総務の仕事。「総務の業務改善テクニック その1」
総務から会社を変えるシリーズ
総務部門の業務特性
多くの総務部門では共通の問題が見られます。それらを生み出す原因である「総務部門の業務特性」を製造部門業務と比較して説明します。その上で、業務改善を推進することで期待できるさまざまな効果を見てみましょう。きっと、自社ですぐにでも業務改善を始めたくなることでしょう。
総務部門の業務にはムダが多く、非効率だといわれることが少なくありません。御社では次のような現象が発生していませんか?
- 日々発生するさまざまな仕事を「もぐらたたき」のように処理し、部署内が慌しい
- 忙しい人と忙しくない人の差が激しく、それが固定化している
- 担当者しか対応できない業務が複数あり、その担当者が不在だと業務が滞る
- 月末月初、特定の曜日などに仕事が集中し、繁忙期に合わせて過剰な人員を抱えている
- スタッフ退職時の引き継ぎがスムーズに行われない
- 新人に仕事を説明するのに時間がかかる
- 将来のために中長期的に取り組むべき業務が先延ばしにされている
- 業務改善の必要性は感じるが、どこから手を付けてよいかわからない
これらは、多くの企業で生じている共通の問題です。そして、このような現象が生まれているのは総務部門の怠慢や手抜きのせいではなく、業務の特性によるものです。業務特性を理解した上で、正しい手順、方法で業務改善を行えば、これらの問題を解消することができます。
前述したような現象、問題が発生している原因と、総務部門の業務改善が難しい理由は、その業務特性にあります。工場などの製造部門と比べてみると、総務部門の業務特性を把握しやすいでしょう。
一つ目は、総務部門の業務は非常に多岐にわたるということです。内容、処理方法、難しさなどが異なる多種多様なもので構成されています。
二つ目は、総務部門の業務の多くは、非定型の判断業務だということです。製造部門のように決められた手順で行う定型業務ではありませんので、進め方は担当者に委ねられます。すると、処理する時間や仕事の成果・品質にバラつきが出たり、上司による管理が難しくなったりします。
三つ目は、業務が突発的に発生したり、月末月初や特定の曜日に集中する傾向にあるということです。そのため、計画的に毎日一定の量を進めること(業務の平準化)が難しくなるのです。
製造部門の業務特性 |
総務部門の業務特性 |
|
---|---|---|
業務の種類 |
比較的少ない |
多様(総務は何でも屋のような性質あり) |
業務の性質 |
定型業務、単純業務 |
非定型業務、判断業務 |
業務のプロセス |
見えやすい 標準化され、マニュアル、作業指示書などで明示 |
見えにくい(ブラックボックス的) 進め方は本人に委ねられ、プロセス、進捗状況など本人以外はわかりにくい |
進捗、成果などの測定、数値化 |
進捗、成果の測定、数値化が比較的容易(稼働率、生産量、品質、不良品数) |
進捗、成果の測定、数値化が難しい 成果の良しあしは主観的なものになりがち |
業務の発生 |
計画的(予定、予測が立てやすい) |
突発的なものも少なくない |
業務量 |
安定している(業務の標準化が比較的容易) |
安定していない |
こういった特性を含め、製造部門と総務部門の業務特性を比較することにより、事務管理部門の業務特性がよくわかります。
しかし、心配することはありません。製造現場で、生産管理やカイゼンの手法が確立されているように、まだ一般的にはなっていないものの、総務部門のような、いわゆるホワイトカラー業務でも標準的な手順、手法があります。
業務改善が進んでいなかった分、ひとたび成功すれば大きな効果が期待できるのです。
定性効果と定量効果
業務改善の効果には「定量的効果」と「定性的効果」の二つがあります。
前者は数字で測れるものです。新しいものを導入したり何かを変えたりしようとするとき、「それをやると、どれだけもうかりますか? コストが減るのですか?」といわれます。これらはまさに定量的効果のことです。
一方、後者は数字では測りにくく、「仕事の質」「人の成長」「人や部門の意識の変化」など中長期的に捉えられることが多いものです。
ここで、定量的効果と定性的効果の代表的なものを整理してみましょう
■定量的効果
- 業務あたりの処理時間が減る
- スタッフの残業時間が減少する
- スタッフ数削減により人件費が低減する
- 備品、消耗品、通信費などのコストを減らせる
- 業務の平準化が実現する
■定性的効果
- 仕事を計画的に行える
- 慌ただしい職場が整然となり、職場やスタッフに余裕が生まれる
- 「●●さんにしか分からない」という業務が無くなり、仕事の滞留が減る。休暇が取りやすくなる
- 改善のプロセスで行う「業務の標準化」により、仕事の引継ぎ、新人への業務説明がスムーズになる
- 仕事の負担、ストレスが減り、スタッフの職務満足度、ワークライフバランスが高まる
- 今まで忙しくて取り組めなかった業務に着手できる
以上のようにそれぞれにさまざまな効果があり、定量的効果も大切ですが、強調したいのは定性的効果です。定量的効果は短期的に現れ、測りやすいものです。
しかし、定量的効果だけを前面に掲げて業務改善を進めようとすると「切り詰める」「節約する」「締め付け」「労働強化(古い表現ですが)」というような印象をスタッフに与えてしまいます。
たとえば、主婦に「家事の工夫・改善を始めましょう!」という場面を想像してください。「節約」だけを効果として示すより、「家事が楽しくなる、楽になる」ことを併せて話をする方が、モチベーションが高まることは容易に想像できるでしょう。
コストダウンも大切ですが、同じ人員、コストで成果(コストパフォーマンス)を高めて、同時に質的向上を高めることに主眼を置く「明るい」業務改善をおすすめします。
目的、ゴールによって、業務改善に関わるスタッフのモチベーシヨンは大きく変わるのです。業務改善を推進するリーダー役となる人にはぜひ知っておいてもらいたい視点です。
そして、業務改善を始める際、どの効果を出すことに重点を置くかという目標を明確にすることが大切です。
善を始めるにあたり、事改善の目的として、さまざまな効果(定量的・定性的効果)の中でどれに重点を置くかという目標を明確にすることが大切です。