初めての株主総会~その参(電話相談編part3)
おはようございます。つかさ商事株式会社の元木です。
おはようございます。熊谷です。いつもお世話になっております。
お休みのところ早朝からすいません。
いえいえ。顧問先ですから問題ありませんよ。どうされましたか。
ありがとうございます。休日の早朝にもかかわらず、ご連絡が通じる先生で助かります。実は、緊張しているわけではないのですが、週明けに迫っている株主総会のことで、色々と考えていたら、不安になってしまいまして。
なるほど。具体的にどのような不安があるのでしょうか。
はい。以前、先生にもお伝えしましたとおり、弊社には、何名か癖の強い株主の方がいるのですけれど、小耳に挟んだのですが、どうも総会の席で色々と質問をしてきそうなのです。
なるほど。法律的な範疇を離れた事実上のお悩みですね。小耳に挟んだということですけれど、何か、事前に御社の方に、質問状などが届いたのですかね。
いえ。そういうものが届いたわけではないのですが、弊社は、それほど大きな会社ではないものですから、風の噂というか何というか。
大多数の株式は、私と私が経営する別会社が持っているので、議案が承認可決されないことはないのですが、総会の席で、株主の方から質問がなされた場合は、それに対応しなければなりませんよね。株主総会の件で、これまで先生からいただいたアドバイスからすると、一方的に質問を遮ってしまうのは、後々の、株主総会の取消などの不測の事態を招いてしまうと考えられますので。
そうですね。さて、社長のお悩みの趣旨としては、株主総会当日に、株主から質問が出た場合に、議長として、また、会社として、どのように振る舞えばいいのか、ということで宜しいですかね。
仰るとおりです。今までは、身内で固めた会社だけだったので、こんな悩みはなかったのですが。
分かりますよ。特に、顔も素性も分からない方が株主という場合もあるでしょうから、不安は当然です。ただ、結論から申しますと、正直、株主総会前に、どのような質問がなされるのかなどを正確に把握することは不可能に近いです。
つまり、打つ手はなしですか。
基本的には出てきた質問に誠実に対応するしかないでしょうね。ただ、社長が先ほど仰っていたように、もし、ほとんどの株式を社長の身内の方がお持ちだったならば、事前に、身内の方をいくつかのグループに分け、そのグループごとにいくつか質問事項を持たせておいて、株主総会の時間いっぱいまで、そのグループにしていただいた質問への応答をし、他の株主の方に質問をする時間を与えない、という方法が以前はありましたね。
そ、そんなことがまかり通るのですか。
やはり、驚かれるでしょうね。一昔前の総会屋対策の一方法としてはあり得ました。ですが、御社は総会屋とは無縁でしょうから、まずは、事前の想定質問及びそれに対する回答案を検討し、想定問答集を作成してみてはいかがでしょうか。
想定問答集ですか。初めての株主総会ですし、どのような質問が来るか、想定することもできないのですが。
そんなに難しく考えないでください。先ほど、私の方から総会屋の話をしましたけれども、近年、総会屋は減ったようですし、社長が危惧される御社の株主の方も、御社の発展を考えての質問をしてくる可能性が高いのではないでしょうか。質問は肯定的なものと捉えるのがよいと思います。
なるほど。
例えば、御社の業務に精肉の卸売も含まれていたと思いますが、それに関する質問を想定質問事項として考え、それに対する回答や回答者を事前に検討しておいてはいかがでしょうか。考えられる質問は、お歳暮の時期は冬ですので、温かいすき焼き用の牛肉をラインナップに載せたら良いなど、そういった意見ではないでしょうか。日頃の消費者からのアンケートなども想定質問を作る上での参考になると思います。
なるほど。株主の方が、会社をより良くするために、どのような観点から会社を見ているかを想像してみると、想定問答集も作りやすいかもしれませんね。
それと、忘れてはならないのは、議案に挙げられた株主総会の場所を、離島の開けた場所で開催する旨を定款に規定するという議題ですかね。
やはり覚えておられましたか。
あれだけの熱意をお持ちでしたから、忘れようにも忘れられません。せっかくですので、これを機会に、質疑応答についてシミュレーションをしてみましょうか。
それはいいですね。先生からの質問に対処できれば、当日の自信にも繋がりますし。
では、早速ですが、「第1号議案、定款の一部変更の件について、審議したいと思います」
はい。
では、そちらの株主の方。最初に株主番号とお名前をお願いいたします。
はい。株主番号10番の熊谷と申します。御社の株主は、私のような個人株主が少なく、株主の構成としては、御社のグループ会社関連が多いと思われます。そのような株主構成の中で、今後の株主総会開催地を離島にすることを定款に記載するとなると、私ども個人の株主にとっては大きな負担となるのですが、御社が、株主総会開催地を離島にする理由は何でしょうか。
はい。それでは代表取締役である私の方からご説明させていただきます。まず、一番の理由としましては、昨今のコロナ禍における、三密防止対策という点にあります。二番目の理由としましては、弊社のビジョンとして、現在は精肉の卸売業を行っておりますが、将来的には、養鶏、養豚等をしようと考えており、そのための土地の視察も兼ねて・・・。
そうすると、その土地の購入等も考えておられることになると思うのですが、そちらの費用はどのようになりますか。
はい。市場調査によると、・・・。
いやあ。良くできておられます。当日は、どのような質問がなされるか分かりませんが、今のようにお話しできれば、議案を承認されるかはさておき、株主の方は説明にご満足されるのではないでしょうか。
質問の内容によっては、監査役からの回答が必要であったり、当然、顧問弁護士である私からの回答が適切な場合もありますので、変に一人で抱え込まずに、回答者の割り振りも、想定問答集の段階では決めておいた方が良いと思いますよ。
ありがとうございます。株主の視点、あるいは、弊社のお客様の視点から会社を見た時に、どう見えるかを考え、議案について考えておりましたので、うまく対応できたものと思われます。
いずれにせよ、準備しておいて損はないでしょうから、今のような感じで、想定問答集なども練り、当日の質疑応答を迎えられれば良いと思います。
それでは先生、休日の早朝にもかかわらず丁寧にご対応いただきありがとうございました。
いえいえ。私も、朝から存分に頭を使うことができましたので、良い目覚めになりましたよ。後は、株主総会当日を待つばかりとなりましたので、社長もリラックスして当日をお迎えください。
それでは、当日も宜しくお願いいたします。