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総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ その2」

総務から会社を変えるシリーズ

総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ その2」

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

コミュニケーションでは「違い」が大事

前回は「コミュニケーションは要求である」という言葉を説明しました。ドラッカーは、コミュニケーションの4原則として、「コミュニケーションとは要求である、期待である、知覚である。そしてコミュニケーションとは情報ではない」。そのように表現しています。今回は、その中から、「コミュニケーションは知覚である」を解説します。端的に言えば、コミュニケーションでは相手との相違を意識することが大事である、と言うことです。相手と自分は全く異なる、この意識が大切なのです。総務部門においては、総務部門のメンバーと、現場のメンバーとの違いを意識する、ということです。

ドラッカーはこのような例えを使って説明しています。自分はロシア語で会話できたとしても、相手がそれを解さなければ、ロシア語での会話ではコミュニケーションは成立しない。自分はロシア語が分かるが、相手はロシア語が分からない。ロシア語についての自分と相手との相違を意識しないといけない。だから「コミュニケーションは知覚である」と言っているのです。

「そんなことは当たり前!」と思われる方がほとんどでしょう。 確かに、これは誰にでも理解できる例えです。しかし、経営トップが社員にメッセージを発信する。総務部門が社内報を発行する。開発部門が営業部門に依頼する。このような日常の何気ない場面においても、この言葉を意識していないことで、コミュニケーションの不成立が生じているのです。

そもそも、自分と全く同じ人間はこの世に存在しません。全く同じバックグラウンド、同じ考え方、同じ情報リテラシーを持っている人間は存在しません。そして、コミユニケーションにおいては、2人以上の人間の存在があります。だとしたら、コミュニケーションにおいては、常に相手との相違を意識しなければならないはずです。


総務部門は会社の中枢部門

先に記した、経営トップが社員にメッセージを発信する際、どうしても経営トップ目線になってしまいます。経営トップと社員とでは、見ている世界が大きく異なります。考えていること、問題意識も全く異なります。持っている情報、触れている情報に歴然たる相違があります。

この違いを意識して経営トップはメッセージを発信しないと、社員は理解できません。見ている世界が違うので、追い付いていけないのです。たとえ理解できたとしても、自分の身に置き換えて具体的な行動をイメージすることができないはずです。よくある「総論賛成、各論意味不明」状態に陥ってしまうのです。

この例もまた、「そりぁ、そうだろう!」と理解しやすいものかもしれません。しかし、総務部門が社内報を発行する場合はどうでしょうか? 実際に多くの広報担当者が「コミュニケーションは知覚である」を全く意識せずに、社内報を発行しています。結果として、読まれない、行動に結び付かないものになっているのです。

総務部門は、他の管理部門も同様ですが、一般的に経営の中枢部門であるはずです。そこでは、毎日のように高度な情報がやり取りされ、また経営層と日常的に接する機会もあります。最新の情報シャワーを常に浴び続けている人たちです。問題意識も違います。全社目線で考えることも多いかと思います。

一方、現場の従業員は目の前の仕事に忙殺され、その仕事に対応するために必要な情報にしか触れていない場合もあります。 日常的に経営層と接点があることはまれでしょう。偏った、範囲の狭い情報シャワーしか浴びていないケースもあります。

この場合、総務部門のメンバーの目線で作成した社内報、あるいは通達、何らかのメッセージが、果たして現場の従業員に理解できるでしょうか。確かに日本語が読めれば何となくは理解できるでしょうが、経営用語や専門用語を駆使されては、その理解もおぼつかないことになるでしょう。

いわんや、共感されることはほとんど不可能ではないでしょうか? そもそも問題意識が異なり、見ている世界が違えば、自分事として捉えることはないでしょう。関係性が認知できない限り、当事者意識を持って共感することはあり得ません。結果、コミュニケーションを取ろうとする者の意図に適った行動を、コミュニケーションの相手側が取ることはないでしょう。

他部門から総務部門に異動して社内報を担当する場合、当初は、それまで所属した部門の目線で編集します。「現場にいたころ、社内報は面白くなくて全然読まなかった。だから、自分は何とか現場目線で企画立案し編集して、現場に読まれるものにしたい!」との意気込みで始めるのですが、しばらくすると総務部門の目線になってしまい、現場目線から外れてしまっていく、というのが実際のところでしょう。このように、相手との相違を意識して、相手の目線でコミュニケーションをするということは、相当意識的に行う必要があるのです。


相手を知ることから始まる

コミュニケーションにおいては、コミュニケーションの受け手に主導権があります。どんなに相手のことを考えてコミュニケーションをしたとしても、相手が「分からない」と言ってしまえば、コミュニケーションは成立しません。ですから、コミュニケーションを取ろうとする場合、相手の状況をよく把握することが前提となります。相手の関心事や問題意識、情報量などを把握して、それを前提にコミュニケーションをするのです。ドラッカーの言うところの、自分と相手との相違を知ることがコミュニケーションを成立させることに繋がるのです。

コミュニケーションは相手により成立する。であるなら、相手が理解できるようなコミュニケーションにする。であるなら、相手に合わせたコミュニケーションにする。よって、相手に合わせるのであれば、相手のことをより深く知ることが必要となる。ということになるのです。「コミュニケーションは知覚である」。常に意識しておきたい言葉です。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

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