総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ その1」
総務から会社を変えるシリーズ
総務の本質、コミュニケーション
総務の仕事。今まで本コラムにおいて、いろいろと定義してきました。見方によっては、いろいろな側面があります。一つ言えることは、社内サービス業であること。現場の従業員が快適に、楽しく、本業に特化できるように、いろいろなサービスを提供していくという役割です。サービスを提供するにあたって、いろいろなコミュニケーションの場が存在します。
まずは、新たな施策を提案する段階。ここでは上司や使用部署に提案するというコミュニケーションが存在します。この提案を上司に買ってもらう、そんなところから「売れる総務」という言葉が存在します。売るためには、その利点や効果を、コミュニケーションを通じてしっかりと認識してもらう必要があります。ある意味、総務は「社内営業」と言えるかもしれません。
さらに、それを導入する段階では、利用方法の説明が必要です。当事者の身になって、理解してもらう努力が必要となります。どれだけ現場に寄り添ってコミュニケーションができるかがポイントとなります。一方で、そのサービスを企画するにも、現場従業員とのコミュニケーションを通じて、いろいろな情報を入手していくことになります。取材術のようなことも必要かもしれません。
このように、総務においてはコミュニケーションが重要な要素となってきます。コミュニケーション・スキルも必要となってくるでしょう。そこで当面、コミュニケーションに関するテーマで本コラムを進めていきたいと思います。
総務は逃れられない人間関係の中で仕事をします。その会社の総務で仕事をするのであれば、顧客は選べません。営業のように嫌な顧客であれば訪問しない、そんなことはできないのです。常に同一の顧客つまり従業員と相対することになりますから、そこでの接点、コミュニケーションが非常に大事なものになってくるのです。
コミュニケーションとは要求
それでは、そもそもコミュニケーションとは何なのか?を紐解いていきましょう。
「コミュニケーションとは要求である」。これはドラッカーの言葉です。コミュニケーションにおいては、何らかの要求があるということを意味しています。その要求とは、ある事象について知って欲しいというもの、その事象について理解して欲しいというもの、共感して欲しいというもの、そしてある行動をして欲しいというものがあります。
例えばCSRで説明してみましょう。CSRという概念を社員に知って欲しい。CSRの背景と目的について理解して欲しい。所属する企業が実践しているCSR活動について共感して欲しい。社員自らCSR活動を実践して欲しい。そのような要求、意図がある場合、例えば総務部門から社員に対して、社内コミュニケーション・メディアでCSRの企画が掲載される等のコミュニケーションが行われることになるのです。
逆に、このような明確な要求がないと、伝わるものも伝わらないと言うことができるでしょう。コミュニケーションを取ろうとする者は明確な要求や意図を持ち、その要求が最も実現しやすいコンテンツと手段を用いてコミュニケーションの相手にアプローチしていくことになります。要求レベルによって、表現すべきコンテンツ、取るべき手段が異なってくるので、その要求を明確にしておくことが必要となります。
また、相手に行動してもらおうと思ったら、先に記したように、知る、理解、共感というプロセスが必要となり、行動まで到達するにはかなりハードルが高いということになります。
コミュニケーション・ツールの活用
コミュニケーションが要求であるとすれば、下記の全てのものは社内コミュニケーション・ツールであると言えます。なにも社内コミュニケーション・ツールは社内報だけではないのです。
- 社内報、社員手帳、手紙、パンフレット、カレンダー、電子メール、イントラネット、ホームページ、動画
- 壁新聞、掲示板(ホワイトボード)、ポスター、展示、放送、スライド、ビデオ、デジタルサイネージ
- 勉強会、職場集会、会議、説明会、講演会、懇談会、朝礼
- 各種運動(安全運動、提案制度など)、運動会、工場見学、慰安親睦会(社内旅行、新年会、パーティーなど)
- 教育研修、小集団活動、プロジェクト活動、面接、改善提案制度、表彰制度
教育研修も「このような人材になって欲しい」という要求の現れですから、社内コミュニケーション・ツールの一つとして考えても良いでしょう。そうなると、本来的には上記の全ての社内コミュニケーション・ツールが、同じ方向を向いたメッセージを持っている必要があります。社内報ではこのように言っているのに、研修の場では異なることを言っていては、メッセージを受け取る社員は混乱してしまいます。表現は違えど、メッセージは同じ方向性であることが大事です。
しかし、上記のツールを全て管轄している部署は存在しないのが実情です。管轄はしないものの、それぞれの部署でメッセージを発信する場合は、他の部署のメッセージの内容に気を配りたいものです。
メッセージを伝えるには、あの手この手で行う必要があります。単一のツールで伝わることはほとんどないと言ってもいいでしょう。先に部門間のメッセージの統一が必要と言いましたが、それぞれの部門が保有している社内コミュニケーション・ツール間のメディア・ミックスも考えておくことが必要です。
一つのメッセージを部門間で共有して、多様なツールで多角的に伝えるという手法です。ですので、それぞれのツールの強み、弱みを把握しておくことが大切です。社内報やイントラなどのメディア系は、読まれないと全く伝わりません。いかに読まれるかという工夫が必要ですが、いつでもどこでも誰でも読めるというメリットがあり、じっくり読まれれば深い理解まで到達することが可能です。
一方リアルな「場」系のツールは、参加者に臨場感ある強烈なメッセージを届けることができます。共感、感動させるには最適なツールです。しかし、そのメッセージを継続させるのが課題でもあります。職場に戻ると元の木阿弥という事態もよくあることです。このように一長一短あるツールを組み合わせることで、それぞれのコミュニケーションの要求を実現させることを企画するのです。
現在はテクノロジーツールの進展が目覚ましく、映像コミュニケーション、テキスト・コミュニケーション、さらには、アバターを通じてのコミュニケーションなど、多様なテクノロジーツールが存在しています。社内コミュニケーションを司る部署では、ツールの研究を怠らず、最適なコミュニケーション環境を構築すべきでしょう。