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はじめての事業計画書作成!メニュー開発と料金設定(家事代行サービス編)

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

はじめての事業計画書作成!メニュー開発と料金設定(家事代行サービス編)

あなたのお店の営業地域には、どのような顧客層がお住まいでしょうか?

エリアが変われば、住宅事情や家族構成に違いが生まれます。

年齢層や働き方などのライフスタイルによってニーズも大きく違います。

訪問型サービスにおいても、店舗型ビジネスと同じく提供すべきメニューや料金体系など、その営業地域に応じた対策が必要です。



1.顧客ニーズとメニュー開発

「自店の顧客に対して満足度調査をしていますか?」

おそらく開店したてのころや、新規のお客さまに対しては、「ご満足いただけただろうか?」「当店のスタッフが粗相をしていないだろうか?」「見積もりや事前打ち合わせでミスコミュニケーションが発生していないだろうか?」といろいろと心配になり、何度もお客さまに確認しているはずです。また、電話フォローなどもしていたでしょう。ところが、長期契約のお客さまは、自店の商品・サービスのファンであるロイヤルカスタマーと呼ぶべき存在のはずですが、不思議なことに満足度について確認する機会は徐々に減ってくるはずです。

「契約がつづいているということは、満足しているはず」「クレームがないから大丈夫」「いつものおなじみのスタッフをアサインしているから大丈夫」。本当でしょうか?

一方で、一度だけサービスをご依頼くださったお客さま、見積もりだけで失注したお客さまに対して、「なぜ、繰り返し注文がないのか?」「なぜ、受注することができなかったのか?」について確認することはほとんどありません。広告活動をして新規客を探し回るよりも、すべきことはこちらではないでしょうか?

顧客の声には、あなたのビジネスを継続させるためのヒントが詰まっているのですから。


(1)既存客のニーズに対応する

既存のお客さまからの苦情は少ないはずです。その理由をご存じですか?もちろんしっかり満足しており、他店にスイッチすることなど考えてもいない顧客が大半だとは思います。一方で、最初は不満に思っていたことも時間が経つにつれて慣れてしまっているお客さまも少なからず存在します。つまり、あきらめているのです。お客さま側も我々に100点を望むことは無理だと考えていたり「お互いさまだから」と考えたりしています。しかし、もし不満のタネが解消したらどうでしょう。さらに関係性が強固になるのではないでしょうか。

ここで、NPS(ネットプロモータースコア)という手法をご紹介します。これは顧客が自店にどれくらいの愛着や信頼を持って、ごひいきにしてくれているかを数値化する手法です。日本でも数年前から認知度が高まってきています。NPSの特徴は、お客さまに対して「他人への推奨度」を聞くこと、そしてその結果と業績が密接にリンクするということがわかっていることです。

簡単にその手法を紹介しておくと、お客さまに対して「あなたがご利用になっている当店のサービスを、どなたかにご紹介いただけそうでしょうか?0点~10点のいずれかの点数でお答えください」と聞くだけです。家事代行サービスで訪問するたびに小さなアンケート用紙をお渡ししたり、専用のアンケートサイト(google formsなど)をご案内したりするだけで十分です。

分析方法は次の通りです。たとえば、100人の回答のうち「9~10点」をつけたお客さまが30人で、「0~6点」をつけたお客さまが50人だったとします。この場合のNPSでは30-50で「-20」となります。実際には、統計的な観点から、400サンプル以上を確保することが望ましいといえます。

NPSの数値は、不特定多数の人が利用するようなサービスの場合、批判者の割合が大きくなりがちなため、計算結果がマイナスになってしまうことも珍しくありません。なぜなら、お金を支払ったユーザーにとっては、期待外れや怒りなどの感情体験のほうが、誰かにサービスを紹介しようという気持ちよりも強くなりやすいためです。日本では良いサービスは当たり前となっていますので、感動するほどの接客やサービスがなければ、高評価はつきにくいといえます。

そのため、NPSの値がマイナスになってしまったとしても、悲観的になる必要はありません。この数値を自店の通信簿として店内で共有し、向上させるための工夫を繰り返すのです。

(2)対応しない顧客ニーズを決める

事業のスタート時期を過ぎたら、自店にフィットするお客さま、または自店の強みが有効なお客さまのニーズに絞って活動しましょう。つまり、どれだけ工夫をしても自店では対応できないニーズであれば、そこは避けて通らなければなりません。よほどの大企業でなければ、すべてのお客さまのニーズを満たすことは不可能ですから。家事代行サービスは、いわゆる労働集約型産業であり、スタッフが商品です。その商品に業務過多で過度なストレスをかけることは、他のお客さまにストレスをかけることにつながります。つまり、お客さまを増やそうという行動が本末転倒になりかねないのです。しかし、家事にお困りごとを抱え、相談いただいたお客さまを断ることは大変心苦しいことであり、販促費を無駄にすることにもなります。

そこで私からの提案は、先述の一度ご利用いただいたきりのお客さまや失注したお客さまに、勇気を出してご連絡することです。すべてが契約にいたることはありませんが、不満の声から学ぶことが次につながるはずです。一度取り組んでみてください。


(3)メニュー開発の方法

メニュー開発というと、何かの実験やモノづくりのイメージを持たれるかもしれませんが、サービス業においてもモノづくり同様に仮説や検証を行うことが大切です。

具体的な手順ですが、まず仮説を立てます。これも、お客さまとの会話からヒントを得ることができます。アンケートやスタッフによるヒアリングを行い、情報収集から始めましょう。

次に検証活動です。技術的な面は、自宅やスタッフ宅などで試しながら設計していきます。顧客に提供できるレベルになれば、最初は常連客への提案や、シーズンメニューなどのキャンペーンとして展開します。そして、顧客からのフィードバックを受けてサービス内容や料金の見直しを行います。手ごたえを感じたら、本格的にグランドメニューに加えてもよいですし、オプションやシーズンメニューとしてデビューさせ、時間をかけて浸透させることもできます。


2.顧客ニーズと料金設定

家事代行サービスのような技術サービスでは、料金を安く設定する薄利多売路線で継続的にビジネスを行うことは非常に困難です。その理由は二つあります。一点目は、サービス料金とスタッフのモチベーションには密接な関係があることです。低料金では、スタッフは「これくらいやればいいだろう」と勝手に質を落としてしまう傾向にあります。ES(従業員満足)がそのままCS(顧客満足)に直結する傾向にある技術サービスでは、これは致命傷になりかねません。

二点目は、見えづらいコストです。家事代行サービスのような技術サービスでは、新入社員が一人前になるまでに一年以上かかることも普通です。その間は、通常のスタッフに加えて新入社員の人件費が余分に発生します。このような教育コストも収益計画に含めておかなければならないのです。


3.まとめ

いかがでしたでしょうか?ビジネスにおいて、お客さまからのフィードバックや応援は、経営コンサルタントの助言よりも重要な情報源です。アンケートお礼品などのプレゼントも用意し、さっそく取り組んでみることをお勧めします。また、今回紹介したNPSやCSコール(顧客満足度の聞き取り)などに加えて、責任者自身が直接お客さまのお話を伺うことをお勧めします。経営改善に活かせるヒントが必ず見つかることでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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