総務の仕事。「買う意味の確認、購買管理」
総務から会社を変えるシリーズ
ただ買うだけではない
一般的に、人事は人の管理、総務はモノの管理を担当すると認識されているかと思います。大きなものでは土地や建物、小さなものでは文房具や名刺、ありとあらゆる企業運営に必要モノが総務を通じて発注されているかと思います。
今回はモノを買うという機能、購買管理についてのポイントについて考えていきましょう。
まず必要性の観点。モノを購入するのであれば、誰かがそれを必要としているという前提かあります。総務が必要だと思って購入する場合、現場からの依頼により購入する場合、補充するために購入する場合、その理由は様々あるかと思います。
では、そのモノが欲しいから購入するのでしょうか?
何をバカなことを言ってるのか?
欲しいから購入するのでしょう!
でしょうか?
このような言葉があります。
「ドリルが欲しくてドリルを買うのではない。穴をあけたいからドリルを購入するのだ」
モノを購入する先には必ず、やりたいコト、実現したいコトがあるはずです。そのために最も適切なモノを選んで購入し、それを利用して実現したかったコトを実現するのです。それがそもそもの購買行為の成り立ちです。
ですから、「あれ? これではできない。間違って買っちゃった!」という言葉が出てくることがあるわけです。コトの実現が先にあって、それに適したモノを見極めることが重要となってくるのです。
ここで総務として重要なのが、「そもそも、何を実現したいのか?」。
欲しいモノの先にある、実現したいコト、解決したいコトを正確に把握する、見極めることです。
トヨタ自動車で有名な、「なぜ」を五回繰り返す、それも同義かと思います。なぜを繰り返し、本質的な課題や要求を見極めることです。
総務でモノを購入する場合は、大方、コトがあってモノを購入することになっているのではないでしょうか?
特に総務で購入する備品や資産は高額でもあり、稟議書を起案し承認を受けることが必要となり、そのプロセスの中で、上司から盛んに「なぜそれが必要なのか、何が課題なのか、何をしようとしているのか」と、執拗に「コト」に関する質問がされるのです。
しかし現場からは、理由の説明なしに、「モノが欲しい」という直接的な依頼が来るのがほとんどではないでしょうか?
総務としても、「はい、分かりました! すぐに買っておきますね」という対応で済ませているケースも多いかと思います。
そこでいちいち、「そもそも、何がしたいのですか? 何があったのですか?」と質問している時間も余裕もない、というのが実態かもしれません。
しかし相手は、自らの狭い知識の中でオーダーしている可能性もあります。購買のプロである総務としては、一度立ち止まり「何がしたいのですか?」と冷静に確認すべきでしょう。
もしかしたら、その裏には大きな課題が潜み、全社的・抜本的に解決しなければならない大問題を孕んでいる可能性もあります。
面倒であっても、モノの購入からコトの解決に視点を移し、本質的な課題を見極めることが重要です。
無駄なモノを買わせない
とは言いつつも、ボールペン一本、名刺一箱の発注依頼で、「そもそも、何がしたいか?」を質問する必要はないかと思います。
使い方を確認する必要のないものについては、総務が関与することは無いでしょう。
ある意味、総務の仕事は、総務が関与することで付加価値が提供できるものに絞り込むことが重要です。購入という側面においても、それは同じでしょう。
だとすると、文房具等の消耗品は現場の判断で購入できるようにした方が効率的です。
今なら通販によって現場で個々に購入していることでしょう。この場合のポイントは、購入できる範囲を絞り込むことと、買いすぎないようにするための予算管理です。
必要な機能に絞り込む、選択肢を絞り込む、あるいは推奨物品として選定しておく。選ぶという無駄な時間を排除してあげるのです。
予算管理という面では、購入費用はその部門ごとに負担させるのが合理的です。
総務部の予算内で賄ってしまうと、無駄な購入が間違いなく増えてしまいます。
自部門の予算の中で購入するとなると、自部門のPLに反映されますので、上長や部門長からの牽制が入り、無駄な購入を阻止することが出来ます。
ランニングコストにも目を光らせる
購入にはイニシャルコストだけで済むものと、購入後にランニングコストが掛かってくるものがあります。
イニシャルコストに目を奪われ、ランニングコストを考えずに購入。
後でランニングコストが予算を圧迫してくる、というケースもあります。特に消耗品やメンテナンス費用など、想定外の費用もあるものです。
購入する際は、購入後にどのようなコストが掛かるのか、また、どのようなトラブルが想定されるのかまでしっかりと確認して、予算に組み込んでおくことが重要です。
関連する部分では、買取とするのか、リースやレンタルとするのか、はたまたサブスクリプションで契約期間内なら交換自由という形式もあります。安易に購入手続きをせずに、さまざまなパターンを確認しておくことが重要です。
先ほどトラブルと記しましたが、OA機器や備品などが故障した際の対応についても、購入時に確認が必要です。
特に重要な機器や備品については、故障すると事業活動が一時ストップします。
修理が終わるまでの代替品があるのか、すぐに修理依頼の連絡がつくのか、土日も動いている現場の場合は土日に連絡がつくのか。
こちらもあらゆるトラブルを想定して、対応を確認しておくことが必要です。
購入管理については、単に購入する時のことだけではなく、それが存在する限り起こりえる事象についても、総務でしっかりと対応できるように、あるいは購入先との関係を密なものにしておいて、現場が円滑に事業継続できるように手配したいものですね。