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総務の仕事。「社内コミュニケーション、深化の順番」

総務から会社を変えるシリーズ

総務の仕事。「社内コミュニケーション、深化の順番」

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

コミュニケーションの糸口

コロナ禍により、働く場が分散され、コミュニケーションが希薄化しました。多くの企業が体感した事実です。そこで、コミュニケーションの量を増やし繋がり感を醸成しようと、多くの総務パーソンが試行錯誤を繰り返しています。しかし、モノには順番があるように、コミュニケーションを深化させるにも順番があります。今回は、このコミュニケーションの深化についてご紹介しましょう。

深化の順番とは、コミュニケーションの質を高める順番でもあります。そして最終的な目標は、組織の構成員同士が本音で思いをぶつけ合っている、ある課題についてそれぞれの立場を超えて本気で議論している、そのような姿ではないでしょうか。

この状態に至るまでには、いくつかのステップがあります。そもそも、コミュニケーションはどのようなきっかけから始まるのでしょうか。道すがら行き交う人とコミュニケーションを取ることはないでしょう。その人の存在を認知する、意識することから始まります。

意識した相手の人柄、仕事のことやプライベートのことを少しでも知ることで、会話の糸口となるきっかけが見つかります。自らとの接点が見つかると話しかけやすくもなります。まずは挨拶から始まり、雑談に発展していくでしょう。

雑談を通じてさらにその人への深い理解がなされ、その人の得意分野、持っている知識や経験を知ることで、相談に発展する可能性が出てきます。お互いの考えが理解できるようになると、相談を超えた議論の場に発展していくでしょう。

このように、いきなり深いコミュニケーションがされるのではなく、お互いの認知から始まり、挨拶、雑談を経て相談、議論へとコミュニケーションの状態が深化していくのです。このような深化の過程をどのように仕組んでいけばいいのでしょうか。


その人がいるという認知から

最初のフェーズである存在を認知するためには、社内コミユニケーションメディアを活用します。同一部署内であれば、まず自己紹介し歓迎会を開くなど、リアルな場でお互いの人柄を知る場が多くあります。

しかし他の部署の人については、そのようにリアルに接する場はほとんどありません。社内コミュニケーションメディアの部署紹介や人物紹介などで存在を知ってもらう企画を掲載する施策が考えられます。

このように社内報に積極的に社員を登場させることで、いろいろな側面からその社員の存在が認知されるきっかけにもなります。ニュースコーナーであっても、関係者を登場させ意見を言ってもらう、顔写真を掲載するなどして認知度を高めていきます。

また、仕事に関するネタで登場してもらったとしても、プライベートの情報も掲載することで、それがコミュニケーションのきっかけともなります。好きな本、好きな食べ物、出身地などが掲載されていれば、接点が見つかり話しかけやすい状況を作り出せます。このように、社内コミュニケーションメディアを駆使して、さまざまな社員を取り上げ、社内における認知度を高め、会話のきっかけを提供することが大切です。


リアルの仕掛け

存在を知り、すれ違った時に挨拶が交わされ、そしてそこから雑談でも構わないのでコミュニケーションが開始される。 次のステップは、その状態を数多く仕掛けることです。それは当然、リアルな場での仕掛けとなります。

社内イベントによる仕掛けと、オフィスでの仕掛けです。社内イベントはその内容にもよりますが、和やかに歓談できる場をセットすると良いでしょう。懇親会、懇談会、パーティーなどの場です。お互いがリラックスして、ざっくばらんな会話ができる場の演出です。

存在を認知していれば、その人と出会った時には挨拶を交わし、コミュニケーションが始まります。特に、他拠点や他部署の人とはこのような場がないと、なかなか挨拶や雑談などをする機会はほとんどないでしょう。このような場で挨拶ができれば、その後はメールや電話により積極的にコミュニケーションがされるようになり、次のステージに深化していきます。

オフィスにおいては、いわゆる偶発的な出会いの場を仕掛けることです。マグネットポイントと言われる、コピーやプリンターを一か所に集めた場所です。偶然コピーを取りに来た時に出会うことで、コミュニケーションが交わされるきっかけを提供するのです。あるいは、リフレッシュルームなど社員が自然に集まる場を提供するのです。集まる場における偶発的出会いに期待するのです。


人的ネットワークの構築

存在を認知し、挨拶を交わし雑談をすることで、相手の人となり、考え方や経験を知ることで、仕事上の繋がりが生まれる可能性が出てきます。その人の仕事についての専門性を知れば、必要な時に連絡して相談することに繋がります。

相談される方は頼られるわけですから、気分良くいろいろと対応してあげることにもなるでしょう。助けてもらえれば、人から助けを求められた時に同じように対応するかもしれません。そのようなやり取りがされれば、相談できる人という認知がされ、さらに高次の課題についても相談されるでしょう。

相談事が相談される人の守備範囲であれば、その人の持つ知識によって解決されます。しかし、回答のない相談事や、守備範囲であっても未知の相談事については、お互いに議論することが必要になります。知識ではなく、見識、哲学、考え方をベースに議論しなければならない課題です。このような課題は、それぞれが真剣に、そして全力で立ち向かわなければならず、真剣な議論の場となります。

相互理解と信頼感がベースにないと、そのような議論をする対象とはなりにくいですが、一度このような関係性ができあがれば、腹を割って話ができる間柄となります。コミュニケーションの質という観点から最高度のコミュニケーションがなされる関係になります。

一見すると、コミュニケーションの量が増えた方が、ワイワイガヤガヤと活性化しているように見えます。しかし、質という側面で考えると、お互いの関係性が深いものでないと向上することはできないでしょう。

量が増えてくれば質も高まるでしょう。量が少なければ質を求めることはできないので、とにもかくにも存在の認知とコミュニケーションのネタの提供が必要です。そして、挨拶と雑談ができる場を、担当部門が数多く提供することが大切でしょう。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

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