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ジェンダーレスとは? 企業で取り組むことができる対応について解説

ジェンダーレスとは? 企業で取り組むことができる対応について解説

ジェンダーレスは男女平等な社会にするために、社会的な性差を無くす考え方です。ジェンダーレス化を進めることで、性別にとらわれない公平な社会環境を提供できます。

今回は、まずジェンダーレスとは何か、どのような分野で取り入れられているかを解説します。そして、企業がどのような方法でジェンダーレス化を推進できるか、具体的な施策も含めて見ていきましょう。


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ジェンダーとは

セックスを生物学的な性差とすることに対し、ジェンダーは、社会的・文化的な性のあり方のことです。たとえば以下のようなところに表れる男らしさ・女らしさを指し、自分が自身の性別をどう認識し、表現するかという要素となります。

  • 髪型
  • 服装
  • 言葉遣い
  • 職業

類義語として「セクシュアリティ」がありますが、こちらは性的な欲求や関心の対象(性的指向)を指します。誰を恋愛や性愛の対象とするかで判断されます。

また、どちらも生物学的・身体的な性別とは意味や定義が異なるので注意しましょう。


ジェンダーレスとは?

ジェンダーレスとは、社会的・文化的な性差を取り除き、男女の境界を無くそうとする考え方のことです。ジェンダーレスの考え方によって、性別に基づく役割や職業の強制を無くし、個々の自己表現を尊重できます。
男女の機会均等や性的マイノリティーの権利を求める活動は世界中で行われており、ジェンダーレスへの注目は日に日に高まっています。

ジェンダーフリーとの違い

個人の社会的・文化的な性差を無くそうとするジェンダーレスに対し、ジェンダーフリーは「誰もが生物的性差による役割分担に縛られず、個人の生き方を選択しよう」という考え方です。

ジェンダーフリーは、社会や文化によって形成された性差から自由になることを目指すものです。家事分担や職業選択、育児休暇の取得など、男女間の固定された役割分担を排除し、個人が自由に選択できる社会を追求するものだと言っても良いでしょう。

性別を残しつつ、多様な選択を可能にしているという意味では、男性・女性という性差そのものをなくそうとするジェンダーレスとは大きく異なる考え方だと言えます。


ジェンダーレスの身近な例

ジェンダーレスの考え方は、企業、ファッション、教育、スポーツの世界で用いられることがあります。それぞれどのような場面で、どのようなアプローチがされているかについて見ていきましょう。

企業

最近の企業で特に問題視されているのは、経済における女性の参画比率が低いことです。

男性に対する女性の参画割合を4項目に分けて示すものとして「ジェンダー・ギャップ指数」があります。

数値が1に近いほど男女が平等であるとされていますが2023年の日本のジェンダー・ギャップ指数は0.647で、146ヵ国中125位でした。
特に、経済・政治参画の男女比にギャップがあることが分かっています。

ジェンダーレス実現のために、国や企業は様々な施策を取り入れています。たとえば、女性の活躍の場を増やすことや男性の育児参加の推進です。

女性の活躍促進に向けて行われているのは、女性が管理職に就くまでのキャリアマップや昇進条件を策定する施策の導入などです。出産から育児休業、復帰を支援する制度も女性の活躍を促進するために有効な手段といえます。

男性に適用される育児休業の完全取得や復帰支援も、企業の取り組みの1つです。女性が活躍する流れが少しずつ整えられている分、男性にも同等の対応が求められています。

参考:男女共同参画に関する国際的な指数

ファッション

ジェンダーレスの身近な例にはファッションも挙げられます。
ネクタイやネイルといった、以前は「男性らしい・女性らしい」とされていたアイテムの着用、中性的な服装やカラーリング、ヘアスタイルなどもジェンダーレスなファッションの1つです。性別にとらわれることなく自由な服装やアイテムを取り入れるスタイルが注目を集めています。

特にジェンダーレスなファッションをけん引しているのは若い世代です。モデルやインフルエンサーが、SNSなどを通して自分らしさや多様性について発信しているのが主な要因と考えられます。

教育

教育現場でも、性別の枠組みを超えた空間・環境の整備が進んでいます。制服やトイレなどが身近な例でしょう。

  • スカートとパンツが自由に選択できる制服
  • 女=赤、男=青という概念を無くす黒表記に統一したトイレ

また、教科書の変更や教員へのジェンダーバイアス研修の導入も施策の1つです。このように教育機関では、性別に関わらず個々のニーズや自己表現を尊重する方針が広がっています。

スポーツ

スポーツ分野でも、選手の性別を問わずに競技に参加できる環境整備が進んでいます。

2021年に開催された東京オリンピックでは「多様性と調和」が重視され、性的指向や性自認に基づく競技者の権利が尊重されました。性別を変えたトランスジェンダー選手の参加資格が明確に定められ、正式な選手として認められたことで注目を集めた大会です。

その一方でトランスジェンダーの選手参加に関して安全性、公平性の観点による議論は続いており、性自認に基づく公正な競技環境の整備が進められています。


企業でジェンダーレス化を推進する方法

企業でジェンダーレスの考え方を浸透させることは容易ではありません。しかし、取り組まないことには、従業員の生き方や権利に影響を与えてしまいます。

ジェンダーレス化に向けて、男女の社会的な固定観念を排除し、個々人を尊重する環境を徐々に作っていくことが企業の課題と言えるでしょう。

企業でジェンダーレス化を推進しやすい方法として以下の3つを解説します。

  • ジェンダーレスな制服の導入
  • 女性の活躍推進
  • 育休の男女平等化推進

ジェンダーレスな制服の導入

ジェンダーレスな制服の導入によって、外見による性差を無くすことや、好みの制服を選択することが可能です。具体的には以下のような施策が挙げられます。

  • ネクタイやリボンの廃止
  • 男女のデザインや色合いを同じにする
  • スカートとパンツを選べるようにする

男女差を付けないだけでなく、多様な選択肢を提供する点も、ジェンダーレスな社内文化を作り出すためのポイントです。

女性の活躍推進

性別を問わず平等に活躍の機会がある環境作りも重要です。
女性の活躍を推進する方法には、女性起業家や女性管理職の支援が挙げられます。女性が組織内で、リーダーシップを発揮できる機会を増やすための取り組みです。

女性活躍推進法が制定されたこともあり、女性が管理職に就く割合は少しずつ向上しています。
厚生労働省が2022年に実施した「雇用均等基本調査」によると、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は、12.7%です。

女性が管理職に就くメリットは、従業員が働きやすい環境になることです。男女の立場的な隔たりが緩和されてコミュニケーションが強化され、結束力と多様性のある組織の形成ができます。

また管理職の女性がロールモデルになることで、女性社員のモチベーションアップも期待できます。企業のジェンダーレス化のみならず、組織全体の活性化に寄与するでしょう。

参考:令和4年度雇用均等基本調査|厚生労働省

育休の男女平等化推進

育児休暇の男女平等化を推進することも1つの方法です。従来、育児休暇は女性のためのものと見られていましたが、現在では男女双方が育児休暇を取得する社会への変化が進んでいます。

育児は母親だけでなく父親も関与します。ジェンダー平等な育児を実現するためにも、企業が男女間の雇用条件や待遇を公平にすることが重要です。また、復帰までをサポートすることで、男女平等なキャリア形成に近付けるでしょう。


ジェンダーレス化への企業の取り組み

国内でも、ジェンダーレス化に向けて取り組む企業は多数存在します。今回は、以下4つの具体例を紹介します。

  • 積水ハウス株式会社
  • 楽天株式会社
  • ちばぎん証券株式会社
  • 株式会社アレフ(びっくりドンキー)

積水ハウス株式会社:男性の育児休暇取得を推奨

積水ハウス株式会社は、男性の育児休暇取得を奨励しています。取得率はほぼ100%で、積極的にジェンダーレス化を推進する会社の1つです。

この会社では、男性従業員が1ヶ月以上の育休を取得することを推奨しています。
この取り組みは、社長がスウェーデンでの育児参加率の高さに感銘を受けたことがきっかけで作られました。育休取得者からは、夫婦関係の向上や顧客からの好意的な反応など、肯定的な声が寄せられており、従業員の満足度向上につながっていることが伺えるでしょう。

楽天株式会社:ジェンダーレス&グローバル化の推進

楽天株式会社では、ジェンダーレス化の促進のために、多目的トイレの導入、相談窓口の設置、オープンセミナーの開催などをしています。

また、女性社員の育児休暇後の早期復帰のために、社内に授乳室や託児所を設置していることも特徴的です。その他、同性パートナーも配偶者と認め、様々な福利厚生を提供しています。

人種や国籍を問わずに採用している事もあり、ジェンダーレス・グローバル化を率先して取り組んでいる会社だと言えるでしょう。

ちばぎん証券株式会社:女性管理職の積極登用

ちばぎん証券株式会社は、女性リーダーの登用に重点を置いています。女性管理職の数値目標の設定と、育成プログラムの適用が主な取り組みです。さらに、女性管理職登用に向けた個人面談やキャリア意識の醸成、離職率低下のための取り組みもあります。

女性活躍推進の行動計画も策定しており、管理職の女性比率を25%以上に向上させるという目標も掲げている点からも、ジェンダーレスへの積極的な取り組みがわかります。

参考:ちばぎん証券株式会社 行動計画

株式会社アレフ(びっくりドンキー):制服のジェンダーレス化

株式会社アレフは、自社が経営するレストラン「びっくりドンキー」に男女兼用のジェンダーレスな制服を導入し、個性を出せる働きやすさを考慮しています。
帽子やシャツ、ベストなどのアイテムの選択肢を増やし、ジェンダーレスなスタイルにする取り組みです。

従業員の意見を取り入れたデザインにより、性別や年齢を気にせず自分らしいあり方で接客できる環境を提供しています。


ジェンダーレス化を推進するために企業や従業員ができること

ジェンダーレス化を推進するためには、企業や経営陣だけでなく、従業員も参画して取り組む必要があります。そのための方法には、ジェンダーレスに関する研修を行うことや、社内でジェンダーに関する話題の議論をすることが考えられます。

どのように研修や議論を取り入れていくか、どのような効果が期待できるかを見ていきましょう。

ジェンダーレスに関する研修を行う

企業が提供するジェンダーレスに関する研修では、世代や役職、性別を問わずに参加してもらい、意識改革することが重要です。研修により全従業員に意識を喚起し、最新の知識を提供することができます。

たとえば外部講師を招き、ジェンダーに関する基本的知識からインプットできる研修です。当事者の体験や気持ちを実際に聞くことができ、どのような対応をすべきかまでも学べます。

全社で行うよりも、新入社員、新任リーダー、管理職などに分けて、役職や立場にあった行動を学ぶことが有効です。立場によって、無意識の偏見への理解を深め、各々が自己の偏見に気づくための時間を作りましょう。

社内でジェンダーに関する話題を議論する

ジェンダーレスなオフィス環境を作るためには、社内で従業員同士がジェンダーに関する話題を議論する時間も必要です。
定期的なグループディスカッションやワークショップを通じて、従業員が持つ情報や経験を共有しましょう。

自分で考えるだけでなく、周囲の価値観も吸収することで、ジェンダーに対してより柔軟な考え方を持つことができます。

従業員は議論を通して意見を共有し、企業側はバイアスを整理した上で多様な意見を取り入れることが重要です。


ジェンダーレスはSDGsの目標でもある

ジェンダーの課題はSDGsの目標の1つで、企業も取り組むべき重要な課題になっています。SDGsの目標は男女平等、性別による差別の撤廃や女性のリーダーシップ確保などが掲げられています。

企業にとって、ジェンダーレス化に取り組むことは、国際課題の解決に貢献するためにも重要だと言えます。

企業ができることは、ジェンダーバイアスをなくし、誰もが平等な機会を得られる社会を実現することです。そのために、意識改革や社員研修が重要になります。


まとめ

ジェンダーレスは、性別関係なく平等な社会を作るうえで重要な概念であり、SDGsの目標にも取り入れられている国際課題でもあります。そのために企業は、女性活躍推進のための制度や男女差のない環境づくりをする必要があります。

ジェンダーに関する研修や議論の場を用意したり、従業員の意見を取り入れたりすることも重要な取り組みです。そこから具体的に施策を練っていくことで、公平性にも期待ができます。従業員が個性を出せる環境を整えて、多様性ある企業づくりに取り組みましょう。


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