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はじめての事業計画書作成!人と組織(リラクゼーションサロン編)

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

はじめての事業計画書作成!人と組織(リラクゼーションサロン編)

スーパーマーケットの商品は、生鮮食料品です。つまり、顧客から選ばれるためには、鮮度と品ぞろえが重要です。

一方、私たちのサロンはサービス業です。サロンにおける商品は“人”です。

では、顧客に選ばれ続けるために必要なことは、どのようなことでしょうか?

そのために必要な人材には、いつ入社してもらい、どのような教育システム、給与体系を準備する必要があるのでしょうか?

その人材で、どのようなチームを作りあげていくのでしょうか?


1.顧客のためのチーム作りで大切なこと

1人で運営しているサロンの場合においても、顧客をより満足させるためには、必ずチームメンバーの力が必要になります。例えば、外部協力業者や家族がチームメンバーと考えられるでしょう。チーム作りで大切なことは、全員がサロンのビジョンやミッションに関して共通認識を持っていることです。小さなチームでもこれができていれば、大きな組織に負けない力を発揮し、顧客に寄り添えるチームとなることができます。


(1)役割分担を設定しましょう

「うちは小さなサロンだから全員同列。役割分担するほどの人数はいないですよ」とはよく伺う話ですが、これは大きな間違いです。役割分担を単純な仕事の割り振りと捉えるのではなく、“サロン内のルール”として認識してください。例えば「誰が、いつ、何を、どのように行うのか?」「顧客別の対応ルール、出勤シフト、1日の業務フロー」など、あらかじめルールを設定しておくことで、リーダーであるあなたの判断業務に関する負担は減り、施術などの顧客サービスに集中できます。

また、序列を決めましょう。「年齢順、経験順、入社順」など、序列を決めるものさしは、チームリーダーであるあなたが、サロンのビジョンに則って決定してください。よく聞く「フラットな組織」というのは、スタッフ全員が自立的に動くことができるプロ集団でこそ力を発揮する方法です。マイクロマネジメントが不要で、生産性が高くなるメリットがある一方で、デメリットもあります。サロン内で問題が発生した場合、すべてのスタッフとリーダーがマンツーマンの関係になるため、マネジメントにかかる負担が急増するリスクがあります。


(2)必要な人材を採用するための準備

スタッフの採用は、サービス業であるサロンの大切な仕事です。採用後の教育により自サロンに適した人材に変化させようとしても、大人を教育で変化させるには大変な労力が必要です。ですから、あなたのサロンに適した人材を確保する努力を怠らないようにしましょう。何はさておき、まず採用計画を立案します。おおまかな流れは以下の通りです。

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ここでは、求人媒体を念頭に全体の流れを示しましたが、求人媒体よりも優先したい採用方法は直接採用や紹介採用などです。例えば、顧客の中から探す方法。セラピストは、他のサロンではどのような設備があり、どのような施術を行っているのか興味を持っています。また、セラピスト自身が「根っからリラクゼーションが好き」ということもあり、あなたのサロンにも来店している可能性があります。このような人と出会えれば、あなたのサロンの方針や雰囲気などについても理解があり、賛同してくれる可能性が高く、即戦力として期待できます。サロンに入店したことがなくても、求人チラシを店頭に貼り出すことで、あなたのサロンの前を歩いているセラピストから問い合わせをもらうことも見込めるでしょう。

また、スタッフの紹介や顧客からの紹介も併せて検討します。紹介を頂いた際のお礼や条件面、紹介して欲しい人物像を書面にし、真剣に募集していることを伝えましょう。なぜなら、紹介する側は「間に合っているんじゃないか?高いスキルの人でないと紹介しづらい。紹介した人が迷惑をかけたら責任問題だ」などとネガティブな発想になり、躊躇するものだからです。


2.強いチームを作るために

(1)人材育成に大切なこと

人材育成において大切なことは、どの事業でも同じです。明確な目標とそこへ到達するためのルートを共有することです。「共有したルートやサロンのルールを守れなかったときには、きちんと叱ること」「成長が感じられたら、たとえ小さな成長でもしっかりと認めて褒めること」です。この2点を徹底することが大切です。そのために、コミュニケーションは密に行いましょう。コミュニケーションにより、スタッフの成長にもミスにも気づくことができますし、リーダーの考え方や価値観を伝えることも人材育成にかかわる重要なアクションです。

コミュニケーションには、その人数によって集合型と個別型、そのタイミングによって随時型と定例型があります。集合型には毎日行う朝礼または終礼があります。個別型には個人面談があり、3か月に1回程度を目安に行います。

▼朝礼、終礼の事例(集合・定例型)

・時間は5分から10分。ミーティングリーダーは持ち回りで行います。

・経営理念やビジョンの唱和

・前日の客数や客単価など数字面の共有

・顧客アンケートからお褒めの言葉の共有(アンケートなどによる顧客の声は、これ以外に中長期的なサロンの改善や顧客とのコミュニケーションとして役立ちます)

・その他、連絡事項など

▼個別面談の事例(個別・随時型)

・時間は、30分から60分程度。余裕を持った時間設定で行います。

・準備物は、前回の面談メモ

・基本的にはスタッフ7割、あなたが3割の量で話します。

・テーマは、前回設定した目標の進捗確認や次回面談までの目標設定。サロンの課題や解決策などについて話し合います。

・定例面談の頻度は、年間4回程度を目安に行ってください。次回日程も決めてしまうことで定着化が図れ、お互いの面談に対する心理的負担も軽減されます。

・随時型は、日々の声かけや報告・連絡・相談を中心に行います。内容も大切ですが、言葉をかけあうことがもっとも大切です。こまめに言葉を交わすことでスタッフのES※を向上させ、突然の退社を防止したり、サロン内の問題を早期発見したりすることができます。

※ESとは、エンプロイー・サティスファクションの略称で、従業員満足のことです。

スタッフの満足はモチベーションアップに繋がり、ひいては顧客満足との関係も密接と考えられています。

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(2)給与体系の考え方

給与水準は、近隣サロンなどを参考に、ある程度合わせたもので設定しましょう。大切なことは評価制度や昇格昇給に対して従業員が納得できる仕組みを作ることです。ビジョンやミッションへの共感度を優先するために、やや低めの給与水準からスタートするサロンもあるほどです。

評価には、定量評価定性評価の2種類があります。

定量評価とは、スタッフとの定期面談を通じて設定した数値目標への達成度をもとにした評価です。

主なものには「物販売上、指名客数、アンケート回収数、アンケートでの高評価件数、ポスティング数、ブログ作成数」などがあり、マイナス査定要因には「遅刻欠勤数、クレーム件数など」が考えられます。

ある一定の基準をクリアすれば、次のポジションを与えるための昇格基準をあらかじめ作っておくことも大切です。スタッフ側からみると「いつどういう行動をとれば評価が上がり、次のステップに進めるのか?」「それによって給与はどれくらい上がるのか?」などが明確でなければ、どのように行動すればよいか理解できず、モチベーションが下がるものです。

ただし、人間は感情を持つ生き物です。高い給与や適切な評価を得られるだけでは持っている力を100%発揮することはありません。スタッフ自らが「自分の夢をこのサロンでかなえよう」とワクワクできるような将来へのビジョンをスタッフに示し、共感を得ることがもっとも大切なあなたの仕事です。


  • まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、事業計画から少しそれた話のように感じた方もいるかもしれませんが、それは、事業計画の中に人員計画を含んでいないサロンが多いためです。サービス業において、スタッフが商品であることは周知の事実です。しかし実際のサロンでは、集客や自分の施術で手一杯となり、本来リーダーがやらなくてはならない「採用」「教育」「評価」「報酬」への取り組みが後回しになっています。実は、安定したサロン経営には、これらの取り組みが一番大切な活動のはずです。ただし、それほど難しく考える必要はなく、まずは基本方針を決定し、徐々に肉付けしていけばよいのです。基本方針を明らかにし、ラフなものでも計画を作っておくことで、取り組みが後手に回ることが避けられるようになります。長くお客様にかわいがってもらえるサロン作りのためにも、人の成長を助けることをじっくりと考えるよい機会としてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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