労働協約とは? 労使協定との違いや締結する際の注意点を解説!
労働協約と労使協定で名称は似ていますが、役割や扱い方が大きく異なります。
この記事では、労働協約と労使協定との具体的な違いや労働協約を締結する方法、締結する前の注意点などをまとめました。企業労務担当者の方や経営者の方はぜひ参考にしてください。
労働協約とは
労働協約とは、企業と雇用される労働者との間で取り交わされる契約のことです。労働協約は法律に基づいており、定める内容は次のようなものがあります。
- 労働者の職業上の権利や義務
- 給与や休暇、労働時間などの条件面
労働協約には、労働者は適切な労働条件下で働き、企業は生産性の向上や業務の効率化をおこなうなどの目的があります。労働者と企業の間でトラブルが起きたとしても、労働協約に基づいて解決されます。また、労働協約は一定期間が過ぎると、具体的な契約内容などを含めて更新されるケースが多いです。
労使協定とは
労使協定とは、雇用主と従業員の間で結ぶ合意事項を意味します。労使協定は労働基準法以外の事柄を決定する役割を持ちます。労働基準法による法的効力はありませんが、書面を使った締結が必ず求められるでしょう。
また、雇用主は労働組合と労使協定を締結しますが、労働組合がいない場合の締結先は、従業員の過半数を代表する者です。労働組合とは、労働者が一体となって雇用主と協議を行う組織です。
労働協約と労使協定の違い
労働協約と労使協定はどのように違うのでしょうか。設置基準や有効範囲など、詳しく解説します。
設定基準
労働協約と労使協定の設置基準の違いは、労働法に基づいているかどうかです。
- 労働協約:労働法に基づいて締結
- 労使協定:労働法に基づいていない
労働協約は、労働法で定められた労働条件を基準に契約を結ぶのに対し、労使協定は、労働法のみでは決められない労働条件を基準に契約を締結します。具体例には、時間外労働や休日出勤などが該当します。
有効範囲
労働協約と労使協定の有効範囲の違いは、事業所ごとに区切られるかどうかです。
- 労働協約:労働者全体
- 労使協定:事業所などの単位別
ある事業所の代表と企業が労使協定を締結した場合、その労使協定の有効範囲は締結した2者間のみですので、他の事業所では無効になります。しかし、労働組合と締結する労働協約の有効範囲は、労働組合にいる組員全員です。
有効期限
労働協約は労働者と企業の協議のうえ、有効期限は上限3年までの期間で自由に決められます。ただし、期間を決めない場合は、締結後から90日以内に解約申告をおこなうと、解約が成立します。
一方、労使協定の場合は、有効期限を定めなくてよい場合が多いですが、36協定のように有効期限を定めなければならない協定もあります。36協定とは、時間外・休日労働に関する協定届のことです。
効力
労働協約には規範的効力と債務的効力があります。
- 規範的効力:雇用主は会社のルールより労働協約を遵守
- 債務的効力:団体的労使関係の運営についてのルールなど、協約当事者を拘束する効力。
一方、労使協定には免罪的効力があり、労働法に違反しても罰則が免除されます。具体的には、労使による36協定を締結すると、協定の定める時間まで規制が解除され、時間外労働が可能になるケースです。
労働協約の位置付け
労働協約の位置づけについて詳しく解説します。優先順位としては、以下の順番に適用されます。
- 労働基準法
- 労働協約
- 就業規則
各企業の労働協約や就業規則は、国が定める労働基準法に基づいて作られています。そのため、企業や労働者も労働協約や就業規則を前提として、労働基準法を第一に守るのが基本です。その次に来るのが労働基準法から成り立つ労働協約です。規範的効力と債務的効力の法の力が働きます。
優先順位が1番下なのは、企業が独自に定めた就業規則です。また、労使協定は労働者と企業側の約束事であるため、法的な強制力は機能しません。したがって、休日出勤させても企業側に罰則はなく、休日出勤の指示に従わなくても労働者は罰則を受けません。
労働協約の締結方法
労働組合が労働協約を締結するためには、書面に必要事項を記載し、労働組合と企業の署名もしくは、記名押印が必要です。書面の記載事項の具体例をいくつか紹介します。これがすべてではありませんが、内容の把握にお役立てください。
- 前文
- 総則に関する条項(目的や適用範囲、経営権、労働権など)
- 組合活動に関する条項(就業時間中の組合活動の取扱いや、会社施設の利用など)
- 人事に関する条項(採用や転勤、出向、解雇、退職など)
- 労働条件に関する条項(賃金や退職金、労働時間、休日、時間外および休日労働など)
この他にも、災害補償や争議行為に関する条項なども入るでしょう。
労働協約に違反した場合の罰則とは?
労働協約に違反した場合は労働組合法第7条に基づき、不当労働行為に該当するケースがあります。不当労働行為は権利の侵害行為になります。
(出典:労働基準法 e-GOV 法令検索)
民法の損害賠償請求は高額になるケースがありますので、締結した労働協約の規約は必ず守りましょう。また、労働協約の交渉段階において、守ることが困難な規約があるかどうかチェックするのも大切です。
労働協約を締結する際の留意点
労働協約を締結する際の留意点は3つです。詳しく見ていきましょう。
事前協議事項は慎重に定める
事前協議事項とは、企業が労働組合との事前協議を義務づける事項です。例えば、人事異動のすべてを事前協議事項としてしまうと、人事異動にまつわるすべてのことが労働組合との事前協議が必要になるので、会社運営の支障になりかねません。十分に考慮してから事前協議事項を定めましょう。
明確に規定する
労働協約を明確に規定すると、労働者と雇用者の信頼関係が構築され、労働環境を改善できます。規定を明確にする際はまず現実的な範囲で規定を作り、組合や雇用者の状況を見ながら段階的に既定の内容を向上させるのがおすすめです。組合結成後すぐに理想的な労働条件や人事条項などを得られないためです。
期間を明確に区切る
労働協約のなかには有効期間が定められないまま締結されるケースがあります。その場合は企業側もしくは労働組合側のどちらかが、締結後90日以内に申請すると解約できます。しかし、実際には解約が無効にされたり、スムーズに作業が進まないことが大半です。労働協約は有効期間を明確に定めて締結しましょう。
労働協約のまとめ
今回は労働協約と労使協定の具体的な違いや位置づけ、労働協約を締結する前の注意点などを解説しました。労働者と企業が良好な関係で仕事するためには、労働協約や労使協定が欠かせません。しかし、労働協約は締結後に撤回するのが難しいので、十分な知識を持って慎重に行いましょう。
【書式のテンプレートをお探しなら】