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男女雇用機会均等法とは? 差別の具体例や防止策を解説

男女雇用機会均等法とは? 差別の具体例や防止策を解説

男女雇用機会均等法とは企業での男女差別の是正のため、1985年に施行されました。2度の法改正を経て、時代とともに内容や法的効力が変化しています。

この記事では、職場でのダイバーシティーや男女平等化を実現したい経営層に向けて、現在の男女雇用機会均等法の概要や、差別・ハラスメントの具体的な内容を解説します。

また、この記事の後半部分では、ハラスメントの防止策を解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。


この記事の監修者
西岡社会保険労務士事務所  代表 

男女雇用機会均等法とは

男女雇用機会均等法とは、採用や昇進、賃金、職業訓練、福利厚生など性別を理由に差別することを禁止した法律です。

この法律は1985年に制定されましたが、現在のような法的効力はなく、企業の努力義務とされていました。

しかし、1997年には法律が改正され、女性への差別的扱いが法律的に禁止になります。そして、2006年には現在の男女雇用機会均等法の形になりました。

(出典:男女雇用機会均等法の概要


男女雇用機会均等法で定める内容

男女雇用機会均等法で定められている内容を紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

性別が理由の差別の禁止

男女雇用機会均等法では、性別を理由とした職場上の差別を禁止しています。

具体的には次のような項目が該当します。

  • 募集や採用
  • 部署の配置(業務の配分や権限など)
  • 昇進や降格、教育訓練
  • 福利厚生、
  • 職種・雇用形態の変更
  • 退職の勧奨や定年、解雇
  • 労働契約の更新

女性だからという理由でパート職で採用したり、意図的に一定の役職までしか昇進できないようにしたりするのは、男女雇用機会均等法の違反です。

(出典:男女雇用機会均等法第5条、第6条

間接差別の禁止

間接差別とは、性別以外のことを理由に、従業員が業務上不適切な扱いを受けることです。厚生労働省令では、正当な理由がない場合、次の3つの間接差別が禁止されています。

  1. 従業員の募集や採用の際、身長や体重、体力などを募集要項にすること
  2. 従業員の募集や採用、昇進、職種の変更の条件に、転居がともなう転勤に合意を設けること
  3. 従業員の昇進条件に、転勤経験を設けること

(出典:男女雇用機会均等法第7条

出産などで女性が不利益になるような扱いの禁止

婚姻や妊娠・出産などが理由で、女性を不利益な取扱いにすることが禁止されています。

  1. 女性従業員が婚姻や妊娠、出産したときは退職するなどの内容を定めること
  2. 婚姻が要因による女性従業員の解雇
  3. 厚生労働省令で定められている内容を理由に、女性従業員に対し不利益な取扱いをすること

また、妊娠期間や産後1年以内の解雇は、妊娠などが解雇理由ではないことを事業主が証明できなければなりません。解雇理由を明確にできなければ、その解雇は無効です。

(出典:男女雇用機会均等法第9条

妊娠中や出産後の健康管理

妊娠中・出産後が1年以内の女性従業員は、健康診断を受けなければなりません。女性従業員が定期検診や医師たちによる保健指導を実施するための時間を、企業側は設ける義務があります。

また、保健指導の内容によっては、次のような項目を事業主が調整する必要があります。

  • 時差出勤の容認や交通手段の変更
  • 休憩時間の延長や回数の増加
  • 産後の労働時間の短縮

(出典:男女雇用機会均等法第12条、第13条

セクシュアルハラスメント対策

企業は職場のセクシュアルハラスメントや、妊娠などに関連するハラスメントを防止しなければなりません。具体的には、次のようなケースがセクシャルハラスメントに該当します。

  • 女性従業員の体を触る行為
  • 女性従業員に性的な話題を持ちかける行為
  • 「妊婦は仕事しなくていいからうらやましい」などの発言

企業にとって、このようなことが起きないような環境作りが大切でしょう。

(出典:男女雇用機会均等法第11条、第11条の2

男女雇用機会均等法で禁止されている差別の具体例

男女雇用機会均等法で禁止されている差別の具体例を4つ紹介します。

1.求人募集の例

求人募集の際に性別や身長、体重などを募集要項にするのは男女雇用機会均等法で禁止されています。具体的には次のような表記が該当します。

  • 「男性歓迎」や「男性のみ」
  • 「女性向きの仕事」や「セールスレディー」
  • 「男性7名・女性3名採用します」

また、合理的な理由がなければ「身長〇〇cm以上、体重〇〇kg以上」や「他県へ転勤できる人のみ」などの表記も、間接差別に該当するため禁止されます。

男女雇用機会均等法で禁止された差別的な表現が使われてないかどうか、企業が求人募集を出す際は十分にチェックしましょう。

(出典:男女均等な採用選考ルール

2.面接・採用の例

面接や採用段階で男女どちらか一方にとって不利益になるような扱いをすることは禁止されています。例えば、面接時には次のような面接官の質問が該当します。

  • 女性従業員に対して「結婚や出産後も働きますか?」
  • 男性従業員に対してのみ「残業はできますか?」や「転勤できますか?」

その他にも、業務上関係のないプライベートな質問や、従業員のライフプランの質問も不適切でしょう。

面接時の質問だけでなく、性別によって試験問題や合格基準を変えることも禁止されます。

3.昇進・解雇・配置の例

昇進や解雇、部署への配置なども、男女平等におこなわなければなりません。例えば、女性従業員を意図的に部長へ昇進させないのは違反です。

また、女性は事務の一般職のみなど、性別を理由に職種を決めてはいけません

4.労働契約・福利厚生の例

男女雇用機会均等法は性別ごとに労働契約を変えることを禁止しています。

正当な理由なく、女性従業員のみ労働契約を更新しないことや、男性のみ契約更新の回数上限を多くすることは認められません。

また、住宅貸与や給与、各種手当てなどの福利厚生も、男女が平等に受ける権利があります。次のような行為は男女雇用機会均等法で禁止されています。

  • 住宅貸与では女性にだけ配偶者の所得証明を求める
  • 企業が持つ寮の入居対象者は男性のみ

ハラスメントの具体例と防止策

ハラスメントの具体例と防止策を詳しくまとめました。ぜひ参考にしてください。

1.ハラスメントの具体例

ハラスメントとは肉体的・精神的な嫌がらせ行為で、法律で禁止されています。

ハラスメントには、「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント」「パワーハラスメント」などさまざまな種類があります。

ハラスメントの具体例を詳しくまとめました。

セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントは、職場などで性的な言動が原因で、相手に不快な思いをさせることです。例えば、次のような行動が該当します。

  • わいせつなジェスチャーや発言
  • 無理な接近や体の触れ合い
  • 「彼氏(彼女)はいるの?」などのプライベートな質問

これらの行為によって、大きな精神的苦痛やストレスを感じる人もいます。セクシャルハラスメントは、被害者だけでなく職場の雰囲気や業務にも悪影響を与えかねません。

(出典:職場でのセクシャルハラスメント

マタニティハラスメント

マタニティハラスメントとは、職場での妊娠中の女性に対するハラスメントのことです。具体的には、次のような行為が当てはまります。

  • 業務の制限や減給
  • 不当な解雇や降格
  • 過剰な配慮や労働時間の無理強い
  • 上司や同僚からの悪口

これらの行為は女性に対して精神的な負担やストレスを与えるでしょう。

また、妊娠中の女性の健康だけでなく、キャリアや雇用の安定に悪影響を与えかねません。

(出典:厚生労働省 STOP!マタハラ

パワーハラスメント

パワーハラスメントとは、職場内での優位な立場を利用を利用して部下や同僚などに対して行う嫌がらせのことです。

例えば、強引な命令や指示、態度や言動による威圧、過度な業務負担などが挙げられるでしょう。

パワーハラスメントは被害者に精神的苦痛を与え、仕事へのモチベーションの低下や健康被害を引き起こす可能性があります。

(出典:厚生労働省 職場におけるセクシュアルハラスメントについて

スクールセクシャルハラスメント

スクールセクシャルハラスメントとは、学校教育の現場におけるセクシャルハラスメントのことです。

具体的には、教師同士や生徒同士、教師と生徒など、さまざまな関係性でセクシャルハラスメントが起こる可能性があるでしょう。

スクールセクシャルハラスメントを防ぐには、風通しのよい校風や定期的な調査、誰でも利用できる相談窓口の設置などが効果的です。

(出典:神奈川県 学校におけるセクハラをなくすために

レイシズム

レイシズムとは、人種や宗教的な理由で受けるハラスメントのことです。

例えば、外国人労働者に対して肌の色をからかったり、特定の宗教の信者という理由で孤立させたりする行為はレイシズムに該当します。

ダイバーシティや価値観の多様化が求められる現代の企業において、レイシズムの防止も重要な課題です。

(出典:法務省 「ビジネスと人権」への対応

2.ハラスメントの防止策

企業ができるハラスメントの防止策をまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。

方針を明確化し周知させる

職場でのハラスメントを防止するために最初に行うのが、方針を明確化し、社内の従業員へ周知させることです。

  • ハラスメントはやってはいけない
  • 被害に遭ったら報告する

ハラスメントは犯罪だと社内の従業員へ周知させることが、ハラスメント対策の第一歩です。

また、方針の明確化は社内の人権意識が高まり、従業員同士が相手への尊敬の意識を持って仕事ができるでしょう。

相談窓口の設置

従業員が気軽に相談できるような相談窓口の設置も必要です。立場や勤務年数などに関係なく、ハラスメント被害を受けた人たちが安心して相談できる環境作りが大切だからです。

また、相談窓口の設置はハラスメント事件の早期発見につながるため、企業が迅速・適切に対応すれば被害を最小限に抑えられるでしょう。

ハラスメント防止の研修を行う

ハラスメント防止の研修は、従業員がハラスメントに対しての理解を深め、問題を把握しやすくするために非常に有効な手段です。

研修には、ハラスメントの種類や原因、事例、対処法などを含むとよいでしょう。

全従業員にハラスメント教育を行うことも大事ですが、職場の人間関係に大きな影響を及ぼす管理職に対する研修は必須です。長年の習慣から、若い従業員よりハラスメントに対する意識が低い管理職も散見されます。

また、従業員数の多い企業だけでなくハラスメントに関する専門家のいない中小企業なども、外部の講師に研修の依頼をするのもおすすめです。

社内アンケートの実施

ハラスメントに関する社内アンケートの実施は社員が匿名で意見を述べられるため、率直な意見が集まりやすくなるでしょう。

実際の意見を収集することで、ハラスメントに関する問題を把握し、改善に取り組めます。

アンケートによって見落としていた課題が発見されることもあるため、ハラスメントの有無に限らず、定期的に実施するとよいでしょう。


男女雇用機会均等法のまとめ

2006年に制定された男女雇用機会均等法により、さまざまな企業活動において差別やハラスメントが禁止されました。

ハラスメントの防止策や業務上の男女平等など、自社の職場環境を一度見直してみてはいかがでしょうか。


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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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