戒告とは? 内容や処分をする際の手順、注意点を解説
経営層や人事担当者は、自社の従業員に問題行為や違反行為があり、その処分に困った経験はないでしょうか。そのような従業員を処分する懲戒処分の第一歩が、戒告です。
戒告処分とは、問題行動のある従業員に企業が厳重注意を言い渡す処分です。
この記事では、経営層や人事担当者に向けて、懲戒処分になるケースや懲戒処分の手順をまとめました。また、この記事の後半部分では、懲戒処分する際の注意点をまとめ解説しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
戒告とは
戒告処分とは、違反行為や問題行動のある従業員に対して、企業が行う懲戒処分のひとつで、特定の行為に厳重注意を言い渡す処分です。
一般企業に勤める従業員の他にも、国家公務員にも適用されます。企業における戒告が懲戒処分のなかでどのような位置付けなのか、また、その他の処分と異なる点を見ていきましょう。
(出典:国家公務員法 第82条)
懲戒処分の中での位置付け
戒告処分は厳重注意を言い渡すだけですので、懲戒処分のなかでも程度の軽い懲戒処分です。
一般的な懲戒処分の内容を次の表にまとめました。(企業によって懲戒処分の名称が異なる場合があります。)
名称(上から順に思い処罰) |
処分内容 |
---|---|
懲戒解雇 |
従業員を解雇 |
諭旨解雇 |
従業員へ自主退職を勧告 |
降格 |
業務上の立場を降格させる |
停職 |
従業員を数週間ほど出勤させず欠勤扱いにする |
出勤停止 |
従業員を数日間ほど出勤させず欠勤扱いにする |
減給 |
給与を減らす |
譴責(けんせき) |
従業員に始末書を提出させるケースが多い。 |
戒告、訓告 |
厳重注意のみで終わるケースが多い |
その他の処分との違い
訓告や訓戒、譴責は戒告と異なる意味なのでしょうか。それぞれ詳しく解説します。
なお、これらの用語は法令に規定があるものではないため、以下は一般的な解釈となります。
訓告
訓告とは、従業員の行為や態度が適切でないことを指摘し、改善を求めるために行われる軽い懲戒処分の一種です。戒告との違いは、訓告のほうが軽度の注意喚起である点です。
訓告は書面でおこなうケースが多く、具体的な指摘事項や改善を求める内容が記載されています。
訓戒
訓戒とは懲戒処分のなかで最も軽い処分で、従業員が規則に違反した行為に対して注意喚起します。
戒告と訓戒に意味的な違いはありませんが、訓戒は訓告よりも処分の程度が軽いとされています。
譴責
譴責(けんせき)とは、従業員の問題行動に対して反省を促し、将来の同様の行為を戒める目的で行われます。
戒告は厳重注意のみで終わりますが、譴責処分は従業員に始末書を提出させる場合が多いでしょう。
譴責と戒告は似たような処分内容ですが、始末書の提出を求めるケースの多い譴責は、戒告よりも重い懲戒処分に該当します。
厳重注意
厳重注意や口頭注意などは戒告と同等の処分内容ですが、戒告よりも程度の軽い処分として扱われています。
ただし、企業ごとの就業規則において、処分の名称と処分内容が違う場合があります。経営層は処分の名称と処分内容が具体的にわかるよう、就業規則に記載しましょう。
戒告処分になるケース
従業員が戒告処分になるのはどんなケースなのでしょうか。具体例を3つほど紹介します。
ただし、企業側は戒告などの懲戒処分を従業員へ適用する前に、まず口頭による指導や注意をしなければなりません。
従業員のスキル不足
従業員のスキル不足は、業務上の大きな失敗や作業の遅れなどにつながるでしょう。従業員がこれらの問題が繰り返し発生し、何度も指導・注意しても改善につながらない場合は、懲戒処分を適用できます。
従業員のスキル不足による問題が軽度であれば、厳重注意で済む戒告や、始末書の提出を含む譴責のような軽い懲戒処分が適用されるケースが多いでしょう。
怠惰的な勤怠
度重なる無断欠勤や遅刻は職場の秩序を乱す行為であり、他の従業員や業務にも悪影響を及ぼします。したがって、怠惰的な勤怠が続く従業員は、懲戒処分の対象になるでしょう。
しかし、怠惰的な勤怠を繰り返す従業員に懲戒処分を適用する場合でも、その従業員に対してまずは十分な改善の機会を与えたうえで、懲戒処分になる可能性を説明しなければなりません。
不適切な業務態度や言動
従業員が就業規則の違反や、不適切な業務態度・言動を繰り返す場合、懲戒処分が適用されるでしょう。
<不適切な業務態度や言動の具体例>
- 勤務時間をプライベート目的で利用する(ネットサーフィンなど)
- 他の従業員や役員に対する悪口や虚偽の噂話をする
企業が戒告処分をおこなう際の手順
企業が戒告処分をおこなう際の手順をまとめました。
戒告事由の確認
戒告対象社員の上司などからの申告に基づき、どのような問題行為があったのかを確認します。
企業側はいつ、どこで、どのような問題があったのか、なるべく具体的な事実を把握します。
処分理由の証拠確保
申告のみでは対象社員が事実を否定した場合、それ以上の追及ができなくなり、適切な処分を下せません。したがって、対象従業員がとった問題行動の裏付けとなる証拠を確保します。
証拠になるようなものは次の通りです。
- タイムカード
- Webサイトの閲覧履歴
- 他の従業員からの聴取
本人に対する事実確認
証拠が集まった段階で対象社員本人と面談し、事実確認します。
- 問題行動はあったのか、なかったのか
- あるとしたら、どの程度が実際にあったのか
弁明の機会を付与
事実確認とは別に、適正手続の観点より弁明の機会を付与する必要があります。
対象社員に弁明の機会を与えずに懲戒処分をした場合、後々裁判になったときに、必要な手続きを行わなかったことを理由として、懲戒処分が無効と判断されてしまうケースもあるからです。
処分内容を決定
すべての証拠や対象社員の弁明も踏まえて、どのような事実があったのかを整理し、認定された事実に見合った懲戒処分の内容を決定します。
そして、決定された戒告処分の内容と、戒告処分通知書を対象社員に交付します。
戒告処分通知書とは、懲戒処分が決定したことを対象社員に知らせる書類です。
始末書の提出を命じその事実を社内公表
対象社員の反省と今後に向けた改善策の提案が必要な場合、戒告処分と同時に始末書の提出を求めます。
また、懲戒処分があった事実を他の社員に共有するために、社内公表するケースもあるでしょう。
ただし、対象社員のプライバシー保護観点から、対象社員の氏名を公表しないなどの配慮も必要です。
戒告処分をおこなう際の注意点
戒告処分をおこなう際の注意点は主に4つです。
二重処罰の禁止
戒告処分を従業員に適用する際、同じ違反に対して二度以上の懲戒処分をしてはいけないという二重処罰が、禁止されています。従業員に対する処分の公平さを保証するためのルールです。
したがって、企業が従業員へ戒告処分をする前に、その従業員に対して過去同じ違反内容で懲戒処分を行っていないかどうか、チェックしなければなりません。
就業規則に規定があること
企業が戒告処分を行う際、就業規則にその種類・程度が事前に記載されている必要があります。
例えば、企業Aの従業員が3回遅刻した場合、戒告処分を行うという規定が就業規則に設けられているとします。この場合、従業員が3回遅刻した際に、会社は戒告処分を適用できます。
しかし、就業規則に明確な規定がない場合や、適切な手続きが踏まれていない場合には、戒告処分が無効になる可能性があるでしょう。
処分の重さは適切かどうか
懲戒処分の処分内容が重すぎると、懲戒処分が違法や無効になるリスクがあります。適切な処分の重さを決定するためには、次のようなポイントを考慮しましょう。
- 従業員の違反行為の程度や内容を綿密に調査
- 違反行為の重さと影響を考慮し、それに見合った処分を検討
- 従業員の過去の勤務態度や評価、反省の態度なども判断材料に加える
適切な懲戒処分により従業員が反省し、今後の問題行動を防ぐことを期待できるでしょう。
徹底した事実確認
事実誤認があると懲戒処分が違法・無効になりかねませんので、企業側は事実確認を徹底してください。まずは、問題となった従業員の行為を詳細に調査しましょう。
違反行為の発生時刻、場所、状況など、具体的な事実を把握してください。
目撃者や関係者からの証言を集め、それらが一致するかどうかを確認しましょう。矛盾がある場合は再度確認し、事実関係を整理します。
また、違反行為が発覚した際の従業員の反応や説明も重要です。従業員が事実を認めて反省しているのか、それとも否定しているのかを把握しましょう。
戒告についてのまとめ
戒告とは戒告処分とは、違反行為や問題行動のある従業員に対して、厳重注意を言い渡す懲戒処分です。
度重なる欠勤や遅刻、パワハラなどの違反行為など、自社で問題行為のある従業員をどう処分すればいいか困っている経営層は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
ただし、懲戒処分を下す際は二重処罰の禁止や、就業規則に記載済みであることなどの注意点がありますので、念頭に置くとよいでしょう。
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