持株会に入るべき? 仕組みやメリット・デメリットから検討しよう
実は、東証上場企業のうち約8割が従業員持株会という制度を利用しています。従業員持株会とは、勤め先の株式を従業員の給与で買える制度です。
この記事では、従業員持株会のメリットやデメリットを、企業側と従業員側の両方の立場に分けて解説しました。
また、記事の後半部分では、持株会の注意点を詳しくまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
持株会ってどんな制度?
持株会の1つである従業員持株会は、従業員が給与などから一定の金額を積み立て、共同で株式を購入する制度です。
一般的には、持株会と従業員持株会は同じ意味合いで使われますが、持株会では従業員以外の一般の人も参加できるのが特徴です。
従業員持株会を利用することで、企業経営の直接参加や、企業の業績向上に伴った株式の価値上昇を期待できるでしょう。
持株会の仕組み
従業員持株会は天引きした従業員の給与や賞与の一部で自社株を購入し、従業員は拠出額(株式の購入額)に応じて配当金を得られる仕組みです。
持株会自体が企業の福利厚生として位置づけられている面もあります。
特に近年では、従業員持株会は経営層と従業員の間の信頼関係を構築するため、積極的に導入されている制度の一つです。
(出典:厚生労働省 従業員持株会制度の仕組み)
持株会の現状
2021年3月末時点において、東証に上場している企業3,752社のうち、証券会社と契約して従業員持株制度を導入する企業数は3,239社です。
つまり、80%以上の上場企業が従業員持株会を利用していることになりますから、従業員持株会の需要は高いといえるでしょう。
ただし、従業員持株会の会員の従業員数は、全従業員の40%未満です。
(出典:2020年度 従業員持株会状況調査結果)
【立場別】持株会のメリット
従業員持株会のメリットを、企業側と従業員側の2つの立場に分けて解説します。
従業員側のメリット
従業員持株会の従業員側のメリットは主に3つです。詳しく見ていきましょう。
購入価格の優遇
従業員持株会には、従業員は一般の投資家よりも割安の価格で買えます。将来的に株価が上昇すれば、割安の分より大きな配当金を得られるでしょう。
企業ごとに設定されている奨励金にもよりますが、約5%割安で買えるケースが多いです。
奨励金が支給される
一部の従業員持株会では、従業員が出資する資金に対して奨励金が支給されます。
奨励金額とは、買付手数料や事務委託手数料を除外したうえで、加入者が証券会社などから支給されるお金です。拠出金1,000円につき、40円以上〜60円未満が多いでしょう。
配当金を得られる
自社株を持つと株式投資家のように、配当金をもらえるのが大きなメリットです。給与の一部を天引きするだけですので、少額投資からスタートできるのも魅力です。
さらに、従業員持株会が全体で保有する株式数が増えると、企業価値が高まりやすくなります。将来的な配当金額のアップも実現できるでしょう。
企業側のメリット
従業員持株会の企業側のメリットは主に3つです。
従業員のモチベーション向上
従業員は自社株を持つと会社により強い関心を持つため、従業員のモチベーション向上につながります。業務を通じて、業績向上に向けて積極的に取り組むことが期待できます。
また、従業員が株主として直接的に経営へ参加することで、意思決定に関わる機会が生まれ、企業への貢献意識が高まるという効果も期待できます。
株式保有者数の拡大
自社株を保有する従業員数の増加にともない、株式保有者数が拡大するメリットがあるでしょう。株主数の増加と比例して企業の株価上昇を期待できます。
また、株主数が増えると、企業の知名度向上やイメージアップ、広告効果なども望めるでしょう。
長期的な視点から考えてみても、従業員持株会による株主数の増加は大きなメリットになります。
人材確保
従業員持株会は従業員にとって多くのメリットがあるため、企業側にとって人材を確保しやすいというメリットがあります。
例えば、採用率アップや定着率向上などにつながるでしょう。
また、従業員持株会を設ける企業は他社との差別化につながりますので、採用競争力の向上も期待できます。
【立場別】持株会のデメリット
従業員持株会のデメリットを、企業側と従業員側の2つの立場に分けて解説します。
従業員側のデメリット
従業員の立場における従業員持株会のデメリットを解説します。
リスクが一点集中
持株会最大のデメリットは、勤め先と投資先が同じですので、お金の流れが一点に集中するリスクがあります。
給与と投資先を同じ会社に依存することになりますから、勤め先の業績が悪化すれば、従業員は収入と資産の両方の面でダメージを受けかねません。
リスクが一点集中しないためには、持株会とは別の投資先を見つけ、リスク分散させるのがおすすめです。
株主優待券がもらえない
従業員持株会に参加している従業員は、株主優待を受け取れません。なぜなら、株の購入は個人名義ではなく、持株会名義で行われるからです。
100株以上を保有する場合、個人名義の証券口座を開設できますが、奨励金を受け取れなくなります。
個人名義で株式に投資すると、従業員持株会の特典を享受できないことを理解しておくことが重要です。
企業側のデメリット
従業員持株会において企業側が受けるデメリットを3つ紹介します。
議決権問題
従業員持株会が所有する株式の議決権は、従業員持株会が代表しておこないます。従業員持株会が実際の株主になるためです。
従業員が自分の考えを述べる場合や投票する際には、従業員は最初に持株会へ意見を伝える必要があります。
これら一連の流れにより意思決定に時間がかかったり、会社と従業員の間で、意見の不一致が生じたりすることがあるでしょう。
株主への配当が必要
企業は従業員持株会で株式を持つ従業員に配当金を払う義務があります。企業の業績が右肩下がりになっても同様に、配当金の支払い義務が発生します。
万が一、財務状況が原因で配当金の支払いが滞ると、従業員からの信頼度や業務上のパフォーマンスが低下する恐れがあるでしょう。
持株会に関する注意点
従業員持株会には注意すべき点が3つあります。詳しく見ていきましょう。
企業がM&Aによって他社に譲渡された場合
勤め先の企業がM&Aで売却された場合、従業員持株会が持つ株は勤め先を買収した会社に売り渡されます。
この場合は従業員持株会を解散し、株式を清算します。そして、株を保有する従業員は、売却された株の代金を受け取れます。
退職時の取り扱い
従業員持株会に入会できるのは従業員のみですので、勤め先の退職は従業員持株会の退会につながります。
上場株式の場合は、従業員持株会の事務を委託する証券会社等を通じて名義の書き換え、個人で株式を所有します。
一方、非上場株式において名義を書き換えるのは困難なため、従業員持株会へ買い取るように依頼します。
途中売却や積立停止の扱い
従業員持株会では株式の積立を停止できますが、個人で保有する株式のように現金化はできません。
現金化したい場合は、従業員持株会の事務を委託している証券会社などで新たに口座を開設しましょう。そして、保有していた従業員持株会の株式を、その口座に移動します。
持株会のまとめ
従業員持株会とは、勤め先の株式を従業員の給与で買える制度です。
従業員持株会の利点やデメリットを十分に理解したうえで、勤め先の持株会への参加を検討してみてはいかがでしょうか。
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