総務の仕事。「そもそも社内広報とは」
ダイバーシティの進展
ダイバーシティの進展に伴い、さまざまな価値観の従業員が組織内に存在しています。 一昔前は、「365日、24時間働ける、男性正社員」という単一の従業員像が主流でした。当然、価値観もほぼ同一でした。安倍政権により女性の活躍が推進され、高年齢者も活躍の場を広げています。この現象は労働力不足により、加速度的に広がっていくでしょう。
さらに雇用形態も、正社員、派遣社員、契約社員と多様です。正社員の中にも時間限定、地域限定社員が登場しています。雇用形態が異なると、価値観も異なることが多いものです。
グローバル企業では、仲間に入った海外現地会社の社員とも意思統一をしていかなければなりません。あるいは国内拠点だけであっても、M&Aにより外資系企業の傘下に入ることになった企業もあるでしょう。国籍が異なれば、価値観の根底にある文化が異なってきます。阿吽の呼吸で物事を進めてきた日本人にとっては、大きな衝撃を受けることも多々あるでしょう。
しかし、向かうべき先、目標は同じです。一旦同じ組織に属することになれば、ベクトルを統一しなければなりません。異なる価値観を持つ、ある意味ばらばらの従業員の心を動かし、同じように行動してもらわないといけないのです。それを可能とする社内広報が、いま大事となるのです。
インフォーマル・コミュニケーションの重要性
『Diamond Harvard Business Review』の2015年3月号で、オフィスについて取り上げられていました。冒頭に下記の言葉が記されています。
「グーグルの新本社は、 偶然の出会いを最大限に活かすための設計である」
「最高の意思決定や洞察は、しばしば廊下やカフェテリアでの議論から生まれる」
「モニターの前に座っていたのでは、 最高にクリエイティブなアイデアは生まれない」
多くの企業でイノベーションを起こそうと、さまざまな取り組みがなされています。イノベーションは専門が異なる人たちが行うインフォーマル・コミュニケーションがきっかけで起こる、と言われています。
ですから、普段出会わず専門が異なる、つまり部門が異なる従業員同士の偶発的なコミュニケーションや会話を増やそうとして、オフィスに工夫をしているのです。オフィスのみならず、社内イベントを通じて知り合いを作ってもらい、仕事上でもコミュニケーションを頻繁にしてもらおうとしているのです。
そもそも社内広報とは
では、今後ますます重要とされる社内コミュニケーションと社内広報、これらの位置関係はどうなっているのでしょうか。コーポレート・コミュニケーション研究所の所長であった故・城義紀さんは下記のように定義づけでいます。
社内コミュニケーション=フォーマルコミュニケーション+インフォーマル・コミュニケーション
フォーマルコミュニケーション=業務上のコミュニケーション+教育+社内広報
そして、社内広報については、下記の項目が含まれると定義しています。
- □経営理念、ビジョン、方針の浸透
- □行動規範、倫理綱領の浸透
- □危機管理意識の醸成
- □全社組織と所属組織の役割の共通理解
- □経営計画、特別プロジェクトの共通理解
- □教育および業務上のコミュニケーション不全の補完
- □社内外の知識、情報のギャップの是正
- □エンプロイヤビリティの促進
- □社会人、家庭人としての意識、態度、能力の促進
- □人間的魅力増進への介助
業務上のコミュニケーションとは、日々仕事上でやり取りされる、業務上必要不可欠なコンテンツを含む会話です。教育とは、特定の階層、属性を持つ従業員に対して、同一のコンテンツを覚える、あるいは身につけるように指導する、強制的なコミュニケーションです。
社内広報とは先の定義にもある、「教育および業務上のコミュニケーション不全の補完」であり、絶対に認知しておかないと業務ができないわけではないが、組織に身を置く構成員として知っておいた方が仕事をしやすいし、有利に効率的に業務が進められ、評価も高まる。このようなコンテンツの伝達だと言えるかもしれません。
社内広報では、主に社内報という社内コミュニケーションメディアが使われるのも理解できます。社内報を読まないと業務ができないわけではないが、読むことにより社内情報を理解して業務が円滑に進む。そんな存在であるからです。
最後に、実際の社内広報担当者は社内広報をどのように捉えているのでしょうか。先にあげた社内広報の定義のうち、社内広報担当者は次の項目を社内広報の目的として重要視しています。
1 社内情報の共有
2 経営理念、ビジョンの浸透
3 会社の現況の伝達
4 経営方針の周知徹底
5 企業文化、風土の醸成
以下、組織の活性化、会社の歴史の記録、会社組織と所属組織の役割の共通理解、愛社心の醸成、社員の意識改革と続きます。
先に記した定義では「社内外の知識、情報のギャップの是正」が「社内情報の共有、会社の現況の伝達」に該当するでしょう。社内で起こっている出来事や状況を知らない従業員に伝え、ギャップを是正しようとすることがまずは大事であると認識しているようです。
また、経営理念の浸透、経営方針の周知徹底と、会社の向かうべき方向性の周知徹底が意識されています。その経営理念が会社の体質として表れるものが企業文化であり社風です。これは社内広報だけではなし得ないことですが、その醸成をサポートするものとして社内広報の機能を活用しようとしているのでしょう。
組織は人と人とのコミュニケーションがベースとなって成立します。そのため、さまざまな社内コミュニケーションの取り組みが実行されているでしょう。
今回は、その全体像や考え方を知り、無駄なく目的に合致した活動ができるように、組織でいま重要視されている社内コミュニケーションと社内広報について、その関係性を紹介しました。