総務の仕事。「社内報の作り方」
総務から会社を変えるシリーズ
社内報の作り方
前回では、社内報の目指すもの、あり方について記しました。今回は実際に社内報を発行する際に、明確に定めておくべきことを紹介します。社内報は難しいメディアの一つと言われます。お金を払って読むものではなく、無料で社員に配布されるものですから、読みたくなる仕掛けが必要となります。読んでためになるのか、そもそも読みたいコンテンツがあるのか、という問題があります。
読まれなかったとしても、担当者としては発行しなくてはならず、いつの日か、
「うちの社内報、誰か読んでいるの?」
「おもしろくないから、発行しなくても良いのでは?」
「経費削減、まず社内報からでしょう」
担当者としては泣きたくなるような発言がされることもしばしばです。安易な気持ちで発行すると、このような状態に陥ってしまうのです。社内報を発行するには、しっかりとした計画が必要となります。ページ数や見せ方などの編集技術はその後でいいのです。誰に対して、どうしたいのか。読者を通じて、組織をどのように変革したいのか。社内報の目的、料理の仕方、ターゲットなどを明確に定め、それに基づき個々の企画や見せ方を考えていくのです。せっかく費用と手間をかけるのですから、綿密な計画のもと、しっかりとPDCAを回していきます。そのために必要な5つのポイントを紹介します。
発行目的を明確に定める
社内報は発行することが目的ではありません。さらに、社内報は読まれるだけでもいけません。社内報を通じて、組織に動きを起こすことが“真の目的”です。行動に結び付く社内報を目指すべきです。例えば、「経営理念を理解し、それに則った行動を促す」のか、「組織内で意味のある会話が盛んにされるようにする」のか、あるいは「部門の壁を越えて、組織間でのコラボが頻繁に行われる風土を目指す」のか。組織を動かし、企業を良くしていくことを最終目的、社内報の発行目的とすべきです。となると、そもそもどういう組織になって欲しいか、どういう会社、風土になって欲しいかが明確でないと、目標設定ができません。効果検証もできません。ありたい姿をどれだけ明確にイメージできるか、言語化できるか。そこから社内報作りは始まっていると言ってもいいでしょう。
編集方針。どのような切り口から企画立案、編集していくのか定める
発行目的を定めたら、今度はそれをどのような切り口で具現化していくか、編集上の基本方針を定めます。さまざまな情報、取材対象者、写真などをどのような切り口から編集していくか。いわば素材の料理方法です。
例えば、「人を中心としたストーリー性のある記事を中心に掲載する」とか、「本音にとことんこだわり、その人らしさを醸し出す」とか、「真剣勝負の瞬間を切り取った写真を多く掲載する」など、どのように料理していくかを定めるのです。「人間の最も関心のあるものは人間である」という格言もあるように、基本は人を中心に編集することが多いものです。ベースにあるのが編集担当者の人間観となります。人をどのように捉えるか、ある意味、そこが問われるのがこの編集方針と言えるでしょう。
誰をメインのターゲットにするかを定める
社内報を全員に読んでもらいたいと思うのが編集者です。ただ、全員に共感される記事というものは、ほとんど無理だと考えるべきです。知る、理解するというレベルであれば、社員全員を対象にすることも可能でしょう。しかし、価値観に左右される共感については、ターゲットを明確に定めて企画立案すべきです。
ターゲットは二つあります。まずは、社内報のメインの読者ターゲットです。一番社内報を読んでもらいたい層です。例えば、「これから会社を背負っていく30代半ばのリーダークラス」、あるいは「企業に影響のある階層」に向けた社内報もあります。ポイントは、どの層に一番成長して欲しいか、力を発揮して欲しいかを見定め、それを意識しながら企画、編集していくことです。もう一つは、企画ごとのターゲットです。その企画で最もメッセージを届けたい、行動して欲しい層を定めて、その層に所属する人をイメージしながら企画立案していくのです。いずれにせよ、メインの読者をまずは明確にしておきます。みんなに読んでもらいたいと思うのが人情ですが、みんなに読んでもらうには、角が取れて当たり障りのない内容となり、結果として誰にも刺さらない社内報となる危険性があります。
編集体制。社員を巻き込みながら編集していく
次は、通信員、編集員やモニター制という、社内報編集上必要な組織体制の構築です。社内報担当者が現場をくまなく歩き、情報収集することができれば良いのですが、拠点が全国にまたがる場合や、なかなか外出できない場合は、拠点ごとに通信員を配置して、情報や記事ネタを集め、場合によっては記事を書いてもらうような体制が必要となります。
企画立案にまで参加する編集員制度を構築している企業もあります。その場合は、定例の企画会議にも参加してもらい、編集部と一緒に企画立案し、担当ページを持って編集に当たります。また、モニター制といって、毎号必ず社内報の感想を送る役割を設置しているケースもあります。全頁に目を通し、率直な意見を述べる係です。これにより読者アンケートでは見えてこない意見を収集し、リニューアルの参考にしていきます。このように読者である社員を巻き込みながら、皆で一緒に社内報を作成していく組織体制も必要となります。
年間計画。この1年、社内報で何を伝えていくかを定める
そして最後に、年間計画を立案します。1年かけて社内報でどのようなメッセージを発信していくのか、年間の企画立案の柱を定めるのです。例えば、「中計初年度の今年は、そのスタートダッシュに当たる年。まずは中計の根本思想を社員目線で伝えていく」とか、「今年は創業10周年。いま一度、創業の精神を振り返る1年にする」とか、「今年は社内報創刊1年目なので、社員目線で社員に役立つ社内報であることをしっかりと伝えていく」などです。特に特集企画頁がある場合、この年間計画に基づき、早めに仕込みを始めます。いい企画、読まれる企画には、それなりの時間が必要です。早めに取りかかれるように、年間計画を必ず定めましょう。