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第1回 社内広報メデイア構築に必要なコミュニケーションの基礎知識

効果のある社内広報メディアの構築

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

第1回 社内広報メデイア構築に必要なコミュニケーションの基礎知識

社内広報メディアを設計し、コンテンツを作成する

グローバル化の進展、多種多様な働き方に表れているダイバーシティ。

さまざまな国籍、価値観を持つ従業員を一つにまとめていかなければならない時代。

規模の大きな組織を素早く動かすには、さまざまな社内広報メディアをしっかりと設計し、それぞれのメディアを、使える情報メディア、信頼できる社内メディアとして日々活用、メンテナンスしていく必要があります。

社内広報メディアを設計するだけではなく、そこに掲載するコンテンツにも配慮が必要です。

先ほど記した、さまざまな国籍、価値観を持つ従業員に理解、納得、共感してもらい、行動に結び付けてもらえるようターゲットを定め、理解を深めないとコンテンツは作成できません。

また、従業員に社内広報メディアを通じて、ほかの従業員、部署との接点を発見してもらい、従業員同士、部署同士が交わることでイノベーションを起こすきっかけとする必要もあります。

社内広報メディアは業績向上にも寄与するものであるべきなのです。

社内広報メディアを設計しコンテンツを作成するには、まず社内広報の軸を考えなければなりません。

社内広報で何を実現したいのか。社内広報を通じて従業員にどのように行動してもらいたいのか。

そのような軸をベースにすべてが設計、作成されていきます。

社内報をはじめとする社内広報メディアの企画編集の前に、広報の概念をおさらいしておきましょう。

「広報というのは、経営そのものだと思わなければなりません。」

これは、元経団連会長平岩外四氏の言葉です。

一般的に「広報」という場合、「知らせる」ことと捉えることが多いかと思います。しかし、それはあくまでも狭義の広報でしかありません。

広義の広報とは、「組織と社会との望ましい関係づくり」、そのための考え方や行動のことです。

ここでの社会とは、企業を取り巻くステークホルダーと言い換えてもよいかもしれません。

ステークホルダーとは一般的には、株主・取引先・顧客・地域・行政、そしてそこで働く従業員、その家族、OBも含みます。

これらのステークホルダーと良好な関係を築き、維持していくことが広報そのものなのです。

そのためには、企業とステークホルダーとの相互理解が必要となります。

各ステークホルダーの状況を理解し、自社がどのように捉えられているのか、どのような要望があるのかを把握するとともに、経営理念や現在の状況など、企業全体を俯瞰して理解してもらう必要があります。

そうすることで企業とステークホルダーとの間で「コミュニケーション」が成立することになります。

各ステークホルダーに対する広報とはいかなるものか、下記に示しました。

■株主に対するもの:インベスターリレーションズ
・企業の業績について株主や機関投資家、証券アナリストなどに開示すること

■顧客、取引先に対するもの:マーケティング・コミュニケーション
・商品やサービスをターゲット顧客に告知し認知され、購買に結び付けること

■地域、行政に対するもの:コミュニティリレーションズ
・自社の存在する行政機関、町内会の住民組織などと良好な関係を築くこと

■自社の従業員に対するもの:エンプロイーリレーションズ
・全従業員に自社の状況、目指すべき方向、従業員に期待することなどを伝えること

また、企業の外に存在するステークホルダーに対する発信メディアには、以下のものがあります。

・パブリシティ

・ダイレクトメール

・ショールーム

・お客様相談室

・株主懇談会

・企業イベント

・工場見学会

・博物館・資料館

・会社案内

・ホームページ

・広報誌・PR誌

・環境報告書

・CSRレポート

・入社案内・採用案内

・アニュアルレポート

・株主通信

・製品・商品カタログ

相手に「どうしてほしいか」を明確にしておく

「コミュニケーションとは要求である。」

この言葉は、かのP・F・ドラッカーが著書『マネジメント 基本と原則』で記したものです。

組織におけるコミュニケーションとは、コミュニケーションを取ろうとする者が、その相手に何らかの要求を伝えようとすることを意味します。

先に記したステークホルダー別にその要求を考えてみると、株主に対しては自社の状況を理解し、株を長期にわたって保有してもらうことであり、顧客には自社の商品やサービスを購入、利用してもらうことです。

地域に対しては自社の状況を理解し、企業活動に協力してもらうことであり、従業員に対してはモチベーションを高く維持し、イノベーションを起こしてもらうことです。

このようなことから、企業は各ステークホルダーに対して何をしてほしいのかを明確にしておくことが必要となります。

普通それは企業理念などの言葉が軸となり、そこから派生してコミュニケーション方法が明確になっていきます。


社内広報メディアは教育研修にもなり得る

企業自身の思いを具体的な行動、成果ととして実現させるための社内広報メディアは、社内報だけではありません。

ドラッカーも言っているとおり、コミュニケーションが要求であるとするならば、このような人材になってほしいという教育研修も、大きな意味でコミュニケーションと捉えることができます。

従業員に向けた発信メディアは、以下のように案外多くのものが存在するものです。

■文書によるもの

社内報、社員手帳、壁新聞、ビラ、ポスター、手紙、通達、カレンダー、パンフレット、電子メール、イントラネット、グループウェア、ホームページ

■視聴覚によるもの

掲示(ホワイトボード含む)、展示、放送、動画配信、スライド、ビデオ、デジタルサイネージ

■集会によるもの
勉強会、職場集会、会議、説明会、講演会、懇談会、朝礼

■行事によるもの
各種運動(安全運動、提案制度など)運動会、工場見学会、慰安親睦会(社内旅行、新年会、パーティーなど)

■ほか
人事/教育研修、小集団活動、プロジェクト活動、面接、改善提案、態度調査


コミュニケーションは受け手により成立する

「知らせる」ことを狭義の広報だと先に記しましたが、コミュニケーションを成立させるためには、実は相手のことをどれだけ知っているかが前提となります。

広報の言葉でそれを「広聴」と呼んでいます。

広報は、まずはコミュニケー卜したい相手のことを知ることから始まります。大切なのは、情報の収集と情報の発信。

相手の状況を知るには、その相手との接点を持つことが必要です。

直に相手と接する場をつくることが最も確実でしょう。相手を知ることがなぜ必要かというと、相手に何かを伝えようとする場合、相手が理解しやすいようなコンテンツで、相手に最も届きやすいメディア、手法で届ける必要があるからです。

それがあるべきコミュニケーションの姿であり、それを継続していくことが広報本来の姿でしょう。

着目すべきは、コミュニケーションは受け手により成立するという事実です。

相手に届かなければ、社内広報メディアの役割が達成されることはないでしょう。

次回に続く

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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