総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ モチベーションを上げるには」
総務から会社を変えるシリーズ
モチベーションが上がる状態とは
ビジネスでもプライベートでも、何かをやり遂げようと思ったら、その根底にはモチベーションが必要となります。モチベーションを継続しないことには、その取り組みも継続しません。そこで今回は、総務が仕事をする中でモチベーションを上げるコミュニケーションの「ネタ」を考えてみましょう。
ハーズバーグの衛生理論によると、人は次に示す状態であるとき、モチベーションが上がると言います。
- やりがいのある仕事を通して、達成感を味わえるとき(達成)
- 達成した結果を、上司や同僚に認められるとき(賞賛・承認)
- 仕事に自己の知識や能力を活かせるとき(仕事そのもの)
- 責任をもって仕事を任されるとき(責任)
- 仕事を通じて能力を向上させ、人間的に成長できるとき(成長)
このような状態にあるときモチベーションが上がります。しかし、1と2はその人の状態であり、当事者が実践し、達成した状態、あるいはその結果を称賛することが必要です。3と5についても、実践するか、その可能性が感じられることが必要でしょう。4については、これからの状態についてモチベーションが上がる、ということになります。
今回のコラムのテーマは、コミュニケーションにおけるネタの選択により、モチベーションを上げようとするものです。先の5項目も交えながら探っていきましょう。
目の前の当事者の場合
これはコミュニケーションする相手そのものがネタの場合です。目の前の人をネタに、その人のモチベーションを上げるネタのことです。これは比較的容易にイメージが付くと思います。先の5項目に絡めて、目の前の人とコミュニケーションすれば良いのです。
2の項目が、まさにそれです。目の前の人のなし得た結果、功績を称賛するのです。ただ単に称賛、褒めるのではなく、具体的にどこが素晴らしかったのか、どの点が成果を上げた要因だったのかを詳細に伝えるのです。
具体的な成功ポイントが明確になれば、喜んで繰り返し実践していくことでしょうし、自信を持って物事に取り組んでいけるでしょう。自信を持って喜んで実践するという、モチベーションが上がった状態で行動していくことに繋がります。
3と5についてもコミュニケーションのネタとして活用できます。既に実践して結果が出ているのであれば、2と同様にそれを称賛すれば良いでしょう。これからの話であるのなら、相手に身近に感じてもらい、具体的なイメージが湧くようなコミュニケーションをしてあげることです。相手に自分事として捉えてもらう必要があります。自分に置き換えて考えてもらうことが大切です。
目の前の人が現実感を持って考えてくれるようにするには、その人の現状の延長線でのイメージが必要です。当然、相手のことを把握している必要があります。日ごろからのコミユニケーションが必要です。自分のことをよく知っている人からの話であれば、納得感も違います。いきなり赤の他人から同じ話をされたとしても、そもそも聞く耳を持てないかもしれません。
自分に同様の経験があったり、他の人の事例があるのであれば、その事例と目の前の人との接点を見つけます。その接点と事例を結び付け、目の前の人も同様のことが可能だと示していくのです。「昔、私もあなたと同じことに悩んでいてね」という表現がそれに当たります。そのような表現により、自分事として考えていくスタート地点に立てるわけです。
スタート地点に立ってもらえれば、次は連続性のあるイメージ作りをお手伝いしてあげるのです。最終形、あるべき姿にたどり着くストーリー展開です。途中で少しでも無理な展開になってしまうと、相手はついてこられなくなり、自分事でなくなってしまいます。相手の反応を見つつ、丁寧なコミュニケーションが必要でしょう。
他の人の事例を使うとき
具体的には、自社の他のメンバーが頑張っている状態をコミュニケーションのネタとする、というものです。先に記したのは、目の前の人と他社の事例を結び付け、その事例のようになれることでモチベーションを上げようとするものです。
次のパターンは、目の前の人をそのような状態にしようとはしないものです。ただ、狙いとしては他者の事例をネタとすることで、ポジティブな危機感や刺激を与え、奮起のモチベーション、「私も頑張らないと」という気持ちを喚起することを目的とするものです。
この場合は、取り上げる他者事例が目の前の人と同じ属性のほうが、効果があります。あまりにかけ離れた事例では、「ふーん、凄いね、その人」で終わってしまいます。同年代、同職種、同一部署など極力身近な事例が良いでしょう。あるターゲットを奮起させたいのであれば、そのターゲットそのものを事例として使うのです。
身近な事例であっても、あまりにも凄すぎる事例は敬遠されてしまうかもしれないので、ハードルの低い事例が良いかもしれません。ただ、相手によってはそれでは奮起しないケースもありますから、先と同様に目の前の人のモチベーションのツボを日ごろから押さえておくことをお勧めします。
自社を取り上げる場合
具体的には、顧客や他の会社の人に会社を褒められたり認められたりしたネタを使うパターンです。あるいは、コミユニケーションの途上で自社の良さに気付いたときなども該当します。
組織にとっては、所属するメンバーが所属する組織に誇りを持ち、組織の成果のために働いてもらうことが最も望ましい状態です。この状態を目指すことがこのパターンです。他で耳にした、顧客や全くの第三者による自社への称賛。このネタは日ごろから収集しておき、仕事への意欲が減退している人に積極的に伝えると良いでしょう。
一対一のコミユニケーションではありませんが、ある食品加工会社では、顧客からのサンキューレターを大量にコピーして、自社の工場の食堂やリフレッシュルームに掲示しています。日ごろ顧客と直接接点のない工場勤務者は、自分たちが製造している商品が本当に喜ばれているのかを実感する機会がなく、このサンキューレターにより大変モチベーションが高まるそうです。
これは先に記した2のパターンの進化系です。上司や同僚ではなく顧客に喜ばれていることを知ることにより、モチベーションが上がるパターンです。自分たちが目指している顧客満足が実現されている状態を知ることが、企業組織のメンバーにとっては最大の喜びであり、目指しているものが実現できているという自信にも繋がるのでしょう。