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建設業でも電子契約を導入したい! メリットやサービス選定のポイントを解説

建設業でも電子契約を導入したい! メリットやサービス選定のポイントを解説

2001年の建設業法改正により、建設業界でも工事請負契約において電子契約が可能になりました。少しずつ業界全体で導入が進められていますが、法律の制約や建設業界特有の慣習によって未だ多くの企業が紙の契約書を使用しているのが現状です。

本記事では、建設業における電子契約の現状と法改正の内容、そして電子契約導入のメリットとサービス選定のポイントを詳しく解説します。


この記事の監修者
弁護士法人山本特許法律事務所  パートナー弁護士 

建設業における電子契約の現状

建設業界でも電子契約の導入が徐々に進んでいます。
これから電子契約を検討するという建設業界の方のために、ここでは業界における電子契約の現状について詳しく見ていきましょう。

電子契約の導入が進む建設業界

建設業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが加速し、電子契約への注目が高まっています。特に大手ゼネコンを中心に、電子契約の導入が急速に進んでいる状況です。これは、業務効率化やコスト削減、さらにはペーパーレス化による環境負荷の軽減など、電子契約化のメリットに対する期待が高まっているためです。

また、新型コロナウイルス感染症の影響で、非対面での業務遂行を求められた中、電子契約はその解決策としても注目を集めていました。
これを一つの契機として、建設業界全体で業務プロセスの見直しと効率化が進められており、電子契約はその重要な一角を担っています。

法改正前は工事請負契約の方式に制約があった

従来の建設業法で義務付けられていたのは、工事請負契約書の書面交付です。そのため電子契約を行うための法的要件が不明確で、多くの企業が導入できずにいました。

しかし書面契約には、印刷や押印、保管など多くの手間がかかります。特に建設業では、工事の規模や種類によって契約内容が複雑になることもざらにあります。契約書の作成と管理に多大な時間とコストを要してしまう非効率性から、業界全体で電子化へのニーズは低くはありませんでした。


建設業法の改正で工事請負契約に電子契約が解禁

建設業界における電子契約普及の追い風は、2001年の建設業法改正です。ここでは、電子契約が可能になった経緯と、利用するための要件について詳しく解説します。

2001年の建設業法改正で工事請負契約において電子契約が可能に

2001年の建設業法改正により、工事請負契約において一定の条件を満たせば、建設業での電子契約ができるようになりました。背景には、IT化の進展に伴う業務効率化の要請があります。

具体的には建設業法第19条に第3項が追加され、「当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法」であれば契約可能です。これにより、建設業界で電子契約へ向けた動きが活発化しました。

グレーゾーン解消制度で電子契約サービスの適法性を確認

電子契約の法律上の利用が認められたとはいえ、そのサービスが法的要件を満たしているのか把握できなければ導入を進められません。
この電子契約サービスの適法性を確認する上で重要な役割を果たしたのが「グレーゾーン解消制度」です。この制度は、事業者が新しいビジネスモデルや技術を導入する際に、規制の適用の有無を事前に確認できる仕組みになっています。

電子契約サービスの提供事業者はグレーゾーン解消制度を利用して、自社のサービスが建設業法の要件を満たしているか確認しました。その結果認められたのは、多くの電子契約サービスが適法であるということです。この件によって、建設業者が安心して電子契約を導入できる環境が整いました。

建設業で工事請負契約について電子契約を利用するための要件

建設業における工事請負契約で電子契約を利用する要件は次の通りです。
具体的には、「見読性」「原本性」「本人性」の3つの要件の確保が必要になります。

要件

概要 

見読性

契約書をいつでも画面上で確認したり書面に出力したりできる状態であること

原本性

電子データが改ざんされていないことを証明できる状態であること

本人性

契約を締結する当事者が本人であることを確認できる措置を講じている状態であること

これらの要件を満たす適切な電子契約システムの選択が必要です。
契約の法的有効性が問われる可能性があるため、サービスの選定には十分な注意を払いましょう。


建設業で電子契約を利用するメリット

電子契約を導入することで、建設業にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、以下の主な3つのメリットについて詳しく解説します。

  • 収入印紙代や郵送費などのコストを大幅に削減
  • 契約業務の効率化とスピードアップを実現
  • コンプライアンスとセキュリティの強化につながる

収入印紙代や郵送費などのコストを大幅に削減

電子契約を導入することで大幅なコスト削減効果が期待できます。具体的には、収入印紙代、印刷コスト、郵送費などです。

特に建設業の場合は、契約金額が高額になることが多いため収入印紙代の削減効果は大きいといえます。たとえば、1億円の工事契約の場合、通常4万円の収入印紙が必要です。しかし、電子契約ではこれが不要になるというメリットがあります。
また、複数の下請け業者との契約も多い建設業では印刷コストや郵送費も膨大となる場合があるため、より効果的です。

これらのコスト削減は、直接的に企業の利益率向上につながります。特に中小の建設業者にとっては、経営改善の大きな機会となるでしょう。

契約業務の効率化とスピードアップを実現

電子契約の導入によって、契約業務の効率化が可能です。従来の紙の契約書では、印刷、製本、押印、郵送といった一連の作業に多くの時間と労力を要しました。しかし電子契約では、これらの作業がすべてデジタル上で完結できます。契約書の作成から署名、相手方への送付まで、わずか数分で完了することも可能です。

また、契約内容の修正や差し戻しも簡単に行えるため、契約締結までの時間を大幅に短縮できます。これらの業務効率化は、単に時間の節約や人的リソースの有効活用に欠かせません。電子契約の導入によって、契約業務に費やしていた時間をより優先度の高い業務に振り分けることができるでしょう。

コンプライアンスとセキュリティの強化につながる

電子契約は、コンプライアンスとセキュリティの観点からも大きなメリットがあります。電子契約システムでは契約書の作成から署名、保管までの全プロセスが記録されるからです。そのため、監査対応が速やかに行えます。

また、電子署名とタイムスタンプの技術により、契約書の改ざんを防止することが可能です。これは、建設業界でしばしば問題となる不正防止にも役立つといえます。

さらに、クラウド上で契約書を管理することで、紛失や盗難のリスクを低減できることも大きなメリットです。自然災害による書類の損失も防ぐことができるため、事業継続性の観点からも有効でしょう。

このように電子契約を導入することで、建設業のコンプライアンス強化とセキュリティ面においての管理を強化することができます。


電子契約サービス選定のポイント

電子契約の導入を決めたら適切なサービスを選定していきましょう。ここでは、建設業者が電子契約サービスを選ぶ際のポイントとして、以下の3つをご紹介します。

  • 工事請負契約においては、建設業法の要件を満たすサービスを選ぶ
  • 操作性と機能性を総合的に判断する
  • コストパフォーマンスの高いサービスを選択

建設業法の要件を満たすサービスを選ぶ

工事請負契約においては、電子契約サービスを選ぶ際に建設業法の要件を満たしているか確認する必要があります。具体的には、先述した「見読性」「原本性」「本人性」の3つの要件を満たすことです。

サービスの提供事業者が要件を満たしているかどうか不明な場合は、直接確認するのが確実です。適法性の確保は単に法律を守るためだけでなく、取引先との信頼関係を維持する上でも重要になります。建設業界では長期的な取引関係が重視されるため、法的に問題のないサービスを選ぶことが双方にとって大切です。

操作性と機能性を総合的に判断する

電子契約サービスの選定の際、操作性と機能性は重要な判断基準となります。具体的には、以下のような機能が求められます。

  • 複数の契約書テンプレートの管理
  • 電子署名の簡便な実行
  • 契約状況の可視化と管理
  • セキュアなデータ保管と検索機能
  • 他のシステムとの連携

特に建設業の場合、工事の種類や規模によって契約内容が大きく異なる場合があります。そのため、柔軟にテンプレートを作成・管理できる機能は重要です。

また、現場で働く社員だけでなく、協力会社など幅広い方が利用することを考えて操作性も考慮しましょう。誰もがスムーズに対応できるように、PCだけでなく、スマートフォンやタブレットでも快適に使えるサービスを選ぶことが大切です。

コストパフォーマンスの高いサービスを選択

電子契約サービスの価格体系は、月額固定制や従量制など、サービスによってさまざまです。自社の契約頻度や規模に合わせながら、以下のような点に気を付けて選びましょう。

  • 初期費用と月額費用
  • セキュリティや機能性
  • 導入後のサポート
  • カスタマイズの可否

安価なサービスの中には、セキュリティや機能性に問題があるものがあるので注意してください。また、導入後のサポート体制が不十分なサービスを選んでしまうと、結果的に多くの手間とコストがかかってしまう可能性があります。

そのため、初期費用や月額費用だけでなく、導入支援やトレーニング、カスタマイズの可能性なども含めて総合的に判断することが大切です。また、無料トライアルがあるサービスを選び、実際に使ってみて判断するのもいいでしょう。

コストと機能のバランスを取りつつ、自社に最適なサービスを選ぶことがポイントです。


建設業の生産性向上に電子契約は不可欠

電子契約の導入は、建設業の生産性向上に大きく寄与します。契約業務が効率化することによって、人的リソースを有効活用でき、より付加価値の高い業務に注力できるでしょう。また、ペーパーレス化や業務プロセスの簡素化は、働き方改革の推進にもつながります。

これからは働き方改革への対応やさまざまな環境の変化に適宜対応していく必要があります。このような状況下で電子契約の導入は、単なる選択肢ではなく、建設業界の持続的な発展のためにも不可欠な取り組みとなるでしょう。


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監修者プロフィール

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上米良 大輔

弁護士法人山本特許法律事務所 パートナー弁護士

2009年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、2012年にオムロン株式会社に社内弁護士第1号として入社、以降約7年にわたり企業内弁護士として、国内外の案件を広く担当した。特にうち5年は健康医療機器事業を行うオムロンヘルスケア株式会社に出向し、薬事・ヘルスケア規制分野の業務も多数経験した。

2019年、海外の知的財産権対応を強みとする山本特許法律事務所入所、2021年、弁護士法人化と共にパートナー就任。知的財産権案件、薬事規制案件を中心に、国内外の案件を広く取り扱う。

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