定型約款書き方コラム その1_利用規約の作り方
令和2年に民法が改正され、「定型約款」が法律上の制度として定められました。
定型約款は簡単に言えば、あらかじめ定型に当てはめた、不特定多数の利用者との契約条項です。とは言っても、どのような形・内容で成り立つものなのか、説明しづらい人は多いでしょう。
しかし、正しい知識に基づいて作成しなければ、トラブルを引き起こしたり、訴訟問題に発展したりすることもあり得るため、利用者も作成者も正しい知識を身につけなくてはなりません。
本記事では、定型約款の概要および利用規約の作り方について、簡単に解説します。
定型約款とは
定型約款とは、インターネット上でのサービスや、電気、ガスなどの供給約款、鉄道などの運送約款のように、不特定多数の利用者などに対して、画一的なサービスを提供する場合に利用される契約の形態です。
こういったサービスでは、いちいち相互の合意を書面などで行うことは、合理的ではありません。そこで、事業者が一方的に条件を提示し、相手側がそれに同意することで契約が成立することになります。新しい民法では、次の3つの要件を満たしている場合に、その約款が「定型約款」であるとされています。
①ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、
②内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なものを 「定型取引」と定義した上、 この定型取引において、
③契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体
逆に言えば、この3つの要件を満たさない場合には、その契約は「定型約款」ではないとされることになります。では、それぞれの要件はどういった内容なのでしょうか?
①「ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引」とは?
ある特定の者とは、インターネット上でのサービスを提供する事業者や、電気、ガスの供給事業者、鉄道などの運行事業者が該当します。こういった事業者が、不特定多数のサービスの利用者を対象にそれぞれのサービスなどの提供を行う場合のことを意味します。
②「内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの」とは?
インターネット上のサービスを受ける場合には、多くの場合、サイト上にある「利用規約」などに同意するという内容にチェックボックスが出てきて、それにチェックして「合意」しなければ、サービスを受けることができない場合がほとんどです。
利用する側は、利用規約について交渉することはなく、画面上で合意することしかできません。もし規約の内容に納得できなければ、サービスを利用しないということになります。画一的にサービス利用への合意を求めることで、合理的に契約を成立させることができます。
これが、いちいち利用者間で契約書を作成しなければ契約が成立しないということになれば、書類のやり取りなどに時間もかかり、合理的とは言えません。
③「契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体」とは?
普通の契約では、当事者がそれぞれ話し合って、契約内容を作り上げて合意したうえで契約を締結します。一方、「定型約款」は、サービスなどを提供する事業者側が一方的に契約の内容を提示します。この事前に準備された契約内容が、「準備された条項の総体」となるのです。インターネット上で提供される多くの契約が、「定型約款」に該当することになってきています。
利用規約の作り方
①タイトルと頭書の決定
利用者が受けようとするサービスが、どのようなものなのかについて、わかりやすいタイトルをつけることが重要です。一般的には、「(適用されるサービス)利用規約」といった名称にします。特に、いくつものサービスを提供しているような場合には、利用者が契約するサービスなどが、どの規約が適用されるのか、明確にしておく必要があります。
サンプルでは、WEBサイトやソフトウェア上でのサービスを利用する利用者に対するサービスであるとしていますが、実際にはより具体的なサービス内容を要約して記載します。
②用語の定義付け
規約の中で使用する用語について、専門的な用語や、何度も出てくる言葉、あいまいになりそうな言葉について、最初に定義しておきます。サンプルでは、「利用者」について定義していますが、ポイントになるような言葉については、できるだけ定義付けしておきましょう。
③利用の手続き
利用者が、サービスを利用してサービスを受けようとする場合には、利用手続きが必要となりますが、サンプルではサービスの提供側による審査を受け、承認されたのちに契約の効力が発生するものとしています。
審査を行うことなく、パソコンやスマートフォンにダウンロードするなどした上で、規約に同意したという意思表示をすれば、契約が成立するという形にすることもできます。ただ、そういった場合には、未成年者などによる契約などに対して、法定代理人(親権者など)の同意を得るようにするなどの対策も必要になってきます。
④利用料金
利用料金が発生する場合には、利用料金がいくらになり、どういった方法で支払うのかを明確に記載する必要があります。ただし、利用料金が変更される場合などもあるので、料金表などで別途定めることも可能です。
遅延損害金は、改正前の民法では法定利息を当初3%とし、その後は市場金利に連動しながら、利率が変更される変動制となることになりました。契約書などで、遅延損害金の利息についての定めがない場合などには、法定利息が適用されますが、契約書などで定めがある場合には、契約書に定めた利率が適用されます。サンプルでは、法定利息より高率の遅延損害金の利息を定めており、支払い遅延に対するペナルティとしての意味を持たせています。