プロバイダ責任制限法が改正!企業が注意すべきポイントを解説
プロバイダ責任制限法とは、インターネット利用者の権利保護と、加害者への責任追求を目的とする法律です。現在、ほとんどの企業がインターネット上でコンテンツを配信している中、今回施行される改正プロバイダ責任制限法によって影響を受ける企業は多いでしょう。
今回は、本ルールの変更によって変更される事項と、企業側が注意すべき事項をご紹介します。
改正プロバイダ責任制限法の3つのポイントについて
今回の改正プロバイダ責任制限法のポイントは、大きく分けて3つ存在します。それぞれの内容と変更点を解説していきます。
改正プロバイダ責任制限法ポイント1:新規裁判手続き制定
今回の改正プロバイダ責任制限法では、新しい方法で裁判が進められるようになります。現行制度では裁判を2度行う必要があり、非常に時間がかかるのがネックでした。
改正プロバイダ責任制限法では、これらのプロセスが簡素化されます。
つまり、従来のように2度裁判を行う必要がなくなり、1度で済ませられるようになるのが、1つ目の変更点です。
改正プロバイダ責任制限法ポイント2:ログイン型投稿への対応が可能になった
プロバイダ責任制限法は、ログイン型の投稿に関する情報開示に関するルールが明確に決められていません。つまり、加害者に関する詳しい情報の把握、開示が難しいという問題があります。
こうした問題を解決するため、改正プロバイダ責任制限法では開示請求範囲をより広げ、ログイン型投稿にも対応できるようになりました。
改正プロバイダ責任制限法では、より確実に加害者の情報を被害者に公開できる可能性が高まるのです。
改正プロバイダ責任制限法ポイント3:開示に応じない場合の理由の照会
これまではユーザーが情報開示に応じない場合、なぜ情報開示を行わないのかの理由を提示する必要はありませんでした。
改正プロバイダ責任制限法では、当該ユーザーが情報公開をしない決定をした場合、企業側にはその理由の聞き取りを行う義務が発生します。
改正プロバイダ責任制限法による企業側の4つの注意点について
改正プロバイダ責任制限法が施行されると、企業側もこれまでと異なる対応が必要になります。企業形態ごとの注意点を確認していきましょう。
注意点1:サイト管理者について
サイト管理者は、これまでも被害者から情報開示を要求された際には、発信者のIPアドレスとタイムスタンプを公開していたでしょう。
改正プロバイダ責任制限法では、これらに加えて接続プロバイダを特定したうえで、開示請求人と接続プロバイダに改正によって定められた情報を提供する義務が発生します。
具体的に新たに発生する業務としては、以下のものが例に挙げられます。
- IPアドレスをもとに、情報発信者が使用した接続プロバイダを特定する
- 接続プロバイダの所在地や正式な名称を調査のうえ、申立人に伝達する
- ログインや投稿時に使用されたIPアドレスを調査して、接続プロバイダに伝達する
注意点2:末端の接続プロバイダについて
発信者に関する個人情報を保有するプロバイダの場合、業務内容に大きな変更は発生しません。
ただ、調査を行うのはサイト管理者からアドレスやログイン日時などの具体的な情報を伝えられた後になります。
また、情報発信者が情報開示を拒否するケースにおいては、開示を拒否する理由を聞き取る義務が発生します。さらに、開示を拒否するユーザーに開示命令が下されたケースでは、速やかにその旨を当該ユーザーに伝える義務があります。
プロバイダ責任制限法では、情報開示を行った後にその旨を発信者に対して事後報告するケースが多かったです。今後は命令発令時に速やかに伝達する義務が発生するので注意しましょう。
注意点3:末端以外の接続プロバイダについて
末端以外の接続プロバイダは、上流に位置するプロバイダから提示された情報を利用して、下流のプロバイダを特定する必要があります。
さらに、当該プロバイダの本拠地や名称といった情報を開示請求人に対して公開し、下流プロバイダに対して当該ユーザーの特定に必要な情報を伝達しなければいけません。
注意点4:一般企業について
一般企業は事件の被害者、申立人として当該法律関連の事件に関わることがあるかもしれません。自社が被害を受けた際には、サイト管理者に対して情報開示を要求することになります。
請求方法は現状のものと変わりません。また、自社の従業員が被害の対象になった場合は、被害者は個人となります。基本的に従業員個人での問題対処が必要です。
名誉毀損問題
他人の名誉や尊厳を害する行為のことを、名誉毀損といいます。
SNSを使用するユーザーが増加するにつれ、SNS上での名誉毀損の件数が増え社会問題になっています。これまでは、SNSの匿名性を利用して軽い気持ちで名誉毀損を行っていた方も、改正プロバイダ責任制限法では本人特定、罰則の施行が行われる可能性が高くなります。
今後はモラルの問題だけでなく、法律上の問題になるので注意しましょう。
改正プロバイダ責任制限法について
今回は、改正プロバイダ責任制限法のポイントや改正に伴う企業がするべき対応について解説しました。
改正により加害者や被害者、さらに関わる企業の対応方法にも変更が発生します。
改正内容と業務の変更点をしっかりと把握し、適切な行動をとれるようにしましょう。