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総務のあり方。「戦略総務実践のために」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務のあり方。「戦略総務実践のために」

戦略総務の実際

前回のコラムでは、会社を変える戦略総務を実践するには、時間や人的リソースが必要であると記しました。実際のところはどうなのか? 『月刊総務』の全国総務部門アンケートで、戦略総務について聞いている質問があります。

「御社の総務部の戦略総務的活動はどのようなものですか?」

という質問です。

その回答のグラフが図です。オレンジ色の棒グラフは、「戦略総務を意識している」という回答群。ブルーの折れ線グラフは、「特に意識してはいないが、そのような活動をしている」との回答群です。戦略総務を意識している総務の方が総じて割合が高く、積極的に総務を変えようと活動していることが分かります。

それでは、戦略総務的活動の順位の高い項目から順にみていくことにしましょう。

1番目は、不要業務の廃止となっています。戦略総務にはリソースが必要であり、それを実際に意識して業務を行っていることが分かります。やる意味がないものや価値がない仕事をまずなくすことが、業務改善の三原則「やめる、へらす、かえる」にも一番に記されています。業務をやめてしまうことが、最もリソースを作るのには適しています。2番目の、業務可視化、標準化、効率化。これもリソース作りに直結します。可視化し、誰でもできるように標準化した結果、効率化が図られるのです。

まずは既存業務の見直し、効率化から始めていることが分かります。

次に着目するところは、3番目の経営とのコミュニケーション、6番目の社員とのコミュニケーションです。リソースを作ってから、次に何に取り組むか。会社を変えるべき課題ややるべきことを、経営、社員とのコミュニケーションを通じて見定めていると考えられます。会社を変える「ネタ」を探すことが、リソース作りの次にされていることだと分かります。

その「ネタ」を実行するために戦略総務としては何をすべきなのかが、次の問題となります。VUCA時代において会社を変える施策は、初めてのチャレンジとなる施策になる可能性が高いと思われます。前例がない未体験ゾーンに飛び込むことになるのではないでしょうか。コロナ禍により標準装備される、ハイブリッド・ワークスタイルもその一つです。

着目すべき点は、5番目の専門性の向上と、11番目の専門家との連携です。会社を変える「ネタ」の実行のための「武器」を携えることと理解して良いでしょう。総務部門が自ら新たな知識を習得して、あるいは専門家と連携して、実行していく。「ネタ」を探した後は、「武器」を携え実行していく。そんな姿が見えるのです。

「Know How」から「Know Who」という言葉があります。「Know How」は自らの経験値で対処できる場合には有効ですが、未体験ゾーンには通用しません。そこで、知っている人を知っているという意味の「Know Who」が活きてくるのです。それが専門家との連携ということになるでしょう。

リソースを作り、ネタを探し、武器を携える。戦略総務実践の流れです。


コミュニケーションの中身

戦略総務実戦のための「ネタ」探し、経営とのコミュニケーション、社員とのコミュニケーションとありますが、その中身はどんなものでしょうか? そこまでアンケートでは質問していませんが、取材で聞いた話から紹介してみましょう。

あるリース系の総務部長は、毎週のように経営とのコミュニケーションの場を作っています。情報収集している点は、経営者の課題感と言います。経営の方向性は期初の今期の経営方針で分かりますが、その方針における課題感や、大きく変化する外部環境に対してどのような点が気になっているのか、日々生まれてくる「こうしたいという思い」だそうです。そのような情報をくみ取っては、総務部門として何ができるか、どう対処すべきかを随時考えているそうです。そして、経営から「これをしてほしい」というオーダーが発せられると、準備していることを実行しています。そのため、スピード感が違うと言います。常に考えて準備しているから当然です。結果、経営からは大変頼られていると言います。

ある飲食系の総務リーダーは、ルーチン業務を抱えていません。本社の中をぐるぐる回り、現場社員とのコミュニケーションに時間を費やします。まさに往年の「ぶらぶら総務」の実践です。各部門の雰囲気を感じたり、今抱えている課題や不安、不満を拾っては、総務部門として何ができるかを考えます。あるいは、総務部門で考えている施策について意見を聞いたり、総務部門への要望を確認したりしています。その要望も、そのまま受け取るのではなく、その裏に隠されている本質的な課題を見つけようと、角度を変えながら質問しています。「モノ」での要望を「コト」に変えるのです。それが欲しいのはそもそも何をしたいからなのか、その部分を突き止めるコミュニケーションです。緊急の依頼の場合は、すぐにそれを手配することになりますが、余裕のあるコミュニケーションでは、さらに深く突っ込んで聞いても嫌がられないでしょう。本質的課題を見つけるコミュニケーションを意識していると言います。


戦略総務の視線は外

他にも、戦略総務を意識している総務部門は、外に目線を向けることが多いように思います。先ほどのアンケート結果にもある、専門性の向上と専門家との連携。外部のセミナーに参加したり講習会に出席したり、あるいは情報収集の一環として、ちょっと先を行く会社を訪れたりしてベンチマークしています。

その他、積極的にベンダーやサプライヤーとの接点を持ち最新動向を教えてもらう、事例を紹介してもらうなど、情報収集を精力的に行っています。先述したように、未体験ゾーンに突入すると社内に頼るべき情報、経験値がありませんので、外に目線を移すことになるのです。となると、戦略総務実践のためには、いかに外部ネットワークを構築するかが重要となります。

外部ネットワークを構築することも一つのスキルです。次回以降では、戦略総務として必要なスキルや考え方、マインドについて紹介していくことにしましょう。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

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