サバティカル休暇とは? メリット・デメリットや企業事例を紹介!
サバティカル休暇は、海外で普及している休暇制度の一種です。日本でも導入が進みつつありますが、法律で定められた制度ではないことから、導入は各企業に任されているのが現状です。
この記事では、サバティカル休暇の概要やメリット・デメリット、導入する際のポイント、企業事例などを解説します。
目的をよく理解したうえで、すでに制度を導入している企業の手法も参考にしながら検討を進めましょう。
サバティカル休暇とは
サバティカル休暇は、一定期間勤務を続けている従業員に対して企業が独自に与える長期休暇です。欧米各国で浸透している制度で、国内でも上場企業を中心に導入が進んでいます。
休暇期間は1か月以上が目安で、1〜2年の長期にわたる場合もあります。
休暇の取得理由に制限がないのが特徴で、復帰後は休暇取得前と同じ仕事、もしくはそれに類似する仕事に就くことができます。給与についても、休暇取得前と同等か、それ以上の支給が基本となっています。
サバティカル休暇の語源
サバティカル休暇(Sabbatical Leave)の語源となっているのは、ラテン語で「安息日」を意味する「Sabbaticus」です。
1880年に、アメリカのハーバード大学が教員の研究を目的として長期休暇を導入したのが制度の始まりとされています。教員が休暇を利用して研究や自主的な調査に取り組むことで、知識や能力の向上をはかることが目的です。サバティカル休暇は、日本の大学でも導入されています。
サバティカル休暇が企業に導入され始めたのは1990年代のことです。その頃、ヨーロッパではワークライフバランスが重視されるようになり、優秀な人材が次々と離職するという現象が起きました。
当時は好景気だったこともあり、労働者の立場が強く、企業は人材流出対策の一環としてサバティカル休暇を導入するようになりました。
企業から注目される理由・背景
日本においては、働き方改革やワークライフバランスの浸透によってサバティカル休暇が注目を集めています。
2018年3月には、経済産業省が「人生100年時代」の到来を見据えて、サバティカル休暇の導入を企業に呼びかけました。社会人のキャリア形成の一環として、サバティカル休暇を活用した学び直しを推進するほか、企業に対しては、従業員が兼業や副業、社内起業といったキャリアを自由に選択できる環境の構築を求めています。
サバティカル休暇は、社会人がプライベートの時間や自身の価値観を大切にしながら、長く働き続けることを後押しする制度の一つといえるでしょう。
サバティカル休暇の導入によるメリット・効果
サバティカル休暇の導入によるメリットや効果には、どのようなものがあるのでしょうか。
- 心身の回復
- 離職率の低下
- イノベーションの創出
- 企業イメージの向上
それぞれ具体的に見ていきましょう。
心身の回復
長期休暇の取得は、従業員が心身を回復させる効果が期待できます。ワークライフバランスも整い、リフレッシュして仕事に復帰できるでしょう。
メンタルヘルスなど従業員の安全配慮義務を果たすことにもつながるため、企業側にとってもメリットがあります。
離職率の低下
サバティカル休暇の取得によって従業員の満足度が向上し、離職率の低下を防げることもメリットの一つです。
また、育児や介護といったプライベートの事情を抱える従業員の離職防止にも役立ちます。
イノベーションの創出
半年から1年ほどの長期休暇が取得できれば、その間に大学院やビジネススクールへの通学や短期留学が可能になります。
新たなスキルを身に付けられるだけでなく、普段とは異なる環境で生活することにより、視点が変わって新たなアイデアの創出にもつながるでしょう。
企業イメージの向上
サバティカル休暇を導入している企業は、「従業員の多様な働き方を推進する先進的な企業」という評価を受けます。
結果的に、消費者が企業に対してよいイメージを持つようになり、採用面で有利になることで優秀な人材の確保も期待できます。
サバティカル休暇の導入によるデメリット
サバティカル休暇のデメリットとして、次のようなものがあげられます。
- 従業員のキャリアチェンジ
- 現場の混乱
- 復職への体制構築が必要
従業員のキャリアチェンジ
学び直しによってサバティカル休暇中に新たなスキルを獲得した従業員は、既存の仕事とは別の物事に興味がわいて、キャリアチェンジを考えることがあります。
休暇を取得する前に、必要があれば面談などを行うとよいでしょう。復職後のキャリアプランをどのように形成するかについて、イメージを共有することが重要です。
現場の混乱
サバティカル休暇による欠員補充は、企業にとって大きな課題です。特に、属人的な業務が多い場合は現場の混乱を引き起こす可能性があるため、引き継ぎを制度化しておく必要があります。
ほかの従業員への引き継ぎに十分な時間を確保し、余裕を持って調整できるようにしましょう。
復職への体制構築が必要
数か月単位でサバティカル休暇を取得した従業員が復職すると、業務内容や部署の人員が変化していることがあります。
通常業務へスムーズに戻れるよう、企業側が復職への体制構築を行うことが重要です。
サバティカル休暇の導入におけるポイント
ここでは、サバティカル休暇の導入におけるポイントを解説します。
職場環境の整備
サバティカル休暇を制度として定着させるためには、欠員の補充や引き継ぎ、復職へのフォローアップなど、さまざまな体制を整える必要があります。
スウェーデンでは、サバティカル休暇が国の制度として設けられています。失業者を代替要員として雇い入れることで欠員を補充し、従業員は失業手当の85%に相当する手当を国から受け取ることが可能です。
日本では、具体的な法整備について、今後検討が行われる状況であるといえます。現状としては、企業が独自にサバティカル休暇のための職場環境を整備し、従業員の理解と協力を求めることがポイントの一つになってくるでしょう。
目的の明確化
休暇を取得する目的を明確化することで、サバティカル休暇の効果を高めることが期待できます。
ヤフー株式会社では、サバティカル休暇の目的を「一定のキャリアを積んだ従業員が、自らの働き方やキャリアを見直してさらなる成長につなげること」と明確化し、基準給与1か月分を支援金として支給しています。
制度の趣旨や内容の周知
新しい制度の導入には、従業員の理解と協力が不可欠です。制度の趣旨や内容を従業員に周知することを徹底しましょう。
業種によっては、人員不足などにより休暇を取得しにくい状況が続いているところもあります。そういった業種においても、休暇を取りやすくするため、業務フローや従業員の配置などを再度検討することが望まれます。
休暇中の給与の有無
サバティカル休暇中の給与の有無については、判断が各企業に委ねられているのが現状です。
ヤフー株式会社のように支援金として給与を支給したり、有給休暇と組み合わせたりといった運用方法を明確にしておきましょう。また、休暇が長期にわたる場合は、その間の社会保険の徴収方法についても取り決めをする必要があります。
休暇前後の従業員のサポート
休暇前後における従業員のサポートは、業務を停滞させないためにも重要なことです。復帰を予定している従業員の業務内容が休暇中に変更され、本人に知らされないままになっていると、復帰後にモチベーションが低下する原因になります。
業務内容に変更があった場合は、休暇中であっても連絡ができるようなサポートも必要といえるでしょう。
サバティカル休暇を導入した企業事例
ここでは、サバティカル休暇制度を導入している企業の事例を紹介します。自社への導入を考える際の参考にしてください。
ヤフー株式会社
インターネット事業などを手掛けるヤフー株式会社は、勤続10年以上の正社員を対象として2~3か月の範囲で取得できるサバティカル制度を導入しています。
同社は従業員のキャリア形成や働き方の見直しをサポートする制度を複数導入しており、サバティカル休暇もその一環となっています。
基準給与1か月分をサバティカル休暇の支援金として支給するだけでなく、有給休暇をあわせることを認めているため、従業員は一定額の給与をもらいながら休暇を取得することが可能です。
ソニー
総合電機メーカー大手のソニー株式会社は、2015年に「フレキシブルキャリア休職制度」と呼ばれる独自の制度を導入しました。
従業員のキャリア形成を目的とした長期休暇制度で、私費留学が目的であれば最長2年の休暇が認められます。
2017年度からは、育児や介護などで休職中の従業員を対象とした「休職キャリアプラス」も導入され、在宅勤務や研修費用の補助などを行っています。
株式会社リクルート
求人広告や人材派遣事業を展開する株式会社リクルート(旧株式会社リクルートテクノロジーズ)は、勤続3年以上の従業員を対象として3年ごとに連続で最長28日間の休暇取得が可能な「STEP休暇」を導入しています。
従業員が新しい価値の創造を目指し、自立的に成長を続ける場を提供することを目的としており、休暇を通じて仕事以外の見聞を広げて欲しいという経営層側の意向で制度が設けられました。
サバティカル休暇についてのまとめ
サバティカル休暇は、日本でも大手企業を中心に広がり始めています。ワークライフバランスを大切にする制度は従業員の満足度向上につながるため、うまく仕組みを整えることができれば定着しやすいでしょう。
デメリットや企業事例も参考にしたうえで、自社に合った方法でサバティカル休暇の導入を検討しましょう。
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