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はじめての事業計画書作成!事業再生プランの立て方【中編】

著者: 中小企業診断士  牧野 孝治

はじめての事業計画書作成!事業再生プランの立て方【中編】

自社の事業がうまくいっていない時には、その原因を見つけ出すことが大切です。

例えば、人は病気になった時は病院へ行き、さまざまな検査を実施したうえで治療を開始することが一般的でしょう。

それと同様に、企業でも何が原因になっているのかをしっかりと突き詰め、原因を改善しなければ立て直すことはなかなか難しいでしょう。

今回は事業計画を作成するために、自社にどういった点が原因で問題が生じているのかを検証する手法について解説をしていきます。


1.財務分析の実施

まず自社の問題点を探し出すことが、事業のV字回復における出発点です。そして、一つ一つ問題点を解決するための糸口を見つけて、アクションプランに落とし込んでいくことが重要なのです。

初めに行うことは財務分析です。しかもできるだけ古い時期まで決算書を遡って確認します。短期間の比較ではよほど急激な変化でない限り気づきにくいこと、また、業績が悪くなるにはいくつかの要素が重なりあっていることも少なくありません。そのため、できるだけ長期間を振り返ることが必要なのです。

過去に遡った時、どこかで急激に原価や人件費が上昇しているなど思いもよらない事象が発生していることがあるでしょう。過去と現在の比較をあまりされない企業も多いですが、過去と見比べるとある時期から増加しているというケースがよくあります。


2.収益性を確認する

赤字の企業では、そもそも収入と支出のバランスがあっていない状況が考えられますので、収益性について確認していきましょう。収益性を上げられなければ赤字から脱却できませんので、特に重要な部分になります。たくさんの収益性指標の中でも特に大切な以下2点をピックアップします。

1. 売上高総利益率

これが業界平均よりも低い状況が続いているのであれば、顧客に自社の提示している価格が受け入れてもらえていない、もしくは材料の仕入れが高いケースや、飲食店などであれば廃棄が多いなど無駄が生じている可能性があります。

また、商品ごとの利益率も把握しておきましょう。何を売れば利益につながり、何が自社の営業基盤になっているのかを把握し、その基盤に対して適切な投資をすることが大切なのです。また逆のパターンもあり、商品ごとの利益率を管理できておらず、主力製品だと思っていても、実は赤字もしくはギリギリのラインであることもしばしばあります。

2. 売上高営業利益率

営業利益は、本業で得られる利益を指します。つまり確実に黒字にしなければならない経営数値です。この数値も黒字でないと、事業をやればやるほど赤字になり、銀行から融資打ち切りなどの厳しい判断がされます。自社の販管費などが適切であるかを今一度見直すことが良いでしょう。たとえば、経費の中でも多くのウエイトを占める人件費を把握し、従業員一人当たりの売上高を算出し、適切かどうかを見極めます。この数値が業界平均よりも低ければ人員が過剰である可能性もあるので、最悪の場合は従業員の解雇も視野に入れることになります。

売上以外にも、従業員一人当たりの付加価値額も確認しておきましょう。これが高いと自社製品に付加価値を付けて売る力が強いと判断ができます。もしこの数値が低いと、自社の製品が市場に受け入れられていない、もしくは価格競争に巻き込まれていると言えるでしょう。


3.その他の指標についても確認する

収益性以外の指標についても「安全性」「生産性」「活動性」「成長性」といったものが挙げられます。

安全性分析は倒産する危険度を図る指標でもあり、銀行だけでなく取引先にとっても重要視されます。当座比率や固定比率(固定長期適合率)、自己資本比率など、短期・長期の視点から見ることが大切です。

生産性分析では、事業により価値を効率よく生み出せているのかが確認できます。事業に投下した資源(人・モノ・金・情報)でどれくらい「価値」を生んだかといったところでしょうか。当然、赤字の企業であればこの資源がうまく活用できていない、もしくは過剰となっており、利益を生み出さないだけでなく、圧迫することに繋がっている可能性があります。

活動性分析は、回転率と回転期間と呼ばれるものを使用します。商品を含む資産が、一定期間においてどれだけ回転したかを分析するものになります。

成長性分析は、伸び率を分析するものになりますが、再生企業ではマイナスになっていることが一般的なので、何とか上向かせたいものです。


4.財務分析をする際のコツ

財務分析をする際のコツとしては、業界平均と比べて自社の経営指標がどうなっているのかを明確にすることが有効です。

日本政策金融公庫のホームページに「小企業の経営指標調査」というデータが掲載されています。こちらと比較し、自社の現在の状況を把握すると良いでしょう。


5.現場を確認する

財務分析が完了し、自社の問題点にざっくりと目星をつけたら、次は現場をしっかりと確認しましょう。従業員へのヒアリングや、製造(サービス)の現場・倉庫を視察することで、詳細な状況を把握することにつながるので、非常に重要な部分にもなります。

現場を確認した結果、無駄な経費が生じており、それを改善すれば黒字になれば簡単なのですが、コストを削りに削ってもどうしようもない場合(そもそも売上が減少していて赤字が発生)というケースであれば、売上を上げるか、リストラを行うなどの厳しい選択しかありません。そのため、今までのやり方を大きく変えてコストダウンをさらに図ることや、新商品やサービスの展開や営業力の強化により、売上を創出するしかありません。しかし厳しい経営状況が続いていれば、組織が弱体化していることも多いでしょう。

従業員の意識を変えるためにも、現場の分析をすることも有効です。製造業であれば、ラインごとの収益管理をしっかりとつけ、担当者一人一人が問題に意識を向けること。これによって問題の解決策が生まれるかもしれません。


6. まとめ

いかがでしたでしょうか。事業計画を立てる前に、まず自社の問題点をしっかりと把握することが大切です。問題点が明確になってこそ、具体的な事業計画作りに進むことができるのです。

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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