電子契約導入時に必要な社内規程とは? 作成のポイントや注意点
電子契約の導入を適切に運用するためには社内規程の整備が重要です。ルールをしっかりと明記することで、正しく安全な契約を結ぶことができます。
本記事では、この電子契約導入時に必要となる社内規程の作成・修正方法を確認していきましょう。印章管理規程や文書管理規程の見直しポイント、新たに策定が必要な電子署名管理規程の重要項目、さらに電子契約導入までの具体的な流れを紹介します。
これらの知識を活用し、安全かつ効率的な電子契約の導入を実現してください。
【関連記事はこちら】
電子契約のワークフロー機能とは? メリットやサービスの選び方を解説電子契約導入に必要な社内規程
電子契約のスムーズな導入と運用を行っていくためには、まず社内規程の整備が必要です。
ここでは、以下の主な社内規程について解説します。
- 印章管理規程
- 文書管理規程
- 電子署名管理規程
電子契約導入の際には、これらの見直しや新規策定が必要です。それぞれの重要ポイントを詳しく見ていきましょう。
印章管理規程
印章管理規程は、社内で取り決められた印章を管理するルールです。従来の企業の印章管理規程は印鑑の管理を前提としていることが多く、電子署名を用いる電子契約には適していないことがあります。
そのため、電子契約の導入の際には大幅な見直しが必要となる規程です。
具体的には、以下のような順番で見直しを行います。
- 従来の印章関連の規程を具体的に列挙する
- 1を基に、電子署名の管理方法を盛り込むための修正点を提示する
- 実際の印章管理規程の修正例を提示しながら、変更点を解説する
電子署名は実体を持たないため、従来の印鑑とは管理方法が大きく異なります。電子契約では、印鑑の保管方法や押印手続きに関する項目は不要です。ただし完全に電子契約へ移行するまでの間は、従来の印鑑管理と電子署名管理の両方に対応した規程が必要となるでしょう。
文書管理規程
文書管理規程は、社内で文書の取り扱い方法について定められたルールです。電子契約の導入により、従来の紙ベースの文書管理から電子文書の管理へと移行します。そのため、様々な観点からの見直しが必要です。
文書管理規程における主な変更点は、以下の通りです。
- 電子契約書の保管方法や保管期間の明記
- 電子帳簿保存法の要件を満たすための規程の追加
- アクセス権限の設定など電子契約書の適切な管理方法の規程の追加
文書管理規程には、電子契約書の保管方法や保管期間について明記してください。もともと電子文書は物理的なスペースを取らず、長期の保存が可能ですが、データの消失や互換性喪失には注意が必要です。そのため、定期的なバックアップや確認作業などの措置を講じましょう。
電子署名管理規程
電子署名管理規程とは、電子契約導入時に新たに定めなければならないルールです。この規程は、電子契約導入に伴う「電子署名」の適切な運用と管理をするために必要になります。
電子署名管理規程に盛り込むべき主な内容は、以下の通りです。
- 電子署名の適切な管理方法
- 電子署名の不正使用防止と法的効力担保のための規程策定
具体的には、電子署名の発行や管理・廃棄のプロセス、使用権限の設定などを行います。電子署名は、契約の有効性において重要な要素です。会社の信用性にも直結するため、厳重な管理方法が求められます。
自社の規程策定の際に他社の電子署名管理規程策定事例を参考にすると、より内容が明確になるでしょう。
電子契約における電子署名管理規程の作成のポイント
電子署名管理規程は、電子契約を安全かつ効率的に運用するための要となる重要な規程です。この規程を適切に作成することで、電子署名の信頼性を確保して法的リスクを軽減できます。
ここでは、電子署名管理規程の作成における主なポイントを詳しく解説します。
【関連記事はこちら】
電子契約における電子署名とは? 電子サインとの違いや法的効力について電子署名管理規程に盛り込むべき主な内容
電子署名管理規程に盛り込むべき内容には、以下のような項目があります。
- 電子署名の発行・管理・使用・廃棄のプロセス
- 管理責任者の指定
- セキュリティ対策
- 不正使用時の対応
完成したら、必要な項目がすべて盛り込まれているのか、不要な項目が含まれていないのかを必ず確認しましょう。またこれらの規程の内容を定期的に見直し、必要に応じて更新することも重要です。
電子署名の適切な管理のための対策
電子署名の適切な管理は、電子契約の信頼性と安全性を維持する上で重要です。たとえば、以下のような管理方法が挙げられます。
- 二要素認証の仕組みを運用して電子署名へ適用させる
- 秘密鍵を利用する
二要素認証とは「知っているもの(IDやパスワードなど)」と「持っているもの(指紋や顔など)」の2つの要素を組み合わせて、本人確認を行う方法です。二要素認証によりIDやパスワードが漏洩しても本人でなければ生体認証をクリアできないため、なりすましを防ぐことができます。またこの仕組みを電子署名へ適用させることで、セキュリティを大幅に向上させることも可能です。
秘密鍵は、電子署名において第三者に公開できないように管理できる鍵です。データの安全な通信や暗号化、デジタル署名や認証などさまざまな場面で使用できます。秘密鍵は性質上、本人以外は誰も知ることができません。そのため契約当事者が秘密鍵を大切に保管している限り、容易に電子文書の本人証明が行えます。
電子契約サービス利用時には管理代行者との関係性を明記する
多くの企業は、電子契約サービスを利用して電子契約を行っています。このような場合、電子署名の管理の一部をサービス提供者に委託しているため、その関係性を明確に規定することも重要です。
たとえば、以下のような内容を入れておきましょう。
- 電子契約サービス利用時の委託業務の範囲と責任分界点
- 委託先の電子契約サービス提供者の選定基準
- 委託先との秘密保持契約締結の内容
リスク管理として、サービス会社と自社との責任分界点を明確にしましょう。
たとえば、電子署名の生成や保管はサービス提供者が行って使用の承認は自社で行う、といった具合に業務の範囲と責任を記載すると良いでしょう。
電子契約導入時の社内規程策定までの流れ
ここでは、電子契約導入時の社内規程策定までの流れについてそれぞれ解説します。
- 現状の契約フローとペーパーレス化の課題の洗い出し
- 電子契約サービスの選定と必要な機能の明確化
- 社内規程の修正と電子署名管理規程の策定
- 社内外への周知と電子契約サービスの導入
1.現状の契約フローとペーパーレス化の課題の洗い出し
電子契約導入の第一歩は、現状の契約フローを把握し、課題を明確にすることです。たとえば、フローチャートを用いて契約書の作成から承認、締結、保管までの一連の流れを、視覚で捉えやすくすると、各ステップでの作業内容や関係部署などが一目で分かりやすくなります。
明確にするだけでなく、なるべく課題を洗い出すことも大切です。たとえば、「印刷や郵送にかかる時間とコスト」、「押印のための稟議プロセス」、「書類の紛失リスク」などが挙げられます。抽出された課題を「重要度」と「緊急度」の2軸でマッピングし、優先的に取り組むべき課題を明確にしましょう。
2.電子契約サービスの選定と必要な機能の明確化
現状分析の次のステップは、適切な電子契約サービスの選定です。自社にあった電子契約サービスについて、選定基準を考えます。たとえば、金融業では高度なセキュリティ機能、製造業では大量の契約を効率的に処理する機能が重要になります。
また、前述の分析で洗い出した課題を解決するために必要な機能があれば、それも明確にすると良いでしょう。選定時基準が明らかになったら、電子契約サービスのデモや試用方法を検証します。
電子契約システムの提供会社では無料トライアル期間が設けられていることが多いです。これを利用して、実際の業務フローに沿った操作性や機能の充実度を確認しましょう。複数のサービスを比較検討することで、より自社に適したサービスを選定できます。
3.社内規程の修正と電子署名管理規程の策定
電子契約サービスの選定が完了したら、いよいよ社内規程の修正と新規策定に着手します。まずは、規程の修正や策定の体制作りにおける担当者を選任します。
たとえば、法務部門、IT部門、実務部門からメンバーを選出し、プロジェクトチームを結成するといった方法もおすすめです。各部門の知見を活かすことで、より実効性の高い規程を作成できます。
担当者が決まったら全体のスケジュールを立て、各規程の修正・策定に必要な期間を見積もりましょう。その上で、定期的な進捗確認ミーティングを設定し、作業の遅れを早期に発見・対応できる体制を整えます。これらの規程の修正・策定にあたっては、法的要件を満たしつつ、実務に即した内容にすることが大切です。
4.社内外への周知と電子契約サービスの導入
最後のステップは、新しい規程と電子契約サービスの導入に向けた社内外への周知です。全社メールでの案内や部門別の説明会、動画マニュアルの作成など複数の手段を組み合わせると、より効果的な周知を図ることができます。電子契約のメリットや具体的な操作方法については、特に丁寧な説明が必要です。
また取引先にも電子契約への移行を説明し、同意を得なくてはなりません。取引先によっては、電子契約に抵抗感を持つ場合もあるため、メリットを丁寧に説明し、段階的な移行を提案するといった配慮が必要です。
社内外への周知と導入準備を丁寧に行うことで、電子契約への移行に対する不安や抵抗感を軽減でき、スムーズな導入につながるでしょう。
電子契約の適切な運用には社内規程の整備が不可欠
電子契約の導入は、業務効率化やコスト削減、環境負荷の低減など、多くのメリットをもたらします。しかし、これらのメリットを最大限に活かし、安全かつ適切に運用するためには、社内規程の整備が不可欠です。
社内規程の整備は、単なる形式的な作業ではありません。これらの規程を通じて、電子契約に関する社内の共通認識を形成し、適切な運用体制を構築できます。また、万が一のトラブル発生時にも、これらの規程に基づいて、適切な対応ができるでしょう。
電子契約の導入を検討している企業は、ぜひ本記事で解説した内容を参考に、社内規程の整備から取り組んでください。
【関連記事はこちら】
電子契約のワークフロー機能とは? メリットやサービスの選び方を解説