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総務のあり方。「環境に適応するには?!」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務のあり方。「環境に適応するには?!」

再度、ダーウィンの言葉

今回は環境適応と総務部門との関係についてご説明します。ここで再度、ダーウィンの言葉を紹介します。

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは変化できる者である」

企業も同様に変化へ適応できないと倒産の憂き目にあってしまいます。その変化への適応のための仕事をするのが総務部門です。再三、VUCA時代という言葉を使ってきました。VUCAとは、次の頭文字を取った言葉です。

Volatility :変動性

Uncertainty :不確実性

Complexity :複雑性

Ambiguity :曖昧性

何が起こるか分からない時代、真っ暗闇の中で飛行機の操縦桿を握っている状態、などさまざまに表現されます。イギリスがEU離脱を決めた時から使われ始め、その後、トランプ大統領の誕生、そして新型コロナウイルス感染症、まさに何が起こるか分からない時代を表現する言葉です。

特に今の時代は、自社が属する業界や日本国内のみならず、グローバル化に伴うさまざまな変化により、会社も多大な影響を受けるようになりました。未知との遭遇が続き、過去の経験値が通用しない事態も多くあります。これに対処する部門としての総務部門。働き方改革やハイブリッド・ワークスタイルといった攻めの総務だけではなく、今まで以上に守りの総務が重要性を増してきた感があります。


注視したい5項目

ではこの環境適応に際して、どのような点に注視していけば良いのでしょうか。よく言われるのは、次の5項目です。

・政治

・経済

・社会

・技術

・環境

これをさらにブレイクダウンしてみましょう。

まずは「政治」。日本の政治体制は当分自民党政権が続き、良くも悪くも変化しないと思います。注視すべきは、グローバルの為政者による良からぬ動き、衝突です。特に、台湾を巡る米中の対立です。全面戦争に発展する可能性は少ないものの、第一次世界大戦のように偶発的な衝突の可能性は無きにしも非ずです。

そうなると、東シナ海を船舶が航行できず、日本への物資、特に原油が輸送できず、経済活動にさまざまな悪影響が及びます。コロナ禍により半導体不足が起こり自動車の減産が生じているように、グローバルなサプライチェーンにより効率的にはなったものの、それが多くの国にまたがる結果、大きなリスクも抱えることになりました。

次の「経済」については、この何が起こるか分からないグローバルの政治状況により、多大な変化を受けるという図式に変わってきています。自社が属する業界動向への注視もさることながら、グローバルの動きについて注視する必要があるのです。

「社会」という項目について、特に考えたいのは「人口減少」の問題です。今さら始まった話ではありませんが、これによる経済規模の縮小、労働人口の減少に伴う人員確保の難しさ、これらがどのように自社に影響を与えるかを考える必要があります。特に総務部門にとっての課題は、人材採用の困難さ、売り手市場による働く人の価値観の変化です。

それを見極め、自社の採用戦略を練り直し、働き方等の制度設計を見直す。これを間違うと、人材確保ができず、自社の事業継続ができなくなるという致命傷を負うことになります。

そして「技術」。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が使われ、さまざまな情報が飛び交っています。考えるべき点は二つ。新技術により、自社の働き方がどう変化していくのか。もう一つが、その進化により自分の仕事がどうなっていくのか、仕事がなくなった場合、自分はどのようなスキルを身に付け、また、何に取り組むべきなのか。

テクノロジーについては、直接的にわが身に降りかかってくる重要な項目なので、総務部門はしっかりと情報収集を行うべきです。

最後に「環境」。これは脱炭素、環境問題として、総務部門に影響があります。広くはSDGsとして、事業を通じてさまざまな取り組みがなされています。大企業であれば専門部署で対応するでしょうが、中堅企業では総務部門が対応することになります。国の規制、金融機関の融資の姿勢、グローバルでの規制など、さまざまな観点で脱炭素を促す仕組みが出来つつあります。その動きが、自社にとって追い風となるのか、向かい風となるのか。動きを注視するとともに、その影響がどのように自社に及ぶかという点で、自社のことを隅々まで把握しておく必要があります。


自社のことをどれだけ知っているか?

VUCA時代と言われる現在。何が起こるか分かりませんが、予兆は必ずあるものです。その予兆に気づくかどうかが重要です。総務部門の役目の一つに、情報収集・アンテナ役があるのです。そして、そのアンテナに引っ掛かったものが自社にどのような影響を与えるのか、良い影響なのか悪い影響なのか、現段階では分からないものの、何らかの影響を及ぼす可能性のあるものを注視していくことを「課題管理」と言います。その中でリスクとして考えられるものは、次のフェーズである「リスク管理」の項目として予防策を検討することになります。不幸にもそのリスクが実際に起こってしまったら、次は「危機管理」として対処することになります。

この「課題管理」にあたる項目をピックアップして随時情報収集していくことが、総務のリスク管理の第一歩となるのです。そして課題管理として見るべき項目をピックアップするにも、自社のことを知らなければアンテナに引っ掛かることもなく、自社に置き換えて影響を見極めることもできません。つまり総務部門は、全社で最も自社のことを知っている部門でなければならないのです。

孫子の言葉に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」があります。外部環境をしっかりと把握し、自社のこともしっかりと知り、自社に置き換えて考えることができれば、さまざまな変化に対処できると言えるでしょう。

いずれにせよ、外部環境への適応は、今後ますます重要となる総務部門のあり方や機能の一つだと思います。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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