストの削減などのメリットがあります。
とはいえ、外国人労働者を受け入れるには就労資格を確認してビザの申請などを行わなければいけません。
場合によっては企業の体制を見直す必要があるでしょう。
外国人労働者の受け入れを検討している企業は、この記事で記載している採用方法や注意点を参考にしてみてください。
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