はじめての事業計画書作成!個人事業主の事業計画書作成について
個人事業主として事業を営んでいる、もしくは今後事業を始めようとされている皆様、事業計画書の作成をされたことがあるでしょうか。
事業計画書とは、簡単に説明すると、起業や新規事業の立ち上げ、既存事業を見直す際に「事業をどのように営んでいくかをシミュレーションし、具体的な行動プランにまで落とし込む計画書」のことを指します。
事業計画書を作成するには、さまざまな調査や検討をしなければならないため、非常に労力がかかります。そのため、特に個人事業主の方のなかには「手間がかかるし、堅苦しい計画は立てずに気楽にやっていく」といった方もよくいらっしゃいます。
しかし、事業の計画を立てるか立てないかによって、その後の事業の成功に大きな影響を与えます。
今回は、個人事業主の事業計画書作成に焦点をあてて解説をしていきます。
1.個人事業主が事業計画書を作るメリットとは
まず個人事業主が事業計画書を作成した場合に、どういったメリットがあるのかを確認していきましょう。
1 取引先や金融機関への信用を高めることができる
個人事業主と法人を比較した場合、一般的に個人事業主の方が信用度は低くなります。
理由として、個人事業主は開業のハードルが低いため、気軽に事業を始めている方も多数いらっしゃるからです。そのため全体として軽く見られがちです。
また、代表者が死亡した場合、法人は法人格を有しているのですぐに消滅するわけではありませんが、個人事業主の場合は事業の継続が個人に依存しているので、事業主が死亡するなどすると事業の継続ができなくなります。
金融機関や取引先からの信用度を高めるために、事業の将来性を明確にした事業計画書を提示しておくことが有効です。
2 事業計画書を作成した方が売上の増加が見込める
中小企業庁発行の「2016年版小規模企業白書」にて、事業(経営)計画書作成の有無と売上高の相関についての調査が行われました。
経営計画の作成の有無と売上高の傾向
事業計画書の作成有無 |
増加 |
横ばい |
減少 |
作成したことがある |
34.0% |
42.3% |
23.7% |
作成したことがない |
20.2% |
46.6% |
33.2% |
データ引用“2016年版小規模企業白書「第1-2-39図 経営計画の作成の有無と売上高の傾向」”
結果は上の表の通り、事業計画を作成したことがある事業者は、作成したことがない事業者に比べて、売上が増加した事業者は13.8%も高くなっています。逆に売上が減少した事業者の割合は9.5%も少なくなるといった好影響がでているのです。
本調査と同時に、どのような効果を実感できたかの調査も行われ、「経営方針と目標が明確になった」「事業の強みと弱みを認識できた」などの回答がありました。自社の経営資源が明確になり、それを事業にうまく活用できたことが、売上向上の要因になり好影響を与えたと考えられます。
一方、同調査にて個人事業主と法人の事業計画書の作成有無についても調査されており、個人事業主の作成経験は「44%」と、法人の作成経験ありの「64%」と比べて大きく下回っています。個人事業主の半数以上が事業計画書を作成したことがない、言い方が悪いかもしれませんが、思い付きで事業をされていることになります。
事業計画書を作成し、自身の事業を客観的に見つめ直すだけでも、他の個人事業主よりも優位な経営状況になることは間違いないでしょう。
2.法人と個人事業主の事業計画書の違いとは
それでは、個人事業主と法人の事業計画書では、どういった点に違いがあるのでしょうか。
結論から言えば、ほとんど同じと考えてください。個人事業主だからこれを記載しなければならないといった項目は存在しません。しかし、上述したように「個人事業主」の信用度は一般的に低いため、細かな部分までしっかりと記載をしておかないと「本当に実現できるのか?」といった目で見られてしまうので注意しましょう。
また、法人と個人事業主で一番異なるのは税金や社会保険でしょう。
売上や利益の拡大を目指すのであれば、法人の方が有利な条件になりますので、基本的には法人化する方向に向かう事業者が多くなるはずです。そのため、事業拡大を狙う個人事業主であれば、個人から法人とする時期の検討のために事業計画書を作成することも有効なのではないでしょうか。
3.個人事業主の事業計画書の作成方法とは
それでは、個人事業主が事業計画書を作る際の全体構成を、一部事例とともに解説しましょう。
①事業主のプロフィール
個人事業主は、法人に比べると資本等が劣ることが多いでしょう。そのため、事業主自身の強みをしっかりとPRしましょう。
PRするポイントとしては、その事業で役に立ちそうな「経歴や能力」また「物的資産」を保有しているかどうかなど、「この人がやる事業なら成功しそうだな」と思わせるような強みを最初に挙げることです。
比較的若い経営者で実績も乏しい場合は、一見して事業とは直接関係なさそうな「学生時代の経験」も、重要な強みの構成要因となっていることも多いものです。
②なぜこの事業をやろうと思ったのか(背景)
次に、この事業をなぜやろうと思ったのか、その事業に対する熱い想いを伝えましょう。
ここで意識することは、事業計画書を見た人の共感が得られるかどうかです。
例えば、世の中の不満や問題を背景にすることで興味を持たせやすくなります。「現在、市場に出回っている製品に使いづらい個所がある。そういった部分を改良した製品を開発する」「地域の過疎化、高齢化が進んでいるため、ドローンを活用した配送を事業化する」など、その事業を始めようと思ったきっかけについて強く訴えましょう。
➂事業理念とビジョン
次に事業理念を定めましょう。理念とは、事業を行う上で大切な価値観です。
ビジョンとは、事業を通して目指すゴールのことを指します。
事業理念やビジョンがしっかり定まっていると、自身の事業計画にブレが生じなくなります。特に個人事業主の場合は、1人だけの事業者も多く、自身が気付かないまま事業の方向性が変わってしまっていることも多いので、経営判断に迷ったときの指針としても固めておくことが良いでしょう。
④事業のコンセプト
その事業を一言でまとめたものが事業コンセプトです。
例えば「老舗京料理店の元料理長が厳選した食材と調理法で提供する、高級京料理を家で味わえる弁当の宅配サービス」といった事業コンセプトであれば、どういった事業を行うかのイメージが湧いてきますよね。
⑤事業内容
具体的な事業の中身について解説していきましょう。「自身が狙う市場や顧客とそのニーズ、商品・サービスの内容、どのような競合が存在するのか」などを明確にしていきましょう。
そして、個人事業主のような小規模事業者であればあるほど、ニッチな市場を狙うようにしましょう。
⑥事業戦略
ここでは、どのようにして収益化を図るのかといった具体的なビジネスモデルの説明を行います。また、市場にどのようにしてアプローチをするのかといった販売戦略も含めて記述していきます。個人事業主は営業にかけられる資源が足りないことも多いので、スタート時点で顧客をどのようにして獲得するのかが特に重要です。
⑦収支・予算計画
本事業全体でどのくらいの収益を見込むことができるのか、また、事業が黒字化するまでの期間に必要な資金はどの程度なのかを記載します。
個人事業主の場合は、資金面で不安視されますので、特にしっかりと記述したいポイントになります。
⑧具体的なアクションプラン
①~⑦で記載したことをどのように実行していくのかという行動計画と、人を雇用する場合には組織体制を明確にしておきます。
【まとめ】
いかがでしたでしょうか。法人と比較すると事業を始める際のハードルが低いのが個人事業主です。
そのため、具体的な計画もなしに事業を実施する方も少なくありません。融資等で事業計画書を作る必要がない場合でも、事業の成功確率を高めるために、事業計画書を作成するのが良いのではないでしょうか。