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総務のあり方。「攻めの総務、守りの総務」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務のあり方。「攻めの総務、守りの総務」

攻めと守り

「これからは、もっと攻めていかないと!」

スポーツでよく聞かれる言葉です。仕事でも、営業会議などで聞かれることもあるでしょう。総務もこの「攻め」という言葉がよく使われます。戦略総務も、そもそも攻めの総務を意味しています。一方で、「守りの総務」という言葉も存在します。従来型の総務のこと、あるいはリスク管理系の業務を指して「守りの総務」と表現しているケースもあるかと思います。

その意味するところは各人各様ではありますが、以前『月刊総務』で取ったアンケートの回答をご紹介してみましょう。「あなたは、守りの総務派ですか? 攻めの総務派ですか? その意味するところを記してください」という設問の回答です。

まずは守りの総務派の回答です。

  • 消極的ではなく、冷静に見ておく方が良い
  • 普段は攻めていない印象だが、まさにそれこそが総務
  • 経営の視点に立った時に、BCPなどは不可欠
  • いざという時に、動けるように準備ができていること
  • いかに外部からの攻撃に対し「受けて立てるか」が課題
  • 企業により守備範囲は異なるが、常備薬みたいな存在

次に攻めの総務派の回答です。

  • 自発的・自立的に会社・組織を守ること
  • 総務の取り組みを紹介、社員に役立つ情報を発信
  • 情報発信者としての総務
  • より早く・深く・先回りした対応を行い、全社的な総務部の地位向上を図る
  • 今の経済状況の中では守っていても守り切れない
  • 「攻めの総務」は今あるべき姿
  • 積極的に現場に出て行き、コミュニケーションを取る
  • 全社業務の改善などを社長に提案、経営企画的な機能
  • FMの充実、積極的な施設運用・効率化運用・コスト削減など
  • 社外との接点を設け、社会的な評価を気にして、制度設計や経営管理を行うこと
  • 「作戦参謀」として経営に参画、社員に分かりやすい表現で伝え経営層との一体化を図る
  • 国内外の情報収集能力の向上、対応能力及び迅速な提案・提言能力の向上

攻めの総務派の方が勢いも回答数もありました。さて、あなたは守りの総務派ですか? 攻めの総務派ですか?


攻めと守り、どちらが良いのか?

ここで出てくる疑問は、

「攻めの総務、守りの総務。どちらが良いのか?」というものではないでしょうか? 

皆さんは、どのようにお考えになりますか? 

このような疑問もあります、

「攻めの総務、守りの総務。どちらから先に手を付けるべきか?」

私が回答するとしたら、最初の質問の回答は「どちらも大事」であり、二つ目の質問は迷うことなく「守りの総務から手を付けるべきだ」です。

確かに、守りの総務、攻めの総務の定義付けにより回答は変わってくるかもしれませんが、守りの総務をコンプライアンスやリスク管理、社内インフラの整備や最低限の社内サービスの提供だと捉えるとしたら、まずは守りの総務から行うべきだと思います。まあ、当然ですよね。

考え方としては、「MustからMore」。つまり、最低限必要なことをまずは完備して、それからさらに上を目指しましょう、ということです。特にコンプライアンスとリスク管理は、まずは対応しておきたいところです。いくら攻めの総務を推進しても、足元がおぼつかないと、いつか必ず足をすくわれてしまいます。

一方で、守りの総務だけでは管理総務レベルで終わってしまいますので会社も元気にならず、会社を変える仕掛けを行う攻めの総務でないと会社のさらなる成長も難しいでしょう。それだけ総務のチカラは大きいのです。さらに、総務で働く皆さんのモチベーションも、攻めの総務の方が高まるのではないでしょうか?

攻めの総務は新たな取り組みであり、その分クリエイティブな仕事になるはずです。自ら考え、自ら選択し、会社に成果が表れれば、その分総務も評価されます。管理総務、守りの総務は、先述したように重要ではあるものの、その仕事の中身は地味であり、なかなか評価されにくいという面もあります。


攻めの総務には守りの総務が付いてくる

攻めの総務の典型は、働き方改革ではないでしょうか? 総務で言えば働く場の改革、コロナ禍を経てハイブリッド・ワークスタイルが今後のスタイルとなり、これも新たな取り組みである攻めの総務の一つとなるでしょう。

攻めの総務には実は、常に守りの総務的な思考が必要となるのです。守りの総務にも、攻める姿勢、積極的な姿勢は必要ですが、攻めの総務には必ず、攻めているから陥るリスクが至る所に存在するのです。攻めつつ、その穴を見つけ対処するリスク管理的側面での守りの総務が重要となるのです。

例えば、リモート・ワーク。在宅勤務やサードプレイスでの勤務、はたまたワーケーション。どこでも働ける時代となり、攻めの総務としては、誰でもがどこでも働ける場の提供、制度設計を行っていることでしょう。しかし冷静に考えると、リモート・ワーク時に大震災が来た際に、総務として従業員を守り切れるでしょうか?

どこにいるか分からない従業員を総務が守るのは、実際問題としてはほぼ不可能です。従業員自らが自らを守り切る力を身に付けてもらうしか方法はないのではないでしょうか? つまり、思い切り攻めに転じてどこでも働けるようにする一方で、その分大きなリスクを背負うことになるのです。

攻めの総務は、さまざまな部分で展開されていくことになるでしょうが、常に総務としては冷静にそれに伴うリスクを洗い出し、対処方法を検討する「守りの総務」的思考が必要となるのです。つまり戦略総務、攻めの総務には「行け行けどんどん」的な勢いは必要でしょうが、冷静に考えるという二つの側面を持って初めて、会社の成長に貢献できると考えるべきなのです。

ブレーキを踏め、ということではなく、さらに加速するためのシートベルトだと理解することです。その姿勢が経営や現場の従業員に感じられれば、総務への信頼感、安心感もさらに向上するのではないでしょうか。地に足の着いた攻めの総務、冷静に攻める姿勢、大人の戦略総務。表現はともかく、どんな時でも、リスク管理的思考は、戦略総務の時代であっても忘れてはならないと強く思います。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

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著作

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経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

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