総務のあり方。「変化は小さなことから始める」
総務から会社を変えるシリーズ
変化なくして評価なし
前回は、会社を変える「戦略総務」に必要なマインド、変化を楽しむ心についてご紹介しました。しかし、変化を人は嫌います。変化を起こす側も怖いものです。しかし、変化がなければ成果は出ず。成果を上げられなければ、総務として評価されません。今回は、変化についてお話ししましょう。
総務は因果な職種です。専門性が必要なく、誰でも出来る仕事をしていると思われている。結果、その仕事は普通に出来て当たり前であり、少しでも失敗、ミスをすると怒られる。しかも、そのような雑務と言われる仕事、言われてする仕事に忙殺されてしまう。モチベーションを上げるのに苦労するものです。
総務のモチベーション。多くの総務担当者がその答えを、現場社員からの「ありがとう」に求めています。言われてする仕事であっても、それを依頼した本人からは「ありがとう」という声を掛けられる。その「ありがとう」を求めて、いい意味で依頼者の期待を裏切る。即アクションがその一つの方策でもあります。
私もリクルートの総務時代、「小さな依頼事項」ほど素早く対応したものです。小さな依頼事項は依頼する側の期待はそれほど高くない。いつか対応してもらえれば良い、そんな依頼でもあります。それを間髪入れずに対応すると、相手は驚き、その積み重ねが総務の評判を高めていくことになりました。
アイデアを売れないと成果は出ず
「売れる総務」と言う言葉があります。自分のアイデアを売る、自分のアイデアを買ってもらう、という意味です。総務のプロは成果を上げる人、そのように言われます。成果を上げるには、自らのアイデアや施策が上司や経営に採用されないと始まりません。だから、自らのアイデアが「売れる総務」となる必要があるのです。
「売れる総務」になるためには、どうしたら良いのでしょうか? FOSCの副代表理事、クレイグさんが提唱している「FMクレド15か条」の12番目に評判管理と期待管理というものがあります。現場社員の期待を上回る仕事をして、総務の評判を高めることの必要性を謳ったものです。
売れる総務になるためには、評判を高めないといけない。「彼がやることはいつも結果を出している、だから今回も採用しよう」という評判です。評判を高めるには、日々の仕事に期待を上回るスピードで対応する、少し工夫して期待以上のパフォーマンスを上げることが一つの方策です。
もし総務が、自らのアイデアを実現しようとしたら、初めて行う施策を実行したとしたら、どうなるか? 当然、失敗することもあります。冒頭に記した総務への認識、「出来て当たり前、失敗すると怒られる」が存在すると、委縮して新たなことはしないか、したとしても相当慎重に行うはずです。
実際、総務のプロと言われる方々は、どのように対処してきたのでしょうか?
二人の総務のプロの話を紹介します。一人目は、大手製造業の総務部長。
過去に多くの日本企業の総務の方とお話ししてきました。そこから感じる外資系との大きな相違点は、スピード感でしょうか。何も動かない「0」の状態がずいぶんと長い。外資系企業だと、簡単に1に踏み出して、2、3と進みます。失敗したら2に戻って、修正して4まで進む。要は、「行って戻って、行って行って、戻って行って」、こんなスピード感です。間違いも起こりますが、慣れてくると間違いを「予測」し事前対処する能力が自然と身に付いてきます。それこそが組織を変える「人材力」につながるのです。
ある程度リスクを取りながら進めていきつつ、失敗を想定した代替案も用意しておく。成功率7割の施策なら、なんでやらないんだ、3割失敗してもいいじゃないかと。その代わり失敗に早く気付いて、早めに直して最小限に抑えることが出来れば、その人は評価される。
確かに、最適な一手が存在していて、「待って良かったね」という場合もあるかもしれませんが、それでは失敗するチャンスが少な過ぎる。人は失敗を通じて必ず何かを学ぶわけで、そこで改善につながる。失敗はチャンスでもあるのです。
これは誰の責任なのかを明確にして、助言はするけれど一歩引いてやらせてみて、失敗させてみる。失敗してもとがめない。そうすると、その人はそこから何かを学び成長します。失敗しない世界より、その方が健全だと思います。
もう一人は、世界的メーカーの総務部長経験者。
総務部長のとき、大きな失敗をして、取締役会で事情を説明する中、私の責任云々が話題になったとき、会長が「総務だって戦略的にやれば失敗はする。何もしなきゃ何も起きないけれど、戦略的にやればそういうことはある」と言ってくれました。うれしかったですね。従来通りの仕事をすれば、やけどはしないけれど何も起こらない。失敗は攻めた結果なのです。もちろん同じ失敗を繰り返さないようにはしますけれどね。
スピード重視で失敗を許容する
「小さな工夫を即アクション」。この言葉、総務担当者に対しては、素早く対応し、かつ、少し工夫することで、現場の期待をいい意味で裏切り、評判を高め、そして売れる総務となることを意味します。売れる総務となり、自らのアイデアを実現し、成果を出す、総務のプロとなる道筋を付ける。
小さな工夫。まずは総務部門から始めてはいかがでしょうか。満を持して全社導入だと、失敗したときのインパクトが大き過ぎます。場合によっては、二度とその制度の導入が出来なくなる、そのような事態にも陥ります。まずは足元、総務から始める、あるいは、管理部門から、仲の良い前向きな営業所から始める。そのようにして効果を検証して、これで行けるとなると横展開していき、じわじわと全社導入に結び付ける。成果を出している総務部門の進め方の、一つの勝ちパターンです。
戦略総務とは、ずばり「変える」こと。会社を変えるために、総務自らが企画し、総務の意志で攻めていく、その姿勢を評価してもらう。従来通りの仕事の仕方をしているのなら、なんら変化を目指そうとしないのなら、そのときはその姿勢を改めるべきでしょう。思い立ったら吉日ではないですが、思い立ったらまず総務。そんな心がけが必要かもしれませんね。