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総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ その3」

総務から会社を変えるシリーズ

総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ その3」

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

聴いているようで、聴いていない

本コラムの前2回では、コミュニケーションを取ろうとする側について記してきました。いかにすればメッセージが伝わるのか、理解してもらえるのか、はたまた行動してもらえるのか。その工夫や考え方について記してきました。明確な要求を掲げ、さらには、相手のとの違いをしっかりと認識して、相手目線でのコミュニケーションの重要性を説明しました。

しかし、お伝えしているように、「コミュニケーションは受け手により成立する」という冷徹な原則がある限り、コミュニケーションを取ろうとする側の努力には限界があります。むしろ、コミュニケーションを受ける側の努力や姿勢がメッセージ伝達には必要であり、それにより良好なコミュニケーションが成立するのです。

最も伝わるコミュニケーションは、Face to Faceの一対一のコミュニケーションです。目の前にコミュニケーションをする相手がいれば、その方に合わせた話のレベルでコミュニケーションが取れますし、その反応を見て対応が可能です。

しかし、目の前で話をしていても、受け手が集中して聴いているかどうかは定かではありません。聴いているようで聴いていない。集中しているようで他のことを考えている。そのような事態が生じているのです。それはなぜなのでしょうか? なぜ一生懸命コミュニケーションをしているのに、伝わらないのでしょうか? 

現在は、ハイブリッドワークが主流になりました。すると必然的にzoom等によるオンラインコミュニケーションが中心となり、リアルの時よりも伝えることが難しくなっています。コミュケーションを受ける側つまり相手のこともしっかりと理解する必要があるようです。


脳の余裕が邪魔をする

ある調査によると、日本人の話すスピードは毎分400字程度である一方で、聴くスピードは毎分2000字程度であるとのこと。つまり、人間の話す能力と聴く能力には大きな開きがあることになります。

人の話を聴くときには、脳が持っている聴く能力に対して、かなり遅いスピードで話がされている状態となります。つまり脳にとっては、持っている能力と比べてかなり余裕がある状態で聴いていることになります。この余裕がある状態が「曲者」なのです。

脳に余裕があるので、話を聴きながら、つい他のことを考えてしまうのです。能力的に考えることができてしまうのです。脳の持っている処理能力に余裕があるので、他のことを考えながらも何とか聴くことができるのです。もちろん、集中して聴いている状態と比較すればその理解度は格段に落ちますが、適度に相槌を打ったり、他のことを考えながらも、話の前後の繋がりをつけて、さも聴いているように対応できてしまうのです。逆に言えば、それだけ脳の能力は高いと言えるのかもしれません。

人の話を聴いている途中で、いま抱えている仕事で忘れていたことが頭をよぎり、そのことを考えてしまい、ふと我に戻ったときには話が進み、肝心の部分を聴きもらしてしまった。あるいは、話されていることからヒントを得てしまい、頭の中でそのヒントからいろいろと考えだして別世界に行ってしまう。

または、人の話はしっかりと聴いていても、途中でその人が何を言わんとしているのかを考えだしたり、細かい部分が気になって途中から上の空になってしまうとか、言っている内容に心の中で反対し始めて、集中が途切れてしまうとか。

たとえ一対一のコミュニケーションであっても、相手は集中して聴いているか分からないのです。集中していなければ、しっかりとメッセージが伝わるかどうか分かりません。コミュニケーションの集中を継続する努力が必要になるのです。


質問が効果的

受け手の集中を継続させるには、適度に質問をすることが一つの方法です。セミナーや研修で講師が質問し始めると、受講者の緊張は一気に高まり集中し始めます。話についていけないと、質問に答えられないからです。

あるいは、受け手の興味関心事が話され始めると、集中して聴くようになります。セミナーの場では、事例を紹介すれば聴衆の顔が一斉にこちらを向きます。事例は具体的なイメージが湧くからです。また勉強する方は、とにかく事例を欲しがる傾向もあるからです。どうすれば良いか、という解決策を欲しがるからです。

だとしたら、コミュニケーションの相手がどのようなことに興味があるか、どのような話の内容だとしたら食いついてくるかを把握しておくことが必要になります。事例なのか、考え方なのか。その点を強調してあげると良いでしょう。

また、話の長さ、伝えようとするメッセージの分量にも配慮が必要です。ある心理学者による某会社のコマーシャルポスターでの実験で、文字数が50字と150字では、どちらを読むかを調査しました。結果は50字の方。文字数が多いと、そもそも読まれないという傾向があるようです。

別の実験によると、メッセージが1本のポスターとメッセージが10本のポスターでは、どちらが記憶に残ったかというと、メッセージが1本のポスターの方。つまり、伝えるには極力メッセージを絞り込む、そして少ない文字数で表現するという配慮が必要となってきます。

脳の能力が優れていることで傾聴ができないということ以外にも、コミュニケーションを取ろうとする人の態度に傾聴の妨げになる要因があることがあります。話している態度が気に食わないとか、何か一言に対して「かちん」ときてしまい、それ以降は全く真面目に聴こうとしなくなってしまう。このような感情に左右されると、傾聴することができなくなります。

ですから、コミュニケーションを取ろうとする人は、その態度に気を付けなければなりません。コミュニケーションの受け手は、話を聴く際は私情を交えずに、内容の是非の判断に集中することが重要です。嫌な態度であっても、聴いておくべき内容であるかもしれません。

とにかくメッセージをしっかりと伝えることは難しいものです。話し手と受け手の共同作業によりメッセージは伝わっていきます。どちらか一方の努力だけでは、なかなか伝わらないものです。聴いているようで聴いていない。これもまた現実であると意識しておきましょう。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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