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はじめての事業計画書作成!人と組織(家事代行サービス編)

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

はじめての事業計画書作成!人と組織(家事代行サービス編)

家事代行サービスにおいて、お客さまが感じる提供価値を考えた場合、一番に思い浮かぶのは、「自分ではできないことをプロの力でやってもらう」「留守の間にすっきり快適な空間に変わる」などでしょうか。どこの家事代行会社でも提供している当たり前のことだと思われます。では、顧客に選ばれ続けるために必要なこととは、どのようなことでしょうか?今回は、人や組織による差別化を行うために必要なことについてお伝えします。お客さまに選ばれる組織となるために必要な人材は、どのように育成すれば良いのか?入社、採用、教育、給与などいろいろな面から見ていきましょう。



1.顧客のために価値を提供できるチーム作り

家事代行サービスは、ひとりで活動するお手伝いさんとは違い、原則的にチームで活動します。ですから、それぞれの持ち味をつぶさず相乗効果が生まれるような運営が重要になります。その実現のためのコツが3つあります。この3つのコツを常に意識して回し続けることで、チームは自然に成長していきます。しかし、1つでも欠けることがあれば、何年もかけて育てた組織ですら、いとも簡単に崩壊してしまいます。


(1)目的を明確にする

1つは、チームの目的(お客さまに満足していただき喜んでもらう)を明確にして共有すること。

スタッフは、自分自身の目的を果たすために面接に来て、採用されています。リーダーの大切な仕事は、スタッフの個人的な目的を大切にしつつもチームとしての目的を明確に示し、共感してもらうことです。

具体的には、組織としてのビジョンやミッションを表現することです。例えば、「お客さま第一主義」「日本一のお店作り」「笑顔あふれる職場に」「売上〇〇万円」などがあります。このように目的を明文化することで、組織内で共有され、個人の行動のベクトル(方向性)がそろってきます。すると価値判断がそろい、リーダーが細かな指示をしなくとも、スタッフが自主的に適切な判断をしてくれるようになります。

個人的には、「お客さまのお役に立つ」「お客さまに感謝される」「お客さまの喜びの声を集める」など、お客さまが中心にあるようなものを設定するのが良いでしょう。なぜなら、このような目的は提供価値に直結しており、全員が共感しやすく否定しづらいため、スタッフの自己肯定感が高まる効果が期待できるからです。


(2)コミュニケーションを活性化する

コミュニケーションは密に行いましょう。コミュニケーションを意識して行うことによる効果は計り知れません。

例えば、スタッフの成長にもミスにも気づくことができますし、リーダーの考え方や価値観を伝えて理解・共感してもらうこともコミュニケーションなしでは実現できません。単にコミュニケーションといってもたくさん話せば良いわけではありません。簡単に類型と目的を整理してみましょう。

(3)モチベーションを高め続ける

モチベーションを高めるための方策には2種類あります。

1つは、報酬や職場環境などの外からの働きかけです。いわゆる衛生要因と言われている職場環境、人間関係、金銭面などの処遇面がこれに当たります。具体的には、給料をアップしたり、キャンペーンなどの成績に応じたボーナスを出したり、個人ロッカーや専用デスク、専用車両などを与えることなどが考えられます。スタッフ側は、「給料が増えた」など物理的な喜びを感じるはずです。しかし、この衛生要因を充足することで達成できるのは、仕事に対する不満足を解消することにとどまり、満足感を引き出すことにはつながらないとされています。



仕事面での満足度を上げ、高いモチベーションを維持してもらうためには、このような衛生要因を充足させることに加えて、動機付け要因を満たすことが必要になります。先ほどの事例で言えば、金銭的な報酬や昇進だけにとどまらず「自分の頑張りが認められた」「他の人から尊敬される」「出世した」と感じてもらうことが重要です。つまり自己肯定感をアップしてもらうことが重要です。ですから、必ずねぎらいの言葉や尊敬の言葉、期待の言葉なども一緒に添えましょう。できれば、他のスタッフも同席している朝礼やミーティングの場が良いでしょう。恥ずかしがって嫌がるかもしれませんが、よほどの事情がなければそのようなオープンの場で褒めることを行います。

このように衛生要因と動機付け要因を組み合わせた働きかけが必要です。当たり前のようなことにも学問的な裏付けがあることを知っておいて損はないでしょう。


2.強いチームを作るために

では、強いチーム、安定的に成長し続けるチームを作るために必要なリーダーの仕事とはどんなものでしょうか?

人事における5つのステップ

リーダーの大切な仕事には5つのステップがあります。フレームワークとして覚えて人事計画に生かしてください。

1点目は、「採用」です。

どのような人柄、スキル、資格、年齢、性別の人材を、どのような条件で仲間に入れるのか?これが“採用”と言われる仕事です。人材の流動性が高まっている昨今では、モノを仕入れるように扱って必要な人材を確保した場合、1名当たりのコストを“採用単価”などと呼ぶ採用支援会社もあるようです。しかし採用は、事業の根幹にかかわる投資行動であってコスト支出ではありません。自分たちのチームにふさわしい人物像を明確にしたうえで、採用計画の立案から面接に臨むべきです。

2点目は、「配置」です。

運よく良い人に巡り合い無事に採用できた人を、どのチームに入れるのか?どのチームに入れることが、チームにとっても新人にとってもベストの選択肢なのか?期待する成長プロセスを描きながら行いましょう。

配置されたばかりの新入社員は、ルールやテクニック、接客など何も知りませんから、それを教える必要があります。誰が、いつ、どのように、どんなツールで、どれくらいの時間教えるのか、次のステップに進むために必要なスキルは何か、といった“育成”という仕事があります。この体制が整っていないことが早期離職の最大の原因になっています。つまり、入社したものの「自分は役に立っていない」「採用はされたが、必要な人材ではなかったのだ」「申し訳ない」と居場所をなくし、職場を早々に去ってしまうことにつながります。

最後は、順調に成長して成果を上げた新入社員を正しく「評価」し、それに報いる「報酬」を提供するステップです。これについては、先にお伝えしたように、評価だけでも報酬だけでも不満を抑える働きしかありません。高いモチベーションを維持してもらうためには、コミュニケーションなどを適切に組み合わせることが重要です。


3.まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、事業計画における4本柱の1つ「人と組織」について、家事代行サービスに応用したケースで一緒に考えてきました。

実際には、たくさん採用しても次々にやめてしまって、常に同じ顔触れのベテランの“阿吽の呼吸”で運営しているケースも多いと感じます。一見すると楽なようですが、往々にして主導権がスタッフ側に渡っており、お客さま側にないことがほとんどです。つまり、リーダーが職務を放棄して、チーム本来の目的を見失っている状態です。

長くお客さまにかわいがってもらえるチーム作りのためにも、人の成長を助けることをじっくりと考える良い機会としてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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