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総務のあり方。「戦略総務に必要なスキル」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務のあり方。「戦略総務に必要なスキル」

総務は情報取扱業

今回は戦略総務を実現するのに必要なスキルについて見ていきます。

図は、前回同様、全国総務部門アンケートからのグラフです。自社に貢献するのに必要なスキルは何でしょうか? という質問の回答です。ブルーの棒グラフが回答者全員の回答、オレンジの棒グラフが戦略総務を意識して活動している方の回答です。

どちらの回答でも一番となっているのが、「情報収集力」です。総務は捉え方によっては、情報取扱業ではないでしょうか? 例えば、

電球が切れた、トイレが壊れた、事故が起こった :事実という情報

会議室利用率、社食の喫食数、イベント参加率 :データという情報

稟議書の内容、依頼の内容、契約書の内容 :中身という情報

リース料、水道光熱費、『月刊総務』の購入費 :価格という情報

コロナ感染状況、水害被害状況、車両事故状況 :状況という情報

このような情報が総務部門の中を行き交う。そしてその意味を把握して対処していく。総務部門の仕事のきっかけは情報となっていることがお分かりになると思います。

情報取扱業だとしたら、重要なのは、

・いかに早く情報を集めるか

・いかに正確に情報を集めるか

・場合によっては、いかに多く情報を集めるか

ということになると思います。すると、紙でやり取りがなされていると「早く、多く」は難しいことになります。また、多く集まった情報から、何かを探り当てることも多大な労力がかかると思います。ですから、「情報収集力」というスキルに必要なのは、デジタル・ツールによる収集ということになります。

デジタル・ツールが情報収集のツールだとしたら、次に必要なのは情報源です。社内もさることながら、社外にもそれは必要となります。社内であれば、社内のキーマン、インフルエンサーとのネットワーク。社外であれば、前回のコラムでも記した、専門家やサプライヤー、他社の総務パーソンです。多くのネットワークを駆使して、その情報の正確性、信ぴょう性も確認しながら質の良い情報を集めていきます。

二番目の「視野が広く、よく気付く」。これもある意味、情報取扱業務のベースとなるスキルかもしれません。情報収集力は情報ルートからの収集ですが、こちらは自ら情報を見付ける、ということになるでしょう。いわゆるぶらぶら総務をしながら、現場従業員との何気ないコミュニケーションから重要なできごとを察知し対処する、経営とのコミュニケーションから課題に気付き対処する。自分の業務範囲だけではなく、総務部門として、あるいはご自身として会社のあるべき姿、理想の働く場を潜在意識に置きながら、さまざまな情報に視野を広げなら触れていく。そこで感じる違和感であったり、ヒントとなるようなことを、自らのアンテナに引っかけていく。アンテナに引っかけるには、何かを意識していかないと素通りしていってしまいます。問題意識、先ほどのあるべき姿等の理想、そのようなものがベースにあって、「よく気付く」スキルが伸びていくのだと思います。


調整力と傾聴力

三番目と四番目の、調整力や傾聴力。総務部門には泥臭い仕事が多いものです。現場を這いずり回って対処するものから、社内の人間関係も考慮しながらの調整。特に、関係者が多く存在する新たな取り組みについては、事前の根回しが必要となります。確かに、いまはそんな時代ではない、合理的にずばずば進めれば良い、そのような意見もあります。

しかし総務部門は「逃れられない人間関係」の中での仕事なので、良好な人間関係がないと、頭では理解されても共感されずに「面従腹背」の状態となり、誰も利用されない制度が出来てしまったり、形骸化してしまったりすることにもなりかねません。人は感情を持った生き物である、そのような人間観を持ちながら、共感を得ていく調整力は、大きな仕事をする上では欠かせません。

その前提となるのが、相手の言い分をしっかりと受け止める傾聴力です。相手の言ったことをそのまま鵜呑みにして対処するのではありません。まずは相手の言い分をしっかりと「受け止める」態度です。ガス抜きという言葉もあるように、人は言いたいことを言うとすっきりするものです。頭から否定されたり、話を聞かずに進めると、大きな禍根を残すことにもなりかねません。

まずは傾聴して、さまざまな利害関係を調整していく。傾聴する段階においても、前回のコラムで記したように、その本質を聞き出していく。聴くだけではなく、語りかけ、質問していき、本質的課題を探り当てる。ファシリテーションスキルも必要となるでしょう。


経営と同じ視座で見る

五番目が「全社的思考、俯瞰して見る力」となっています。全社的思考とはまさに経営者目線、総務部門で仕事をする場合、特に必要なスキルとなります。総務部門の仕事は局所的な仕事も多いのですが、それが最後は何に繋がっているかが重要となるのです。会社の発展、業績貢献、それらに繋がっていれば、その仕事は勝ちがある仕事であり、評価もされ、総務パーソンのモチベーションも上がっていきます。

三人の石切職人の話ではないですが、目の前の石を切っているだけではなく、その先に立派な教会を見据え、そのための石を作っているのだ、そのような思考が必要となります。全社的に見て、この仕事はどこに繋がっているのか、どこに影響を与えるのか。単純に視野を広げてみるだけではなく、その先に何を見据えていくのか、そこが戦略総務では問われてくるのだと思います。

そして「交渉力」、その次が「企画立案力」。ここで着目したいのが、合計の回答と、戦略総務を意識した活動の回答との乖離が一番大きいのがこの項目であることです。戦略総務は考える総務であることを考えると、この企画立案力が非常に重要なスキルとなります。その結果がこの乖離の大きさとなっているのだと思います。それと関連したところでは、最後の事務能力。管理総務では重要視されるスキルでもあるので、ここでは逆に、合計の回答数の方が上回っています。

今回はスキルについて紹介していきました。次回は、さらに重要なマインドについて見ていくことにしましょう。



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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

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