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総務の仕事。「多様化を推進、オフィス管理」

総務から会社を変えるシリーズ

総務の仕事。「多様化を推進、オフィス管理」

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

働く場の一つの選択肢

コロナ禍を受けてオフィスのあり方が大きく変化してきています。

コロナ禍以前、日本においては、オフィスが唯一の働く場でした。一部テレワークが導入されていたものの、多くの企業がオフィスのみを働く場として認め、従業員もそれに従っていました。

それが、コロナ禍により強制的な在宅勤務が実施され、やってみると案外仕事ができると感じた方も多かったことでしょう。

ファーストプレイスがオフィス、セカンドプレイスが在宅勤務、そしてサードプレイスと言われるコワーキングスペース、レンタルオフィス、シェアオフィス。さらに、カラオケボックスやカーシェアでの仕事。

パソコンさえあれば、日本国中、世界のどこからでも仕事ができる状態になりました。オフィスを無くしてフルリモートを実施する企業も存在し、オフィスは絶対的なもの、唯一の働く場から、働く場の一つの選択肢という状況に、この二年で様変わりしたのです。

働く場の激変により、オフィスのあり方が大きく変わってきました。

今までのオフィスは、全ての機能が揃った万能型オフィスだと言われます。

集中するスペース、会議のできるスペース、特殊な機材を使うことのできるスペース、ソロワークができるスペース。オフィスでしか仕事ができなかったので、どのような仕事にも対応できる、まさに万能型オフィスでした。

ところがテレワークにより、企画書を書く集中仕事はむしろ在宅勤務の方が適しているとか、単純な事務仕事なのでわざわざオフィスに出向かなくてもどこでもできるとか、オンライン会議システムを使うことでどこに居ても打合せができるようになってきたため、オフィスに全ての機能が存在しなくとも良いのでは、ということになってきました。

そこで出てきた言葉が、「機能特化型オフィス」です。

リアルでないとできない仕事をする場として、その機能を研ぎ澄ませた機能特化型オフィスです。

つまり、この機能を使うときだけオフィスに出向いて仕事をするという意味においても、働く場の選択肢の一つとなってきたのです。


広義のABW

万能型から機能特化型。そしてオフィスの変化について、もう一つ表現される言葉があります。

広義のABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)という言葉です。

集中したい時には集中スペースが使える、ブレストしたい時にはブレストに適した場所が使える、といったように仕事のモードに合わせた場所が存在し、自由に使えることを称してABWと表現されます。オランダのベルデフォーエン社が開発したと言われる、オフィスの最新ソリューションです。

万能型で説明したように、オフィスだけでなく在宅勤務やサードプレイスでも仕事ができ、その場に適した仕事もわかってきたので、ABWがオフィスだけでなく、在宅にもサードプレイスにも、さらにワーケーションも含めた全ての働く場に広がり、各人がそれぞれ適した場を選択するという意味合いから、広義のABWと言われるようにもなってきました。

そして、オフィスでないとできない機能とは何なのかを考えることが今後のオフィスのあり方にとって大変重要なこととなります。


衝突と交わりの場

リアルの場でないと難しい仕事とは、どのようなものがあるのでしょうか?

在宅勤務でのコミュニケーションの課題を見ると、そのあり方が見えてきます。

在宅勤務でのコミュニケーションは電話、テキストコミュニケーション、そして、多くの方が使い始めたオンラインでのコミュニケーションです。どの手段を取るにせよ、意図したコミュニケーションとなります。

しかし、ちょっとした雑談や何気ない会話のために、ビジネスの中で電話をしたり、オンラインで繋ぐことはあまりないでしょう。また、意図したコミュニケーションなので、偶発的な出会いというものがほぼ不可能になります。また、複数人での喧々諤々のコミュニケーションは、オンライン会議では成り立ちません。

この雑談、偶発的な出会い、複雑なコミュニケーションは、リアルの場に一緒にいないとできないものです。横に居るから何気ない会話ができる、同じフロアに居たから偶然出会える、同じ空気感の中で重なり合うように会話をする。

この機能に特化することが、一つのオフィスのあり方と言えるのではないでしょうか。

となると、オフィスに必要なのは、さまざまな形態のミーティングスペースです。

もちろんオフィス内で集中仕事をしてもソロワークをしてもかまいませんが、オフィスでないとできないアクティビティを中心にオフィスを設計していくことがポイントです。

一方で、偶然の出会いを生む仕掛けも作っておきたいものです。

出社率が低いとオフィス内はまばらですが、せっかく出社したのであれば、偶発的な出会いの場を作っておきましょう。それは、コロナ禍以前から行われているフリーアドレスであり、コピー機やプリンター、備品の棚をあえて一か所に集めてそこで従業員が衝突するような、いわゆるマグネットポイントを作ることです。

あるいは、リフレッシュルームに長時間滞在して、その中でいろいろな人との出会いを作ってもらえるよう、美味しいコーヒーが飲める高価なコーヒーサーバーを設置したり簡単な軽食が取れるようにしたり、滞在時間を延ばすことで衝突する可能性を高めるような施策も必要でしょう。

イノベーションは偶発的な出会いから生まれると言われます。

ふとした会話から着想を得て、新規事業が生まれるという意味です。企業存続のためにはイノベーションが必要であり、知識経済社会の現代においては新たなアイデアが大変重要となります。

そのための偶発的な出会いを生み出す機能に特化することが、テレワーク時代においては重要なことになります。

やみくもにオフィスの面積を減らすのではなく、今一度オフィスの意味やリアルの場の意味を捉え直し、在宅勤務も含めた働く場の設計をしてはどうでしょうか?

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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