このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

【2022年施行法改正対応】雇用保険マルチジョブホルダー制度の創設

著者:社労士事務所ライフアンドワークス 代表  角村 俊一

【2022年施行法改正対応】雇用保険マルチジョブホルダー制度の創設

雇用保険の加入対象が拡大されました。令和4年1月1日、雇用保険マルチジョブホルダー制度が始まり、複数の事業所で働く方が一定の要件を満たす場合、雇用保険に加入することができるようになっています。今回は、創設された雇用保険マルチジョブホルダー制度について説明します。


雇用保険の加入要件

労働者なら誰でも雇用保険に加入するわけではありません。雇用保険は、主たる事業所において週の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みがある労働者に適用されます。この要件に該当すれば、パートやアルバイトであっても、その意志にかかわらず雇用保険に加入する必要があります(昼間部の学生は除きます)。

【雇用保険の加入要件】

① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
② 31日以上の雇用見込みがあること

所定労働時間とは、会社と労働者が雇用契約で定めた労働時間をいいます。残業時間は含みません。例えば、雇用期間は1年間で、勤務時間は月曜日から金曜日の9時から15時まで(休憩1時間)という契約の場合、1週間の所定労働時間は25時間となりますから、①と②の加入要件を満たし雇用保険の被保険者となります。


雇用保険マルチジョブホルダー制度の創設

雇用保険の加入要件である「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」は、原則として、主たる事業所の所定労働時間で判断されます。複数の事業所における労働時間を合算するわけではありません。例えば、事業所Aと事業所Bで働いている場合、事業所Aの所定労働時間が週10時間、事業所Bの所定労働時間が週15時間であり、所定労働時間を合計して週20時間以上となっても、雇用保険には加入しません。しかし、令和4年1月1日以降、複数の事業所で働く場合で一定の要件を満たす方については雇用保険への加入が認められることになりました。これが雇用保険マルチジョブホルダー制度です。

【雇用保険マルチジョブホルダー制度】

複数の事業所で勤務する労働者が一定の要件を満たす場合に、労働者本人がハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件は次の通りです。

  • ① 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
  • ② 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • ③ 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

※2つの事業所は異なる事業主であることが必要です

通常の雇用保険と雇用保険マルチジョブホルダー制度の違いは、雇用保険への加入が強制か任意かという点です。通常の雇用保険の場合、加入要件を満たせば必ず加入しなければなりません。一方、雇用保険マルチジョブホルダー制度の場合、加入するかどうかは労働者本人が決められます。ただし、任意に脱退することはできません。

通常の雇用保険

雇用保険マルチジョブホルダー制度

加入

要件を満たせば強制加入

本人の申出による任意加入

脱退

任意脱退は不可

任意脱退は不可


加入の手続き

複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件を満たし、雇用保険への加入を希望する場合には、労働者本人が住所地を管轄するハローワークに申出を行う必要があります。通常の雇用保険の加入手続は事業主の義務となっていますが、マルチジョブホルダー制度では、所定労働時間について1つの事業所ですべてを把握してハローワークに届出を行うことは困難であることから、本人が手続きを行うことになっています。

通常の雇用保険

雇用保険マルチジョブホルダー制度

加入手続き

事業主

労働者本人

手続先

会社を管轄するハローワーク

労働者の住所地を管轄するハローワーク

労働者がハローワークに申出を行うと、その日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができます。申出日より前に遡って被保険者となることはできません。法令により、事業主は必要な証明を行わなければならないと定められていますので、雇用の事実や労働時間など手続に必要な証明を労働者から依頼されたときは速やかに対応してください。なお、労働者からの委任状により、事業主が代理して手続きを行うことも可能ですが、その際の手続きは事業所の所在地を管轄するハローワークではなく、労働者の住所地を管轄するハローワークとなりますので、ご注意ください。

雇用保険料については、通常の雇用保険と同様に、それぞれの事業主が労働者に支払う賃金総額に保険料率を乗じて計算します。

労働者がハローワークに申出を行うと、その日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができます。申出日より前に遡って被保険者となることはできません。法令により、事業主は必要な証明を行わなければならないと定められていますので、雇用の事実や労働時間など手続に必要な証明を労働者から依頼されたときは速やかに対応してください。なお、労働者からの委任状により、事業主が代理して手続きを行うことも可能ですが、その際の手続きは事業所の所在地を管轄するハローワークではなく、労働者の住所地を管轄するハローワークとなりますので、ご注意ください。

雇用保険料については、通常の雇用保険と同様に、それぞれの事業主が労働者に支払う賃金総額に保険料率を乗じて計算します。


失業時の給付

マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合、一定の要件を満たすと、高年齢求職者給付金を一時金で受給できます。給付金の支給を受けるには、次の①、②の要件を満たす必要があります。

【高年齢求職者給付金の受給要件】

  • ① 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あること
  • ② 失業の状態にあること

「失業の状態にある」とは、離職し、「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」をいいます。受給金額は、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30日分または50日分です。

被保険者であった期間

1年未満

1年以上

高年齢求職者給付金の額

基本手当日額 × 30日分

基本手当日額 × 50日分

基本手当日額は、離職の日以前の6か月に支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額(賃金日額)の50%~80%です。

2つの事業所のうち1つの事業所のみを離職した場合でも受給することができますが、この場合は離職していない事業所の賃金は含めません。例えば、事業所Aと事業所Bの2社でマルチ高年齢被保険者だった方が事業所Aのみを離職した場合、事業所Aで支払われていた賃金のみで給付額が算定されます。ただし、2つの事業所以外の事業所でも働いていて、離職していないもう1つの事業所と当該3つ目の事業所を合わせてマルチ高年齢被保険者の要件を満たす場合は、被保険者期間が継続されるため、高年齢求職者給付金を受給することはできません。


離職時の手続き

離職した際の手続きも労働者本人が行います。期限は被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内となりますから、事業主は労働者から記載依頼を受けたら速やかに事業主記載事項を記入し、確認資料とともに本人に交付してください。また、離職証明書の交付依頼があった場合はこれを作成して交付する必要があります。

雇用保険マルチジョブホルダー制度は65歳以上の労働者に限定して、令和4年1月から施行実施されています。現状、雇用保険マルチジョブホルダー制度が適用される労働者は多くないと思われますが、施行後5年を目途に、その効果等を検証するとされています。働き方改革による兼業・副業の推進という流れもあり、将来的には65歳以上という年齢の限定が無くなるかもしれません。

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

著者プロフィール

author_item{name}

角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

この著者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ