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総務のあり方。「戦略総務」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務のあり方。「戦略総務」

戦略総務とは

改めて、戦略総務について見ていきましょう。

「戦略総務とは、総務が自ら考え、自ら会社を変えること。そのために、まず、総務自身が変わること」

このように、戦略総務研究所では定義しています。

「総務が自ら考え」とは、言われてやるのではなく、総務自身が企画し提案していくことです。情報収集、ベンチマークをして、新たな仕掛けを考えていくことです。環境適応のため、法的対応のため、経営方針に則っての対応策、そのきっかけはいろいろとあるでしょう。しかし大事なことは、上から指示されて仕事するのではなく自ら発案していく姿勢です。

「自ら会社を変える」とは、会社の発展、成長のために仕掛けること、会社を内部から変えていくことです。従前の施策の延長ではなく、「新たな」施策で変えていくことになるでしょう。その実行過程においては、総務自身が未経験のことも多いでしょう。過去の経験値が使えず、四苦八苦することもあるかもしれません。会社を変えるには相当程度のパワー、リソースが必要となり、日々ルーチン業務に追われている状態では難しいかもしれません。重要なのは、考える時間や人的リソースをどのように捻出するかです。

「総務自身が変わること」。これが戦略総務では最も重要かもしれません。総務自身が変わるとは、組織として今までの仕事の仕方を変えることであり、考え方を変えることでもあります。さらに総務部門という組織は個々の総務パーソンの集合であるので、総務パーソン各人が、仕事の仕方、考え方、スキル、向き合い方等々を変えることが必須となります。

今盛んに喧伝されているDX(デジタルトランスフォーメーション)。総務のDXの目的は、この戦略総務の実現と言ってもいいかと思います。総務自身が変わること、総務自身がトランスフォームすることが、戦略総務の実現なのです。


管理総務と戦略総務

戦略総務と対比して言われることの多い管理総務、さらに管理総務を構成するオペレーション総務。これらについて説明しましょう。

オペレーション総務とは、いわゆる個々のタスクです。車両管理業務で説明すると、

  • 社有車の手配、購入するかリース契約をするか
  • 駐車場の手配とそれに関する手続き
  • 車両保険の手続き
  • 安全運転管理体制の構築
  • 社内免許制度の構築
  • 交通事故対応

等々。このような個々のタスクレベルをオペレーション総務と表現します。

そして上記のタスクが集まって、「車両管理業務」と表現されます。このレベルを管理総務と言います。他に、福利厚生管理、オフィス管理、備品管理といった業務が総務には数多く存在します。

管理総務は、決められたルールに則り粛々と手続きをする、手配をする、そのような仕事です。守りの総務と言っても良いかもしれません。そして、異常やルールの逸脱があれば是正していくことになります。

オペレーション総務、管理総務、そして戦略総務の関係性を図示すると、下記のようになります。

オペレーションが集まり、一つの塊としての管理になり、それらが整ってから、さらに上位の戦略総務に進化していくことを表しています。

ですから、管理総務がなくなって戦略総務に移行するのではなく、管理総務がしっかりとなされる状態になって初めて、戦略総務が実現できるのです。前回のコラムで、守りの総務が整ってから攻めの総務に転じることができると記しましたが、同様に、管理総務があって初めて戦略総務がある、と考えてください。


タスク分解

現有人数で従来通り管理総務を実施している状態で、新たなフェーズとしての戦略総務を実施することはできるでしょうか? 先ほど、戦略総務にはリソースが必要であると記しましたが、戦略総務を実践しようとしたら、管理総務以下の仕事を何とかしないと難しいでしょう。

戦略総務を実現するためにまず、総務自身が変わること。このように定義していますが、まさにこの管理総務以下を何とかすることが、総務自身が変わることの一つなのです。端的に言えば、管理総務以下の仕事をなくすか減らす、ということです。

「タスク分解」という言葉があります。その意味は、「どこまでを人が行い、どこからテクノロジーで置き換え、残りをどのようにBPOをするか」ということです。その本質は、得意な人に得意なことを任せる、ということです。大量のデータ転記を人が行うと、眠くなり、間違え、不平不満も口にすることでしょう。しかし、RPAに任せれば、24時間365日、間違わずに、不満も言わずに粛々と進めてくれます。管理業務の中には、さまざまなアウトソーサーが存在します。言葉は悪いですが、インハウスの従業員が行うより、はるかにプロフェッショナルです。プロフェッショナルが行った方が、そのサービスの提供を受ける現場の従業員の評価は高まるようです。

得意なことを得意に人に任せる。人が得意なことは、考えること、クリエイティブな仕事をすることです。タスク分解のもう一つの重要な意味は、空いた時間に人は何をするかということです。オペレーション総務的な仕事はテクノロジーを活用して処理し、管理総務レベルの仕事も優秀なアウトソーサーにBPOする。それにより業務から総務パーソンは解放され、空いた時間ができるわけです。その時間が戦略総務を実践する時間、時間的リソース、人的リソースとなるのです。戦略総務を実践できる体制づくりのためにタスク分解をして、リソースを作るのです。

ある外食系の会社には以前総務部員が10名いましたが、業務を徹底的に可視化してタスク分解を行い、今は2名で回しています。社内にはアウトソーサーが常駐して、従業員からの問合わせに対応しています。別のリース系の会社も同様に、BPOを活用することで考える時間を豊富に持ち、現場に足しげく通い、会社を変えるネタを探しては新たな仕事として実践しています。

総務のあり方。戦略総務の実現が、一つの目指すべき姿として考えられています。本コラムは、この戦略総務目線でさまざまな業務を捉え直し、皆さまの会社を変える一つのヒントを提供していこうと思います。



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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

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著作

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経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

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