合同会社の設立手続き
会社設立の際に、合同会社として法人を設立する事業者が増加しています。
2020年において、合同会社の設立件数は33,236件であり、全体の法人設立件数の約38%を占めています。
今回は、合同会社の仕組みと設立手続きの仕方について解説していきます。
1.合同会社とは
合同会社は、2006年の会社法改正により、新たに設立できるようになった会社形態です。
まずは、合同会社がどのような会社なのか、特徴を挙げて説明していきます。
(1)経営者と出資者が同一である
合同会社は出資者(オーナー)と実際に経営を行う経営者が同一でなければなりません。
それに対して、株式会社は出資者と経営者は、同一人物でなくても構いません。
合同会社は出資者自らが経営を行うために、株主の影響を受けずに、迅速な意思決定が可能になります。
(2)出資者全員が有限責任社員である
合同会社は持分会社のひとつです。
持分会社とは、合同会社、合資会社、合名会社の総称です。
合同会社が合資会社、合名会社と決定的に異なる点は、有限責任社員のみで構成されることです。
有限責任とは、会社が倒産した際に自分の出資額の範囲でのみ責任を負います。一方、無限責任は自分の出資額の範囲を超えて、全ての会社の債務に責任を負わなければなりません。
「合同会社」という名称はあまり聞き覚えがないかもしれません。しかし、有名企業であるAmazonやAppleの日本法人は合同会社です。その他にGoogle合同会社やユニバーサルスタジオジャパンを運営している合同会社ユー・エス・ジェイなど、合同会社を選択する企業は増えています。
2.合同会社が増加している要因
合同会社の設立件数は毎年増加していますが、なぜでしょうか?
その要因を挙げていきます。
(1)設立費用が安い
合同会社は、設立費用が安いことが特徴です。
まずは、株式会社と設立費用を比較してみましょう。
株式会社は、設立費用として最低でも242,000円(電子定款利用時は202,000円)かかります。それに対して、合同会社は100,000円(電子定款利用時は60,000円)で法人設立が可能であり、法人設立費用を抑えることができます。
(2)決算公告の義務がない
合同会社は、決算公告義務がありません。
それに対して、株式会社は決算公告義務があり、貸借対照表を①官報②日刊新聞紙③ホームページのいずれかで公告しなければなりません。
官報で決算公告する場合は、最低でも7万円程度の費用が毎年かかります。
合同会社は決算公告義務がないために、決算公告を行う手間や官報掲載料を削減することができます。
これ以外にも、「役員任期の更新が不要」「利益配分を社員で決定することが可能」など合同会社のメリットが存在します。
合同会社は、設立費用を抑えることが可能であり、かつ会社設立による節税効果を享受できるなどのメリットがあることから設立件数を増加させています。
3.合同会社の設立手続き
合同会社設立を決めた後は、どのような手続きが必要になるでしょうか。
具体的な設立手続きの手順について説明していきます。
(1)基本的事項の決定
合同会社設立に際して、まずは下記の基本事項を決めなければなりません。
①商号(会社名)
会社名は、会社のイメージを決める重要な要素になります。
基本的に会社名は自由に決めることができますが、次のようなルールがあります。
・会社名には必ず「合同会社」を入れなければならない。
・「支店」「支社」などの言葉は使用できない。
・同一の住所に同じ会社名を使用することはできない。
②本店所在地
事務所をはじめ自宅や実家なども本店所在地とすることができます。
ただし、自己所有以外の物件(借家や賃貸マンションなど)を本店所在地とする場合は、賃貸借契約に違反しないか確認しましょう。
また、営業所が実在しないバーチャルオフィスの住所を利用することも可能になります。
③事業目的
事業目的は、事業の内容を指します。
事業目的には、実際に行う事業の他に、将来行う可能性のある事業を含めても大丈夫です。
ただし、事業目的に複数の事業を入れ過ぎた場合、第三者から「何を行っている会社か分からない」という見方をされる可能性があります。
また、定款の事業目的に含めていない事業を行う際には、事業目的の追加が必要になり、追加費用がかかることに注意して下さい。
④出資者(社員)と役員
合同会社設立に際して、「誰が」「いくら(金額)」出資するか決める必要があります。
合同会社の場合、出資者を社員といいます。合同会社は出資者と経営者が同一でなければならず、出資者でなければ経営に参加することができません。
また出資者が複数人いる場合は、代表社員を決めなければなりません。
⑤資本金
資本金は1円から会社設立することが可能です。
ただし資本金が極端に少ない場合は、「信用が乏しい会社」と判断される可能性があり、銀行口座開設や融資申込した際に不利に働くケースがあります。
また、業種によっては、許認可を受ける際に最低資本金が決められているケースもあるので注意して下さい。
⑥事業年度
法人の場合は事業年度を自由に決めることができます。事業年度とは、会社の決算を行うための期間です。
4月1日を事業年度の開始日と設定した場合、事業年度は4月1日から翌年3月31日までになります。
ここで重要なポイントは、事業年度終了後通常2ケ月以内に決算を行い、納税しなくてはなりません。決算業務は税理士などに依頼することが一般的ですが、会社の繁忙期に重なった場合は思わぬ手間になる可能性があります。この点を考慮して、事業年度を決めることをお勧めします。
(2)定款の作成
定款とは、会社運営上のルールをまとめたものであり、必ず作成しなければなりません。
定款作成は、①自分で作成する②行政書士などの専門家に作成依頼するなどの方法があります。
最近では、定款作成から登記申請までワンストップでサービスを提供する事業者もいます。時間に余裕がなく、直ぐに開業をしたい事業者の方は、このようなサービスを検討しても良いでしょう。
定款の記載事項は3つに分けられます。
①絶対的記載事項
絶対的記載事項は、定款に必ず記載しなければならない項目をいいます。
<絶対的記載事項>
- 商号
- 目的
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名及び住所
絶対的記載事項がひとつでも欠ける場合は、定款そのものが無効になりますので注意しましょう。
②相対的記載事項
絶対的記載事項と異なり、定款に必ず記載しなければならない事項ではありません。
ただし、相対的記載事項は定款に記載がなければ、法的な効力が発生しない事項のことをいいます。
<相対的記載事項の具体例>
- 株式譲渡に関する規定
- 取締役設置に関する規定
- 現物出資に関する規定
③任意的記載事項
任意的記載事項は定款に記載がなくても、定款そのものに影響を及ぼしません。また定款に定めない場合も効力が生じる事項のことをいいます。
<任意的記載事項の具体例>
- 取締役や監査役の設置や人数
- 会社の事業年度
(3)出資金の用意
合同会社設立に際して出資金を用意しなければなりません。
出資金は代表社員の個人口座に入金します。出資者が複数いる場合は、出資者それぞれが代表社員の個人口座に出資金を入金する必要があります。
(4)登記申請
登記申請に関しては、①自分で登記申請を行う②専門家である司法書士に依頼するなどの方法があります。
登記申請の必要書類及び記載例については下記に記載します。
ただし、必要書類については登記申請される状況によって変わる場合があります。
自分で登記申請を行う場合には、事前に法務局に提出書類を確認することをお勧めします。
<登記申請の必要書類>
- 合同会社設立登記申請書
- 就任承諾書
- 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
- 払込みがあったことを証する書面
- 印鑑届書
- 登録免許税納付用台紙(合同会社の場合、登録免許税6万円)
- 登記すべき事項を記載したOCR用紙
- 定款
- 代表社員の印鑑証明書
(参考:法務局HP:合同会社設立届記載例)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252889.pdf
(5)登記完了後の手続き
法務局での登記完了により、晴れてあなたの会社が誕生しました。
しかし、事業開始するまでにさまざまな手続きをしなければなりません。
ここでは、登記完了後に必ず行わなければならない手続きを挙げていきます。
①各種書類の届出
法人設立後は、法人設立届出書などの書類届出が必要になります。
提出期限があることから、提出もれがないように注意しましょう。
また、書類提出時の添付書類がそれぞれ異なることから、事前に添付書類を確認することをお勧めします。
②銀行口座の作成
商売を行う上で銀行口座は必要不可欠です。
ここでポイントになることは、口座作成にあたり銀行の審査があることです。営業実態のない会社(ペーパーカンパニー)の銀行口座が、振り込め詐欺などの特殊詐欺に利用されることが社会問題になりました。
こうした背景から、銀行は法人口座作成前に「営業実態があるか?」「信用がおける会社なのか?」などの視点から審査を行います。
必要書類は銀行により異なりますが、履歴事項全部証明書、代表者の本人確認書類の他に営業実態を確認するための資料(会社案内、契約書、請求書、ホームページがある場合はURLなど)の提出を求められることがあります。
事前に口座作成する銀行に問い合わせて、必要な書類や手続方法について確認することをお勧めします。
4.まとめ
合同会社の設立手続きについて解説してきましたが、いかがでしょうか。
合同会社にはさまざまなメリットがあり、設立数も毎年増加しています。
しかし、合同会社にするデメリットも存在します。
「自分の会社をどうしていきたいのか?」ということを考慮し、合同会社のメリット・デメリットを比較検討した上で、会社設立することをお勧めします。