中小企業向けの安否確認システム12選! 必要性や選び方のポイントを解説

中小企業にとって、従業員の安否確認は災害対策における重要な要素です。しかし、人員や予算の制約から十分な対応ができていないケースも少なくありません。
本記事では、中小企業向けの安否確認システムの必要性や選び方のポイント、システム導入時の助成金について詳しく解説します。中小企業におすすめのシステムも紹介しますので、システム選びの参考にしてください。
中小企業向けの安否確認システムとは
安否確認システムは、災害発生時に従業員の安否状況を確認するためのツールです。メール・SMSの自動送信や回答の自動集計機能により、中小企業における手作業での安否確認の負担を大幅に軽減します。
例えば、地震や台風などの災害発生時に「無事か」「ケガはあるか」「出社可能か」などの質問を一斉送信し、従業員からの回答を自動で集計・分析できます。そのため、電話連絡のような個別対応が不要になり、少ない人員でもスムーズな安否確認が可能になるのです。
また、災害時だけでなく、感染症流行時の体調確認や交通機関マヒ時の出社可否確認など、さまざまな緊急事態にも活用できる柔軟性を持っています。
中小企業特有の災害対応課題と安否確認システムの必要性
中小企業には、大企業とは異なる、以下のような災害対応の課題があります。
- 担当者被災時のリスクと業務継続の課題
- 限られた人員での安否確認作業の負担
- 通信インフラ混雑時の連絡確保の難しさ
- 紙ベースでの記録管理から電子化への移行
ここでは、それぞれの課題を踏まえたうえで、安否確認システムの必要性を見ていきましょう。
担当者被災時のリスクと業務継続の課題
中小企業では、安否確認の担当者自身が被災すると、安否確認作業全体が停止するリスクが大きいです。この事態を避け、事業を継続するためにも、システム導入により、担当者不在でも自動的に安否確認プロセスが開始される体制の構築が欠かせません。
実際の災害事例では、安否確認担当者が自宅や交通機関の被災により出社できず、会社のアドレス帳や連絡網にアクセスできないために、確認作業が大幅に遅れるケースが多発しています。
システム導入により、震度5以上の地震など特定条件で自動的に安否確認メールが配信される仕組みを構築できれば、担当者の状況に関わらず、組織的な安否確認プロセスを開始できるでしょう。
限られた人員での安否確認作業の負担
中小企業は限られた人員で運営されているため、災害時に手作業で多数の従業員の安否確認を行うと、ほかの復旧業務に支障をきたす恐れがあります。
例えば、電話連絡の場合、1人あたり約5分かかるとすると、50人の確認だけでも約4時間を要します。その間は、電源確保や取引先対応といった、ほかの重要な復旧業務が進められなくなってしまうでしょう。
システム導入により安否確認作業が自動化されれば、担当者は未回答者への個別フォローなど、真に人手が必要な業務に集中できます。少人数のスタッフでも、全社員の状況を効率的に把握することが可能です。
通信インフラ混雑時の連絡確保の難しさ
大規模災害時には、通信回線が混雑して従来の電話やメールが使えなくなる可能性が高いです。
実際に東日本大震災では、電話回線が混み合い、携帯電話と固定電話に大幅な通信規制がかかりました。そのため、音声通話に依存した従来の連絡網では、災害時の回線混雑により機能しないリスクが考えられるでしょう。
一方で、パケット通信(データ通信)は震災時にも比較的つながりやすかった実績があります。このことから、中小企業は、メールやSMS、LINE、専用アプリなど、複数の通信手段に対応したシステムを選ぶことが賢明です。もし、1つの通信手段が断絶しても、ほかの方法で確実に連絡が取れる体制を構築できます。
紙ベースでの記録管理から電子化への移行
中小企業が従来の紙ベースの安否確認記録から、電子化されたシステムへ移行することで、集計結果をリアルタイムで確認できるようになります。また、場所を選ばずに情報共有が可能になるため、復旧活動の優先順位決定など、迅速な経営判断につなげられるでしょう。
紙の連絡網や手書きメモによる安否記録は、情報の集約や共有が困難で、複数の管理者間での状況把握に時間がかかります。特に、管理者が社外にいる場合、情報にアクセスできないのは大きな問題です。
クラウド型の安否確認システムであれば、経営者や部門長がスマートフォンから、外出先でも状況を確認でき、迅速な判断と指示が可能になります。
中小企業におすすめの安否確認システム12選
ここでは、中小企業におすすめの安否確認システムを見ていきましょう。月額料金や機能などをシステムごとに紹介していきますので、自社に合ったシステム選びの参考にしてください。
エマージェンシーコール
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 40,000円〜 |
初期費用 | 200,000円 |
エマージェンシーコールは、災害時における迅速かつ確実な安否確認と指示伝達をサポートします。スマートフォンアプリ、電話の音声、メール、LINE、FAXなど、多様な連絡手段に対応。回答がないユーザへ最大99回まで繰り返し連絡が可能なため、高い回答率を実現します。
自然災害だけでなく、データセンター障害対応時の利用や感染症拡大時のやり取りなど、日常業務にも活用できるのが魅力です。
セコム安否確認サービス
項目 | 内容 |
従業員規模 | 〜300名 |
従量課金 | - |
月額費用 | お問合せ |
初期費用 | お問合せ |
セコム安否確認サービスは、被災時の初動対応と備えをトータルに支援するシステムです。セコムのトラストオペレーションセンターが24時間365日災害情報を入手・チェックし、速やかに管理者に通知します。安否確認の代行送信により、メールやLINEなど、多彩な手段で一斉に安否確認の送信が可能です。
ANPIC
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 5,130円〜 |
初期費用 | 25,000円〜 |
ANPIC(アンピック)は、安否確認はもちろん、日常の連絡ツールにも利用可能なシステムです。月額5,130円(50名プラン)という低コストでありながら、追加料金0円でLINE通知を無制限で利用可能。普段使用しているLINEを活用することで、安否確認やアンケートの高い回答率を実現します。
コストを抑えて安否確認システムを導入したい企業に、おすすめのシステムです。
トヨクモ 安否確認サービス2
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 6,800円〜 |
初期費用 | 0円 |
トヨクモ 安否確認サービス2は、全国一斉訓練を継続的に実施しており、企業の防災力チェックにも役立てられます。また、SLAで品質を保証しているので、災害時アクセスが急増した際も安心して利用可能です。
回答結果の自動集計、未回答者への自動再送、代理回答まで網羅し、運用負担を大幅に軽減します。掲示板やメッセージ機能で情報共有もスムーズ。動画や写真添付にも対応し、災害時の状況把握をサポートします。
バーズ安否確認+
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 1,375円〜 |
初期費用 | 0円 |
バーズ安否確認+(プラス)は、低コストで手軽に利用できるのが強みです。簡単操作で安否確認メールの一斉送信や集計が可能で、緊急時の担当者負担を軽減します。ホワイトボード機能で情報共有もスムーズに行え、災害時だけでなく、普段の連絡網としても活用できる点が特徴です。
安否コール
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 5,000円〜 |
初期費用 | 105,000円 |
安否コールは、災害時の確実な安否確認をサポートします。自動で安否確認通知を送信し、GPS位置情報も取得可能。従業員の状況をリアルタイムで自動集計するため、管理者の負担を大幅に軽減します。直感的な操作性で誰もが迷わず使え、緊急時の迅速な情報把握に貢献するシステムです。
安否LifeMail
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 80円〜 |
初期費用 | 150,000円〜 |
安否LifeMailは、2000年当初から災害時の安否確認メール配信システムの開発と販売を行ってきた、信頼と実績がある企業が開発した安否確認システムです。
高速配信エンジン「アンピロイド」を搭載し、メール、LINE、GPSなど、多様な通信手段で、災害発生時に確実な安否確認を実現。GPS位置情報で被災者救助を支援します。
Safetylink24
項目 | 内容 |
従業員規模 | 〜50,000名 |
従量課金 | - |
月額費用 | 9,800円〜 |
初期費用 | 48,000円〜 |
Safetylink24は、災害時の迅速な安否確認と緊急連絡を支援します。直感的なダッシュボードで操作しやすく、アプリからは位置情報や写真、音声付きで安否報告が可能です。気象庁データ連携による自動配信機能や、複数のメールアドレス登録、グループ管理も充実。
国内サーバーでの24時間監視とSLAへの対応により、大規模災害時も安定稼働し、確実な情報伝達で企業のBCP対策を強力に支えます。
Yahoo!安否確認サービス
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 4,400円〜 |
初期費用 | 0円 |
Yahoo!安否確認サービスは、災害時に従業員の安否をLINEやメールで迅速に確認できるシステムです。ヤフーならではの安定したインフラとシンプルな機能で、災害発生時の混乱を最小限に抑えます。
低コストで利用でき、LINE連携や英語対応も可能。安否状況登録依頼の自動送信や、データ自動集計で管理者の負担を軽減し、スムーズな事業継続をサポートします。
NEC 緊急連絡・安否確認システム
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 12,000円〜 |
初期費用 | 0円 |
NECの緊急連絡・安否確認システムは、東日本大震災の経験を活かして開発された信頼性の高いサービスです。シンプルで操作しやすい機能と低コストが特長で、メールやスマホアプリから最小限のステップで安否報告が可能。災害時には自動で安否情報を集計し、迅速な状況把握と事業継続を支援します。
レスキューナウ 安否確認サービス
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 21,750円〜 |
初期費用 | 100,000円〜 |
レスキューナウの安否確認サービスは、緊急時でもログイン不要で安否報告・集計が可能という使いやすさが強みです。災害発生時は自動で安否確認メールを送信し、回答も自動集計され、担当者の負担を大幅に軽減。家族安否確認掲示板も利用でき、手厚いサポート体制も整っています。
安否の番人
項目 | 内容 |
従業員規模 | 制限なし |
従量課金 | - |
月額費用 | 12,300円〜 |
初期費用 | 0円 |
安否の番人は、東日本大震災や熊本地震でも稼働実績を持つ、高い信頼性が強みです。東西2拠点での冗長化により、大規模災害時も安定稼働を実現。高速メール配信エンジンが確実に情報を届け、未回答者への自動再送信機能も搭載しています。
組織別・地域別のリアルタイム集計に加え、スマートフォンアプリからの簡単操作、感染症対策への活用など、多機能な点が魅力です。
中小企業向けの安否確認システムを選ぶポイント
中小企業が自社に適した安否確認システムを選ぶには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 導入・運用コストのバランス
- 操作のしやすさと従業員教育の負担軽減
- 複数の連絡手段に対応しているか
- 自動送信・自動集計機能があるか
- オンプレミスとクラウド型の違い
ここでは、それぞれのポイントを解説します。
導入・運用コストのバランス
中小企業の経営者は安否確認システム選定において、初期費用と月額費用の総コストを中長期的に試算することが肝心です。将来の人員増加に伴う料金変動も考慮したうえで、自社の予算規模に適したシステムを選ぶことが、投資効果を最大化するための重要な経営判断となります。
従業員数の増加に伴う料金変動を確認し、急激なコスト上昇が起きないか、チェックが欠かせません。業務効率化による人件費削減や、事業継続による機会損失防止など、導入による経済的メリットも考慮した投資回収計画を立てることで、コスト面での経営判断がしやすくなります。
操作のしやすさと従業員教育の負担軽減
災害発生時の混乱状況下でも、誰もが簡単に操作できるインターフェースを持つシステムを選びましょう。そうすることで、中小企業は従業員への教育負担を最小限に抑えながら、災害時にも確実にシステムを活用できる体制を作れます。
災害時には焦りから、平常時よりも多くの操作ミスが発生することが考えられます。スムーズな操作のためにも、管理者画面と従業員向け回答画面の両方がシンプルで、直感的に操作できるデザインのシステムを選んでください。
マニュアルが充実しているか、オンラインヘルプが分かりやすいか、サポートデスクの対応時間などもチェックし、IT知識の少ない従業員でも混乱せずに利用できる環境かを評価すべきです。
複数の連絡手段に対応しているか
中小企業が安否確認システムを選ぶ際は、メール、LINE、SMS、専用アプリなど、複数の連絡手段に対応したものを選択しましょう。大規模災害時の通信障害に備え、いずれかの方法で確実に全従業員と連絡が取れる、冗長性のある体制を構築することが重要です。
東日本大震災では、音声通話が大幅に規制されたのに対し、パケット通信(データ通信)の規制は比較的少なく済みました。この教訓を活かし、音声だけに依存しない連絡体制を構築しましょう。
複数の通信手段を一元管理できるシステムであれば、管理者の負担も軽減され、未回答者への個別フォローなどにリソースを集中できます。
自動送信・自動集計機能があるか
管理者の手作業を最小限に抑える機能を備えたシステムを選ぶことで、人員の限られた中小企業でも効率的な安否確認体制を運用できます。例えば、気象庁情報と連動した自動送信機能や、未回答者への自動再送信機能、集計結果のグラフ化などの機能が搭載されているシステムがおすすめです。
多くのシステムでは、震度5弱以上の地震発生時や、特別警報発令時など、特定条件で自動的に安否確認メールを配信する機能があります。この機能により、夜間や休日、管理者自身が被災した場合でも、確実に安否確認プロセスを開始できるのです。
オンプレミスとクラウド型の違い
中小企業はITリソースが限られているため、自社でのサーバー管理が不要で災害時のデータ保全に優れる、クラウド型システムが適していると言えるでしょう。特に、複数拠点でのデータバックアップ体制が整っているサービスを選ぶことで、システムそのものの災害耐性を確保できます。
オンプレミス型は自社内にサーバーを設置するため、初期コストが高額になる傾向があります。また、メンテナンスやバックアップ対応など運用負担も発生するため、IT専任者がいない中小企業には不向きです。
その点、クラウド型は月額料金制で初期コストを抑えられるうえ、サーバーのメンテナンスや障害対応は提供事業者が担うため、中小企業の運用負担が軽減されます。
中小企業の安否確認システム導入には、助成金がおすすめ
中小企業が安否確認システムを導入する際は、自治体の助成金制度を活用することで、初期費用を大幅に削減できる可能性があります。
ここでは、各地域の助成金活用法や、助成金申請のポイント・必要書類を押さえましょう。
地域別・自治体別の災害対策助成金制度の活用法
各自治体が提供する災害対策関連の助成金制度を活用することで、中小企業は安否確認システム導入にかかる初期費用やランニングコストを大幅に削減できるかもしれません。自社が助成金制度を受けられるか、システム導入前に自治体窓口へ相談してみましょう。
中小企業のBCP対策を支援する助成金制度は、各地域に存在します。例えば、以下のような制度が挙げられます(※2025年6月時点・詳細は各自治体公式サイトで要確認)。
- 東京都:BCP実践促進助成金
- 大阪府:BCP策定支援助成金
- 愛知県:防災・減災カンパニー支援事業
助成対象となるのは、主に以下の費用です。
- システム導入費用(初期費用)
- コンサルティング費用
- 訓練・研修費用
自治体によって助成率や上限額は異なりますが、一般的に対象経費の2/3程度が助成されます。
申請には、事業継続計画(BCP)の策定が前提条件となることが多いです。そのため、安否確認システム導入と併せてBCPの策定にも取り組むことで、より大きな助成を受けられる見込みがあります。
助成金申請のポイントと必要書類
中小企業が災害対策助成金を申請する際は、安否確認システムを単なる従業員管理ツールではなく、BCP対策の一環として明確に位置づけましょう。事業継続への具体的な貢献度や費用対効果を示す書類を準備することで、助成金の採択率を高められます。
申請書類では「安否確認システム導入が、いかに事業継続に貢献するか」という観点を明確に示してください。単なる従業員の安全確保だけでなく、事業復旧のための人的リソース把握ツールとしての位置づけを強調するとよいでしょう。
必要書類は、一般的に以下のとおりです。
- BCP計画書
- 安否確認システムの見積書
- システム概要資料
- 導入・運用計画書
特に、BCP計画書内で安否確認システムの役割を明確に記載する必要があります。
中小企業だからこそ、安否確認システムを導入しよう
限られた人員で運営している中小企業だからこそ、安否確認システムの導入は事業継続のために必須の投資と言えるでしょう。システムを活用することで、従業員の安全確保と業務の効率化を両立し、災害時の混乱を最小限に抑えながら、早期の事業復旧を実現できます。
災害は、いつ起こるか分かりません。中小企業の経営者は、今すぐ安否確認システムの導入を検討し、従業員とその家族、そして企業そのものを守るための備えを始めましょう。
システム導入の際は、この記事で紹介したシステムの選び方や助成金の活用を参考にし、費用対効果の高い防災投資に役立ててください。