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ついに特許料や商標登録料が値上がり

~特許料、商標登録料及び国際出願に係る国際調査手数料等が値上げ~

著者:シルベ・ラボ商標特許事務所代表/株式会社シルベ・ラボ 代表取締役 / 弁理士  潮崎 宗

ついに特許料や商標登録料が値上がり

令和3年12月24日に、「特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」が公布されました。この政令は、「特許法等の一部を改正する法律」(令和3年5月21日法律第42号。以下「改正法」という。)の施行に伴い、特許料などの額を定める関係政令の規定を整備するものです。

これによって、特許関係料金、商標関係料金及び国際出願に係る国際調査手数料等が改定されることになりました。


1.値上げの背景

特許庁の説明では、次のような点が理由として挙げられています。

  • (1)海外の特許文献の急増による特許庁での審査負担の増加など、定常的に必要となる経費の増加
  • (2)情報システムの大規模刷新や庁舎改修など、投資的な経費の増加
  • (3)手続のデジタル化に対応した収支バランスの確保の必要性

上記のような事情により、平成26年度以降、特許特別会計は毎年度連続して赤字決算となり、財政状況が逼迫しているのに対し、審査の質やスピードの維持と向上、サービスの維持と充実はイノベーション促進のために重要であるため、特許料などの料金改定を行われることになりました。


2.何が値上がりするの?

具体的には、下記の料金が値上がりします。

(1)特許料 特許権を取得・維持するために特許庁に納付する料金
(2)商標登録料  商標権を取得するために特許庁に納付する料金
(3)商標更新登録料 商標権を更新するために特許庁に納付する料金
(4)国際出願関係手数料 特許協力条約に基づく国際出願、いわゆるPCT出願をする際に必要となる料金
(5)国際登録出願関係手数料 マドリッド協定議定書という条約に基づく出願、いわゆるマドプロ出願で、指定国を日本とする場合に必要となる料金

3.どのくらい値上がりするの?

特許庁では、改正法の公布後、具体的な値上げ後の予定料金を発表するのと合わせて、令和3年7月16日から令和3年8月15日の間に、料金の見直しに対する意見募集を行い、その結果、11件の意見(内訳:個人3件、企業3件、大学1件、団体4件)が提出されました。
最終的な決定における参考にされましたが、結局、当初、予定発表されていた料金のとおりとなりました。

具体的には、下記のとおりに値上げされました。

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(「令和3年特許法等改正に伴う料金改定のお知らせ」特許庁HPより)

特許料や商標の登録料、更新登録料について見ると、特許出願や商標出願の際に必要となる印紙代については値上がりしません。


4.いつから?

改正法等の施行日である令和4年4月1日から、値上がりとなります。
ここで、1つの問題があります。

施行日前後における新旧料金適用の考え方についての問題です。

商標出願を例にすると、新料金が適用されるのは、商標出願日を基準にするのか、それとも、商標登録料の納付日を基準にするのかという点です。

すなわち、下記のどちらの考え方が適用されるのでしょうか。

  • (1)商標出願日を基準にして、商標出願日が令和4年3月31日以前であれば旧料金が適用され、令和4年4月1日以降であれば新料金が適用されるという考え方
  • (2)商標登録料の納付日を基準にして、商標登録料の納付日が令和4年3月31日以前であれば旧料金が適用され、令和4年4月1日以降であれば新料金が適用されるという考え方

今回の改正では、原則として、新料金の適用については上記(2)の料金の納付日を基準にすることとされました。

したがって、仮に、商標出願をしたのが改正法施行日前の令和3年の8月10日であったとしても、特許庁での審査を経ての登録査定後に商標登録料を納付するのが令和4年7月15日であれば、新料金が適用されるということになります。
この点、もしタイミング的に可能であるのなら、値上がりする改正法施行日前に、商標登録料の納付などの手続を行うべきということになります。(なお、特許庁での商標審査のスピードを速める方法としては、「早期審査」や「ファストトラック審査」の適用を受けるという方法があります。)

但し、このルールには、3つほど例外があり、改正政令附則第2条及び第3条で規定されています。
次の料金については、施行日以降の納付であっても旧料金が適用されることになるので、注意が必要です。

  • (1)権利の設定の登録を受けるための特許(登録)料の納付に関して、特許査定などの謄本の送達の日から30日目の日が施行日前であった場合に納付する特許料など
  • (2)特許法第112条により追納する特許料及び割増特許料、商標法第43条により納付する登録料及び割増登録料(特許料又は登録料の納付期限が施行日前であった場合に限ります)
  • (3)商標の分割納付における前期分の設定登録料及び前期分の更新登録料が旧料金であった場合、分割納付における後期分の設定登録料及び後期分の更新登録料


上記(1)については、例えば次のようになります。

商標登録査定の送達日が令和4年2月21日であったとすると、商標登録料の納付期限は令和4年3月23日となります。この場合、令和4年3月23日以前に納付すれば、もちろん旧料金が適用されることになります。納付期限の延長手続き(商標法第41条第2項)などにより、施行日後の令和4年4月19日に納付する場合、実際の納付日は施行日より後であるにもかかわらず、旧料金が適用されることになります。


上記(2)については、例えば次のようになります。

商標権の存続期間満了日が令和4年2月21日であった場合、更新登録料の納付期間は令和3年8月22日から令和4年2月21日までとなります。この期間内に更新登録申請ができなかった場合であっても、満了日(令和4年2月21日)の翌日から6ヶ月以内に限り、納付すべき更新登録料に加え、同額の割増登録料を納付することにより、商標権を更新することができます。そのため、施行日後の令和4年6月15日に更新することができますが、その場合であっても旧料金が適用されることになります。


上記(3)については、例えば次のようになります。

商標権の存続期間満了日が令和4年7月13日であった場合、更新登録料の納付期間は令和4年1月14日から令和4年7月13日までとなります。ここで、分割納付における前期分を、施行日前の令和4年3月25日に納付したのであれば、後期分を令和9年5月20日に納付したとしても、旧料金が適用されるということになります。
したがって、これから分割納付を利用するという場合には、前期分を施行日前に納付するというちょっとしたことで、後期分についても旧料金が適用されるというメリットが受けられるということになります。


5.まとめ

今回の改正によって本来、新料金が適用されるのにもかかわらず、うっかり旧料金を払ってしまい、指令がかかってしまったというようなことがないように、事前の確認、準備が不可欠です。

また、今回の改正法での値上がり額は、数千円から数万円であるとはいえ、複数の特許権や商標登録を保有する企業や、年間に数多くのPCT出願をする企業にとっては、塵も積もれば山となり、知財保有に充てる予算を圧迫することになることは明らかです。

この機会に、自社で保有している特許や商標登録、PCT出願の棚卸をして、施行日前の対応が可能かどうか検討してみる価値はあると思います。

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著者プロフィール

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潮崎 宗

シルベ・ラボ商標特許事務所代表/株式会社シルベ・ラボ 代表取締役 / 弁理士

上智大学法学部法律学科卒業。日本弁理士会関東会 中小企業・ベンチャー支援委員会。東京都内の特許事務所勤務を経て、2005年弁理士登録。

商標・ブランドに関するコンサルティングのほか、ベンチャー企業や中小企業の案件を中心に、国内及び外国での調査や出願、審判に関する手続、不正競争防止法・著作権に関する相談を行っている。各専門家との各々の強みを活かしたワンストップ体制で、知的資産の分析・調査の段階から、権利化、運用までを見据えたサービスを提供している。

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