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総務の仕事。「社内SNSの運用」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務の仕事。「社内SNSの運用」

社内SNSとは社内の公式メディア

働く場が多様化すると、雑談がしにくくなり、人間関係が希薄化します。この分散された働く場をつなぐものとして、オンラインコミュニケーションが必要となります。ただ、メールでは堅苦しく、雑談が花開くことはないでしょう。チャットでのコミュニケーションが重要となります。一方で、その人が何者なのか、各人の情報発信されたコンテンツによりその人となりが分かり、コミュニケーションがしやすくなる、ということもあるでしよう。今回は、その潤滑油として機能する社内SNSについて記していきましょう。

社内SNSといえども、会社がその仕組みを用意するのであれば、 それは明らかに社内の公式メディアであると社員には認識されます。いきなり社内SNSを用意したから自由に使って良い、と言われても何を書いていいのか、どこまでくだけていいのか、社員にとってはイメージできず、誰も記事をアップできないという事態に陥ります。まずはその主管部署である、広報部や総務部のメンバーが率先して記事をアップすることが必要でしょう。あるいは知り合いに頼むとか、最初の動きは運営側が作ることになります。

「こんなことをアップしてもいいのか!」「ここまでくだけてもいいんだ!」等、敷居の下限を示してあげることがポイントです。それにより初めて安心して投稿することができるのです。

社内イントラがある某企業。その年のテーマが「スマイル」。そこで、どのようなときに自分がスマイルになるかを社員にイントラ上に投稿させようとしました。なかなか投稿されずにやきもきしていましたが、主管部署の総務部メンバーが、「社員の依頼事項に対応して、その社員からありがとうと言われたとき」と投稿しました。それから堰を切ったように投稿が続いたという例があります。社内の公式メディアは、事務局が思う以上に敷居が高いと理解した方が良いでしょう。


レスポンスで好循環を作り出す

皆さんの中にもフェイスブック等のSNSを利用している人がいるかもしれません。自らの投稿に対して、何もレスポンスがないと寂しいのではないでしょうか。それは社内SNSであっても同様です。社内SNSが上手く活用されている企業では、立ち上げの頃はファシリティターを置いて、投稿に対して必ずコメントを投稿するようにしているようです。自らがコメントを投稿する場合もあれば、知り合いにコメント投稿を依頼するなど、投稿に対してのレスポンスを必ず行うようにしています。先の敷居の話と同様に、「コメントしていいんだ」「そのようなコメントでいいんだ」という認識を持ってもらうのです。

また投稿してコメントがあれば、投稿者にとってはそれがモチベーションとなり、繰り返し投稿してくれる、という好循環にも結び付きます。SNSは双方向コミュニケーションメディアですから、それが実現できている姿を立ち上げ時に見せてあげる必要があります。


SNSにも必要な運営目的

何より大切なのは、社内SNSの目的をしっかりと社内に明示することです。 社内SNSを立ち上げる企業では、それ以外にも社内コミュニケーションメディアやツールが複数存在することがあります。社内報、Web社内報、メールやイントラ、デジタルサイネージなど、数多くのメディアやツールがある中で、あえて社内SNSを立ち上げる場合があると思います。

こうしたとき、その他のものとの差別化や、なぜ立ち上げるのか、どのように使って欲しいのかという目的を、現場の社員目線でしっかりと説明することが大切です。「メールもあるのに、いまさらSNSはないだろう」とか、「これ誰が使うの?」「どのような使い方があるの?」などと社員は思うはずです。

メールは特定の人とのコミュニケーションツールです。相手のことを知っていることが前提となります。SNSは相手を特定せずに、情報を共有したり質問を投げかけたりすることができます。自分の疑問に答えられる人が特定できるのであれば、メールや電話などで直接リーチできますが、誰が知っているか分からない場合、知っている人がいるのかどうかも分からない場合は、SNSにて投げかけてみて反応を待つ、という使い方となります。

つまり社内SNSは、予期せぬ反応、予期せぬ人からの回答等が得られる、仮想空間での偶発的出会いの場となるのです。総務的見地から言えば、社内コミュニケーション活性化のために、コピーやプリンターなどの共用機材を一か所に集めることで、そこでの偶発的出会いの場を作るといった工夫をしている企業が多くあります。ただ、同一拠点内での出会いであって、他の拠点の人との出会いの実現は事実上無理です。また、働き方が異なることで同一時間内に出会わない人がいる場合もあるでしょう。

しかし、社内SNSの場合、グローバル化の進んだ企業であっても、距離を超え、時差も超え、全世界に散らばる社員との偶発的な出会いが可能となります。自分が得たちょっとしたナレッジを投稿してみる、それにより思いもよらない社員が気づきを得て、逆に情報がもらえたりする。先に記したように、誰に聞いていいか分からない疑問を投げかけることで、他の地域の社員が助けてくれる。

このような使い方を具体的に明示してあげることで、社員も自らの立場において、具体的な使い方のイメージができる。そのような広報が必要です。「便利なサービスを導入しました。さあ皆さん、自由に、いろいろな使い方で活用してください」と社員の自主性に任せ、使い方を考えさせるようでは失敗する可能性が高いでしょう。

一般的に、運営側はさまざまなこと考え、導入するサービスのプロフェッショナルになっていることが多いものです。そのプロの見地から考えると、使うことのメリットも理解でき、いろいろと使い方もイメージできるのですが、実際に利用する現場の社員は、その予備知識もないまま提供され、右往左往してしまうことが多いものです。導入するサービスについては全くの素人であるという認識のもと、具体的イメージが持てるまで絵を描いてあげる必要があります。

社内SNS。導入するなら、以上のように徹底的に手取り足取りお世話しつつ運営していけば、社内での多くの出会いを生み、いま企業に必要とされる、専門を超えた社内コラボレーション、そしてイノベーションに結び付いていく可能性があるはずです。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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