はじめての事業計画書作成!市場調査の手法について

事業計画を立案する中で、その事業アイデアに対して本当に需要があるのか、自社が存続できる利益が見込める市場が存在しているのかをきちんと検証する必要があります。
そのために実施するのが市場調査です。市場調査を行うことで、市場規模が小さすぎたり市場の伸びがイマイチだったりする場合には、新規事業の方向転換を検討することができます。
また、市場調査の結果から新たなニーズに気付き、新規ビジネスアイデアが生まれることもあります。市場調査は重要な役割を担うわけです。
実際に市場調査をする時にどのように進めれば良いか、今回は市場調査の手法について解説をしていきます。

1.市場調査とは
市場調査や分析をおこなう際には、マクロの視点とミクロの視点があることを理解しましょう。マクロの視点とは、経済社会や市場といった大きな全体像のことで、ミクロの視点とはターゲットとなる消費者や企業など、自社が影響を与えられるような個々の経済行動や、それらの企業を取り巻く状況など、限定された領域のことを指します。
①マクロの視点で切り分けるPEST分析
マクロの視点で考える時に、よく使われるフレームワークが「PEST分析」です。
PEST分析とは、Politics(政治面)・Economy(経済面)・Society(社会・ライフスタイル面)・Technology(技術面)という4つの切り口から分析する手法で、マクロ環境の膨大な情報を効率的に調査・分析することが可能となります。
政治面では、政権交代や法改正などが企業に及ぼす影響を調査します。
例えば、2016年の改正電気事業法で電力小売りが全面自由化され、一気に電力業界が独占から競争市場へと変化したり、最近では政府の圧力で大手携帯会社3社が値下げを実施したりと、自社にとって大きなチャンスとなる場合もあれば、脅威になる可能性もあります。
経済面では、景気やインフレ・デフレ、為替などの経済状況の変化が企業に与える影響を考えます。例えば、為替が円高の状況であれば、製品を輸出する製造業は円安の時と比較すると売上や利益が低下してしまいます。
社会面では、人口動態や消費者のライフスタイルの変化などが該当します。そのため、社会面は企業戦略に影響を与える部分が大きいのではないでしょうか。
例を挙げると、日本では少子高齢化や過疎化が社会問題になっています。子供向け市場が縮小傾向になると考えられますが、高齢者向けビジネス市場は伸びると考えられます。
技術面では、技術的イノベーションによって業界構造が大きく変化してしまうことが考えられます。
②ミクロの視点で市場環境を切り分ける「ファイブフォース分析」
ミクロの視点で市場を切り分ける時には「ファイブフォース分析」を用います。
自社に直接影響を及ぼす5つの要因から市場を考えます。5つの要因とは、「顧客」「供給業者」「新規参入業者」「代替品」「競争業者」です。
ファイブフォースは業界の構造を把握するために役立てることが多く、市場調査とは少し離れた内容だと感じる方も多いかもしれませんが、ミクロの視点をあらかじめ持つことで市場調査の切り口や新たな発見からビジネスアイデアも生まれるので、意識しておきましょう。

2.市場調査の種類
調査の方法は様々ありますが、大きく分けて2つあります。
①統計データなどの2次データを活用すること
統計データによる調査とは、公的機関や民間企業で実施されている調査に基づいた統計データを利用する方法です。
例えば、代表的なものを挙げると、統計局の「e-Stat 政府統計の総合窓口」や、経済産業省管轄でも
「統計」」が開設されています。
他にもNTTやリクルートなどの民間企業でも発表していますので、まずは用途に応じたデータをインターネットで検索してみると良いでしょう。
こうした統計データを活用することの利点は、調査時間を大幅に削減できる点と、公的機関が発表しているデータは無料で開示されているものがほとんどである点です。BtoCにもBtoBにも活用できる様々なデータが公開されていますので、活用しない手はないでしょう。
とはいえニッチな市場を調査したい場合や、自社の製品・サービスに対する情報を調べたいといった際には、思ったようなデータが存在しない場合もあります。そうした時には、自社でデータを集める必要が生じます。
②アンケートやインタビュー、面談によって1次データを集める
こちらは自社で実施しても良いですし、リサーチ会社を活用することも一つの手でしょう(この場合は3次データと呼ばれることもあります)。
しかし、こうした調査を行うことは、2次データと比較して時間を含めたコストが発生します。そのため、1次データを集める際には、どういった情報を集める必要があるのか、定量データと定性データをうまく分けて事前に準備しましょう。
定量データを集めるメリットは、市場全体の傾向を数値として掴むことができる点で、説得力も増します。また、短期間で回収できることや回答率も高くなるので、アンケート調査などでよく用いられます。一方デメリットは、質問に対しての回答しか得られない点で、盲点をつくような回答はなかなか得られにくいでしょう。
定性調査のメリットは、定量調査では得られなかった顧客の意見などを取り込むことができる点です。思いもしない顧客の意見を聞ける可能性があり、新規事業のアイデアにつながる場合もあるのではないでしょうか。こちらはインタビューなどが主流となります。
デメリットは、定量調査よりも得られる回答数が少なくなること、また定性調査をする担当者の能力により引き出される意見にばらつきが生じてしまうことが考えられます。
近年では、個のニーズにどれだけ対応できるかが重要視されますので、定性データの価値は高いと考えられます。
3.市場調査の結果を新規事業に活かすために
市場調査は、データを集めて終わりではありません。市場調査の結果を用いてそれを新規事業に役立てる必要があります。
最初に市場調査を実施することで、市場の規模やニーズをざっくりと把握できると考えられます。
しかし、それはあくまで仮説にすぎず、いきなり本格的にサービスを実施するとなるとリスクも非常に高くなります。そのため、その仮説が正しいかどうか検証をおこなうことでリスクを最小限に抑えることができます。まず、試作品や試験的にサービスを開始することで、市場調査に基づく仮説が正しかったのかどうかを検証していきます。試作品をつくることが難しいのであれば、プレゼン資料だけでも良いので、実際の顧客の反応を掴むことが大切です。
そして、その結果を持ってまた事業アイデアをブラッシュアップさせます。それを何度も繰り返すことで、市場調査と事業計画の精度はどんどん高まっていくのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。市場調査の必要性や、市場調査の手法について解説してきました。市場調査はどうしても労力がかかるため腰が重くなりますが、しっかりと検証をおこなうことで市場の規模だけでなくニーズまで把握ができるため、事業計画の中で最も重要な部分になります。
最後に一つ注意点があります。市場調査の結果、大きな市場があることが明らかになると、どうしても飛びついてしまいたくなります。しかし、大きな市場になればなるほど競合も多く、顧客のニーズも非常に多岐にわたります。そして、その広いニーズのすべてに対応しようと努力することは、自社製品から特長を奪ってしまうことにつながり、ひいては価格競争に巻き込まれることになりかねません。
そのため、市場を小さくすることへの抵抗があるかもしれませんが、自社の魅力がしっかりと発揮できる市場を切り分けて、事業計画に活かしていきましょう。