秘密保持契約書(NDA)の書き方は? 作成内容から締結までのステップを徹底解説
秘密保持契約(NDA)は、自社の情報を保護する目的で、企業間の取引や商談、従業員の入社時など多くのシーンで締結されます。契約の際には、秘密保持契約書を適切に作成することが重要です。
本記事では、秘密保持契約書の書き方と締結までのステップ、作成の際の注意点などについて詳しく解説します。とてもセンシティブな書類なので、この記事を参考にして漏れの無いように作成しましょう。
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秘密保持契約書の書き方
秘密保持契約書に記載する項目は、以下の通りです。
- タイトル
- 契約の目的
- 秘密情報の定義・除外事由
- 秘密保持義務
- 秘密情報の目的外使用の禁止
- 契約の有効期間
- 秘密情報の返還・破棄
- 契約違反時の対応
- 作成年月日・署名・押印
各項目について詳しく解説します。
タイトル
まずは文書のタイトルを冒頭に書きましょう。たとえば「秘密保持契約書」や「情報提携契約書」、「秘密保持に関する誓約書」など、状況に応じてタイトルを決定します。
従業員の入退社手続きの際には、誓約書の形式を取るケースが多いです。誓約書では条件を受け入れる側が意思表示する文書のため、署名・押印するのは秘密保持誓約を行う方のみです。
対して、契約書では当事者同士の合意を示す必要があるため、当事者双方が署名・押印します。
契約の目的
契約書の冒頭では、目的という項目を設けて秘密保持契約の目的を記載します。目的の項目で記載するのは、「秘密保持契約をする理由」や「秘密保持契約の対象となる取引・事業」についての内容です。
例えば、業務提携をする場合には、お互いの営業に関する重要な情報を開示するケースもあります。共同研究を行う場合には、相互の技術的な情報をシェアして研究・開発を行うこともあるでしょう。
そういった情報を開示する目的を、契約の趣旨に応じて、時には広く、時には限定的に定めます。秘密保持契約書で前もって目的を明らかにすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
秘密情報の定義・除外事由
開示する情報のうち、どこまでを秘密情報とするのか定義します。
情報の開示後に契約を締結する場合は、締結前に開示した情報も秘密保持の対象となる旨を示すと良いでしょう。また、秘密情報に該当しない例外についても、除外事由として示すことがあります。
秘密保持の対象となる情報を広く規定する場合もあれば、秘密として当事者が表示した情報だけを対象とする場合もあり、目的に応じた記載を心がけましょう。
秘密保持義務
秘密情報の管理義務と管理方法、開示範囲を定めます。開示範囲については、契約当事者以外にも、締結者の委託先や関連会社など、例外的に開示できる第三者を定めることも多いです。
また、第三者から情報が漏洩することを防ぐ観点から、情報の受領者が、自身の負っている秘密保持義務と同等の義務を、その第三者に課すという内容を規定することもあります。
秘密情報の目的外使用の禁止
秘密情報を定められた目的以外で使用することを禁止する旨を記載します。
開示される情報の全てが、不正競争防止法上の「営業情報」に含まれるとは限りませんので、目的外の使用禁止を規定することで、受領者の情報利用を限定しておくことが好ましいです。
契約の有効期間
秘密保持契約の有効期間についても明確に定める必要があります。
案件ごとに適切な期間を設定することが一般的ですが、保守や運用など継続的に業務を委託する場合は、保守・運用契約と同じ期間に設定するか、開示禁止や目的外使用禁止規定の効力を永続的に有効と定めることもあります。
秘密情報の返還・破棄
契約の終了や開示側の要請など、何らかの事由で秘密情報を返還・破棄する義務を当事者に課す規定を定めます。
契約違反時の対応
秘密保持の内容を明記したら、契約違反が発生した場合の対応についても必ず記載してください。情報が契約相手から漏えいした際の損害賠償請求や差止請求の内容を示します。
この時、損害賠償の項目を設けて、どのような違反をした時に、どのような措置を取るのかを具体的に記載することが必要です。更に管轄の項目も加えて、契約違反時に提訴等を行う管轄裁判所の名前も記載してください。
契約違反時の対応について明確にしておくことで、情報の流出や目的外利用の抑止に繋がります。
作成年月日・署名・押印
契約書の末尾には、作成年月日の記載と署名・押印をします。作成年月日は署名・押印した日を記載することが多いです。
契約書の場合は、当事者双方の署名・押印が完了することで契約締結が完了します。
秘密保持契約書作成から締結までの流れ
ここでは、秘密保持契約書を作成し締結に至るまでの流れについて説明します。
雛形の作成
まずは、秘密保持契約書の雛形を作成します。雛形はどちらが作成しても問題ありませんが、業務委託の場合は委託側、業務提携なら会社の規模が大きい方が作成することが多いようです。
内容を双方で確認
雛形を作成したら、印刷したりデータを送ったりするなどして相手方にも共有し、双方で内容を確認します。
特に雛形を受け取った側は、秘密保持契約の内容が自身にとって不利なものになっていないかを確認しましょう。
また、秘密保持契約書の雛形がその契約に適しているか、会社に有利なのか不利なのか、どのような修正案にすればよいかなどは、一度弁護士など専門家に確認してもらうと良いでしょう。
署名・押印
契約書に問題がない場合は、署名・押印をして締結します。
秘密保持契約書は2部用意し、2部ともに署名・押印をし、双方で1部ずつ保管します。契約書が複数ページにまたがる場合は割印を押しましょう。
また、秘密保持契約書は電子契約システムを利用して締結することも可能です。
秘密保持契約書を書く際の注意点
秘密保持契約書を書く際の注意点は以下の3つです。
- 雛形は契約によってカスタマイズする
- 秘密保持契約書に収入印紙は必要ない
- 予定されている開示範囲と齟齬が無いか確認する
各注意点について詳しく解説していきます。
雛形は契約によってカスタマイズする
秘密保持契約書へ記載すべき項目は、契約内容や取引状況、情報の重要度などによって変わります。そのため、秘密保持契約書の雛形はそのまま利用せずに、契約に応じてカスタマイズして使用しましょう。
締結する契約や秘密情報の性質を考慮した上で、秘密保持契約書の項目を個別に決める必要があります。
雛形の項目はもちろん、秘密情報の管理方法や破棄の仕方、契約違反時の措置といった各項目の内容まで確認してから作成を始めることが重要です。
秘密保持契約書に収入印紙は必要ない
契約書の中には印紙税の課税対象となるもの(課税文書)もあります。しかし、秘密保持契約書は課税文書に該当しないため、印紙税の課税対象とはならず、収入印紙は不要です。
ただし、秘密保持契約の中に課税文書となる他の契約が含まれる場合は、収入印紙の貼り付けが必要になる場合があるので、注意してください。
当該文書が収入印紙を貼る必要があるものかどうかを確認したい場合は、国税庁のHP上で公開されている「印紙税額の一覧表(その1)」「印紙税額の一覧表(その2)」をご覧ください。
予定されている開示範囲と齟齬が無いか確認する
広く第三者に対する情報開示を禁止するだけでは、開示範囲が契約の趣旨に合わない場合があります。
受領者の従業員が情報を扱うのであれば、その旨も織り込んで契約書を作成した方がよいでしょう。
また昨今は、開示者から受領した情報を、受領者が管理委託業者に提供したり、第三者の生成AIツールなどに情報提供したりする場合もあります。予定された情報開示範囲に合うよう、秘密保持義務の記載が適切か検討しましょう。
秘密保持契約(NDA)は電子契約での締結も可能
秘密保持契約は、電子契約システムを利用して締結することも可能です。
電子契約システムを使えば、雛形の確認から署名・押印までオンラインで一気通貫で行え、スピーディーに締結することができます。
秘密保持契約(NDA)・機密保持のポイントを押さえ、情報を適切に保護する
ここまで、契約書の書き方と作成から締結までのステップ、注意点などについてお話しました。
秘密保持契約(NDA)は、自社の大切な情報の漏えいや不正利用を防ぎ、適切に保護するために大切な契約です。雛形をそのまま使用するのではなく、契約内容や秘密情報の性質などを考慮して、項目や記載内容を決めましょう。
本記事で解説したポイントを押さえ、正しく作成・締結することで、安心安全な取引に役立ててください。
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