総務の仕事。「社内報で目指すもの」
総務から会社を変えるシリーズ
社内報で目指すもの
今回から、社内報を取り上げます。社内コミュニケーション活性化のベースとなる社内メディアです。総務部門内で編集されている方もいるでしょう。基本的なところから始めていきましょう。まずは、そもそもなぜ社内報を発行するのかという点です。一般的に言われる型は下記の通りです。
- 情報共有型
- コミュニケーション強化型
- 風土醸成型
- 意識改革型
- トップダウン型
社内報作りで目指しているタイプですから、ほぼ発行目的と言ってもいいかもしれません。多くの企業で、社内の情報共有を目指しているようです。このとき、どの情報を共有すべきなのでしょうか。企業活動をしていれば、さまざまな情報が日々発生します。誌面の制約がある中、何でもかんでも情報を掲載するわけにはいきません。何らかの取捨選択の基準があってしかるべきです。
コミュニケーション強化型とは、誌面を通じてコミュニケーションを実現するのではなく、社内コミユニケーションを活発にするきっかけを提供する、ということが目的です。であるなら、どのようなコンテンツを提供すれば社内コミュニケーションが活発になるのでしょうか。
風土醸成型。これこそ、分かったようで分からないタイプです。そもそも風土とは何を指しているのか。目に見えるもの、言葉にできるものでなければ社内報に掲載することはできず、結果として醸成することもできないはずです。一体、どのような企画がこのタイプに該当するのでしょうか。今回は、情報共有、コミユニケーション強化、風土醸成について細かく見ていきましょう。
情報共有型とは
社内報に掲載される情報は、社内の出来事や人物、部署に関するもので、ほぼ全てが社内の情報です。ですから、情報共有型というのは、至極もっともなことです。しかし社内報には誌面の制約がありますから、あらゆる情報を掲載することは不可能です。読んでもらいたい、伝えたい、知っておいてもらいたい情報を選択する必要があります。
そもそも社内広報とは、教育および業務上のコミュニケーション不全の補完と言われます。つまり、業務上必要なコンテンツ、教育で伝えられるコンテンツを補完するものと捉えることができます。絶対に知っておくべきことは、社内報とは別のルートの、職制を通じた、ある意味強制的なコミュニケーションの中で伝えられるものです。
ですから、社内報を中心とした社内広報のコンテンツは、平たく言えば、絶対に知っておかないといけないわけではないが、知ることにより仕事が進めやすくなる、効率的に仕事ができる、会社生活が楽しくなる、といったプラスαのコンテンツと言ってもいいかもしれません。
例えば、読むことで、
- モチベーションが上がる
- 自社への誇りにつながる、自社のことを自慢したくなる
- 自分の悩みや課題が解決できるヒントを与えられる
- 自己啓発につながる
- 自社の方向性が理解でき、自らの仕事の方向性を定めることができる
- 自社の社員としての立ち居振る舞いのあるべき姿が分かる
そのようなコンテンツ、情報が考えられます。
つまり、情報を掲載することで、読者に何を伝え、その結果、読者の心情、行動にどのようなプラスαの効果を生み出すかを考えるべきなのでしょう。とりあえず誌面にスペースがあるから掲載するのではなく、その結果、何が起こるのかを見定めるのです。
逆に言えば、目指すべき結果を引き出す情報を取捨選択することが望ましいのです。それは編集方針として定めるものかもしれません。いずれにせよ、共有する情報も漫然と選択するのではなく、一つの基準を持って選択すべきでしょう。情報共有型社内報とは、「情報を共有する」ことが目的ではなく、「その結果、どうしたいかを見定めた情報を共有する」というのが、あるべき姿ではないでしょうか。
コミュニケーション強化型とは
先に記したように、コミュニケーション強化型とは、誌面を通じたコミュニケーションではなく、リアルなコミュニケーション、会話を活発にするためのきっかけを提供することだと理解すべきでしょう。会話のきっかけには、大きく分けて「オン」と「オフ」があります。「オン」とは仕事に関すること、「オフ」はプライベートに関すること。ちょっとした会話にはプライベートネタが相応しいでしょう。ですから、コミュニケーション企画の場合は、プライベートを紹介する企画を指すことになります。
人物紹介や部署紹介のちょっとしたコラム、座談会やインタビュー記事でも、登場者を紹介する場面でプライベートネタを掲載するケースがあります。例えば、
- 出身地や家族構成
- 好きな食べ物
- ペットの紹介
- おススメの書籍やお店
- マイブーム
- 座右の銘とそれにまつわるエピソード
等々、さまざまな切り口が考えられます。
そのようなプライベートネタが読者の記憶に残れば、それを元に会話をしようと思うかもしれませんし、社内で顔を合わせたときにそれをネタに会話が始まるかもしれません。
「オン」の会話のネタとは、仕事に関すること、例えば、
- 所属部署
- 管轄業務のこと
- いま活動しているプロジェクトのこと
- 業務に関する得意分野、専門分野、得意な業界など
- 過去の職歴
- 成功体験、失敗体験
等々、これもさまざまな切り口が考えられます。
これらを全て掲載するということではありませんが、何らかの形で社員が登場した場合は、小さな囲み記事でもいいので、ちょっとした小ネタとして掲載しておけば、それがきっかけで会話や問い合わせが入る可能性が考えられます。つまり、このような会話のきっかけを掲載することは、それにより必ず会話が始まるというものではありませんが、掲載することで会話が始まる可能性を提供するということになるのです。だとしたら、そのきっかけは多いほど可能性が高まります。人物登場企画の場合は、このような可能性を高めることを常に意識しながら情報を掲載していくことが大切でしょう。
風土醸成型とは
風土醸成型社内報。言葉をそのまま解釈すれば、風土の醸成をサポートする社内報という意味になります。この場合、問題となるのが、風土をどのように切り出すか、ということです。風土とは目に見えないものですが、企業における風土、社風とは、所属する社員のある特定の思考パターンであり、立ち居振る舞いのことであり、仕事の進め方と考えることができます。であれば、その思考パターンや行動パターンを色濃く持っている社員を取り上げることが一つの料理方法かもしれません。
「あいつは典型的な〇〇マンだ!」(○○は企業名)と言われる人が社内にいるはずです。それがここで言う風土を色濃く出している社員です。その社員の思考パターン、行動パターンを切り出して掲載していく。そして、そのパターンをなぜ取るのか、根底の部分を探り出していく。
そのような社員は意識せずにそのようなパターンで行動しますから、寄稿してもらってもその本質は見えてきません。本人も気づかない思考パターンには、徹底した取材が必要です。それをあぶり出して掲載し、読者にまねをしてもらうことにより、風土を伝播させていくのです。
まねをしてもらうには、その方法もさることながら、そのパターンを取ることのメリットもあわせて紹介していかないと行動に移してはくれないでしょう。ですから、取り上げる社員にはそれ相応の実績も必要となることになります。
風土醸成型社内報とは、まず風土を理解し、その風土を具現化している社員を見つけ、その思考や行動パターンの根底部分を探り出す取材力が必要な社内報の型でもあります。今回紹介した中では、結構その実現が難しい型かもしれません。人に迫り、共感される記事作りが必要となる型でもあります。