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育休(育児休業)とは? 育児休暇との違いや対象者、取得可能な期間や回数を解説

育休(育児休業)とは? 育児休暇との違いや対象者、取得可能な期間や回数を解説

働きながら子育てをする際、「育休」を積極的に取得しましょう。育休は法律で定められた労働者の権利であり、一定の条件を満たせば誰もが一定期間の休業を取得できる制度です。期間中は給付金が受け取れる、社会保険料の支払いが免除されるなどさまざまなメリットがあります。併用できる制度もあるため、使えるものがないか確認してみてください。

ただし、名前や内容が似た制度もあるため、混同しないようよく理解しましょう。また、育休取得中に退職すると給付金が受け取れなくなる場合もあるため、注意が必要です。


この記事の監修者
  社会保険労務士 

育休とは

「育休」は「育児休業」の略称です。育児・介護休業法に基づいて設置される休暇のことで、労働者の権利の1つです。

育休は、原則子どもが生まれてから1歳になるまで取得できます。性別や年齢、役職などを問わず一定の条件を満たせば誰でも取得できます。また、会社側も従業員から育休取得の申し出があった場合、必ず対応しなければなりません。

育児休業と育児休暇の違い

育児休業とよく似た制度で、同じく「育休」と呼ばれるものに「育児休暇(育児目的休暇)」もあります。それぞれの違いをまとめると、下記のとおりです。

 

育児休業

育児休暇

概要

  • 法律で定められた休暇
  • 「育休」と呼ばれる
  • 就業規則などに定めがなくても取得させなければならない
  • 企業が設置する独自の休暇
  • 「育児目的休暇」とも呼ばれる
  • 就業規則などに規定がなければ取得できない

取得できる
期間・方法

法律で定められた期間・方法で取る

いずれも企業ごとに異なる

対象となる人

条件を満たす労働者

有期雇用者も含めて、条件を満たす労働者

育児休暇も育児のために設ける休暇ですが、こちらは企業での設置が努力義務とされる独自のものです。設置の努力義務が課されてはいるものの、企業によっては、そもそも設置していない企業もあります。


育児休業の対象者と期間

育児休業は法律で定められた休暇ですが、育児中の人であれば誰でも取得できるわけではありません。取得を考えている場合は、まず自分が対象者となっているのかを確認してみましょう。

育児休業の対象者

育児休業を取得できるのは、以下の条件に該当する人です。

  • 1歳未満の子供を育てている労働者である
  • 労使協定で対象外とされていない

上記の条件に当てはまれば、パートタイマーや契約社員、派遣社員、時短勤務社員でも育児休業が取得できます。もちろん、性別も問われません。配偶者が専業主婦であったり、すでに育児休業を取得したりしていても取得できます。

反対に、育児休業が取得できない人の条件は以下のとおりです。

  • 日雇い労働者
  • 子供が1歳6カ月になる前に、労働契約期間が満了する労働者

加えて育児休業の申し出をした時点で入社1年未満の場合も、育児休業が取得できないケースがあります。

育児休業の期間

育児休業が取得できる期間は、原則として「子供が1歳になるまで」です。より具体的に言えば、「子供が出生した日からその子供が1歳になる日までの間」で、かつ従業員が申し出た期間となっています。

ただし子どもが1歳に達してもやむを得ない事情がある場合は、育児休業を子供が1歳6カ月または2歳になるまで延長が可能です。主な条件としては、以下が挙げられます。

  • 幼稚園や保育園に入園できず、1歳または1歳6カ月になっても育児休業が必要
  • 配偶者が死亡、病気・ケガなどをして育児が難しくなった場合

ほかにも「パパ・ママ育休プラス」という制度を併用することで、育児休業の期間を子供が1歳2カ月になるまで延長可能です。ただし両親がともに育児休業を取得しているなど、いくつかの条件を満たす必要があります。


育児休業中の給与

育児休業中は「休業」の扱いになり、企業には給与を支払う義務がありません。代わりに給付金が受け取れたり、社会保険料が免除されたりします。

受け取れる給付金には大きく2種類あります。それぞれの概要を、社会保険料の免除とともに解説します。

育児休業給付金

雇用保険の被保険者である場合、一定の条件を満たせば雇用保険から「育児休業給付金」が振り込まれます。非課税で、翌年度の住民税算定額からも除外されます。

具体的な支給額は、以下の計算式で算出可能です。

育児休業給付金の支給額
=休業開始時の賃金日額×育児休業の取得日数×67%※

※育児休業開始から181日目以降は50%

具体的な数字で見てみましょう。

<例1>育児休業を開始した時点の賃金日額が1万2,000円、育児休業の取得日数が60日の場合
支給額は12,000×60×0.67=482,400となり、48万2,400円が受け取れる計算です。

<例2>育児休業を開始した時点の賃金日額が1万2,000円、育児休業の取得日数が200日の場合
育児休業開始から181日目以降は割合が変更になるため、以下のように算出します。

  • ~180日目まで
    12,000×180×0.67=1,447,200
  • 181~200日目まで
    12,000×19×0.5=114,000

上記を合計した156万1,200円が、総支給額となります。

なお、休業開始時の賃金日額には上限があり、令和6年7月31日までの上限額は15,430円です。そのため、支給日数が30日の場合の育児休業給付金の額の上限は、支給率67%の時は月額31万143円、50%の時は23万1,450円となっています。(※2024年現在)

出生時育児休業給付金

男性従業員の場合は、育児休業給付金とは別に一定の条件を満たした場合に「出生時育児休業給付金」も受け取れます。これは2022年10月から開始した制度である、「産後パパ育休(出生時育児休業)」を男性従業員が取得した場合に支給される給付金です。育児休業給付金と同様に、非課税となっています。

出生時育児給付金の支給額
=休業開始時の賃金日額×産後パパ育休の取得日数※×67%

※上限は28日間

こちらも、実際の金額を計算してみましょう。

たとえば育児休業を開始した時点の賃金日額が1万2,000円、産後パパ育休の取得日数が20日の場合、12,000×20×0.67=160,800で、16万800円が別途支給される計算です。育児休業給付金に上乗せされて受け取れるため、積極的に活用したい制度だと言えます。

産後パパ育休とは

産後パパ育休とは、雇用保険の被保険者である男性が取得できる育児休業のことです。いくつかの要件をクリアすれば、4週間(28日間)の休業を取得可能です。

育児休業との違いは、取得できる回数です。育児休業は、1人につき一度しか取得できません。しかし産後パパ育休は一度にまとめて取得するほか、2回に分割しての取得もできます。一括で取得する場合も分割で取得する場合も特に条件はなく、家族と相談して自由に決定可能です。

社会保険料の支払いは免除となる

育児休業中は、健康保険料・厚生年金保険料といった社会保険料の支払いが免除されます。免除される期間は育児休業を開始する月から終了日の翌日の前月までです。また、月をまたがず1カ月で14日間以上の育児休業を取得した場合も、保険料は免除されます。

社会保険料が免除されるケースを整理すると、下表のとおりとなります。

育児休業の取得期間

社会保険料の支払免除の可否

5月1日~6月20日
(50日間)


(5月分の社会保険料が免除)

5月31日~7月1日
(32日間)


(5・6・7月分の社会保険料が免除)

5月1日~5月4日
(3日間)

×
(取得した期間が14日間未満のため)

5月1日~5月16日
(16日間)


(5月分の社会保険料が免除)

もちろん、社会保険料が免除されている期間中も保障はきちんと受けられます。また、免除されていても社会保険料は納付しているとみなされ、厚生年金の受給にも影響はありません。

唯一、雇用保険料は育児休業中も免除されません。しかしそもそも雇用保険料は給与に対して発生するものであるため、給与が支払われない場合は雇用保険料も発生しないことになります。


育児休業の申請に必要な手続き

育児休業を取得したい場合は、従業員側が労務担当者に申し出る必要があります。従業員側が対応すべきことは多くありませんが、会社にスムーズに対応してもらうためにも、とるべき手順を知っておきましょう。

1.事業主に申し出る

遅くとも、育児休業開始日の1カ月前までに、事業主または労務担当者や上司に育休取得を申し出ましょう。
育児休業が取得できるのは、申し出をした後、事業主側が必要書類をハローワークに提出し、それが受理されてからとなります。「来週から育児休業を取りたい」と伝えても、すぐに取れるものではないことを知っておきましょう。

万が一、職場で育休取得を渋られたり、申し出ても対応してもらえなかったりする場合は、会社の相談窓口、労働局、弁護士などに相談するとよいでしょう。育休を取得させるのは会社の義務であり、拒否することは違法です。

2.必要書類を準備する

申し出が終わったら、後は社内の担当者が必要な書類をそろえてハローワークに提出するのみです。従業員側で行うべき対応は特にないため、書類が受理されることを待ちましょう。

ただし、従業員側で必要書類の準備が求められるケースもあります。たとえば、すでに取得している育児休業の延長を申請する場合、保育園の入所保留の通知書や医師の診断書などが必要になることがあります。こうした書類は会社側での取り寄せが難しいため、従業員側が手配しなければなりません。

求められた際にすぐに提出できるようあらかじめ入手しておく、取りに行ける日を確保しておくといった対処をしておくと安心です。


育児休業を取得する際のポイント

育児休業を取得する際の注意点として、休業中に退職すると育児休業給付金が受け取れなくなる可能性があることを知っておきましょう。

育児休業給付金は、「育児休業後に職場に復帰すること」を前提とした給付金です。一括で支給されるのではなく、「支給単位期間」という区切りに基づいて、通常の給与のように月に一度支給されます。

さらに、途中で退職した場合も日割り計算はされません。育児休業中でも退職は可能ですが、退職した月に支給される給付金から受け取りができなくなるのです。

たとえば育児休業を2月20日から取得した場合、一度に支給されるのは翌19日までの給付金となります。もし育児休業中の6月5日に退職すると、5月20日~6月19日までの支給単位期間分の給付金は支給されません。

同様の理由で、育児休業取得当初から退職の意思がある場合も育児休業給付金の受給は認められません。


まとめ

育休を取得することで、経済的にも安定した状況での育児が可能になります。特に男性労働者が育休を取得すると、さらに別の育休を取得して給付金が受け取れるため、ぜひ積極的に取得しましょう。

ただし、実際に取得の申し出をしてから取得できるまでには、ある程度の時間がかかります。加えて育休はあくまでも一時的な休業をするものであり、期間中に退職した場合は思うように支援を受けられないケースもあります。
こうした点も踏まえながら、いつ、どのように育休を取得するか考えてみてください。


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監修者プロフィール

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小島 章彦

社会保険労務士

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。
現在は、某システム開発会社に勤務。
会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを約5年行っている。

執筆実績:
「マネーの達人」というサイトで180以上の執筆を行っている。
その他、社会保険労務士事務所、法律事務所のコラム等の執筆等多数。

他にも行政書士の資格も保有。

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