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自然災害や感染症リスクに備える 【東京都】BCP実践促進助成金

自然災害や感染症リスクに備える 【東京都】BCP実践促進助成金

この記事の著者
  中小企業診断士 

この記事でわかること

近年、地震や台風などの自然災害、新型コロナウイルス感染症など、中小企業・小規模事業者の活動に大きな影響を与える事態が数多く発生しています。このような中、災害時でも事業を止めない、または早期復旧を図るBCP(事業継続計画)に注目が集まっています。

しかし、BCPを策定する中で、自家発電装置、蓄電池などの新たな設備・物品等の購入が必要な場合も多く、いざBCPを導入しようとしても、コスト面の問題から躊躇している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、そんな方のためにBCPの基礎と自治体の助成制度として、東京都のBCP実践促進助成金をご紹介します。


1 BCPとは

BCPとは(Business Continuity Plan=事業継続計画)の頭文字を取った言葉で、自然災害や感染症などの不測の事態により企業が危機的な状況下に置かれた場合でも、被害を最小限に抑えつつ、重要な業務を継続、あるいは早期復旧できるように定める計画です。BCPでは、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法や手段などを取り決めます。

東京都においても首都直下地震、大型台風による風水害、新型インフルエンザの発生などによる事業リスクが懸念されています。堅実な経営を続けていても、こうした不測の事態によるリスクにさらされ、事業の継続が困難になる場合があります。各企業においてはBCP対策を策定・実施することで、事業継続力を高めることが求められています。


2 中小企業のBCP策定状況

中小企業庁の「2020年版小規模企業白書」によると、BCP策定に取り組んでいる中小企業は約4割となっており、約半数は「策定していない」と回答しています。BCPを策定していない理由として「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が最も多くなっています。また、「策定する費用を確保できない」といったコスト面の課題も見受けられます。


3 国や自治体の支援制度

国や自治体では、中小企業のBCP策定に向け、各種支援施策を実施しています。具体的には、BCPの基礎知識や策定方法に関するセミナーや講習、専門のコンサルタントによるBCP策定支援などがあります。

また、BCP策定には多くの費用が必要となる場合がありますが、国や自治体が実施する補助金・助成金を活用することで、費用負担を抑えることも可能です。補助金・助成金であれば、実際にかかった費用の1/2~2/3の金額を支給してもらうことができます。

支援内容は自治体によって異なりますので、詳しくは自治体ホームページをご確認ください。

なお、補助金・助成金には留意点もあります。交付を受けるためには、所定の審査を通過する必要があります。ホームページや募集要項を確認し、審査基準を満たせるような計画を準備しておきましょう。また、補助金・助成金は後払いとなります。補助事業に取り組む際は、まず借入や自己資金で実施する必要がありますので、あらかじめ十分な資金を確保しておきましょう。


4 BCP実践促進補助金について

BCPを策定する中で、蓄電池、自家発電装置、従業員用の非常食など、新たな設備・物品等の購入が必要となる場合があります。ここでは、自治体が実施する助成金として、東京都が実施しているBCP実践促進助成金をご紹介します。

概要

BCP実践促進助成金は、都内の中小企業者等が公的機関の認定などを受けて策定したBCPを実践する場合に、必要な設備・物品の購入、設置に係る費用を対象に最大1,500万円(助成率1/2~2/3以内)の助成が受けられる、東京都(窓口:東京都中小企業振興公社)の助成金制度です。

対象事業者

まずは対象となる事業者について確認しましょう。事業者の要件は次のとおりです。

下記(1)~(3)のいずれかの要件を満たしてBCPを策定した中小企業者(小規模企業者)及び中小企業団体

  • (1)平成29年度以降に公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下:公社)総合支援課が実施する「BCP策定支援講座(ステージ1)」を受講し、受講内容を踏まえたBCP
  • (2)中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」の認定を受け、その内容に基づいて作成したBCP
  • (3)平成28年度以前の東京都又は公社が実施したBCP策定支援事業等の活用により策定したBCP

事業者は、法人だけでなく個人も対象となります。いずれも申請日時点において、東京都内で実質的に1年以上事業を行っていることが要件となります。

また、本助成金の申請には、上記要件を満たすBCPの策定が必要です。これから策定を考えているという方は、東京都が実施するBCP策定支援事業の活用も検討してみましょう。BCP策定支援事業は、都内中小企業のBCP策定を推進するために実施されている短期集中型の支援プログラムで、BCP策定プロセスを学ぶセミナーやコンサルティングによるBCP策定支援を受けることができます。まだBCP策定に取り組んでいないという方は、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

対象設置場所

本事業は、東京都内の事業所(本社含む)への設置が原則ですが、東京都内に本店を有する場合は茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県及び山梨県の都外設置が可能です。

補助対象事業

地震、風水害、感染症拡大など、発生が予見できないリスクに対し、防災・減災といったリスク軽減、回避を目的とした設備・器具物品の購入や設置に係る下記の事業が対象です。

  • ア 緊急時用の自家発電装置、蓄電池(太陽光パネル・蓄電池については、可搬式で非常時に設置して使用するもので、平常時の売電・節電に使用することができるものでないこと。太陽光発電システムおよびその構成機器は対象外)
  • イ 従業員等の安否確認を行うためのシステムの導入又はサブスクリプション契約によるサービスの利用
  • ウ データのバックアップ専用のサーバ(NAS)、クラウドサービスによるデータのバックアップ
  • エ 地震対策としての制震・免震ラックへの買い替え、飛散防止フィルム、転倒防止装置の設置等
  • オ 緊急時用の従業員用非常食(水・食料等)、簡易トイレ、毛布、簡易浄水器等の備蓄品
  • カ 災害対策用物品設備(土嚢、止水板等)の購入(ハザードマップの提出が必要)
  • キ 感染症を想定したもの(マスク、消毒液、体温計等)
    ※医療行為・検査薬・検査サービス等は助成対象外
  • ク BCP の補完として実施する基幹システム(ERP、CRM、SFA 等の内、企業の業務遂行の基幹となるシステム)の防災力強化のためのクラウドサービスの導入(クラウド化)
  • ケ 耐震診断(※別途要件あり)

助成率と助成額

①助成率

  • 中小企業者等:助成対象経費の1/2以内
  • 小規模企業者:助成対象経費の2/3以内

②助成額

助成上限額:1,500万円(下限額:10万円)

BCP実践促進 助成上限額 助成率 下限額
中小企業者等 1500万円
(クラウド化の助成額を含む。クラウド化の助成額の上限は450万円)
注)参照
助成対象経費の1/2以内 10万円
小規模企業者 助成対象経費の2/3以内

助成事業の流れ

助成事業の流れは次のとおりです。色付きの部分は、申請者自身が行う手続となります。

助成事業の流れ

①助成金申請

申請書類一式を揃えて、事務局(中小企業振興公社)まで提出します。見積書や登記簿謄本などの関係書類も準備します。

助成金は予定件数に達した場合、その時点で受付を終了する場合がありますので、スケジュールに余裕をもって申請しましょう。また、受付は事前予約による対面受付です。受付前に電話で事前予約を入れましょう。

②事業実施

申請した内容で事業を実施します。

③完了報告

補助事業の実績について、実施した内容、効果などを写真や文章で報告する報告書を作成します。補助金の対象経費についての支払い実績のわかる領収書、契約書や証拠書類などの提出も必要となります。

④助成金請求

補助確定金額を事務局あてに請求します。


5 まとめ

BCP対策には多くの費用がかかることがありますが、補助金や助成金を使えば費用を抑えることができます。本記事では東京の助成金を紹介しましたが、自治体によって支援内容は異なりますので、本社を設置している自治体の制度をご確認ください。

自然災害や新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けている日本において、BCP策定は今後もさらに注目されていくと考えられます。あなたもぜひこの機会にBCP対策の実施・強化に取り組んでみてはいかがでしょうか?

執筆の参考にしたサイト

公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和3年度 BCP実践促進助成金申請案内

東京都産業労働局「BCP策定支援


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著者プロフィール

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熱田 有美

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
千葉県出身。早稲田大学政治経済学部卒
2017年中小企業診断士登録
地方公務員を経て現在は中小企業診断士事務所に勤務し、コンサルティング業務を担当。得意分野はマーケティング支援、創業支援。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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