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副業の事業計画書作成について

著者: 中小企業診断士  牧野 孝治

副業の事業計画書作成について

近年、多くの企業で副業が認められてきており、副業人口は右肩上がりで増加しています。

株式会社リクルートによる『兼業・副業に関する動向調査2020』では、兼業・副業を認める人事制度を導入している企業は49.5%、社外から兼業・副業人材を受け入れている企業は49.9%に及び、企業も副業・兼業に対して柔軟な姿勢に変化してきました。

そういった市況も後押しをして、起業をするときにいきなり会社を辞めて独立するのではなく、会社に勤務しながら副業として起業するなど、リスクを最小に抑えた方法を選択する方も多いのではないでしょうか。

今回は、そうした副業で事業を行う際の事業計画書の作成方法に焦点をあてて解説をしていきます。



1.副業でも事業計画書を作る必要性とは

事業計画書とは、事業内容や戦略、資金調達や売上予測、さらには行動計画までをまとめた計画書類のことです。副業で事業を行う上で事業計画書を作成することに、どのような意味があるのでしょうか。


①独立に向けてのスケジュールや時期を明確にするため

将来、会社を辞めて独立する前提で副業をしている場合には、どのタイミングで独立するかを具体的にするためにも、事業計画書を作ることは非常に効果的です。事業計画を策定することで、売上の見通しや必要な経費を把握することができるので、現状の本業からの収入が無くても生活できる時期が把握できることでしょう。また、独立するために必要なアクションも整理ができます。ここで独立に向けた計画をしっかり立てないと、独立しないまま時間だけが経過する可能性も生まれてしまいます。


②取引先や金融機関への信用を高めるため

「副業」と聞くと、どういったイメージを持つでしょうか?多くの方にとっては、「片手間でこなしている」といったマイナスのイメージが強いと考えられます。そのため、取引先や金融機関からも同様に軽く見られてしまいがちです。

しかし、事業計画書を作成することにより事業の魅力と将来性を伝えることができれば、信用を高めることに繋がります。副業だからこそ、事業計画書を含めた準備はきちんとやる必要があるのです。


③事業計画書を作成した方が事業の成功確率が高くなる

中小企業庁発行の「2016年版小規模企業白書」にて、事業(経営)計画書作成の有無と売上高の相関についての調査が行われました。事業計画を作成したことがある事業者と作成したことがない事業者との間で、その後の売り上げなどを比較した内容です。

その結果、事業計画書を作成したケースでは、作成していない場合に比べて、売り上げが増加した事業者の割合が13.8%も高く、逆に売上が減少した事業者の割合は9.5%も少なくなるといったように、事業に好影響を与えていることが判明しました。

本調査と同時にどのような効果を実感できたかの調査が行われ、好影響を与えた理由として、「経営方針と目標が明確になった」「事業の強みと弱みを認識できた」などの回答が多くを占めました。事業計画書を作成し、自身の事業を客観的に見つめ直し、どういった行動を起こすかを計画にすることで、事業の成功確率が高まると言えるでしょう。


2.副業の事業計画書を作成する際に考えられる失敗

副業で事業を始める方の中には、事業の経験がない方も多いのではないでしょうか。具体的な計画書の中身をお話しする前に、陥りやすい失敗についてご説明します。

①最初から完璧な事業計画書を作成しようとしてしまう

事業計画書の作成経験がない場合、最初から完璧な事業計画書を作成しようとする必要はありません。細部に入り込みすぎてしまうと、事業とは関係の無い部分で時間を費やしてしまう可能性があるからです。細部にこだわりすぎるよりも、全体を通して一本のストーリーになっているか、事業の要であるビジネスモデルの部分が魅力的で将来性があるかを意識しましょう。

また、第三者にチェックしてもらうことも大切です。地域にもよりますが、商工会議所などでは無料で事業計画書のチェックやアドバイスをもらえることもあります。最寄りの商工会議所に問い合わせてみるのも良いでしょう。


②市場調査や分析がメインとなっており、行動計画まで落とせていない

企業に勤めていた方なら、市場調査やデータ分析について、ある程度経験がある方が多いのではないでしょうか。そのため、様々な調査・分析に手を出しすぎてしまい、結局何がしたいのかわからなくなってしまうことがあります。事業計画書では、最終的に行動計画にまで落とすことを心がけましょう。また、副業では時間制約が厳しい場合も多いので、実現可能な行動計画になっているかを常に問いかけることが大切です。


③根拠がない

項とは対照的に、一見すると成長性も高く魅力的な事業計画に仕上がっていても、具体的な根拠に乏しい事業計画書が見受けられます。根拠は常に明確にしましょう。また、抽象的な表現が多くなりすぎないように注意が必要です。


3.副業の事業計画書の作成方法とは

それでは、副業として事業計画書を作る際の全体構成を、一部事例とともに解説しましょう。基本的には、一般的な事業計画書と全体構成は同じで問題ありません。しかし、この通りに作成する必要はなく、自身の事業計画に沿って表現がしやすい書き方にすると良いでしょう。

①事業主のプロフィール

ここでは、事業主であるあなたの魅力を伝えます。

特に副業では、店舗や設備といった資産を持たずに事業を始める方が多いでしょう。そのため、事業が成功するかどうかの鍵は、事業主自身がどういった経歴やスキルを有しているかにかかっていると考えられます。

また忘れてはいけないことは、人間的な魅力です。ここで相手の心をつかむことができると、利益を後回しにして支援をしてくれる関係者も出てくる可能性があります。将来の独立を視野に副業をされている方は、事業を大きく成功させるよりも、人とのつながりを増やすことに注力するのも良いかもしれません。

②なぜこの事業をやろうと思ったのか(背景)

次に、本事業をなぜやろうと思ったのか、その事業に対する熱い想いを伝えましょう。

①項と同様に、ここでも相手の心をつかむ必要があります。ここで意識することは、どうすれば共感が得られるかを考えることです。例えば、世の中の不満や社会問題を背景にすることで興味を持たせやすくなります。

特に副業の場合は、自分自身のためにもここを深掘りしておくのが良いでしょう。

本業が忙しくなると副業の仕事がおろそかになり、気付いたら副業を辞めていたなんてことにもなりかねません。そのため、本業の引力に引っ張られて副業を途中で断念することのないように、しっかりと検討をしましょう。

➂事業理念とビジョン

次に、事業理念を定めましょう。理念とは、事業を行う上で大切な価値観です。ビジョンとは、事業を通して目指すゴールのことを指します。副業の場合であれば、独立するのか、それとも副業として継続する(事業拡大はしない)のかといったことも決めておきましょう。


④事業のコンセプト

その事業を一言でまとめたものが事業コンセプトです。第三者が事業計画書を見たときにパッとイメージがつかめることを心がけて「誰に」「何を」「どのように」といった視点で事業を伝わりやすく端的にまとめましょう。


⑤事業内容と市場調査

具体的な事業の中身について説明しましょう。「自身が狙う市場や顧客とそのニーズ、商品・サービスの内容、どのような競合が存在するのか」などを明確にしていきましょう。ここでは、市場調査だけでなく、検証(テストマーケティング)の方法についても検討すると良いでしょう。

副業だからこそ狙えるニッチな市場で、小さくスタートすることが良いのではないでしょうか。


⑥事業戦略

ここでは、どのようにして収益化を図るのかといった具体的なビジネスモデルの説明を行います。副業であれば時間の制約も大きいため、Webなどを活用した営業を行うのが良いでしょう。例えばホームページで全て完結できるような営業体制など、人員を割かずとも対応できる戦略が効果的と考えられます。


⑦収支・予算計画

本事業全体でどのくらいの収益を見込むことができるのか、また、事業が黒字化するまでの期間に必要な資金はどの程度なのかを記載します。収支計画から判断して独立する目安を考えてもよいでしょう。


⑧具体的なアクションプラン

①~⑦で記載したことをどのように実行していくのか、具体的なアクションプランについて検討します。計画したからにはしっかりと行動すること、そして今後の計画をブラッシュアップすることを忘れないようにしましょう。

事業計画は作成して終わりではありません。事業を継続する限り必要なものです。


【まとめ】

いかがでしたでしょうか。近年、副業で起業をする方をよく見かけるようになりました。

副業で事業を始めることは、もし失敗しても本業の収入があるためリスクが低く、良い手段だと個人的には考えます。しかし、リスクが少ないゆえに事業計画書もなく思い付きで事業を進めてしまうことも少なくないでしょう。

そういったことを避けるためにも、副業であっても事業計画をしっかりと作成していただければと思います。

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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