【中小企業必見!】BCP(事業継続計画)とは? 目的や策定方法を紹介

自然災害や緊急事態が起きた際に、企業が事業を継続または早期再開するための計画である「BCP(事業継続計画)」が注目されています。この記事では、BCPの目的や策定方法について詳しく解説します。
特に中小企業は、そういった緊急時に大きなダメージを受け、事業縮小や廃業へ追い込まれる恐れがあるでしょう。中小企業の経営層の方は、ぜひ参考にしてください。
BCP(事業継続計画)とは
BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害や、テロ攻撃など、突然の緊急事態に遭遇した場合の対策を取り決めておくことです。緊急時でも、自社の事業や資産の損害を最小限に抑え、緊急時下でも事業の継続もしくは早期復旧ができるようにするのが目的です。
具体的には、緊急時の対応のために、普段から行うべき活動から、緊急時における事業継続のための方法を取り決めます。
BCPが注目される背景
日本では、1980年代頃からBCP対策について議論されるようになりました。また内閣府が2005年に公表した「事業継続ガイドライン」でも、BCP策定を強く推奨しています。
BCP対策がより強く注目されるようになったのは、2011年の東日本大震災がきっかけです。
東日本大震災では、被災した地域の企業の多くが倒産に追い込まれる事態となりました。
そこから、2018年の西日本豪雨、2019年の台風15号・19号などによる大規模水害の際にも、再び注目されることになります。
また最近では、2020年に起こったコロナウィルスの感染拡大によって、「感染症」に対するBCP対策にも取り組まれるようになりました。
BCPの策定状況
出典:内閣府 防災情報のページ 令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査
令和3年度の時点では、BCPを策定している企業は大企業が70.8%、中堅企業が40.2%です。
BCPを策定している企業の割合は増加傾向にあります。
内閣府の調査結果でも、BCPの策定状況は年々上昇していることが明らかになっています。しかし、大企業に比べ中小企業は、BCP策定に向けた取り組みがまだまだ遅れがちな状況です。
BCPで想定される「緊急事態」の被害例
BCPで想定される「緊急事態」は業界によって異なります。
例えば、下記のような被害例が挙げられます。
業界 |
被害例 |
製造業 |
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小売業 |
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ITサービス業 |
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物流 |
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医療 |
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宿泊業・飲食業 |
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企業は自社の業種や事業内容を踏まえ、あらゆる緊急事態を想定してBCPを策定する必要があるでしょう。
BCPを策定するメリット
BCPを策定することには、企業にとってもさまざまなメリットがあります。
- 事業の縮小や倒産のリスクを防ぐ
- 事業の早期再開ができる
- 企業の信頼度が上がる
- 従業員が安心して働くことができる
- 国や自治体からの支援を受けられる
ここでは、その具体的な内容を見ていきましょう。
事業の縮小や倒産のリスクを防ぐ
BCPを策定し緊急事態に迅速に対応することで、事業ダメージを減らすことができます。
自然災害などで事業が中断してしまうと、売上が減少し資金繰りが悪化します。
最悪の場合、事業縮小や倒産に追い込まれるリスクもあるでしょう。事業縮小や倒産に陥ると、従業員も働く場所を失ってしまいます。
BCPを策定しておけば、こうしたリスクを未然に防ぐことが可能です。
事業の早期再開ができる
事前に災害時の再開までのフローを練っておくことで、緊急時でもすぐに事業を再開できます。被災後、いち早く事業を再開できれば、顧客の流出を防ぐことができるでしょう。市場におけるシェアの維持が可能となります。
一方、事業再開が遅れれば、顧客は他社に流れてしまうかもしれません。
迅速な事業再開は、BCP対策をする大きなメリットと言えるでしょう。
企業の信頼度が上がる
BCP対策をしていることを提示すれば、取引先や投資家からの信頼を得やすくなります。緊急時に復旧が早い企業であるという点は、取引するときの安心材料になりやすいです。緊急事態の発生によって自社の事業や投資に影響が出る可能性が軽減できるからです。
リスクマネジメントの有無は、投資家による評価基準のひとつでもあります。BCP策定により投資家からの評価が上がる可能性が高いでしょう。
従業員が安心して働くことができる
事業継続の観点からも、まずは従業員の命や健康、生活を守ることが最優先です。緊急事態の発生時に事業が停滞する恐れがあると、自然災害などに対する不安や、仕事を失う恐怖などを一気に抱えてしまいます。
BCPを設定し、それを社内にも共有しておくことで、従業員の不安の軽減がはかれます。従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業にとって重要な責務と言えるでしょう。
国や自治体からの支援を受けられる
2019年に、国は金融や財政などから中小企業を支援する「中小企業強靱化法案」を施行しました。中小企業の事業継続計画(BCP)の策定を後押しする法律です。
「事業継続力強化計画」の認定を受けた中小企業・小規模事業者が対象です。自家発電機や耐震設備など、BCP対策に必要な設備投資に対し、特別償却20%とする税制優遇などがあります。
このほかにも、金融支援や補助金など企業をサポートしてくれる施策が多数用意されています。
BCPを策定する流れ
ここからは、実際に企業でBCPを策定する流れを見ていきましょう。
BCPの策定には、以下のようなステップがあります。
- 基本指針を設定する
- リスクの洗い出しを行う
- リスクに優先順位をつける
- 具体的な対策を考える
- 策定した対策を周知する
基本指針を設定する
まず初めに、BCPの基本指針を設定します。「従業員の人命を守るため」「顧客や取引先からの信用を守るため」など、BCP対策における基本方針を確認し、目的を設定します。
基本方針は、企業の事業を継続するための基本的な考え方を示すものです。また、自社だけでなく、取引先などの関係企業も含めて、事業継続の実現を目指すことが大切です。
リスクの洗い出しを行う
次に、想定される緊急事態や、それによるリスクをすべて書き出します。
人手や物資、電気や水道などのエネルギーなど、あらゆるリソースが平常時より極めて少ない状況で、どの事業を優先して継続すべきかという視点で洗い出します。
考えるべき2つの要素は、以下の通りです。
①緊急事態の原因
②緊急事態によって引き起こされる結果
これらを具体的に想定し、リストアップしていきます。
事業を中断することにより、どのような影響が出るかを時系列で考えましょう。
リスクに優先順位をつける
想定されるすべてのリスクに対処するのは、現実的ではありません。
優先度の高いリスクに絞ってBCPを策定します。リスクの発生頻度と深刻度を考慮して、優先順位をつけると良いでしょう。
また、目標復旧時間をどのように達成するか戦略を立てます。重要なサービス・商品の早期復旧、中枢機能の確保や情報システムの維持など、必要な要素を検討しましょう。
具体的な対策を考える
リスクや優先度を洗い出したら、まずは優先度の高い事象から対策を具体的に考えます。
BCPでは誰が指揮を執り、誰が実際にどんな行動をするのかなど、具体的に決める必要があります。
具体的には、「人員」「体制」「設備などのインフラ」「資金」「情報」という5つの観点で細かく内容を決定しましょう。緊急事態発生時の行動をイメージしながら、現実的な対策を立てることが重要です。
策定した対策を周知する
BCPを策定したら、それを社内外の関係者に周知します。社内だけでなく、取引先や顧客、地域の自治会など、BCP対策を実行する時に協力が必要となるすべての関係者に周知しましょう。
BCPは策定しただけでは意味がありません。緊急事態発生時に迅速に行動できるよう、情報を共有しておくことが欠かせません。
後述しますが、BCP対策は継続して改善を重ねていくことが大切です。そのため、定期的な説明会や訓練の実施も効果的でしょう。
BCPの運用と継続的な改善
BCPは一度策定したら終わりではありません。常に運用と改善を重ねていく必要があります。
継続的なトレーニングと定期的なレビュー
BCP対策は継続的にトレーニングして改善を重ねていくと良いでしょう。策定した内容に沿ってテストを行い、内容に問題がないかを検証します。訓練を通じて、従業員の意識を高めることも大切です。
また、定期的にBCPの内容をレビューし、必要に応じてブラッシュアップしていきましょう。PDCAサイクルを回すことで、BCPの実効性を高めることができます。
変化するリスク環境への適応
BCP対策には、突発的な自然災害だけでなく、経済危機やサイバー攻撃なども含まれます。そのため、世界情勢やコンピューターの発展など、変化する外部要因に適応していく必要があります。
日々変化するリスク環境を察知し、それに合わせてBCP対策も適用させていくと良いでしょう。BCPは「想定外」のことをなるべく減らしていけるように、柔軟に改善を続けることが求められます。
まとめ
この記事では、BCP(事業継続計画)の目的や策定方法について解説しました。BCPは自然災害や緊急事態に備えるために欠かせない計画です。事業の縮小や倒産のリスクを防ぎ、早期の事業再開を可能にします。
BCPを作成するには、リスクの洗い出し、具体的な対策の立案から周知まで細かいステップがあります。策定後も、継続的なトレーニングと定期的なレビューを行い、変化するリスク環境に適応していくことが重要です。
BCP対策に取り組むことは重要なリスクマネジメントになるでしょう。もしもの時にダメージを最小限に抑えられるよう、中小企業の経営層はぜひBCP対策の導入をご検討ください。