電子契約書の保管方法とは? 適切に保管するための要件を解説
電子契約書の保管方法について知りたいと思ったことはありませんか?近年、ビジネスのデジタル化が進み、契約書の電子化も急速に広がっています。
しかし、電子契約書の保管には従来の紙の契約書とは異なるルールがあり、電子帳簿保存法の知識なども不可欠です。
本記事では、電子契約書の保管方法と適切に保管するための要件について、わかりやすく解説していきます。電子帳簿保存法の基本的な内容から、最新の改正ポイントまで幅広く紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
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電子契約書を適切に保管することは、ビジネスの信頼性と法的保護の観点から非常に重要です。ここでは、電子契約書の主な保管方法と、各方法の特徴について詳しく見ていきましょう。
電子データのまま保管する方法
電子契約書を電子データのまま保管する方法は、最も一般的で効率的な方法です。この方法では、契約書のデータを安全な自社サーバーかクラウドサービスのどちらかに保存します。
電子帳簿保存法で定められた電子データ保管の要件として、以下の点に注意が必要です。
- 真実性の確保(タイムスタンプの付与や、改ざん防止機能)
- 可視性の確保
- 検索機能の確保(取引年月日、金額、取引先など)
紙の契約書をスキャンして保管する方法
既存の紙の契約書をデジタル化して保管する方法もあります。この方法を行う場合は、電子帳簿保存法で定められたスキャナ保存の要件を満たす必要があります。
スキャナ保存の主な要件は以下の通りです。
- 解像度:200dpi以上
- カラー画像:赤・緑・青の各色256階調以上
- タイムスタンプ:スキャン後、速やかに付与すること
スキャナ保存のメリットは、検索性が向上し必要な書類をすぐに見つけられるという点です。一方で、スキャン作業に時間や手間がかかってしまうこともあるため、作業時間を確保する必要があります。
スキャナ保存を実施する際は、手順の明確化や原本とスキャンデータの保存・バックアップ体制の構築など、運用フローを整備しましょう。
保管期間と保管場所の要件
電子契約書の保管には、法律で定められた期間と場所に関する要件があります。電子帳簿保存法で定められた保管期間は、原則として7年間です。この期間は、確定申告書の提出期限の翌日から起算されます。ただし、欠損金の繰越控除を受ける場合など、状況によっては10年間の保存が必要となることがあります。
保管場所に関しては、以下の要件を満たすことが必要です。
- 納税地(本店や主たる事務所の所在地)で保存すること
- 税務署からのアクセスが可能であること
- 電磁的記録の閲覧・印刷が速やかにできる環境を整えること
これらの要件を踏まえ、社内規程の整備やアクセス権限の適切な設定と管理などの対策をして、管理体制を構築するとよいでしょう。
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電子契約の仕組みと法的効力|契約DXの時代に知っておくべき基礎知識電子契約書を適切に保管するための要件
電子契約書を適切に保管するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。これらの要件は、電子帳簿保存法や関連する法規制によって定められており、契約書の法的有効性と信頼性を確保するために不可欠です。ここでは、主要な要件について詳しく解説していきます。
真実性の確保のための措置
真実性の確保とは、電子契約書が改ざんされていないこと、そして契約時点の内容が正確に保持されていることを証明できる状態を指します。そこで、タイムスタンプという機能を使用します。タイムスタンプは、電子文書が特定の日時に存在し、その時点以降に変更されていないことを証明する技術です。
電子契約書にタイムスタンプを付与することで、以下のような効果が得られます。
- 契約締結時点の正確な日時の証明
- 契約内容の非改ざん性の保証
- 法的紛争時の有力な証拠としての活用
電子契約書システムには、文書の変更履歴を記録し、追跡可能にする機能が必要です。電子契約書の安全性を確保するためには、適切なアクセス制御と不正アクセス防止が不可欠です。多要素認証の導入や、定期的なセキュリティ監査の実施などをして対策することをおすすめします。
見読性(可視性)の確保
電子契約書の見読性(可視性)を確保することは、契約内容を必要な時にすぐに確認し、理解できるようにするために重要です。これは、単に電子データとして保存するだけでなく、実際に利用可能な状態で保管することを意味します。
ディスプレイやプリンター等の備付けと操作性を確保するために、以下のような電子契約書を閲覧するための環境整備が必要です。
- 十分な大きさと解像度を持つディスプレイの設置
- 高品質な出力が可能なプリンターの準備
- 操作マニュアルの整備と従業員への教育
検索機能の確保
電子帳簿保存法では、特定の検索条件を満たすことが要件として定められています。基本的な検索キーとして、以下の項目を設定する必要があります。
- 取引年月日:契約締結日や有効期間の開始日など
- 取引金額:契約金額や取引総額
- 取引先:契約相手方の名称や法人番号
これらの検索キーを適切に設定することで、必要な契約書を素早く検索することが可能です。また、範囲指定検索や組み合わせ検索など、より高度な検索機能を実装することも推奨されています。
マニュアルの整備
マニュアルは、組織内の全ての関係者が一貫した方法で電子契約書を扱えるようにするための重要なツールです。システム概要書とマニュアルを作成する際は、以下のような文書を作成し、常に最新の状態で保管しておきましょう。
- システム概要書:使用している電子契約システムの全体像と主要機能の説明
- ユーザーマニュアル:システムの基本的な操作方法や各機能の詳細な使い方
- 管理者マニュアル:システム設定や権限管理、トラブルシューティングなどの情報
また、マニュアルの文書は、紙媒体だけでなく、電子的にも閲覧できるようにしておくと便利です。
電子契約書の保存方法に関わる電子帳簿保存法について
電子契約書の保存方法を理解する上で、電子帳簿保存法の知識は不可欠です。この法律は、電子的に作成・保存される帳簿や書類の取り扱いを規定しており、電子契約書の管理にも大きな影響を与えています。ここでは、電子帳簿保存法の概要や最新の改正ポイントについて詳しく解説していきます。
電子帳簿保存法の概要と目的
電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。電子帳簿保存法は、日本における法律で、企業や個人事業主が帳簿や書類を電子データとして保存するための基準や手続きを定めたものです。
この法律は、紙の帳簿や書類を電子化し、効率的に管理・保存することを目的としています。
電子帳簿保存法の最新改正ポイント
2022年1月の改正で変更された主な点は以下の通りです。
- 電子取引データの保存義務化
電子的に受け取った請求書や契約書などは、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが義務付けられました。これにより、ペーパーレス化が一層促進されることが期待されています。 - 事前承認制度の廃止
従来は電子帳簿等の保存を行う際に税務署長の事前承認が必要でしたが、この制度が廃止されました。これにより、企業の負担が軽減され、電子化への移行がスムーズになりました。 - スキャナ保存要件の緩和
タイムスタンプ要件が3日以内→約2か月以内に緩和されました。
不正防止のための適正事務処理要件が廃止され、検索要件も緩和されました。 - 電子帳簿の優遇措置の拡大
一定の要件を満たす電子帳簿について、過少申告加算税の軽減などの優遇措置が拡大されました。
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電子契約に法的効力はある? 要件と法的効力を高めるポイントを解説電子契約書の保管に適したシステム・サービス
電子契約書を適切に保管・管理するためには、信頼性の高いシステムやサービスを利用しましょう。従来の紙の契約書を保管する方法とは異なり、電子契約書の管理には特殊な機能や高度なセキュリティが求められます。
ここでは、電子契約書の保管に適したシステムやサービスについて、その特徴や選定のポイントを詳しく解説していきます。
クラウド型の電子契約システムのメリット
クラウド型の電子契約システムは、多くの企業で導入されています。クラウド型の電子契約システムのメリットは、主に以下のようなものが挙げられます。
- 初期コストの低減(紙や印刷、郵送費用が不要になるため)
- インターネット環境であれば、どこからでも契約書の確認・署名が可能
- 暗号化技術やアクセス制御を用いた高いセキュリティ
- 自動バックアップ機能により万が一のデータ消失時にも迅速にリカバリが可能
- アップデートの自動化による最新機能の利用
クラウドサービスを利用することで、大規模な初期投資を避けつつ、最新の技術を活用することができます。
専門のサービス提供者が管理するため、自社サーバーを使用するよりも高度なセキュリティ対策が期待できるでしょう。
また、クラウドサービスでは、常に最新版のソフトウェアを利用できるため、新しい脅威や法令の変更にも迅速に対応することができます。
電子契約システム選定のポイント
適切な電子契約システムを選定することは、電子契約書の管理の緩和につながります。電子契約サービス選定の主なポイントは、以下の通りです。
- サービスが提供するセキュリティ機能(データの暗号化、二要素認証、アクセス制御、ログ管理など)
- サービスが提供する電子署名が、法的に有効であるか
- ユーザビリティと操作性の高さ
- APIによる他システムやツール(CRM、ERP、クラウドストレージなど)との連携と拡張性
法令遵守は最も重要な選定基準の一つです。電子帳簿保存法の要件を満たしていないサービスを選択してしまうと、後々大きな問題となる可能性があるため注意が必要です。
また使いやすさは、従業員の受け入れやすさに直結します。APIを通じて他のシステムと連携することで、長期的な投資価値を高めることができるでしょう。
電子契約ができない書類もある
電子契約の普及が進む一方で、依然として電子化が認められていない書類も存在します。電子契約が認められていない主な書類には以下のようなものがあります。
- 不動産登記に関する書類
- 戸籍関連の書類
- 株式会社設立に関する書類
- 金融商品取引に関する一部の書類
電子帳簿保存法の保管対象外となりますが、その他の関連書類(例:不動産売買に関連する重要事項説明書など)については電子化が可能な場合もあります。そのため、取り扱う書類ごとに電子化の可否を確認し、適切に管理することが重要です。
なお、法改正や技術の進歩により、将来的にはこれらの書類も電子化される可能性があります。常に最新の法令や規制を確認し、対応を検討しましょう。
電子契約書の適切な保管方法を知っておこう
電子帳簿保存法の要件を満たす保管方法を選択することは、単なる法令遵守以上の意味があります。信頼できる電子契約システムの導入は、保管の効率化だけでなく、契約プロセス全体の最適化をもたらします。特に、APIによる他システムとの連携や、高度なセキュリティ機能は、業務効率の向上とリスク管理強化の両立が可能になるでしょう。
従業員への教育や、明確な運用ルールの策定、定期的な監査の実施などを通じて、組織全体で電子契約書の重要性を理解することをおすすめします。適切な保管方法を選択し、継続的に改善していくことで、よりスマートで効率的な企業運営の実現を目指しましょう。
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